100年以上バローロ村の食文化とともに歩んできた「ヴィベルティ ジョヴァンニ」

2026/02/19

2026/01/21

アンドレア マスエッリ氏 Andrea Masuelli

100年以上バローロ村の食文化とともに歩んできた歴史的名門!クリュバローロ、ランゲ、コッリトルトネージ――伝統産地の個性を描き続ける「ヴィベルティ ジョヴァンニ」

1896年、バローロ村で宿泊施設を兼ねたレストラン「ブオン パードレ」を開業したヴィベルティ家。1923年には畑を取得し、後にフラッグシップ バローロとなる「ブオン パードレ」の生産を開始しました。以来、バローロ村を中心に畑を広げ、現在では各地にクリュ バローロを所有しています。最新の設備や醸造技術を取り入れながらも、彼らが大切にしているのは伝統的なスタイルと土地の個性を映し出すことです。畑ごとの表情が明確に表れたクリュ バローロに加え、今回新たに登場したランゲ ロッソ「ドルバ」も、土地の魅力を日常のワインとして表現しています。3年連続となる今回のインタビューでは、輸出担当のアンドレア マスエッリ氏にお話を伺いました。

バローロ村の食文化に根ざして生まれた歴史的バローロ

1896年創業の地元密着型レストラン「ブオン パードレ」
ヴィベルティ家は、レストラン業から始まりました。1896年、初代アントニオがバローロ村でロカンダ(ホテルとレストランを兼ねた店)を開業します。そこでお客様からワインを求める声が高まり、3つの畑を取得しワイン造りがスタートしました。ヴィベルティを代表するクリュ バローロ「ブリッコ デル ヴィオレ」も、その畑のひとつでした。

1923年からは、ヴィベルティ家の名でワインを造り、ロカンダで提供していました。それが後にフラッグシップ バローロとなる「Vino Buon Padre」です。ブオン パードレは「良き父」を意味し、アントニオのあだ名であり、ロカンダの名前でもありました。
ロカンダ、フラッグシップ バローロ「ブオン パードレ」

バローロ制定以前から、その原型となるワインを生産
——当時からブオン パードレは、バローロとして名乗れる造りに沿っていたのでしょうか?

ワインそのものは変わっていません。1950年代にバローロの製造規定が定められた後も、造り方は変えず、そのままバローロの名を冠するようになりました。しかし、格付けを得たことで、かつて日常的に親しまれていたワインが、ロカンダのお客様にとっては少し遠い存在になってしまうという側面もありました。

そのため1950年代以降は、日常に寄り添うワインを提供するために、ネッビオーロ以外の品種にも取り組むようになりました。前当主ジョヴァンニ氏
ヴィベルティ家の原点の場所にて

伝統と歴史の原点に向き合うヴィベルティ家
1955年にはレストラン以外の顧客への販売を開始し、1989年に2代目へと代替わりするとリゼルヴァが誕生しました。2004年には現当主クラウディオが加わり、事業は拡大していきました。設備やスペースが増える一方で、ヴィベルティ家は受け継いできた伝統と歴史を疎かにしません。

創業当時から使われてきたカンティーナの一部は、今もそのままの姿で残されています。そこはヴィベルティ家の原点を確認する場所であり、スタッフがテイスティングを行う大切な場となっています。

テクノロジーを駆使して貫く伝統
とはいえ、ヴィベルティ家は現代的なワイナリーと言えます。しかし、その「現代的」とは、伝統を守り続けるために技術を積極的に取り入れているということです。伝統製法を貫きながら、テクノロジーを活用することで、深みのあるアロマと酸を表現しています。最初の白ワインから最後のバローロまで、その一貫した味わいが感じられます。この統一感こそが、ヴィベルティのアイデンティティです。

「ランゲ地区の伝統」と「クリュの個性」
ヴィベルティが描く多彩なラインナップ

新登場
ランゲの魅力を映すワイン「ドルバ」

今回紹介したいのが、新たにリリースされた「ドルバ」です。ランゲという土地そのものを知ってもらい、ピエモンテのワインをより日常的に楽しんでほしいという思いから生まれたランゲ ロッソです。

使用するのは、ランゲの歴史を築いてきた2つの品種、ドルチェットとバルベーラです。ドルチェットは主にバローロ地区と一部ドリアーニ、バルベーラもバローロ地区のものです。それぞれの個性が重なり合い、バルベーラのまろやかさと、ドルチェットのほろ苦いアーモンドのニュアンスが調和した味わいに仕上がっています。

価格と品質を徹底的に追求
誰にとっても親しみやすい味わい

ドルバは、多くの人が手に取りやすい価格にも強くこだわりました。もちろん、それだけでなく味わいの完成度もきちんと追求しています。その結果、年代や好みを問わず、幅広い層が素直に楽しめるワインに仕上がっています。

フィネスが際立つ、
最北端のクリュ バローロ「モンヴィリエーロ」

今回試飲するモンヴィリエーロは、最北端のクリュ バローロのひとつです。このワインを語る上で欠かせないのがエレガンス。フィネスや、どこか女性的な要素を感じさせるスタイルで、フレッシュな酸と豊かな果実味が両立し、飲み口の良いワインです。

ただし、このモンヴィリエーロらしさを実現するには、いくつかのポイントがあります。そのうちのひとつが、木樽の中に長く置きすぎず、果実味と酸を失わないタイミングを見極めることです。

エレガンスを引き出す、特注の細長い大樽
そのため、ブオン パードレが36か月の樽熟成であるのに対し、モンヴィリエーロは規定の最低期間である1年半にとどめています。その代わり、2年間の瓶内熟成を行います。さらに、使用する大樽も他のバローロとは異なり、より高く細長い特注の樽を採用しています。これは香りや骨格をより明確に引き出すための選択で、2017年の初ヴィンテージからこの方法を続けています。
通常の大樽、モンヴィリエーロ用の特注大樽

フレッシュな酸とミネラル感が調和したシャルドネ

フィレバッセ ピエモンテ シャルドネ 2023

フィレバッセ ピエモンテ シャルドネ 2023

アンドレア氏:
「フィレバッセは当主のクラウディオが最初に手がけたワインです。クラウディオが2004年に、国際的な味わいではなく、土地の個性を表現するべきだという思いで仕上げた1本です。そのため木樽ではなくステンレスタンクのみを用い、マロラクティック発酵とバトナージュは行いません。リンゴや花を思わせるフレッシュな果実味が保たれており、明確な個性が感じられます。フィレバッセとは畑の低い部分を意味し、斜面の下部に白ブドウを植えるという文化と伝統に由来します。」
試飲コメント:輝きのある麦わら色。白い果実やミネラル、華やかさの中にわずかな甘みを伴う香りが広がり、濃縮感も感じられます。口当たりはなめらかで、フレッシュな酸とミネラル感が調和しており、生き生きとした酸の余韻が心地よく持続します。

凝縮感、厚み、エレガンスが溶け合う樽熟成シャルドネ

リナート ランゲ シャルドネ 2022

リナート ランゲ シャルドネ 2022

アンドレア氏:
「再び生まれるという意味を持つリナートは、かつて造っていたシャルドネを再生するという意図で造られたワインです。当時のシャルドネはアルコールが高く酸が低いという問題がありました。それは、畑の列が朝日と真上からの強い日差しを多く受ける位置にあったことが要因でした。当主クラウディオは、そのシャルドネを一度抜き、列の向きを変えることで酸を高めアルコールを抑える造りに成功しました。熟成にはアカシアの旧樽を用いていて、非常に長期熟成型のワインに仕上がります。2022年は、暑い年にもかかわらずエレガントさを保っています。凝縮感とトロピカルな印象があり骨格のあるリッチさを備えながら、フレッシュな酸も感じられます。余韻は長く、塩味を感じるようなミネラルと酸が続きます。」
試飲コメント:黄金色。パイナップルなどの南国果実に、バターやゴールデンアップルを思わせる香りが重なります。口に含むとまろやかさの中にフレッシュな酸があり、エレガントに広がります。後半にはアーモンドのような苦味が現れ、長い余韻へと続きます。

「ティモラッソを手がける5大ワイナリーのひとつ」
生き生きとした酸とミネラルが豊富なティモラッソ

デルトーナ ティモラッソ 2023

デルトーナ ティモラッソ 2023

アンドレア氏:
「ヴィベルティは、ティモラッソを手がける5大ワイナリーのひとつです。初ヴィンテージは2021年。3年目の2023年は、これまでで最良の仕上がりで、香りと味わいが素晴らしいハーモニーを奏でています。素晴らしい酸を生かすために樽は一切使いません。そして、この酸のおかげで20年もの熟成が可能です。瓶内熟成で酸はまろやかに落ち着きます。塩味を感じるほどのミネラルもあります。生牡蠣や中程度熟成のチーズとも合います。フードペアリングの幅が広く、ヴィベルティのラインナップの中で毎日飲みたいワインですね。」
試飲コメント:明るい黄金色。黄色いジューシーな果実とミネラル感が調和したクリーンな香りです。口に含むとレモンのようなフレッシュな柑橘が広がり、生き生きとした印象が続きます。フレッシュな酸とミネラル感が長く持続します。

ランゲ地区の魅力が詰まった新登場ワイン
バルベーラ&ドルチェットのランゲ ロッソ

ドルバ ランゲ ロッソ 2023
ドルバ ランゲ ロッソ 2023

アンドレア氏:
「ドルバは、ランゲ地区の魅力を広めるために造った新登場のランゲ ロッソです。バルベーラとドルチェットというランゲの歴史を築いた二つの品種のブレンドで、バローロにはない個性が感じられます。バルベーラのまろやかさとドルチェットのほろ苦いアーモンドのトーンが合わさります。一部にカルボニックマセレーションを施し、発酵途中で種を取り除くためタンニンはほとんど感じません。手に取りやすい価格ながら高品質を追求したワインです。ドルチェットは主にバローロ地区と一部ドリアーニ、バルベーラもバローロ地区のものです。夏には冷やして氷を入れても美味しく飲めます。」
試飲コメント:やや濃い紫色。フレッシュな黒い果実に華やかさとスパイス感を伴う香りです。口に含むと香りで感じた要素がそのまま広がり、果実をかじったようなフレッシュでフルーティな味わいです。

心地よい酸と凝縮した果実味
ヴィベルティ家の歴史を象徴するバルベーラ

バルベーラ ダルバ ラ ジェメッラ 2023

バルベーラ ダルバ ラ ジェメッラ 2023

アンドレア氏:
「ジェメッラは、この地の伝統を象徴するようなバルベーラです。バローロが世界的な人気を得始めた頃、多くの生産者がバルベーラなどの品種を抜き、ネッビオーロへ植え替える動きが広がりました。前当主(現当主の父)もネッビオーロを植えようとしましたが、現当主の母がこれに反対し、バルベーラを造り続ける道を選びました。このエリアではバルベーラはデイリーワインと考えられており、レストラン業から始まったヴィベルティ家にとっては、その歴史を守る必要があったのです。ジェメッラは双子を意味し、ラベルには現当主の母とその双子の姉妹が描かれています。ワインはジューシーで凝縮感があり、クリーンな果実香とエレガントで丸みのある味わいが特徴です。暑い気候を好むバルベーラにとって、温暖な2023年は非常に良い年となりました。醸造はステンレスタンク100%で、マセラシオンの途中で種を取り除くことで苦味を抑えたスタイルに仕上げています。夏には軽く冷やし、氷を加えても美味しく楽しめます。」
試飲コメント:紫色寄りのルビー色。赤い果実と黒い果実が重なり、やや凝縮感や煮詰めた果実のニュアンスを感じつつも、ピュアな果実香が中心です。口当たりはなめらかで、心地よい酸とフルーティさが広がり、長い余韻の中にもほどよい果実感が残ります。

上品で若々しさが特徴のランゲ ネッビオーロ

ランゲ ネッビオーロ 2022

ランゲ ネッビオーロ 2022

アンドレア氏:
「若く生き生きとしたワインを目指したランゲ ネッビオーロです。畑の標高が400から500メートルに位置するため、フレッシュな酸が特徴です。主にステンレスタンクで熟成し、トーストしない大樽を一部使用しています。樽の比率はヴィンテージごとに変えています。2022年は非常に暑く、果実味が豊かだっため樽を少なめにして早く美味しく飲める仕上がりにしました。」
試飲コメント:淡いガーネット色。赤い果実や華やかさ、ドライフラワーを思わせる香りです。口に含むと香りの要素がエレガントに広がり、タンニンは感じられるものの、こなれていて心地よいです。やや厚みのある余韻が持続します。

10区画の畑で造り上げる
ヴィベルティ家のフラッグシップ バローロ

バローロ ブオン パードレ 2020

バローロ ブオン パードレ 2020

アンドレア氏:
「ブオン パードレは、ヴィベルティのDNAを表すフラッグシップ バローロです。2020年はリリース直後から楽しめる飲み心地の良いワインに仕上がっています。毎年安定した品質を生むため、10区画を別々に醸造し、気候や降雨量の違いに合わせて管理し、アッセンブラージュして造っています。大樽で36か月熟成し、クリュにも使う畑のブドウも含まれています。ブラッドオレンジや鉄を思わせるニュアンスがあり、リッチなワインです。」
試飲コメント:ガーネット色。スパイスやドライフラワー、土を思わせる複雑で力強い香りがありながら、全体はエレガントです。口に含むと力強さと複雑さが重なり、香り同様のエレガンスを保ちながら、後からコーヒーのニュアンスなども現れます。

特注の細長い大樽で1年半熟成
エレガンスとフィネスが際立つ最北端クリュ バローロ

バローロ モンヴィリエーロ 2021

バローロ モンヴィリエーロ 2021

アンドレア氏:
「モンヴィリエーロはバローロ地区の最北端に位置する、エレガンスとフィネス、フェミニンな要素を備えたクリュ バローロです。タナロ川が近く石灰質の土壌。寒暖差があり、フレッシュな酸と豊かな果実味を持ちます。このエレガントなスタイルを実現するために、長期間樽には熟成させないことがポイントです。25%のカルボニックマセレーションを用い、大樽1年半熟成後、2年間瓶内熟成をします。2021年は4000本生産。フランス産オークのテーラーメイドの、細長い大樽を使用しています。これにより香り高さと骨格を引き出しています。」
試飲コメント:輝きを持つ淡いルビー色。ピュアな赤い果実やドライフラワー、スパイスを感じるエレガントで奥行きのある香りです。口に含むと香りと同じ要素が広がり、存在感がありながらなめらかなタンニンとともに、フィネスを感じさせる長い余韻が続きます。

インタビューを終えて

レストラン業から始まったヴィベルティ ジョヴァンニのワイン造り。今回新たに登場したランゲ ロッソ「ドルバ」は、その原点を象徴する一本だと感じました。料理に自然と寄り添う親しみやすい味わいと、優れたコストパフォーマンスは、まさに日々の食卓のおともに最適です。また、かつて多くの畑がネッビオーロへと植え替えられていった時代にあっても、伝統と食文化を重んじ、「バルベーラを大切にする」という選択を続けた姿勢も、1世紀以上、人と料理をつなぐワインを造ってきたヴィベルティの哲学そのものだと感じました。

今回お話を聞いたアンドレアさんは、「3代目のクラウディオの先見性とともに発展してきました。今後も決して現状に満足することはありません」と語っていました。その言葉どおり、新たな挑戦もすでに動き出しています。ひとつは、モンヴィリエーロに隣接するヴェルドゥーノのクリュ「サン ロレンツォ」のバローロ(イタリア国内限定リリースとなる予定)。さらに2029年には、バローロ村のクリュ「プレーダ」のリリースも控えていると教えてくださいました。

コッリ トルトネージを含め、多様な土地の個性と伝統に向き合いながら進化し続けるヴィベルティのワインを、ぜひご堪能ください。