1000年の歴史を刻む修道院が育む伝統のキャンティ クラシコ!「バディア ア コルティブオーノ」

2026/08/10

2025/10/22

ロベルト ストゥッキ プリネッティ氏 Mr. Roberto Stucchi Prinetti

1000年の歴史を刻む修道院が育む伝統のキャンティ クラシコ!いち早く有機栽培へ転向、キャンティ原点の誇りと伝統の継承、進化を続ける「バディア ア コルティブオーノ」訪問

2025年10月、キャンティ クラシコの心臓部であるガイオーレ イン キャンティに構える「バディア ア コルティブオーノ」を訪問しました。ワイナリーが拠点としているのは、11世紀に建造された歴史ある修道院です。コルティブオーノのキャンティ クラシコは、この1000年の歴史を重ねる元修道院の静けさの中で熟成されています。キャンティ原点の地とも言えるこの土地で、ワイン造りの伝統を有機農法で守り続けてきたオーナー一族のロベルト ストゥッキ プリネッティ氏に、ワイナリーの歴史と現在取り組んでいる新しい変革への想いについてお話を伺いました。
    目 次
  • 1000年の歴史が息づく地下セラーで熟成されるキャンティ クラシコとリゼルヴァ
  • 有機栽培の先駆者。
    土地の生命力を未来へ繋ぐためのオーガニックという選択
  • 歴史の渦を乗り越え、実証された“キャンティ原点の地”
  • 伝統と歴史を現代に活かす、新しいクラフトジンとラベルへの挑戦
  • 料理研究家であった母、ロレンツァ デ メディチ氏から受け継ぐ食とホスピタリティ

1000年の歴史が息づく地下セラーで熟成されるキャンティ クラシコとリゼルヴァ


バディア ア コルティブオーノは、1051年に修道士たちによって開かれた修道院を拠点とするワイナリーです。1000年前に建造された部分と、500年前に増築された部分の2つの建物で構成されています。

この建物は1810年まで修道士たちの活動の場でしたが、ナポレオンの侵略によって一度歴史が途絶えます。その後、1846年に現在のオーナーであるストゥッキ プリネッティ家の先祖がこの建物を取得し、代々大切に受け継いできました。

現在、ワインの醸造(ブドウから果汁を絞り発酵させる工程)は、数キロ離れたモンティ イン キャンティにある近代的な醸造所で行われていますが、キャンティ クラシコと、より長期の熟成を経た「リゼルヴァ」は、今もこの修道院の地下室で眠っています。


(地下へ続く階段を下りていくと、暗くひんやりとした空間に、大きな木樽が整然と並ぶ熟成庫が現れます)


厚い石壁に囲まれた地下室は、年間を通じて一定の温度と湿度が自然に保たれており、キャンティ クラシコの熟成に理想的な環境を提供しています。1000年前から修道士たちがこの場所でワインを造り、保管していたことを思うと、バディア ア コルティブオーノが持つ歴史の重みが静かに伝わってきます。

バディア ア コルティブオーノのキャンティ クラシコは、時代ごとの流行に左右されない、不変のクラシックスタイルです。トスカーナの伝統品種である「サンジョヴェーゼ」の純粋さを表現するために、一貫して大樽での熟成にこだわり、エレガントな酸味を追求してきた理由が、この熟成庫を見ることで深く理解できます。

有機栽培の先駆者。
土地の生命力を未来へ繋ぐためのオーガニックという選択


今回、ワイナリーを案内してくださったロベルトさんは、アメリカの大学で醸造学を修めた後、1980年に帰国して畑の改革に着手しました。彼が選んだのは、広大な森も含め、全敷地面積が900ヘクタールにも及ぶバディア ア コルティブオーノの豊かな生態系を守るため、畑を有機栽培(オーガニック)へと転向させることでした。

1980年代はまだまだ有機栽培に取り組むワイナリーは少なく、バディア ア コルティブオーノはまさにこの地域の先駆者でした。そして1994年には、すべての自社畑で完全なるオーガニック化を達成したのです。土地の生命力を信じるロベルトさんの強い信念が、バディア ア コルティブオーノのワインが持つ透明感のある美しいスタイルを実現しています。

ロベルトさんの姉であるエマヌエラ氏がかつて語った、「遠い昔は、すべてのブドウ造りが有機農業でした。だからこそ、伝統を守るために私たちはオーガニックを選んだのです。これはとても大事なことなので、忘れないでください」という言葉を思い出しました。

気候条件を見極めた畑の位置
彼らのブドウ畑には、テロワール(土地の個性)を引き出すための明確な特徴があります。

総敷地面積の1割に満たない約70ヘクタールの畑は、修道院がある高地ではなく、標高250m~350mの「モンティ イン キャンティ」にあります。修道院のある標高650m~700mの場所はブドウ栽培には気温が低すぎるため、あえて標高を下げた場所に畑を整備しています。

ここは山からの涼しい風と豊かな寒暖差をもたらすミクロクリマ(その土地特有の局所的な気候環境)に恵まれており、周囲の広大な森が育む生物多様性のおかげで、ブドウが健やかに育つ理想的な場所となっています。

(モンティ イン キャンティにあるカンティーナ)

歴史の渦を乗り越え、実証された“キャンティ原点の地”

修道院の長い廊下を歩くと、建物やストゥッキ プリネッティ家の歴史を映す絵画やポスターが大切にかけられています。一族はもともとミラノで自転車製造の会社を経営していたそうで、当時のクラシカルなポスターも見せていただきました。

この一族が修道院を取得して以降、バディア ア コルティブオーノはキャンティの歴史の中心として重要な役割を果たすようになります。

大きな功績のひとつが、ロベルトさんの姉であるエマヌエラ氏が、女性として初めてキャンティ クラシコ協会会長に就任(在2000~2003年)し、この地域を牽引したことです。彼女はエリアの顔として普及活動に努めるとともに、バディア ア コルティブオーノのワインを世界中に広めていきました。


(エマヌエラ ストゥッキ プリネッティ氏)

古代の井戸からの発見されたブドウの種
この土地が本当の意味での「キャンティの起源」であることを示す証拠が、バディア ア コルティブオーノの敷地内で発見されています。

所有地である森の中の井戸から、紀元前3世紀~紀元前1世紀(エトルリア、古代ローマ時代)の青銅の壺が発掘されました。その壺の中から、当時のブドウの種が生命力を保ったまま発見されました。


(左:井戸から発掘された壺 右:3Dプリンターで再現した種(実物大および拡大サイズ))

現在もその種のDNA研究が進められており、キャンティ地方の土着品種(古くからその土地に存在する固有品種)に関する極めて重要な情報が得られているそうです。

1000年前に修道士たちが拠点を構えて開墾し、それよりも遥か昔の時代からワインが造られてきたという事実。まさに歴史に選ばれた特別な土地なのだと感じます。

伝統と歴史を現代に活かす、新しいクラフトジンとラベルへの挑戦


バディア ア コルティブオーノの建物の隣には、幾何学模様に美しく整備された中庭が広がっています。ロベルトさんは「ぜひここも見ていってください」と、私たちを案内してくれました。

丁寧に育てられている植物の中にローズマリーがあり、これはワイナリーが新しく生産を始めた自家製の「クラフトジン」に使われているとのこと。かつてこの場所で修道士たちが薬草を調合していたという歴史の知恵を、現代の洗練された蒸留酒としてよみがえらせたユニークな試みです。

さらに、この美しい中庭の幾何学模様のデザインは、彼らが次の時代を見据えて開発した新しいワインラインナップのラベル(エチケット)にもそのまま採用されています。中庭そのものが、新ブランドのアイデンティティを視覚的に象徴しています。

料理研究家であった母、ロレンツァ デ メディチ氏から受け継ぐ食とホスピタリティ

現在、修道院を改装したバディア ア コルティブオーノには、世界中から多くのファンが訪れます。

もともと修道士たちの寝室だった部屋は落ち着いたホテル(アグリツーリズモ)に改装され、宿泊者は現代社会の喧騒から離れ、1000年の時の流れをトスカーナの豊かな自然の中でゆったりと楽しむことができます。

ロベルトさんは、アメリカから帰国した1980年からの1年間、まだホテル仕様になっていないこの広い修道院で、たった1人で生活していたそうです。「あの『No.5』の部屋に住んでいたんですよ」と笑いながら教えてくださいましたが、静まり返った巨大な建物の中で過ごした若き日の経験には、名門を受け継ぐ当時の並外れた覚悟が伺えます。

そして、バディア ア コルティブオーノの食文化を語る上で欠かせないのが、ロベルトさんとエマヌエラさんの母であるロレンツァ デ メディチ氏の存在です。彼女は数十年にわたりイタリアの家庭料理と文化を世界に発信し続けた高名な料理研究家、著述家であり、このワイナリーで料理学校を開講し、世界中の訪問者に直接トスカーナの食を伝えてきました。

現在、ロレンツァ氏が始めた料理学校の精神は、ワイナリーが運営するレストランへと見事に受け継がれています。ご案内いただいた中庭の一角には自社菜園があり、毎朝シェフがここに足を運んでその日に使う新鮮な野菜を選んでいます。野菜以外の食材も徹底して地元のオーガニックなものにこだわっているそうです。

1000年の時間が紡いできた歴史と、家族の誠実なワイン造りへの想いが温かく溶け合うバディア ア コルティブオーノ。流行に左右されない、食事を優しく引き立てる彼らのワインをぜひ食卓でお楽しみください。

次の一杯が欲しくなるバランスに優れたフレッシュな白ワイン

チェタムラ ビアンコ 2024

チェタムラ ビアンコ 2024

シャルドネとヴィオニエで造る飲み心地の良い「チェタムラ ビアンコ」です。バディア ア コルティブオーノの紋章と中庭のデザインを融合させたデザインのラベルになっています。フレッシュな白を好む人にピッタリで、バランスも良く、2杯、3杯と飲み進められると思います。非常にコミュニケーション力のあるワインで、イギリスのレストランでもとても人気があります。

レストランのグラスワインにもピッタリ!サンジョヴェーゼ100%キャンティ

チェタムラ キャンティ 2023

チェタムラ キャンティ 2023

サンジョヴェーゼ100%で造る「チェタムラ キャンティ」です。こちらもラベルデザインは中庭で、イメージカラーは赤色です。レストランのグラスワインにとしても使い勝手がいいです。アルコール度数が12%ほどなので飲みやすいし、コストパフォーマンスもいいですね。

アロマティックでスパイシーな心地よい味わいのサンジョヴェーゼ

チェタムラ ロッソ 2024

チェタムラ ロッソ 2024

この「チェタムラ ロッソ」は、キャンティエリア以外のサンジョヴェーゼで造っている赤ワインです。先ほどのチェタムラキャンティはラベルが赤でしたが、こちらは青色です。香りがよりアロマティックで、味わいにスパイシーさを感じるのが特徴です。こちらもバランスの良い味わいですが、キャンティとは少しキャラクターが違うので、飲み比べるのも面白いと思います。

修道院の地下セラーで熟成!伝統スタイルで造るバディアの看板キャンティ クラシコ

キャンティ クラシコ 2022

キャンティ クラシコ 2022

私達の看板ともいえるキャンティ クラシコです。サンジョヴェーゼ、チリエジョーロ、カナイオーロ、コロリーノをブレンドしています。100%自社畑で、全て有機栽培のブドウです。自然酵母による自然発酵で、1年間大樽で熟成させています。色合いはそれほど濃厚ではない、伝統的なスタイルで、まだまだフレッシュさを感じさせる味わいです。

30~40年熟成可能!毎年、最も良いキュヴェだけをセレクションして造るリゼルヴァ

キャンティ クラシコ リゼルヴァ 2020

キャンティ クラシコ リゼルヴァ 2020

キャンティ クラシコ リゼルヴァです。90%サンジョヴェーゼで、チリエジョーロ、コロリーノ、カナイオーロをブレンドしています。年ごとに一番いい状態の畑のブドウを厳選して造っています。畑でも選びますし、カンティーナに運んでからもセレクションをしています。24~25のキュヴェを醸造し、最後にリゼルヴァ用のキュヴェを決定しています。ヴィンテージによってはリゼルヴァを造らない年もあります。

キャンティクラシコが年産17~18万本で、リゼルヴァは3~4万本です。30~40年は熟成できるポテンシャルがあります。非常に重要な赤ワインですが、食事にもよく合いますし、料理によっては魚にも合わせられます。

9つの土着品種ブレンドで造る唯一無二の革新的スーパータスカン

バディア モンテベッロ 2019

バディア モンテベッロ 2019

モンテベッロは畑の名前です。9つの品種(マンモロ、チリエジョーロ、プニテッロ、コロリーノ、サンフォルテ、マルヴァジア・ネーラ、カナイオーロ、フォリアトンダ、サンジョヴェーゼ)をブレンドして造っています。これだけ多くの品種で造るワインはほとんどありません。革新的なスタイルともいえる、唯一無二のスーパータスカンです。2019年はすごくいいヴィンテージです。デカンターで97点、ワインスペクテーターで96点を獲得しています。

インタビューを終えて

バディア ア コルティブオーノが持つ、1000年という歴史の重みを肌で実感する訪問となりました。修道院としての始まりから、ナポレオン管理下の時代、貴族の所有を経て、現在のストゥッキ家へと至る歩み。修道院時代の地下セラーが今もワインの熟成庫として使われており、その荘厳な空間を維持していくための並々ならぬ苦労と工夫が偲ばれました。

ワインの大部分は、自社畑のある新しいカンティーナで醸造・熟成されますが、ワイナリーの顔である「キャンティ クラシコ」と「キャンティ クラシコ リゼルヴァ」は、今もこの歴史ある地下セラーで熟成されています。ブドウが持つ本来のポテンシャルに加え、1000年の時を刻んだ空間ならではの深い静寂が、ワインに特別な奥深さを与えているのは間違いありません。

今回は伝統的なラインナップに加え、新たなプロジェクトとして誕生した「チェタムラ」シリーズもご案内いただきました。中庭の幾何学模様をあしらったラベルは視覚的にも印象的で、若い世代にもアピールしたいという思いが込められています。実際に口にすると、果実味がダイレクトに伝わる親しみやすい味わいで、日常の中で気軽に楽しむのにぴったりの1本だと感じました。

重厚な伝統を感じるラインナップと、軽やかな新顔の「チェタムラ」シリーズ。古くからのファンの方はもちろん、まだバディア ア コルティブオーノを体験したことのない方にも、ぜひこの魅力的なワインを味わっていただければと思います。