4世代100年続くバローロ ラ モッラ村の造り手「マローネ」

2026/03/13

2026/02/17

マルコ ベルトーネ氏 Mr. Marco Bertone

「最高のペアリングは、料理ではなく『人』である」――4世代にわたり100年続くバローロ ラ モッラ村の造り手「マローネ」

バローロ地区ラ モッラ村を拠点に、近年急速に注目を集める新進気鋭の生産者「マローネ」。第4世代の醸造家ヴァレンティーナ・マローネさんは、最先端の技術を駆使しながらも「技術だけでなく人間性をワインに残す」という哲学を軸に、世界中のトップシェフやソムリエを魅了するワインを生み出しています。創業から100年、この家族の歩みと情熱について、輸出部長マルコ・ベルトーネさんにお話を伺いました。
    目 次
  • モスカートから始まった、100年の家族史と「信頼」の畑
  • 「君は一体だれなんだ?」大舞台でバンフィを驚かせた最高の栄誉
  • 「酸化なき」ピュアネスを追求する、醸造家ヴァレンティーナさん
  • 世界中から訪れる4万人の「声」で追求する心地よいワイン
  • クラシコは年を語り、ブッシアは土地を語る

モスカートから始まった、100年の家族史と「信頼」の畑

マローネの歴史は1910年、初代ピエトロ・マローネさんがフォンタナフレッダから退職金代わりに受け取った「マドンナ ディ コモ」(バローロとバルバレスコの中間地点)の畑から始まりました。当時の代表的な品種はモスカート。標高が高く冷涼なこの区画で良質な白ワインを造り始め、ワイナリーの土台を固めていきました。

創業から100年以上が経った今も、この畑はマローネ家によって大切に守り続けられ、現在は4代目三姉妹の名を冠したアルネイス「トレ フィエ」が生まれています。白ワインがバローロのおまけではなく、ワイナリーのアイデンティティを形成する重要な柱であるのは、この原点があってこそです。

信頼の積み重ねが導いた、バローロの銘醸区画
2代目カルロさん、3代目ジャンピエロさんと代を重ねるなかで、マローネは徐々にバローロへの進出を果たし、現在では重要クリュ「ブッシア」や、2025年ヴィンテージが初リリースとなる予定のクリュ「プニャーネ」を含む計42ヘクタールを管理するまでに成長しました。

「このエリアの畑は、お金があれば買えるものではありません。先代から積み重ねてきた信頼関係があったからこそ、私たちはこの素晴らしいテロワールを手にすることができたのです」。そう語るマルコさんの言葉に、100年という時間の重みを感じさせます。

マドンナ ディ コモの畑

「君は一体だれなんだ?」大舞台でバンフィを驚かせた最高の栄誉

今でこそバローロの名門として知られるマローネにも、評価されず地道に品質を積み上げていた時代がありました。転機となったのは2017年。彼らが手がける「バローロ ブッシア 2013」が『Vinitaly』にて「5 STAR WINES」赤ワインカテゴリー第1位という最高の栄誉に輝いたのです。

ブッシアは、マローネが体現する「華やかさとエレガンス」とはある意味で対極にある、厳格なテロワールを持つクリュです。そのブッシアの個性を自分たちの色で塗り替えることなく、土地の厳しさをそのまま表現したことが、この受賞につながりました。

授賞式では、その年の最優秀賞に輝いたブルネッロの巨人「バンフィ」と同席。そのクオリティに驚いたバンフィの担当者が思わず口にしたのが、「君は一体だれなんだ?」という一言でした。さらに2024年の『Vinitaly』では、「バローロ ブッシア 2019」が年間最優秀賞を受賞。イタリアを代表する生産者の一人として、その存在感を決定づけました。

「酸化なき」ピュアネスを追求する、醸造家ヴァレンティーナさん

第4世代のヴァレンティーナ・マローネさんが醸造責任者として参画してから、マローネは目覚ましい進化を遂げました。わずか10年余りで生産本数が、1万8千本から18万本へと急増。その躍進を支えているのが、師と仰ぐ名醸造家ドナート・ラナーティさんから受け継いだ「テロワール(土)と人間性(人)をワインの核に据える」という哲学です。

その哲学が最も色濃く表れているのが、白ワインの醸造における徹底した「酸化防止」へのこだわりです。収穫後すぐにブドウを冷却して酸化を防ぐのはもちろん、特筆すべきはステンレスタンク内での技術です。タンク下部を冷やし上部との間に温度差を作ることで、液体が自然に対流する環境を生み出します。これにより、酸化を極限まで抑えながらブドウの繊細なアロマと旨みを引き出しています。

世界の星付きシェフ、ソムリエに選ばれたランゲ アルネイス「トレ フィエ」
この姿勢で生み出されたワインは、世界のトップシェフ、トップソムリエたちをも魅了しました。2025年に開催された、ミシュランの星付きレストランが集う「ミシュラン ガラディナー」でのこと。コースを構成する6皿それぞれに名だたる世界的銘柄が選ばれるなか、そのうちの1本としてランゲ アルネイス「トレ フィエ」が唯一のイタリアワインとして選出されたのです。

前年2024年にはモスカート ダスティ、2023年にはバローロ ブッシアが選出。さらに「ミシュラン シェフズ ディナー 2022」でも、アルネイス「トレ フィエ」が採用されました。ヴァレンティーナさんの哲学が生むワインの実力が証明されています。

「ミシュラン ガラディナー 2025」のメニュー
ベルギーの二つ星「Nuance」のセカンドスターターとのペアリング

世界中から訪れる4万人の「声」で追求する心地よいワイン

ワイナリーに併設されたレストランには、ランゲNo.1の数を誇る年間4万6千人ものゲストが訪れます。「お客様が今、何を飲みたいと感じているか。そのリアルな声を直接聞くことが、ワイン造りのインスピレーションになります」。マローネはこの場所を単なる観光資源ではなく、「飲み手との対話の場」と捉えています。

レストランの視点で生まれた、食事に寄り添うランゲ ネッビオーロ
ワインを造るだけでなく、ワインを囲む体験ごと提供し、そこで生まれた感動と率直な反応を即座に醸造へとフィードバックする。この徹底した現場主義が、マローネのワインに共通する「味わい深くきれいな酸」と「飲み心地のよさ」を支えているのです。

その対話から生まれたのが、一部にマセラシオン カルボニックを導入した「ランゲ ネッビオーロ」です。飲み手が求める「心地よさ」を追求して、飲み手にリラックスした時間を届けています。

ワイナリー併設レストラン

クラシコは年を語り、ブッシアは土地を語る

マローネのバローロには、明確に異なる二つの思想が存在します。複数の畑をブレンドして仕上げる「バローロ クラシコ」は、その年のブドウと真摯に向き合い、マローネが理想とする「家の味」をヴィンテージごとに表現します。

広大なブッシアの中でも個性が際立つ北部のソッターナ
一方、単一畑「バローロ ブッシア」では、造り手の意図を意識的に排し、土地の個性を素直に写し取ることに徹します。特にマローネが所有するのはブッシア北部のソッターナエリア。

この区画には希少な「ロゼ」クローンが残っており、新規植栽が認められていない今となっては貴重な存在です。また、複雑な土壌構成で、隣接するカスティリオーネ ファッレット村の特徴も併せ持つ、広大なブッシアの中でも際立った個性を持ちます。

2023年からMGA「プニャーネ」を単独所有
テロワールへの探究心は、ブッシアにとどまりません。2023年にはMGA「プニャーネ」を1.5ヘクタール取得。バローロへの新規参入が極めて困難な時代ながら、単独所有するまでになりました。この区画が、マローネの「土地を語るワイン」に新たな1ページを加えようとしています。

最高のバローロのペアリングは「誰と飲むか」
最後にマルコさんが語ったのは、マローネが100年かけて紡いできた「人と人がつながる時間」を体現したような締めくくりでした。

「バローロの最高のペアリングは、料理ではありません。『誰と飲むか』という人です。どんなに高価なバローロでも、目の前の人が笑顔になれなければ意味がない。ネッビオーロは育つ環境によって個性が変わるからこそ、『この人となら、このバローロを飲みたい』と結びついたとき、初めて本当の意味でのペアリングが実現するのです。

今回みなさんに、私たちの歴史背景や哲学、ワイン造りを知っていただきました。これが最高のペアリングへの第一歩になれたら嬉しいです。」

世界のトップシェフ、ソムリエに選ばれた
マローネの原点の畑で造る世界的アルネイス

ランゲ アルネイス トレ フィエ 2023

ランゲ アルネイス トレ フィエ 2023

マローネの歴史が始まった原点「マドンナ ディ コモ」で造る、4代目三姉妹の名を冠したアルネイスです。口に含んだ瞬間、果実とミネラルの豊かなボリューム感に思わず驚く、エキス分の強い白ワインです。ミシュランの星付きレストランが一堂に会すガラディナーで、名だたるフランスワインを差し置いて選ばれた一本です。アルネイスは放っておくと実をつけすぎてしまう、実は栽培が難しい品種。密植と適切なストレスをかけることで根を地中深くまで伸ばし、房の内外がバランスよく成熟するよう丁寧に管理されています。
試飲コメント:輝く麦わら色。華やかで複雑、エレガントな香り。フレッシュな白い果実、白い石のようなミネラル感、やや濃密なトロピカルなニュアンスも感じます。口に含むとフレッシュな酸と果実感が広がり、後口にはレモンのような柑橘の印象が続く心地よい味わいです。

「これを飲めばマローネの実力がわかる」名刺代わりのシャルドネ

ランゲ シャルドネ メムンディス 2022

ランゲ シャルドネ メムンディス 2022

マローネの名刺代わりのシャルドネです。ワイナリー併設のレストランでも海外からのゲストに特に愛される存在で、このワインを飲めばマローネがどれほどのワイナリーかを一口で伝えることができる。そんな自負が込められた一本です。実はこのワイン、2代目がネッビオーロを植えるつもりだった畑に誤ってシャルドネを植えてしまったという勘違いから生まれました。できたブドウでワインにしてみたところ、悪くなかったというのが始まりで、その偶然の産物が今や、マローネの顔とも言える一本に成長しています。醸造では最初の1回のみバトナージュを行い、その後は樽自体を回転させることで酸化を抑えながら旨みを引き出します。樽のリッチさがありながら、綺麗な酸がエレガントに全体を引き締める仕上がりです。
試飲コメント:透明感のある黄金色。凝縮した黄色い果実の上品な香りが、程よい厚みのあるスパイスと見事に調和しています。柔らかな口当たりで、まろやかな果実感と奥に感じる酸が溶け合います。上品でエレガント。飲み込んだ後も厚みと丸みのあるフレッシュな酸が長く持続します。

マローネが導く「心地よさ」の答え
飲み疲れしない軽やかなネッビオーロ

ランゲ ネッビオーロ 2022

ランゲ ネッビオーロ 2022

年間4万6千人が訪れるワイナリーレストランで、飲み手との対話から生まれたとも言える一本です。クリアなルビー色で、開けたてから明るいベリーやダークチェリー、ほのかなキャンディのような甘やかさが華やかに広がります。柔らかな果実味とタンニンが心地よく溶け合い、飲み疲れしない軽やかな旨みが続きます。マセラシオン カルボニックを取り入れることで、マローネの心地よさに対する答えを導き出しました。ステンレスタンク醸造によって、よりフルーティーなスタイルに仕上げていきます。
試飲コメント:淡いルビー色。チェリー系のチャーミングさを持つ、繊細で上品な香りです。赤い果実の心地よさがあり、柔らかで細やかなタンニンとフレッシュな果実感が溶け合います。程よい複雑さを伴った心地よい余韻が続きます。

バルベーラ&ネッビオーロ
ジューシーな果実味とエレガンスの融合

ランゲ パッシオーネ 2021

ランゲ パッシオーネ 2021

バルベーラ主体にネッビオーロをブレンドし、樽熟成で仕上げた一本です。バルベーラ由来の深い色調とジューシーな果実味、ネッビオーロ由来のエレガンスと余韻の長さがあります。そして、胡椒を思わせるスパイシーなニュアンスと十分なタンニンが重なり合う、力強い味わいです。
試飲コメント:深みのあるルビー色。赤と黒の熟した果実を感じる豊かでフレッシュな香り。エレガントな印象もあります。味わいは香りと同様に豊かでみずみずしい果実感が口中に広がるクリーンな味わいです。

あらゆる要素が見事に調和したバルバレスコ

バルバレスコ 2021

バルバレスコ 2021

食事と合わせることで真価を発揮するバルバレスコです。クリーンでエレガントな造りで、バルサミックやなめし革のクラシックな香り。口に含むとじんわりと果実味が広がり、タンニンと酸、旨みが見事なバランスで整っています。2021年は偉大なヴィンテージだけにタンニンの硬さも感じますが、それはこのワインの熟成ポテンシャルの証でもあります。しかし、今飲んでも十分楽しめます。
試飲コメント:淡いルビー色。ドライフラワーやバルサミコ、土のニュアンスを持つ、繊細で上品な香りです。口に含むとフレッシュでエレガントな酸が華やかに広がり、存在感がありながら綺麗なタンニンと果実感が綺麗に調和しています。

「マローネ」と「ヴィンテージ」の個性を表現
誇り高きクラシック バローロ

バローロ 2020

バローロ 2020

マローネの「家の味」を表現するバローロ クラシコです。マローネがその年のブドウと真摯に向き合い、複数の畑のブドウをブレンドして造る、ヴィンテージを表現する誇り高きクラシックです。決してクリュの格下ではありません。なめし革や森の湿った土っぽさが漂う、重心の低いクラシックな香りで、時間とともに複雑さが増していきます。2020年ヴィンテージは親しみやすく、早くから楽しめる仕上がりです。
試飲コメント:淡いガーネット色。エレガントかつ力強い、華やかな香り。ドライフラワーや土の要素に、徐々にハーブの爽やかさも加わります。滑らかなタンニンと綺麗な果実が調和した洗練された味わいで、上品ながらいつまでも持続する長い余韻が印象的です。

ブッシアの中でも特に複雑な土壌と、
希少クローンで造る唯一無二のクリュ バローロ

バローロ ブッシア 2020

バローロ ブッシア 2020

新規植栽が認められていない希少なロゼクローンで造るバローロ ブッシアです。畑が位置するのは広大なブッシアの中でも、北部のソッターナエリア。ここには現在の主流クローンであるミケやランピアとは異なり、ロゼクローンが残っています。そのロゼが生み出す女性的なしなやかさが、このワインの最大の個性です。また、近隣のカスティリオーネ ファレット村の特徴も併せ持つ複雑な土壌と、その希少なクローンが生み出すブッシアの中でも唯一無二の一本です。クラシコに近いなめし革や土のニュアンスを持ちながら、よりキノコ類の複雑さが加わり、まろやかな口当たりの奥から語りかけてくるような重厚なパワフルさが広がります。
試飲コメント:透明感があって輝くガーネット色。上品でピュアな果実感にやや甘やかさも感じ、レザー、土、スパイス、コーヒーのようなニュアンスも加わる、複雑で奥行きのある香りです。力強さがありながら滑らかな口当たりで、心地よいタンニン、綺麗な酸、複雑な要素が綺麗に絡み合い、上品な旨みが染み渡る味わいです。

インタビューを終えて