2026/01/06
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坂田 千枝氏
坂田千枝さんが醸造責任者として活躍!
『ヴィヌム』赤ワイン年間最優秀賞受賞、
ドイツ最高峰ピノ ノワールの造り手「ベルンハルト コッホ」

日本人ケラーマイスターの先駆者
ベルンハルト コッホ醸造責任者、坂田 千枝さん
――ドイツでワイン造りを始めたきっかけを教えてください。
私は兵庫県の農業高校出身で、その頃から「ブドウを造る仕事をしたい」と考えていました。野菜などと違い、果樹は樹が長く生き、土づくりの結果が2、3年後に返ってくる。そうした周年栽培の長いプロセスに面白さを感じていたんです。もともと果物の中でもブドウが一番好きだったことも大きいです。
ただ、日本国内で調べてみると、当時はブドウを造る仕事そのものがほとんどありませんでした。山梨でワインの世界に入るにも大学進学が前提でした。
一面のブドウ畑に導かれ、10代でドイツへ
そんなとき、高校の研修旅行でドイツを訪れる機会がありました。ハイデルベルク周辺をバスで通ったとき、一面に広がるブドウ畑を目にし、「なぜこんなにブドウ畑があるのだろう」と疑問に思ったんです。そこで、「あれは食用ではなく、ワイン用のブドウだ」と知りました。
「これだけワイン畑があるなら、きっと職業として成り立っているはずだ」と。そう考えて調べていく中で、ドイツでは学費がかからないことを知り、ドイツ行きを決意しました。語学学校を経てワイナリー研修をし、職業訓練学校やマイスター学校で学びながら経験を積み、2013年にコッホ社へ入社しました。

前例の少ない環境で挑んだ醸造の世界
――ドイツで日本人の醸造家は珍しいのではないでしょうか?
当時は、そもそも外国人自体が非常に少なかったです。さらに、私が通っていた専門学校でも、23人のクラスで女性は私ひとりだけ。体力が求められる仕事なので、ドイツ人女性から選ばれにくい職業だったと思います。近年は機械化が進み、ようやく女性でも活躍できる環境が整ってきましたね。
私がケラーマイスター(醸造責任者)の資格取得を目指したのも、ドイツ人と同じ市場で勝負するなら、何十キロもの機材を背負う栽培より、醸造のほうが可能性があると考えたからです。
20代でコッホ社の醸造責任者に就任
――坂田さんは20代で醸造責任者を任されたわけですが、ドイツの方からすると、20代の外国人女性に任せることもまた珍しいのではないでしょうか。
今の役職に就くまでには、実際には10年ほどかかっています。修行期間としては長かったと思います。ただ、ドイツ人と同じように10代からキャリアをスタートできたことは、大きかったですね。それでも、私のボスである当主ベルンハルトが私を選んだのは、今振り返っても勇気のある決断だったと思います。
前任者が病気でワイナリーを離れたことも要因です。これもドイツらしい話ですが、法律上、マイスター資格を持つ人間を優先して責任者のポジションに置く必要があります。私より長く働くスタッフもいる中で、その資格を持っていたのが私だけだったんです。

「めちゃめちゃ働きました(笑)」
40万本規模の現場を任され、駆け抜けた3年間
1年目、2年目、3年目は、初めてのことばかりで、めちゃめちゃ働きました(笑)。当時の畑は約40ヘクタール、生産本数は40万から45万本。研修生に「去年、これはどうしてたん?」と聞きながら、毎日ボスと二人三脚で進めていきました。
「もう無理や!」「休まないといけない!」と思うような状況の中で、病養されていた前任者が回復したので復帰するのかと思ったら、ボスは「チエのほうがうまくいっているし、チエのままでいこう」と判断したんです。
その過程では、ボスとたくさん衝突しましたが、結果としてはうまくやってこられたと感じています。彼は国籍、性別、年齢にとらわれず、結果を出したら認めてくれる人です。合理的に考えるところがまたドイツ人らしいですよね。
ファルツ地方ハインフェルド村に根ざす
ドイツ最高峰ピノ ノワールの造り手
一代で60万本規模を築いた当主ベルンハルト氏
コッホ社は1610年からワイン造りを続けてきたワイナリーです。拠点を構えるファルツ地方はフランスとの国境に位置し、長きにわたり戦争が絶えませんでした。ドイツ領になったりフランス領になったりを繰り返してきたため、現在の敷地で安定したワイン醸造が始まったのは、1900年代に入ってからです。
ベルンハルトが、家業を継いだのは10代の頃でした。最初に畑仕事に関わったのは14歳。正式にケラーマイスターになったのは21歳でした。当時、畑の規模はわずか3ヘクタールほど。それが、私が入社した2013年には40ヘクタールに拡大し、現在は54ヘクタールです。年間生産量も60万本に達しています。
一代でここまで規模を広げたんです。私もいろいろなワイナリーで働いてきましたが、これほど働き者の家族は他に知りません。私が入社してからの10年間は、とてもエキサイティングでした。
コッホ家(左:ベルンハルト氏)
ドイツで最も自然農法が盛ん、
国内第2位の生産量を誇り、多様な品種が育つ「ファルツ」
コッホ社の本拠地はファルツ地方でも最南部にあたります。90%以上が平地で、年間降雨量が600~700ミリ程度。安定した気候のため、有機栽培やビオディナミを採用する造り手がドイツで最も多い地域です。ドイツ国内のワイン生産量が2番目に多いエリアでもあります。
どんなブドウ品種でも育つのも特徴です。ラインガウのようにリースリングに特化する産地とは異なり、非常に幅広く栽培されています。近年ではテンプラニーリョの植樹も始まり、どんな品種でも高い品質で造ることができるのが、ファルツという産地の強みです。
ハインフェルト村最大の家族経営ワイナリー
コッホ社が根ざすハインフェルト村は、人口1000人に満たない小さな村です。それでも10軒以上のワイナリーが集まっています。そのなかでコッホ社は、個人経営の家族ワイナリーとしては最大です。ボスは「この村から、これだけのワインが生まれる」という思いを伝えるため、ワインのラベルには村の紋章を掲げています。

温暖化と最適な植樹が重なり、一気に評価が高まる
私が入社した当時、コッホ社はほぼ無名のワイナリーでした。というのも、80年代、90年代は寒くて美味しくなりにくかったんです。しかし、徐々に地球温暖化の恩恵を受けるようになり、美味しいピノ ノワールができるようになってきました。
加えて、樹齢25年のピノ ノワールのクローンが、たまたま適切な区画に植えられていたことも大きな要因です。気候条件とその準備のタイミングが重なり、新樽の導入や畑の収量制限といった品質への投資が本格化していきました。そこから一気に高い評価をいただけるようになりました。これもボスのベルンハルトのおかげです。
赤ワイン生産者の年間最優秀賞受賞
ドイツ屈指のピノ ノワールを生み出す単一畑レッテン
その畑が、最も品質の優れた単一畑「レッテン」です。なかでも、レッテン ピノ ノワール グランド レゼルヴは『ヴィヌム』で最優秀赤ワインに選出されました。ワイナリーとしても、赤ワイン生産者の年間最優秀賞「Roter Riese(赤の巨人)」を受賞するまでになりました。
レッテン ピノ ノワール
「ブルゴーニュの半分の価格」
――ブルゴーニュ愛好家の方からの引き合いが強くなる、という変化も起きたのはないでしょうか。
ブルゴーニュ好きのドイツ人のお客様が増えた印象です。これまではフランスやイタリアで買っていた方々が、受賞や雑誌掲載をきっかけにコッホのピノ ノワールを試飲しに来て、「美味しい! しかもブルゴーニュの半分の価格だ!」と驚かれ、そのまま購入されるケースが多くなりました。
さらに他のワインも試していただくと、「エントリーレベルも美味しい。この価格なら、ブルゴーニュの村名クラスより良い」と評価してくださる流れも増えました。
多彩を極めるラインナップ、妥協なき品質追求
「お客様視点」を貫くワイナリー哲学
――現在の年間生産量が60万本、造るワインは約80種もあると聞きました。坂田さんのタスクはとても多そうですね。
そうなんです。私たちは収穫だけで約6週間かかります。スパークリングからアウスレーゼまで幅広く造っており、収穫のタイミングも造り方もまったく異なるのでかなりハードです。
品種ごとの差も大きく、同じピノ ノワールでも、スパークリング用、ステンレス用、ロゼ用、樽熟成用と、目的によって造り方は完全に分かれます。さらに、畑そのものが10個の村に点在しているので、最初は全然覚えられませんでした(笑)。

「お客様を想像したワイン造り」
コッホ社は常に「そのワインを飲むお客様」を想像したワイン造りを軸としています。「この状態では瓶詰めできない」と判断すれば、サイコロを振り直すように、何度でもやり直します。だから、何度も試飲しますし、試飲方法も評価の視点も徹底して客観的です。
ワインを造る側は、どうしても自分のワインを見てしまいがちです。私自身も、以前はそうでした。しかしコッホ社では、自分のためではなく、お客様のために造ることが徹底されています。これはワイナリーの哲学であり、ベルンハルトのスタイルそのものです。
美味しいワインを造ることも売ることも難しい時代を経て、ワイナリーをこれだけ急成長させた彼ならではのスタイルです。本当にお客様の声をめちゃめちゃ大事にする人なんです。
前年のクオリティを超え続ける姿勢
お客様からのフィードバックで一番怖いのは「去年のほうが美味しかった」と言われることです。ワイン業界は、お客様が「美味しい。また買うね」と言ってくれて成立するものだと思うんです。
ですから、後退を意味する「去年と同じ状態」にはとどまらず、常に前年の品質を超えるように努めています。同時に、お客様のニーズは毎年変わってきているので、ただ仕事量を増やすのではなく、どうすれば健康的で、効率よく、質を高め続けられるかを考え続けなければいけないんです。

議論を重ねてこそ到達する最良の仕上がり
だからこそ、ボスとは意見を言い合うことが多くなるんです。「もっと酸があったほうがいい」「いや、もっと甘さが必要だ」とか。でも、二人とも「美味しいワインを造りたい」という目標は一緒なんです。
そうやって意見が食い違ってケンカのようになっても、その過程を経ることで、最終的には最も納得できる形にたどり着きます。逆に「これでいいや」と諦めてしまうと、そういう味になってしまうんです。その「諦めた」が見えてしまうんですよね。経験上、本当にそうなります。お客様も舌が肥えているので、妥協して瓶詰したワインの売上は、そのロットだけ悪いんです。
その一杯が飲まれる過程までも想像するワイン造り
――例えば、どのようなことをイメージしてワインを造っていくのでしょうか。
人は、暑い時期や汗をかいている時ほど、甘みを美味しく感じやすくなります。朝と夕方、あるいは疲れている時などでも、酸と糖のバランスの感じ方は変わってきます。
今回試飲する「ピノ ムニエ ゼクト ロゼ」のように、多くの方に飲まれるワインは、あえて夕方に試飲しています。お客様は、仕事終わりに飲む可能性が高く、疲れたときに「今日はこれを飲みたい」と思ってもらえるかどうか。その感覚を想像しながら、1g、2gちょっと甘いくらいの仕上がりを狙っています。
特に日本で購入される場合、現地価格の2倍、3倍になるわけです。ボトルを開けた瞬間に後悔させたくない、「これを選んでよかった」と思ってほしい。そうしたお客様をイメージした仕上がりを意識しています。

いつ飲んでも美味しい、バランス感と柔らかさ
日本限定「キュヴェ チエ」シリーズ
「キュヴェ チエ」シリーズは、まさに「飲むお客様の姿を思い浮かべながら瓶詰めした」ワインです。コッホ社のワインを輸入する株式会社稲葉さんに、3種類のサンプルを送り、その中から「これが一番良い」と選ばれたものを瓶詰めして始まりました。
ピノ ノワールもシャルドネも、方向性は共通しています。ブルゴーニュ風でありながら、柔らかくてバランスのいいワインです。そして、誰がいつ飲んでも、美味しいと感じてもらえることを最優先に考えています。
日本市場に届くのは、選び抜かれた超コスパのワインだけ
私たちは、まだまだ日本に輸出していないワインが数多くあります。その中には、私でも「これは安すぎる。コストパフォーマンスが良すぎる」と感じるワインがあるんです。稲葉さんは、そういったワイン「だけ」を的確に選んで輸入されているんです。これは本当にすごいことだなと感じています。
「リースリングをそのままかじったような第一アロマ」
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リースリング ゼクト ブリュット 2022 |
| 坂田さん: 「早摘みしたリースリングで造るスパークリングワインです。スティルワインのリースリングで感じられる桃や白桃、アプリコットといった要素ではなく、青リンゴや柑橘系のニュアンスが前に出ています。収穫したリースリングをそのままかじったような第一アロマを大切にしています。また、リースリングはもともと酸が高い分、バランスを意識したドサージュで甘さを調整しています。加えて、綺麗でフルーティーなリースリングの味わいを引き出せています。」 |
| 試飲コメント:淡い麦わら色。柑橘系や青リンゴの白い果実を思わせる爽やかな香り。青リンゴや柑橘類の風味がそのまま口中に広がり、シャープな酸が全体を引き締めます。最後まで青リンゴのニュアンスが持続し、酸の余韻が非常に長く続きます。 |
「間違いない1本」
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ピノ ムニエ ゼクト ロゼ ブリュット ヴィンテージ 2022 |
| 坂田さん: 「誰がいつ飲んでもおいしいと感じていただける、ピノ ムニエのスパークリングワインです。ワインに親しみのある方にも、そうでない方にも楽しんでいただけるよう造られています。お客様からの評価も非常に高く、間違いない1本として支持されています。クリスマスや年末年始はもちろん、夏場など季節を問わず選ばれており、ドイツで親しまれている花見のシーズンにも楽しまれています。手に取りやすい価格帯も相まって、非常に人気の高いスパークリングワインです。」 |
| 試飲コメント:淡いピンク色。イチゴなどのベリー系果実を思わせる、フレッシュで心地よい香りです。口に含むと繊細ながらフルーティな果実感が広がり、心地よさに包まれます。フレッシュな酸とベリー系果実の余韻が綺麗に持続します。 |
日本限定の「キュヴェ チエ」シリーズ
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シャルドネ キュヴェ チエ トロッケン 2023 |
| 坂田さん: 「日本の方向けに造ったシャルドネ キュヴェ チエです。ブルゴーニュの要素はありながらも、目指したのは柔らかくバランスの良い味わいです。誰が飲んでもすぐに美味しいと感じてもらえるシャルドネを目指しました。さまざまな樽を使い分け、発酵からそのまま樽熟成したもの、発酵後に古樽へ移したもの、ステンレスタンクのワインなどを組み合わせています。候補は10種類ほどあり、何度も組み合わせを試しながら決めていきます。まるで料理をしているような感覚で仕上げています。」 |
| 試飲コメント:輝く麦わら色。バナナなどの南国果実やメロンを思わせる香りがあり、フレッシュで爽やかな印象です。口当たりはやや柔らかく、香りで感じた果実の要素がそのまま広がります。後半にかけて、ナッツを思わせるほのかな苦味が現れます。 |
年間生産量わずか3000本
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ハインフェルダー レッテン シャルドネ レゼルヴ トロッケン 2023 |
| 坂田さん: 「最も品質の優れた単一畑レッテンのシャルドネです。ここでは、樹齢が高く非常に濃縮したブドウが収穫できます。フレンチオークのバリック樽で発酵、熟成させ、ブルゴーニュ風に仕上げています。区画面積は1ヘクタール未満、生産量は年間3000~4000本ほどと非常に少ないです。ブドウのキャラクターに合ったワインを造ることを目的としているため、最低限の品質基準を常に意識しています。仮に30樽分できたとしても、本当に良いものだけを選んでいます。残された樽は、キュヴェ チエなど他のワインに回しています。樽の香りに加え、トロっとした質感やパイナップルのようなニュアンスが感じられます。特に冬に美味しい白ワインですね。」 |
| 試飲コメント:黄金色。やや濃縮感のある黄色い果実や南国果実の香りに、ミネラル感とスモーキーさが重なり、華やかさも感じられます。なめらかな口当たりで、濃密かつ力強い果実感が広がります。パイナップルを思わせる風味とともにミネラル感が現れ、余韻にかけて濃厚さが増しながらもエレガントにまとまります。 |
日本限定の「キュヴェ チエ」シリーズ
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ピノ ノワール キュヴェ チエ トロッケン 2023 |
| 坂田さん: 「日本の方向けに造ったキュヴェ チエ ピノ ノワールです。柔らかく、綺麗でエレガント、それでいて軽やかなピノ ノワールに仕上げています。日本人の嗜好、特に暑い中で飲む赤ワインを意識しています。そのため、個人的には飲む前に30分ほど冷やして飲んでいます。このワインは、いつ開けても美味しいことを重視していて、瓶詰めから2ヶ月後でも、2年後でも同じように楽しめる状態を目指しています。醸造に関しては、古樽を主体に、時にはステンレスも使用します。」 |
| 試飲コメント:淡いルビー色。華やかで繊細な赤系果実の香り。フレッシュな果実味にスパイスのニュアンスが加わります。複雑でエレガントな余韻に満たされます。 |
濃縮感、骨格、酸が見事に調和した、
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ハインフェルダー レッテン ピノ ノワール トロッケン R 2022 |
| 坂田さん: 「最も品質の優れた単一畑レッテンのピノ ノワールです。畑とブドウが良ければ、ワインは自然と美味しくなるということがよく表れたワインです。濃縮感とボディ、しっかりとした酸を備えています。90年代後半に植えられたピノ ノワールが中心です。そのため、収量は減りブドウは小粒になり、結果として味わいはより濃縮していきます。収穫などの重要な作業はすべて手作業で行っています。造りは非常にシンプルです。収穫後に醸し発酵した後にすぐにプレスし、その翌日か翌々日に樽へ移します。その後14か月ほど、一切澱引きもせず、樽も動かさずに熟成させます。4週間に1回は試飲をして、美味しくなったと判断した時に、2週間ほどステンレスタンクで落ち着かせています。濾過はせず、上澄みをそのまま瓶詰めします。」 |
| 試飲コメント:淡く透明感のあるルビー色。厚みのある黒系果実とスパイスを思わせる香りがあり、力強さと複雑味を感じさせます。口に含むと、フレッシュな酸と樽のニュアンス、香りで感じた果実の厚みが調和し、力強い風味に満たされます。余韻は非常に長く続きます。 |
優良単一畑レッテンの中からさらに厳選
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ハインフェルダー レッテン ピノ ノワール レゼルヴ トロッケン 2021 |
| 坂田さん: 「最も品質の優れた単一畑レッテンのピノ ノワールです。レッテンには1989年、1993年、1997年植樹の区画などがあり、異なるクローンを区画ごとに分けて醸造しています。最終的にすべてをブラインドで試飲し、最も優れたものをレゼルヴやグランレゼルヴにします。年によっては造らないこともあります。2021年は寒く雨の多い年で、非常に難しいヴィンテージでしたが、酸が驚くほど高く、結果的にポテンシャルの高い年となりました。ブルゴーニュの2021年は素晴らしいじゃないですか。ファルツがブルゴーニュに近いこともあるかと思いますが、この年のピノ ノワールは今までで最も良いヴィンテージだと思います。」 |
| 試飲コメント:淡いガーネット色。注いだ瞬間から豊かなアロマが立ち上がり、濃厚な果実感とチョコレートを思わせる香りも広がります。口に含むと華やかさが広がり、濃縮感がありながらもエレガントな味わいです。スパイス感と綺麗な果実味が調和し、非常に上品な余韻が長く長く持続します。 |
インタビューを終えて
なかでも強く印象に残ったのが、コッホ社の顧客構成です。売り上げの約80%を占めるのが、ワイナリーや併設レストランを訪れる個人客で、週末の土日だけで「3000本」を販売することもあるといいます。坂田さん自身も「信じられないでしょ?」と笑いながら話されていましたが、それだけ品質が信頼され、日常の中で愛されている存在なのだと感じさせられました。
同時に驚かされたのが、そのコストパフォーマンスです。日本限定の「キュヴェ チエ」シリーズは、ピノ ノワールもシャルドネも、バランスと飲み心地の良さが際立っていました。しかもこのシリーズには、ドイツ最高峰のピノ ノワールが生まれる単一畑レッテンのブドウも使用されているといいます。全体の調和を重視しながらも、最上の畑の要素も取り入れていると知ると、贅沢な1本であるとも強く感じました。
そして、現在の年間生産量は約60万本、ラインナップはおよそ80種類。品種もスタイルも幅広いなかで、醸造責任者として坂田さんが担う仕事量は、計り知れないと感じました。「どうやってその数をこなしているのか」とお聞きすると、「最初はパニクってましたけど、5人分のお弁当も50人分のお弁当も作るのは一緒みたいな(笑)」というお答えで、ただただ坂田さんのバイタリティに圧倒されるばかりでした。











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