2026/01/14
/
アントニオ ヴァンジーニ氏 Mr. Antonio Vanzini、ルカ ヴァンジーニ氏 Mr. Luca Vanzini
エリア随一の長期熟成「シャルマ ルンゴ方式」で造るスプマンテ!世界有数のピノ ネロ産地オルトレポ パヴェーゼで最初にボトリングを手がけた先駆者「ヴァンジーニ」

1890年創業、オルトレポ パヴェーゼの老舗
この地で初めて瓶詰めを行った造り手
現在は、私(アントニオ)、妹ミケーラ、弟ピエルパオロの3代目がワイナリーを担っています。近年は、醸造学校を卒業した息子ルカも醸造チームに加わり、家族でスプマンテを中心にワイン造りをしています。
カンティーナ(写真左側の一帯)
畑全体の60%を占める象徴的存在
歴史と伝統を映す「ピノ ネロ スプマンテ」
――畑やブドウについて教えてください。
畑の広さは33ヘクタールあり、すべて自社畑です。そのうち約60%を、スプマンテ用のピノ ネロが占めています。ほかには、スティルワイン用も含めて、バルベーラ、クロアティーナ、モスカート、リースリングを栽培しています。土壌は石灰分の比率が高い粘土質。収穫はすべて手摘みです。
中川原 オルトレポ パヴェーゼは、中世の時代からピノ ネロが栽培されてきたエリアです。スプマンテ、メトド クラシコの歴史も古く、ピノ ネロ100%のスタイルが伝統のひとつでもあります。
イタリアが世界に誇るピノ ネロ産地「オルトレポ パヴェーゼ」
――現在、オルトレポ パヴェーゼのピノ ネロは勢いがありますよね。
生産量は伸びています。かつてオルトレポ パヴェーゼでは、生産されたワインの多くがミラノで消費されていましたが、現在はミラノを含むロンバルディア州全体で、他地域のワインが多く飲まれるようになりました。そのため、オルトレポはまだ世界的に広く知られている存在とは言えないでしょう。しかし、イタリア国内では第1位、世界でも3番目の規模を持つピノ ネロ産地です。それだけ大きな可能性を秘めた産地です。

国内消費80%
イタリア各地で親しまれるヴァンジーニ
ヴァンジーニのワインが飲まれている割合は、国内が80%、海外が20%です。他のワイナリーと比べても、国内消費の比率は高いほうです。ミラノを中心に、ローマ、ナポリ、ジェノヴァなど各地で親しまれています。将来的には、息子ルカの代から国内と海外の割合を50%ずつにしていく考えです。ラベルデザインの刷新も含め、彼の代から新しい取り組みを始めています。
「ヴァンジーニほど品質の高い小規模生産者は見当たらない」
シャルマ方式でピノ ネロを手がける希少な存在
中川原 アントニオは、今も自分で車を運転して顧客開拓の営業をしています。また、日本に輸入されているオルトレポ パヴェーゼの中でも、ヴァンジーニほど品質の高い小規模生産者は見当たらないです。彼らはDOCGのメトド クラシコも造っていますが、主軸としているのはシャルマ方式によるピノ ネロです。
この地で古くから栽培されてきたピノ ネロという伝統品種を、イタリアで生まれたシャルマ方式(マルティノッティ方式)で造っている生産者はヴァンジーニくらいです。価格帯も手頃で、オルトレポ パヴェーゼの中でも、こうした個人の生産者は非常に限られています。
他に類を見ない、10か月に及ぶ長期熟成
柔らかな泡と熟成感を生む「シャルマ ルンゴ方式」
一般的に、プロセッコなどシャルマ方式で造られるスプマンテは、熟成期間が2週間から1か月程度です。私たちは、それを9から10か月行っています。14度程度で発酵を行い、発酵が終わった後はワインを冷却した状態にします。そのまま澱とともに約10か月熟成させ、その間はタンク内の状態に応じて撹拌を行います。
――シャルマ ルンゴ方式はいつ頃から始めたのですか。また、ピノ ネロで同様の造りをしている生産者はいますか?
私たちがこの方法を始めたのは、1980年代前後です。オルトレポ パヴェーゼで、私たちのように10か月もの期間を行う生産者はいないと思います。長くても4、5か月程度でしょう。
シャルマ ルンゴならではの個性
「きめ細やかで、柔らかな泡」「熟成感とフレッシュさの両立」
中川原 シャルマ ルンゴ方式によって生まれるのは、持続性のある細かい泡と、柔らかな口当たりです。味わいに、ふくよかさも出てきます。さらに品種がピノ ネロであることもポイントです。高貴なピノ ネロを10か月かけて熟成させることで、ワインに複雑さが加わります。メトド クラシコ由来のような熟成感と、シャルマ方式ならではのフレッシュさ、その両方を感じられるスタイルなのです。

安定した味わいを支える密閉タンクの管理
――シャルマ ルンゴ方式で熟成させる容器について教えてください。
100ヘクトリットルのアウトクラーヴェ(密閉タンク)が5基あります。すべてのタンクに同じ年のワインが入るわけではありません。まずは収穫のタイミングごとに5つのタンクで仕込みを行い、注文が入った段階でボトリングし、空いたタンクに低温で貯蔵しているワインを順次移していきます。
そのため、私たちのスプマンテは単一ヴィンテージでないことが多いです。前年のワインが残っていれば、それを含めた2つのヴィンテージが入ることになります。工程の途中のタイミングでは、結果的に単一ヴィンテージになる場合もあります。
私たちは、ヴィンテージよりもワインそのものの品質を重視しています。2つのヴィンテージを合わせたほうが味わいに安定感が出るのであれば、その選択が最善だと考えています。
見事な熟成を見せるモスカート
今回試飲するモスカートのキャップシールを見ると、「L.21/053」と記されています。これは2020年のワインを使用して、5年から6年ほど熟成したものを意味します。実際に飲んでいただければ、私たちのワインが時間とともに素晴らしい熟成を遂げていくことを感じてもらえると思います。
中川原 これほど熟成したモスカートはなかなか見かけませんよね。もう一つ特筆すべきなのが、SO2(酸化防止剤)の添加量です。ヴァンジーニ家としての考えでもありますが、「飲んで頭が痛くならないように」という方針のもと、規定の半分以下に抑えています。それだけ手摘みで健全なブドウを選び抜いている証だと思います。

爽やかさ、複雑さを兼ね備えたピノ ネロ
|
ピノ ネロ スプマンテ エクストラ ドライ NV |
| アントニオ氏: 「10か月間澱とともに熟成させるシャルマ ルンゴ方式で造っていて、10か月間はオルトレポ パヴェーゼの生産者では見たことがありません。シャルマ方式由来の爽やかさは残しながらも、長期熟成かつピノ ネロ由来の複雑さが表現されています。ゴールデンアップルを思わせるフレッシュでフルーティな味わいです。近年の気温上昇もあり迅速な収穫が必要なため、収穫は一度のみ手摘みで行います。その後カンティーナでブドウの厳選をしていきます。生産量は約8万本です。」 |
| 試飲コメント:透明感のある麦わら色。香りはフレッシュで、白い花やリンゴなどの白い果実を感じます。口当たりはフレッシュで心地よく、次第にふくよかさが広がります。白い果実を中心に凝縮感のある果実味があり、やや甘みを伴った風味と綺麗な酸が余韻まで続きます。 |
クリーミーでフレッシュなピノ ネロ ロゼ スプマンテ |
ピノ ネロ スプマンテ エクストラ ドライ ロザート NV |
| アントニオ氏: 「これが私が目指す色合いです。それに合わせて可否の抽出期間を決めていますが、毎年おおよそ1日から3日の間になります。赤ワインを加えたて調整することも認められていますが、その手法はとりません。フレッシュな果実味が特徴で、アメリカンチェリーや森の果実を思わせるニュアンスがあります。これはメトド シャルマによって引き出される表現ですね。生産量は約3万本です。」 |
| 試飲コメント:玉ねぎの皮色。香りは華やかで、繊細な赤い果実のフレッシュさを感じます。口に含むと赤から黒系ベリーの果実味がふわりと立ち上がり、クリーミーな口当たりが続きます。赤い果実の印象が持続します。 |
2回の収穫で表現する、酸と甘みの見事なバランス |
モスカート スプマンテ NV |
| アントニオ氏: 「モスカートは2回に収穫を分けています。1回目は完熟していないブドウを収穫し、2回目はその1週間後に行います。それによって、アロマと高い酸を引き出しながら、それと調和する甘みを表現しています。そのため、甘口でありながら重さを感じさせない仕上がりになっています。生産量は約1万5000本です。」 |
| 試飲コメント:透明感のある麦わら色。香りはライチやグレープフルーツを思わせる白い果実で、やや甘やかさを伴います。口当たりは柔らかく、香りと調和した味わいが穏やかに続きます。アロマティックで優しい印象が余韻まで保たれます。 |
インタビューを終えて
オルトレポ パヴェーゼで誰よりも早く自社ボトリングを始め、100年以上その姿勢を貫いてきた歴史。ほかに例のない10か月に及ぶ「シャルマ ルンゴ方式」。そして、その造りがきちんと表れた、きめ細やかで柔らかな味わい。これらを、アントニオさんと中川原さんの話、そして試飲を通して、はっきりと実感することができました。
そして、歴史や造り手としての想い、味わいを踏まえると超お値打ち価格です。象徴的なピノ ネロはもちろん、5年の熟成を経て美しく仕上がったモスカートを、この価格で楽しめることには、あらためて驚かされました。







Posted in
Tags: