2026/06/15
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マリオ パオルーツィ氏 Mr. Mario Paoluzi
エトナに魅せられ、巨匠サルヴォ フォーティとの出会いからワイン造りの道へ!エトナのグランクリュ「カゼッレ」のカリカンテ、樹齢100年のネレッロマスカレーゼを栽培し土地のエレガンスを表現する「イ クストーディ」突撃インタビュー

- エトナの巨匠サルヴォ フォーティとの出会いからワイン造りの道へ
- 師から受け継ぐ栽培・醸造哲学
エトナ伝統のアルベレッロ仕立てと清潔な醸造環境 - 昼夜の寒暖差があり赤に適した北斜面
海風を受け上質な白を生む東斜面 - 親しみやすい昔ながらのエトナの白「エデス」
カリカンテ100%の上級キュヴェ「インブリス」 - エトナの「守り主」を体現する
樹齢100年の古樹から生まれる上級エトナ ロッソ「エトネウス」
エトナの巨匠サルヴォ フォーティとの出会いからワイン造りの道へ
当時サルヴォ フォーティ氏は、イギリスの著名なミュージシャンであるミック ハックネル氏(Simply Red のボーカル)が立ち上げたワイナリー「イル カンタンテ」のワイン造りを手掛けていました。マリオ氏はサルヴォ フォーティ氏のワイン造りへの真摯な姿勢に感銘を受け、このプロジェクトに出資する形でワインの世界に関わり始めます。次第にマリオ氏も自分自身のワイナリー設立を志すようになります。
そんな折、ハックネル氏が「イル カンタンテ」を閉じることになり、2007年にマリオ氏がプロジェクトを買い取る形でワイナリーを継承することになります。マリオ氏はエトナの土地や伝統を守る使命とともにワイナリーを継承し、新しいワイナリーをイタリア語で「守り主」を意味する「イ クストーディ」と名付けました。

師から受け継ぐ栽培・醸造哲学
エトナ伝統のアルベレッロ仕立てと清潔な醸造環境
イ クストーディのワイン造りの根底には、サルヴォ フォーティ氏から受け継いだ哲学が生きています。まず第一に、伝統的なアルベレッロ仕立て。ブドウ樹は密植されていて機械が入れず、非常に手間暇のかかる栽培手法ですが、ブドウが健康に育ち、農薬への依存を劇的に減らすことができるエトナに最適な手法であると話します。
2007年の設立当時2haだった畑は現在20haまで広がっていますが、買い足す際に元々の畑が違う仕立てであればアルベレッロ仕立てで植えなおすという徹底ぶりです。

醸造においては「理想的なブドウを、理想的な環境で醸造する」という極めてシンプルな教えを実践し、ワイナリーを常に清潔に保つ環境づくりを最優先しています。これは、エトナのテロワールをワインに反映するために野生酵母による発酵を行い、酸化防止剤の添加を極限までゼロに近づけるワイン造りを目指すイ クストーディにとって必要不可欠なことです。
イ クストーディでは2016年には念願の自社セラーを建設し、近年も瓶詰め機の大規模な投資を行うなど、清潔な醸造環境の整備に余念がありません。


昼夜の寒暖差があり赤に適した北斜面
海風を受け上質な白を生む東斜面
彼らの畑は、エトナ北斜面と東斜面に広がっており、北に10.5ha、東に9haを所有。北斜面と東斜面では気候や栽培に適したブドウが大きく異なります。
【北斜面】
気候:
・北向き×高標高のため冷涼
・昼夜の寒暖差が大きい
・エトナ山とその北部に位置するネブロディ山脈の間を風が通り抜け湿気が溜まらない
栽培に適したブドウ:
・果実味が豊かできれいな酸を備えたネレッロ マスカレーゼの栽培に適しており、エレガントなエトナ ロッソが生まれます。
【東斜面】
気候:
・イオニア海から吹く湿った海風の影響で湿潤
・海風がエトナ山にぶつかることで雨雲が生まれイタリア有数の降雨量を誇ります。
栽培に適したブドウ:
・晩熟品種であるカリカンテの栽培に適し、長期熟成能力を備えたエトナ ビアンコが生まれます。
・高標高の冷涼な環境でブドウはさらに時間をかけて成熟していきます。多雨な気候と火山性土壌の水はけの良さがこの成熟期間を支えます。
※画像は風の流れを表すイメージです
多様なエトナのミクロクリマを映す「コントラーダ」
またその中でも特徴の異なる複数のコントラーダ(区画)に畑を所有しています。北斜面にはエトナ最大のコントラーダ「フェウド ディ メッツォ」と「モガナッツィ」があり、ここには樹齢100年を超えるネレッロ マスカレーゼが植わっています。
東斜面では「タヴェルナ」、「メルトリ」に加え、エトナ ビアンコ スペリオーレの生産が唯一認められるミロ村にあり、「エトナのグラン クリュ」とも呼ばれるコントラーダ「カゼッレ」に畑があります。
このミクロクリマの違いを活かし、それぞれの土地で最も適したブドウを栽培しています。
親しみやすい昔ながらのエトナの白「エデス」
カリカンテ100%の上級キュヴェ「インブリス」
カリカンテを主体に造られるエトナ ビアンコは、エトナのテロワールを象徴する鮮烈な酸とミネラルが魅力です。先ほども触れた東斜面の特徴「冷涼さ×多雨×火山性土壌」の掛け合わせで、「凛とした力強い酸」と「塩気すら感じるミネラル感」といったブドウの個性が高められています。
早くから楽しめる華やかな香りのエトナ ビアンコ
エントリーレベルの「エデス」は、酸が鋭く開くのに時間を要するカリカンテにカタラットやミネッラなどの地品種をブレンドし、早くから楽しめる華やかな香りをプラスしています。
かつて様々な品種が同じ畑に混ざって植えられていた(混植混醸)時代の、ある種昔ながらのエトナの白ワインと言うことができます。

エトナのグランクリュから生まれるエトナ ビアンコ スペリオーレ
一方、カリカンテ100%で造るエトナ ビアンコ スペリオーレ「インブリス」は、ミロ村のコントラーダ「カゼッレ」のブドウから造る特別な上級キュヴェです。畑は標高900mの高地に位置しています。
美しい酸味と上質な鉱物感の中に、驚くほど豊かなコクとリッチな質感が調和しています。これはカリカンテが持つ品種の個性と、シュール リー熟成によって生まれる味わいです。「エデス」が収穫の翌年に瓶詰めするのに対して、「インブリス」は2年間のシュール・リー熟成後にはじめて瓶詰めする、長期熟成型の白ワインです。
イ クストーディでは品種の個性を活かすため、白ワインの発酵・熟成はともにステンレスタンクのみで行います。

エトナの「守り主」を体現する
樹齢100年の古樹から生まれる上級エトナ ロッソ「エトネウス」
「ピストゥス」はイ クストーディにおけるエントリーレベルの赤ワインです。ネレッロ マスカレーゼを主体にネレッロ カプッチョをブレンドし、ステンレスタンクで抽出も柔らかく行うことで親しみやすいエトナ ロッソに仕上がっています。マリオ氏がエントリーレベルのワインに求める飲み心地の良さ(Drinkability)をたしかに備えています。
エトナの伝統・風景を守る「イ クストーディ」の在り方を体現する上級キュヴェ
上級キュヴェである「エトネウス」はワイナリーの設立から造っているキュヴェの一つで、100歳前後の非常に樹齢の高いモガナッツィのブドウを使用しています。
「ピストゥス」の発酵が1週間なのに対して「エトネウス」では2週間と、2倍の発酵期間を要します。その分タンニンの量が多くなるため、タンニンを和らげる目的で樽熟成を行います。バリックだと熟成が早く進みすぎてしまい、大樽だと2年経ってもタンニンが全く落ち着かず…という数々の試行錯誤を経て、熟成は500リットルのトノーで行います。トーストしたものではなく、限りなくニュートラルな樽を使用。5年、10年と熟成するポテンシャルを持ちます。
ワイナリー設立当初、マリオ氏はエトナに根付く樹齢200年を超える古木が引き抜かれる光景を目の当たりにし、ワイナリーの名前に込めた「守り主」としての決意を強めたといいます。「エトネウス」はそうしたワイナリーとしての在り方を体現するワインと言えます。


香り華やかな親しみやすいエトナ ビアンコ |
エデス エトナ ビアンコ 2024 |
| 「かつてエトナにあった伝統的な白ワインを現代に蘇らせた一本です。主体となるのはカリカンテですが、それだけではありません。カタラットやミヌッラといった土着品種が一緒に植えられた(混植された)畑のブドウを使っているのが特徴です。カリカンテ100%で造ると、アロマが開くまでにどうしても時間がかかってしまいますが、他品種が加わることで華やかな香りが早くから立ち上がり、親しみやすいアロマと味わいが生まれるのです。だからこそ、収穫の翌年にはリリースでき、若いうちから楽しんでいただけます。」 |
| 試飲コメント:やや淡い麦わら色。白い果実や柑橘を思わせる瑞々しく繊細なアロマがフレッシュに香ります。口当たりは柔らかく、香りの要素が上品に広がり、心地よくフレッシュな酸が最初から最後まで持続しながら、白い果実のフルーティさと交わっていきます。 |
エトナ東斜面の偉大な畑が生むカリカンテの頂点 |
インブリス エトナ ビアンコ スペリオーレ 2019 |
| 「私たちの白の頂点となるトップキュヴェです。エトナの東斜面、ミロ村にあるグラン クリュとも言える『カゼッレ』のカリカンテを100%使い、長期熟成ポテンシャルを備えた一本に仕上げています。インブリスとはラテン語で雨を意味します。ここはシチリアでもっとも雨の多い土地で、その個性をそのまま名前に表しました。醸造はステンレスタンクで2年半。その間、バトナージュ、つまり澱を撹拌する作業を行い、酸を和らげながら、まろやかさと複雑味を与えています。熟成を経ても酸とミネラルが衰えることなく、むしろ味わいが深まっていきます。」 |
| 試飲コメント:透明感のある黄金色。やや力強い果実を軸に、柑橘、白い果実、オレンジがかった熟した果実、さらにナッツのようなニュアンスやミネラル感まで複雑に重なり、表情を増していきます。口当たりは柔らかく、複雑ながら上品な風味が広がり、きゅっとしたフレッシュな酸と苦味が溶け合います。 |
フレッシュな果実味を楽しむ親しみやすいエトナ ロッソ |
ピストゥス エトナ ロッソ 2024 |
| 「早くから楽しめるスタイルを目指した赤ワインです。ネレッロ マスカレーゼを主体に、果実味を補うためネレッロ カプッチョを約20%ブレンドしています。醸造ではマセラシオン(醸し)を短くとり、抽出を抑えめにしてステンレスタンクで仕上げます。アルコール度数は13%。フレッシュな果実味があり、バランスの取れた飲みやすさが魅力です。生産量は年間3万本です。」 |
| 試飲コメント:透明感のあるやや淡いガーネット色。赤系果実のやや凝縮した果実感が、華やかに香ります。口当たりは柔らかで、上品ながらやや厚みのある果実感に満たされ、タンニンもほどよくエレガントに調和し、心地よい余韻が続きます。 |
長期熟成で真価を発揮する、樹齢100年の伝統的エトナ ロッソ |
エトネウス エトナ ロッソ 2019 |
| 「サルヴォ フォーティの哲学を反映した一本で、樹齢100年前後の畑で造る長期熟成型のクラシックなエトナ ロッソです。使用品種はネレッロ マスカレーゼとネレッロ カプッチョ。マセラシオンはピストゥスの2倍以上、2週間以上をかけてじっくり行い、500リットルの古樽(トノー)で2年間熟成させます。強いタンニンを時間をかけて和らげていくのですが、若いうちはまだ粗削りです。それが5年、10年と熟成させることで、ようやく真価を発揮します。」 |
| 試飲コメント:ルビー色。注いだ瞬間にアロマが広がり、柔らかさと熟した赤や黒の果実を感じさせる複雑で上品な香り。口に含むと柔らかく、複雑な要素が綺麗にまとまったバランスのよい味わいが広がります。ゆっくりと持続する長い余韻が感じられます。 |
インタビューを終えて
ワイナリーの他にも会社を経営する実業家の顔を持つマリオ氏ですが、「ワイナリーはまだ幼い娘に自分が残したいと思う唯一のもの」と語るほど、ワイン造りに愛情と情熱を注いでいます。
イ クストーディのワインには果実の透明感があり、説明いただいた斜面ごとの気候の違い、畑・セラーでの丁寧な仕事を感じさせる素晴らしいワインです。特にイ クストーディのこだわりが表れる上級キュヴェ「インブリス」と「エトネウス」は、さらに熟成を重ねて、時間をかけて1本をゆっくり味わいたいと思わせるエレガンスと重厚感を兼ね備えていました。
エトナを愛し、巨匠サルヴォ フォーティ氏に学んだマリオ氏が表現する「エトナのテロワール」をぜひご体感ください。








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