飲みやすさを追求したバローロ&バルバレスコ「ロベルト サロット」

2025/09/02

2025/07/01

エンリコ サロット氏 Mr. Enrico Sarotto、エレーナ サロット氏 Ms. Elena Sarotto

アパッシメントで造る唯一無二のバローロ&バルバレスコ!飲みやすさと超コスパを追求した革新的な造り手「ロベルト サロット」

ピエモンテの各銘醸地でコストパフォーマンス抜群のワインを生む人気生産者「ロベルト サロット」。その歴史は約200年前のブドウ栽培に始まり、現当主ロベルト・サロット氏が2000年に参画してからは、革新的なワイン造りによって大きな発展を遂げてきました。「飲む人にとって親しみやすいワインを造ること」をポリシーに掲げ、アパッシメントなど伝統産地では珍しい手法を導入し、飲みやすさを追求しています。とりわけ長期熟成が求められるバローロやバルバレスコにおいても、リリース直後から楽しめる独自の味わいを確立しています。今回は、「エンリコ プリモ」「バルベーラ ダルバ エレーナ ラ ルーナ」と、ワイン名にもなっている7代目エンリコ・サロット氏とエレーナ・サロット氏にオンラインでお話を伺いました。

ピエモンテの各銘醸地で、
「品質 × 価格」の両立を実現する稀有な造り手

1820年、本拠地ネヴィリエに移住して始まった歴史
――1990年代、まだエンリコさんが本当に小さかった頃に訪問したことがあります。ずいぶん大きくなりましたね(笑)。

はい(笑)。私と妹エレナで7代目になります。ワイナリーの始まりは1820年、ジュゼッペ・サロットが現在の本拠地ネヴィリエに移り住んだことがきっかけです。その息子ジャコモ、さらにルイージ、ジョヴァンニへと代を重ねてきました。

当時手がけていたのはドルチェットのみで、ボトリングは行わず小規模販売にとどまっていました。さらにフィロキセラや戦争の影響で、30~40年ほどワイン造りは停滞し、曽祖父の代までは他の仕事を掛け持ちしながら生活していました。

祖父母の代になると、1950年代から本格的に取り組むために畑を植樹しましたが、カンティーナ自体は小規模だったため、栽培したブドウは売却していました。

醸造家、コンサルタントとして活躍後、ワイナリーを大きく発展させたロベルト・サロット氏
そうした状況の中で父ロベルトはエノロゴを志し、醸造学校を卒業。ピエモンテ各地のワイナリーで約25年間の経験を積み、家族のワイナリー発展のために準備をしてきました。ガヴィの生産者協同組合などでは、コンサルタントの立場としても働いていました。そして2000年、自身のワイナリーに参画し、現在の規模にまで発展させました。

バローロ、バルバレスコ、ガヴィ、アスティ――各銘醸地で高品質&お手頃価格のワインを生産
現在、所有畑の広さは合計約100ヘクタールあります。本拠地ネヴィリエから始まり、1990年代にはバローロやモスカート ダスティへと拡大。1996年にはバルバレスコの2つのクリュ「ガイア プリンチペ」と「クッラ」、2001年にはガヴィの畑を取得しました。

――ピエモンテワインが高騰する中で、バローロやバルバレスコはもちろん、バルベーラやアルネイス、ガヴィなども、お手頃のままで楽しめるのは素晴らしいです。

実は、将来的にカンティーナ近くのアルネイスやモスカートの畑を拡大する予定です。ネヴィリエを拠点に、若い人材が中心となりながら、各地に畑と醸造設備を構えてワイン造りを行っています。

革新的な造りで飲みやすさを追求
サロットを象徴する手法「アパッシメント」

「飲む人にとってアプローチしやすいワインを造る」
私たちはピエモンテに長い歴史を持ちながらも、まだ新しいワイナリーです。そのため、この土地の伝統を尊重しつつも、歴史ある造り手にはできないワイン造りを模索してきました。

なかでも特に取り組んできたのは、「飲む人にとってアプローチしやすいワインを造ること」です。たとえば6~7年の熟成を待たなければならないバローロやバルバレスコを、もっと早く楽しめるようにするにはどうすべきか。その問いに対する答えが、アパッシメントでした。

ただし、糖度やアルコール度数を高めるためだけに用いるのではありません。アパッシメントでありながら「フレッシュな味わい」を持つスタイルです。これがロベルト サロットとして確立した独自のアイデンティティです。

ピエモンテで先駆けてアパッシメントを導入
アパッシメントの導入は今から25年前です。最初は少量のネッビオーロとバルベーラから始め、その成果として「バローロ アウダチェ」と「バルバレスコ ガイア プリンチペ」を初めてリリースしました。これがピエモンテで最初に造られたアパッシメントのワインとなりました。
バローロ アウダチェ

木樽熟成後、ステンレスタンクに寝かせてリリース
フレッシュさ際立つ熟成バルバレスコ リゼルヴァ

――(今回試飲した)バルバレスコ リゼルヴァ 2001年は、熟成ヴィンテージとは思えないほどフレッシュで独特な存在感ですね。

バルバレスコ リゼルヴァはアパッシメントを行わず、大樽で熟成させた伝統的なワインです。特徴的なのは、樽で熟成した後、10年、15年、20年とステンレスタンクで長期間寝かせ、リリースのタイミングに合わせてボトリングすることです。そのためボトル内に澱はありませんし、フレッシュさが感じられるのです。
世界一大きい木樽

ギネス世界記録「世界一大きい木樽」
私たちはバリックを多用していますが、カンティーナの地下には大樽を備えた熟成庫があります。3年前に新設したこのスペースは、初代のジュゼッペや、ワイナリーを発展させた父ロベルトといった創業者への敬意を込めて「アイ フォンダトーリ(創業者へ)」と名付けられています。

なかでも存在感を放つのが、大きな木樽です(写真上)。478ヘクトリットル(4万7800リットル)という容量で、世界で一番大きい木樽としてギネス世界記録に認定されました。2021年にヴェネトで半年以上かけて製作し、一度解体した後、カンティーナに運び込び組み立てたものです。

この樽では以前、バローロ リゼルヴァ「アイ フォンダトーリ」2016年が熟成され、現在は2024年ヴィンテージが熟成されています。

フレッシュ&熟した果実味が広がる単一畑ガヴィ

ガヴィ デル コムーネ ディ ガヴィ ブリック サッシ 2023

ガヴィ デル コムーネ ディ ガヴィ ブリック サッシ 2023

エレーナ氏:
「単一畑ブリックサッシで造るガヴィです。コルテーゼと土壌由来のしっかりとしたストラクチャーや複雑性があり、熟成ポテンシャルも感じられるワインです。ミネラルと塩味が特徴で、繊細な料理とよく合います。魚料理や生魚、シンプルなパスタにも最適ですね。」
試飲コメント:透明感のある麦わら色。白や黄色のフレッシュかつ熟した果実、洋梨のようなニュアンスのある香り。口に含むとフレッシュな果実感が鋭く広がり、ミネラルを思わせる軽やかさがあり、食事との相性の良さを感じます。

食前酒に最適なフレッシュで華やかなアルネイス

ランゲ アルネイス ランクネヴ 2023

ランゲ アルネイス ランクネヴ 2023

エレーナ氏:
「カンティーナ近くのネヴィリエの畑で造るアルネイスです。フルーティで気軽に飲めるスタイルです。食前酒や前菜、生肉などシンプルな料理とよく合います。」
試飲コメント:淡い麦わら色。白い果実に加え黄色い果実の印象が強く、華やかな香りです。味わいはミネラルや柑橘が印象的で、後から心地よい苦味が広がります。

熟成ポテンシャルを秘めた、
複雑で深みのある樽熟成アルネイス

ランゲ アルネイス スレイ 2023

ランゲ アルネイス スレイ 2023

エレーナ氏:
「スレイは私たちにとって新しいアルネイスです。カンティーナのある丘の名前を冠しています。方言ではオークの森も意味しています。オーク樽で5ヶ月熟成しており、通常のアルネイスとは全く異なるタイプで複雑味と深みが感じられます。複雑な料理に最適で、熟成ポテンシャルも備えています。」
試飲コメント:黄色よりの麦わら色。南国果実やレモンなど柑橘系、凝縮感のある果実の香りに加え、バニラや樽のニュアンスを感じます。口に含むと複雑な風味が広がり、酸と果実感、樽の要素が調和して余韻が長く持続します。

厚みのある赤系果実味が広がるネッビオーロ100%ロゼ

ランゲ ロザート 2023

ランゲ ロザート 2023

エレーナ氏:
「ネッビオーロで造るロゼワインです。ヴィンテージ問わず、数時間のマセラシオンを施しています。しかし、ヴィンテージによって色合いが異なります。2023年は雨が少なく濃い色になり、2024年は軽めで淡い色になっています。」
試飲コメント:深みのあるロゼ色。チャーミングな赤系果実、凝縮したイチゴのような香り。フルーティで親しみやすい味わいで、厚みのある果実感があります。

フルーティで綺麗な酸、樽由来の風味が調和したバルベーラ

バルベーラ ダルバ ブリッコ マッキア 2022

バルベーラ ダルバ ブリッコ マッキア 2022

エレーナ氏:
「バルベーラ ダルバ ブリッコ マッキアはクラシカルなスタイルで1年間大樽熟成させたワインです。フレッシュで綺麗な酸、フルーティなニュアンスを持ち、バランスよく仕上がっています。アパッシメントはしていません。カジュアルに楽しめ、料理との相性も良いです。お肉やパスタ、スパイシーな料理にも合います。」
試飲コメント:ルビー色。フレッシュでほどよく熟した赤系果実の心地よい香りです。味わいは熟した果実の豊かさに、樽由来のコーヒーやバニラの風味が調和し、黒胡椒やドライフルーツの甘やかなニュアンスが余韻に残ります。

果実味と樽の風味が際立ち親しみやすいネッビオーロ

ランゲ ネッビオーロ ナティーヴォ 2022

ランゲ ネッビオーロ ナティーヴォ 2022

エレーナ氏:
「バローロとバルバレスコエリアのネッビオーロを使ったランゲ ネッビオーロです。大樽で9~12ヶ月熟成し、ストラクチャーもあり重要なワインですが、コストパフォーマンスに優れた親しみやすいスタイルです。スパイシーさと樽由来のニュアンス、ブラックチョコレートのような味わいが楽しめます。」
試飲コメント:淡く輝くルビー色。厚みのある赤系果実、ややスパイシーな香り。味わいはフレッシュでチェリーのような果実感に加え、樽のチョコやスパイス、ドライフルーツのニュアンスが重なります。

ノヴェッロ村のネッビオーロ100%で造る日本限定ロッソ

ペツォーレ ヴィーノ ロッソ NV

ペツォーレ ヴィーノ ロッソ NV

エレーナ氏:
「日本限定で造られるワインです。ペツォーレはバローロ地区のノヴェッロ村の地名でもあり、その地のネッビオーロ100%で造るヴィーノロッソです。軽やかなスタイルを表現しています。」
試飲コメント:淡いガーネット色。赤系果実にレザー、土を思わせる複雑で奥行きのあるエレガントな香り。味わいは赤い果実にチョコやバニラ、レザーの要素が重なり、複雑でエレガントに仕上がっています。

包み込むような柔らかさと凝縮感
アパッシメント バルバレスコの先駆け

バルバレスコ ガイア プリンチペ 2019

バルバレスコ ガイア プリンチペ 2019

エレーナ氏:
「ガイア プリンチペは歴史あるクリュで、アパッシメントを取り入れた最初のバルバレスコです。10月初めに収穫し、半分ほどを陰干し。伝統的なバルバレスコとは異なり、モダンで包み込むような柔らかさと凝縮感を持ちます。残糖はゼロでスムーズな飲み心地です。ネッビオーロ本来の個性を隠さないようバランス感を意識しています。」
試飲コメント:ガーネット色。ドライフラワーや土、赤い果実の香りです。口当たりはまろやかで、タンニンは存在感がありながらも溶け込み、綺麗で豊かな余韻を演出します。全体的に洗練された味わいです。

伝統産地への挑戦で誕生
歴史的アパッシメント バローロ

バローロ アウダチェ 2019

バローロ アウダチェ 2019

エレーナ氏:
「アウダチェは、アパッシメントしたブドウで造るバローロです。ノヴェッロ村のネッビオーロを使用しています。私たちが初期から手がけるワインの一つです。伝統に対して挑戦する思いから、勇敢を意味する名前をつけています。力強く10~20年の熟成が可能で、2019年ヴィンテージは、バランスが良く、タンニンが柔らかくて飲みやすく仕上がっています。」
試飲コメント:やや深みのあるガーネット色。ドライフルーツや赤い果実、レザーの香り。甘やかさを伴う口当たりで、フレッシュで洗練された味わい。軽やかさも感じます。イチゴのような風味にスパイスやバニラが加わり、奥行きある余韻が続きます。

木樽熟成後、ステンレスタンクで長期保管
熟成ヴィンテージとは思えないほど生き生きとした味わい

バルバレスコ リゼルヴァ 2001

バルバレスコ リゼルヴァ 2001

エレーナ氏:
「大樽で造る伝統的なバルバレスコ リゼルヴァです。アパッシメントは行っていません。熟成ヴィンテージを10年、15年、20年とステンレスタンクで保管し、販売のタイミングでボトリングします。そのため、澱がなくフレッシュさを保っています。」
試飲コメント:ガーネット色。赤系果実や土、枯葉、レザー、ドライフラワーの香りです。口当たりは柔らかく果実感があり、複雑さもほどよく備わっています。フレッシュな赤い果実の印象があり、2001年とは思えないほど生き生きとした若さを感じる味わいです。

インタビューを終えて

革新的な造りで追求してきたという「親しみやすさ」を、今回の試飲で存分に感じることができました。バローロとバルバレスコで初めてアパッシメントを導入した「バローロ アウダチェ」と「バルバレスコ ガイア プリンチペ」は、その手法ならではの親しみやすい味わい。それでいて、綺麗な酸や洗練された奥行きをしっかりと感じさせてくれます。まさに伝統と革新の融合を体現したワインでした。

さらに、抜群のコストパフォーマンスも見逃せません。例えば、今回試飲した「バルバレスコ リゼルヴァ」2001年。これほどの熟成ワインを手に取りやすい価格で楽しめることこそ、ロベルト サロットの最大の魅力だとも強く感じました。