ロッソからブルネッロまでを「一本の線でつなぐ」造り手タレンティ

2026/01/14

2025/12/18

ジョルジョ マセッリス氏 Mr. Giorgio Masellis

ロッソからブルネッロまでをひとつなぎで描く緻密なワイン哲学!バランスと飲み心地を突き詰めるモンタルチーノ南部の造り手「タレンティ」

1981年創業、モンタルチーノ南部に拠点を構えるブルネッロ生産者「タレンティ」。創業者ピエロルイジ・タレンティ氏は、名門イル ポッジョーネでの経験や、モンタルチーノに適したサンジョヴェーゼクローンの選別を経て、ブルネッロの発展に貢献してきた人物です。タレンティが一貫して追求するのは、味わいのバランスと飲み心地の良さ。点在する畑から生まれるブドウそれぞれの個性、そして大樽やトノー樽を含む多様な樽の性質を見極めながら、それらを一つのワインとしてまとめあげています。また、今回お話を伺ったジョルジョ・マセッリス氏は、造り手の本質を「ロッソ ディ モンタルチーノからブルネッロ ディ モンタルチーノまでを、一貫した考え方のもとで造ること」だと語ります。実際にロッソからブルネッロへと飲み進めていくと、まるで同じ階段を一段ずつ上がっていくかのように、味わいの連続性と統一感が明確に感じ取れます。今回は、モンテクッコで造られるワインも含めて試飲しながらワイン造りの哲学を伺いました。

ビオンディ サンティと並び称される、
モンタルチーノの基盤を築いた、創業者ピエロルイジ氏

ブルネッロの名門の経験を礎に、タレンティを創業
タレンティは、1981年にピエロルイジ・タレンティによって設立されました。ブルネッロ ディ モンタルチーノのファーストヴィンテージも同年です。現在ワイナリーを率いるのは、創業者ピエロルイジの孫にあたるリッカルド・タレンティです。

ピエロルイジは1950年代初頭、ブルネッロの歴史的名門イル ポッジョーネを所有していたフランチェスキ家に招聘され、畑の分割を担うマネジメント業務に携わっていました。その結果、誕生したのがイル ポッジョーネとコルドルチャの二つのワイナリーです。後者はのちにチンザノ家へと引き継がれました。タレンティを設立したのはその後になります。
創業者ピエロルイジ・タレンティ氏

モンタルチーノの未来を切り拓いた、
最適なサンジョヴェーゼクローン選別

タレンティ設立当初の姿は、現在のようなワイナリーではなく、あくまで農家の延長線上にあるものでした。ピエロルイジは、まずはそこからワイナリーとしての形を整えていく仕事を始めました。同時に彼は、モンタルチーノの土壌と気候に適したサンジョヴェーゼクローンの選別にも深く関わりました。これは単なる自社の品質向上にとどまらず、産地全体の基盤づくりに寄与する取り組みでもありました。

こうした功績から、ピエロルイジはモンタルチーノにおいて非常に敬意を集める存在となりました。2000年代初頭、『ヴェロネッリ』では「モンタルチーノに功績を残した人物」として、フランコ・ビオンディ・サンティと並び、ピエロルイジ・タレンティの名が紹介されています。

創業者の功績を讃える、少量生産クリュ ブルネッロ「ピエロ」
そんなピエロルイジの功績を讃え、タレンティでは特別なブルネッロ ディ モンタルチーノ「ピエロ」を造りました。畑は2ヘクタール。記録的な猛暑となった2003年に、その環境に耐えうるブドウを見極めて植樹された区画です。

生産本数は4000本以下と限られていますが、環境に適応した畑から、高い品質を引き出すことにこそ意味があると考えています。ファーストヴィンテージは2015年で、リリースは2020年。植樹から17年という時間を経て世に出した、まさに特別なワインです。

多彩なテロワール、ブドウの個性をまとめあげ、
バランスを追求するワイン哲学

モンタルチーノ南部に広がる、多様な畑構成
私たちが拠点を構えるのは、モンタルチーノ南部。南側でありながら、畑の標高は420メートルに達します。所有畑の総面積は約23ヘクタール。そのうち17.5ヘクタール(9区画)がモンタルチーノにあり、モンテクッコのチニジャーノに6ヘクタール(2区画)所有しています。

モンタルチーノでは、サンジョヴェーゼのみを栽培しています。畑は一か所にまとまっておらず、それぞれが点在し、気候条件、土壌、標高、畑の向きはすべて異なります。その結果、ブドウの成熟度や個性にも明確な差が生まれ、収穫時期にはおよそ3週間の幅が生じるのが特徴です。
地図:モンタルチーノ南部、灰色部分:畑

追求するのは「味わいのバランス」「飲み心地の良さ」
タレンティの年間生産本数は約7万本です。そのうちモンテクッコのワインは約1万本にとどまり、あくまでも軸足はモンタルチーノに置いています。造り手として注力するのは、ロッソ ディ モンタルチーノ(以下:ロッソ)とブルネッロ ディ モンタルチーノです。

収量についても、明確な基準を設けています。規定ではロッソは1ヘクタールあたり9000キロ、ブルネッロは7000キロ以内と定められていますが、私たちは5000キロに抑えています。

しかし、タレンティが重視するのは単純な低収量ではありません。クオリティの高さを前提としたうえでの「味わいのバランス」です。それはモンタルチーノでもモンテクッコでも変わりません。すぐに飲めるかどうか、ピークをどこに設定するかといった設計よりも、「飲み心地の良さ」を大切にしています。

世代交代と試行錯誤を重ね、
現当主リッカルド氏が導いたタレンティのスタイル

味わいのバランスを追求し、現在のスタイルを形づくるうえで、現当主リッカルドの存在は欠かせません。創業者ピエロルイジは1999年9月に他界した当時、リッカルドはまだ20歳で、大学で醸造学を専攻し始めたばかりでした。突然ワイナリーを背負う立場となり、頼りにしたのが、ピエロルイジの時代から共に仕事をしてきたカルロ・フェリーニでした。

2000年代は気候変動に直面し始めた頃でもあり、困難な時代でした。同時に、設備の更新や体制の見直しなど、ワイナリーとして次の段階へ進む過渡期でもありました。すでにある畑やスタイルをどう理解し、何を調整し、どの方向へ進むべきか。その答えを探し続ける、試行錯誤の時間だったと言えるでしょう。そうした積み重ねを経て、2010年以降、現在のタレンティのスタイルが確立されていきました。
現当主リッカルド・タレンティ氏

大樽とトノー樽の併用
――ワインのスタイルや造り方は、2010年以降で変わっていないのでしょうか。

2010年以降、醸造の基本的な考え方やスタイル自体は変えていません。ただし、そこに至るまでには、時代に応じた調整の積み重ねがありました。ピエロルイジの時代、熟成は大樽のみで行われていました。しかし1990年代に入り、ブルネッロの樽熟成期間が3年から2年へと規定変更されたことをきっかけに、1990年代後半からトノー樽の導入が始まります。

その影響もあり、当初のブルネッロは、現在と比べると樽のニュアンスがやや前に出ています。実際、先日2003年のブルネッロを試飲した際にも、その傾向をはっきりと感じました。こうした経験を踏まえ、現在のタレンティでは新樽の使用比率を5%に定めています。

メーカー、産地、年数、トーストの度合い
ワインの個性を見極め、多様な「樽」を使い分ける

熟成で使用する樽は非常に多彩です。大樽はイタリア、オーストリア、フランスから、トノー樽はフランスからと、産地の異なる樽を使用しています。購入先は約10社に及び、それぞれの樽が持つ性格も異なります。

樽の年数もバラバラです。最も古いトノー樽は2010年から使い続けているものです。トーストの度合いについても幅を持たせていますが、最大でも中程度にとどめ、過度にワインの個性を覆わないよう注意を払っています。

タレンティの本質
ロッソからブルネッロまでを「一本の線でつなぐ造り」

収穫から熟成まで、同じプロセスを辿るロッソとブルネッロ
タレンティが追求しているのは、ロッソ ディ モンタルチーノからブルネッロ ディ モンタルチーノまでを、「一本の線でつなぐ造り」です。生産者によっては、両者のキャラクターを明確に分ける場合もありますが、私たちはそうしません。

年間生産本数は、ロッソが約2万から2万5000本、ブルネッロ(アンナータ)が約2万5000から3万本。ロッソが全体の中でも大きな比重を占めていることからもわかるように、タレンティのロッソは、ワインを表現する上での出発点なのです。

そのため、ロッソ専用の畑は存在しません。樹齢によってロッソとブルネッロを分けることもしていません。収穫されたブドウは、発酵から樽熟成に至るまで、両者とも同じプロセスをたどります。その先で個性が見極められるのです。

華やかなロッソ、熟成力を備えるブルネッロ
――では、どのような観点でロッソとブルネッロに分かれていくのでしょうか。

ロッソとして選ばれるのは、ロッソのキャラクターを明確に備えていると判断されたワインです。赤い果実や華やかさが前に出ており、ブルネッロとは異なる魅力を持つもの。そうしたワインは、木樽で10か月の熟成を経て、ロッソ ディ モンタルチーノとして仕上げられます。

重要なのは、「ブルネッロではないワインを飲んでいる」という感覚が伝わることです。生まれはブルネッロと同じであっても、ロッソとしての個性とアイデンティティを備えている。それこそが、タレンティのロッソ ディ モンタルチーノであり、ブルネッロの本質を表すことになります。

一方でブルネッロは、ブルネッロとしてのポテンシャルと複雑さを明確に感じさせる個性を持つもの。そのワインが、36か月の木樽熟成を経てブルネッロになるという流れです。

ロッソもブルネッロも、樽の使用比率は同じ
――とはいえ、大樽とトノー樽の使用比率は、ロッソとブルネッロで変わってくるのではないでしょうか?

実は、比率は同じです。ロッソもブルネッロも、大樽とトノー樽の使用比率は、リッター数に応じた「全体量の50%ずつ」で統一されています。カンティーナに(大樽より容量の小さい)トノー樽が多く並んでいるのは、そのためです。ただし、ロッソに関しては、樽の影響を前に出さないため、新樽のトノーは基本的に避けています。

「二つのワインがまるで対話しているかのよう」
無数のピースを組み上げていくワイン造り

――だから両者は、個性は違えど統一感があるわけですね。ブレンドの作業は相当大変ではないですか?

そうなんです。畑の区画、樽の個性など、すべての異なる要素を把握し、理解したうえでワインとして導いていく必要があるのです。長いテーブルに数多くのサンプルを並べ、一本一本のキャラクターを書き出しながら、ブレンド前に少しずつ組み合わせを試し、最終形を探っていきます。

ワイン造りは、まさにパズルのような作業です。どれか一つでも噛み合っていなければ、そのパズルは成立しません。その結果として完成するのが、タレンティのロッソとブルネッロです。実際に飲み比べてみると、二つのワインがまるで対話しているかのように感じ取れると思います。

年間生産量900本以下
10種もの白ブドウを混醸して造るビアンコ トスカーノ

ワオ ビアンコ トスカーノ 2024

ワオ ビアンコ トスカーノ 2024

ジョルジョ氏:
「10種類の異なるブドウをブレンドする白ワインです。10種類それぞれ成熟度合いが異なりますが、すべて同じタイミングで収穫します。使用品種はフランス系のヴィオニエ、プティマンサン、グロマンサン、ロッサン。北イタリアのシャルドネ、ソーヴィニヨン、トラミネール、マルヴァジア。中部イタリアのヴェルディッキオ、そしてヴェルメンティーノ。特にヴェルディッキオがこの場所に合うのは面白い発見で、将来的には品種の数を減らし、ヴェルディッキオに注力したいと考えています。夏に楽しめる軽快さがあります。リリース本数は900本以下です。」
試飲コメント:やや深みのある麦わら色。フレッシュさとミネラル感のある香り。穏やかな甘みとほのかな塩味も感じられます。柔らかい口当たりで、持続性のある酸とミネラルが広がり、若干の南国果実のニュアンスが現れます。

半分は白ワイン醸造法、半分は果皮成分を抽出して造るサンジョヴェーゼ ロゼ

オープス ロザート トスカーノ 2024

オープス ロザート トスカーノ 2024

ジョルジョ氏:
「サンジョヴェーゼで造るロゼワインです。ブドウの半分を白ワイン醸造で、半分をセニエ法で造っており、何か間違ってしまったかな、という意味を込めてオープスと名付けています。ブドウを早摘みすることで糖度とアルコールを抑えています。ミネラル感や塩味のニュアンスがあるので、目をつむって飲むと海岸沿いのワインと感じるかもしれません。実際モンタルチーノはかつて海の底であり、その堆積物が味わいに影響しているのです。生産本数は2000本以下です。」
試飲コメント:淡い玉ねぎの皮色。フレッシュなベリー系果実の香りに爽やかさとフレッシュさが漂います。味わいは香りの印象どおり、ベリーの果実感が酸とともに軽やかに広がり、その軽快さが余韻として続きます。

毎日飲める、冷やして美味しいカジュアル サンジョヴェーゼ

ロッソ トスカーナ 2023

ロッソ トスカーナ 2023

ジョルジョ氏:
「一般的なロッソ トスカーナとは異なり、サンジョヴェーゼ80%、プティヴェルド20%で造られています。サンジョヴェーゼはアンフォラと木樽で、プティヴェルドはステンレスタンクで数か月熟成しています。少し冷やすと美味しい赤ワインですね。非常にカジュアルで毎日飲めるワインで、いわばBBQワインの位置付けです。生産量は約8000本です。」
試飲コメント:紫に近いルビー色。赤や黒のフレッシュでチャーミングな果実が際立ちます。柔らかい口当たりで、甘やかな果実とスパイスが感じられ、ジャムのニュアンスを伴うやや厚みのある果実感が余韻に残ります。

「タレンティを支える存在」
赤系果実と気品が感じられるロッソ ディ モンタルチーノ

ロッソ ディ モンタルチーノ 2023

ロッソ ディ モンタルチーノ 2023

ジョルジョ氏:
「ロッソ ディ モンタルチーノこそが、タレンティを支える存在です。飲んでいただくと、ワイナリーの姿勢を理解できると思います。2023年ヴィンテージは冷涼な年で、収量は減りましたが、注意を払った結果、ブドウの状態は非常に良好でした。2022年はブルネッロを思わせる複雑さがありましたが、2023年はタレンティが求めるロッソの姿を忠実に表したヴィンテージとなりました。赤い果実や華やかさがしっかりと感じられます。」
試飲コメント:透明感のあるルビー色。やや凝縮した赤系果実に、ほのかな甘やかさのあるスパイスや土のニュアンスがあります。味わいはしっかりした果実感がありながら気品があり、軽やかな印象さえ感じられます。

厚みと優美さ、果実感が調和したブルネッロ

ブルネッロ ディ モンタルチーノ 2020

ブルネッロ ディ モンタルチーノ 2020

ジョルジョ氏:
「ロッソ ディ モンタルチーノから一本の線でつながるのが、私たちのブルネッロです。二つのワインが呼応することが理想です。2020年は2019年より温暖でしたが夏は想定内の暑さで、最終的には綺麗な酸が保たれました。飲むと凝縮感がありながら、しっかりと酸を感じられますよね。そのため、長期熟成ポテンシャルも秘めたヴィンテージとなりました。飲み心地の良さも際立ちますね。」
試飲コメント:深みのあるガーネット色。全体的にエレガントな印象ながら、厚みのある果実感のある香り。味わいはふくよかに広がり、きめ細やかなタンニンと酸、澄んだ果実感の余韻が心地よく持続します。ワイナリーが追求する「一本の線でつなぐ造り」を確かに感じさせるような、ロッソとの統一感を感じさせます。

深みのある果実感が広がるブルネッロ

ブルネッロ ディ モンタルチーノ 2019

ブルネッロ ディ モンタルチーノ 2019

ジョルジョ氏:
「2019年は、より冷涼感のある年です。2020年よりも、まだ時間が必要なヴィンテージだと感じますね。実際に二つのヴィンテージを比較して試飲するとよくわかります。2020年と2019年は重要な対比であり、2020年が2015年、2019年が2016年によく例えられます。」
試飲コメント:深みのあるガーネット色。綺麗でフレッシュな赤系果実の香りがあります。味わいはエレガントさと複雑さが両立しています。深みのある果実感が広がり、タンニンは他の要素と溶け込みながら、次第に厚みのある優れた骨格がじわりと現れていきます。

インタビューを終えて

ロッソ ディ モンタルチーノからブルネッロまでを「一本の線でつなぐ造り」という考え方は、非常に印象に残りました。なかでも使用する樽に関する話が印象的でした。使用比率やその意図を辿っていくうちに、「なるほど!」と腑に落ちていきました。そして実際に試飲をすることで、ロッソからブルネッロへと続く造りの一貫性が、感覚としても実感できました。

同時に、彼らが突き詰めている「味わいのバランス」と「飲み心地の良さ」も、はっきりと感じ取ることができました。ロッソもブルネッロも、そのバランス感や飲み心地だけでなく、澄んだ果実感と気品さが共通して感じられます。それでいて、ロッソは、華やかさと軽やかさを備えた表情を見せてくれます。一方でブルネッロは、複雑さと厚みのある果実感があり、より深い奥行きを感じさせます。ぜひ、ロッソ ディ モンタルチーノからブルネッロ ディ モンタルチーノへと、順に飲み比べていただきたいです。