ヴァルポリチェッラ特別地区で最大級の協同組合「ヴァルパンテーナ」

2025/12/12

2025/11/20

サマンサ パロロット氏 Ms. Samantha Parolotto、ダニエレ ボルゴーニョ氏 Mr. Daniele Borgogno

長年愛される超コスパの大人気アマローネ!ヴァルポリチェッラ特別地区で最大級の協同組合「ヴァルパンテーナ」

「カンティーナ ヴァルパンテーナ」はヴァルポリチェッラ地区ヴァルパンテーナに拠点を構える協同組合です。古くから優れたブドウが育つ産地として知られるこのエリアは、クラシコ地区以外で唯一サブゾーンに認定されている特別区画です。ワイナリーを統括するカンティーネ ディ ヴェローナは、総面積1800ヘクタールに及ぶ畑を所有。ヴァルパンテーナをはじめ、西部のガルダ湖南部など広範囲に畑が点在しています。その生産量はヴァルポリチェッラ全体のおよそ13%を占め、地域において圧倒的な存在感を放っています。高品質でありながらお手頃な価格帯のワインを幅広く生産していることも大きな魅力で、フラッグシップ「アマローネ トッレ デル ファラスコ」は長年愛され続ける大人気ワインです。今回は、カンティーネ ディ ヴェローナ社のサマンサ パロロット氏とダニエレ ボルゴーニョ氏にお話を伺いました。

ヴァルポリチェッラ全体の約13%を誇る生産量
サブゾーン「ヴァルパンテーナ」に根ざす協同組合

 カンティーナ ヴァルパンテーナは、1958年に設立された、最高品質を徹底的に追求する協同組合です。ワインの品質を左右する畑を何よりも重視し、組合員との関係を年間を通じて密に保ち、彼らが必要とするサポートを欠かさず行っています。こうした取り組みにより、高品質でありながら手の届きやすい価格帯のワインを実現しています。

クラシコ地区以外、唯一のサブゾーン「ヴァルパンテーナ」
私たちがグループとして拠点を構える場所は3つ。優れたブドウが育つ特別区画として古くから知られるサブゾーン「ヴァルパンテーナ」。そして、ガルダ湖南に位置するコッリ モレニチとクストーザです。

東のソアーヴェから、西のクストーザやルガーナに至るまで広く網羅している形になります。プロセッコ以外はほとんどカバーしていると言っていいでしょう(笑)。畑の総面積は1800ヘクタールに及び、年間生産量は1500万本です。加盟する組合員は500名、従業員は120名です。

ヴァルポリチェッラ最大のフルッタイオ
3つの拠点それぞれにブドウを陰干しするフルッタイオ(乾燥庫)を備えており、なかでもカンティーナ ヴァルパンテーナのフルッタイオはヴァルポリチェッラ地区で最大規模です。広さは1ヘクタール、高い天井と広いスペースを確保し、膨大な量のブドウを最適な環境で乾燥させることができます。

以前は木製のカゴを使用していましたが、現在はすべてプラスチック製に切り替えています。これにより雑菌が発生しない、清潔な環境を保ったまま陰干しを行うことが可能になりました。こうした設備的な強みもあり、私たちはヴァルポリチェッラ全体の生産量の12~13%を占めています。

5000基のバリックとトノーを保有する巨大な樽熟成庫
――それだけ生産量が多いと、使用する樽の数も多いですよね。

そうなんです。バリックとトノーはそれぞれ約5000基、大樽も50基ほどあります。さらに、自社敷地だけでは収納しきれないため、ヴァルパンテーナ内に樽熟成庫として借りている場所もあるほどです。

小樽であるバリックは数年ごとに買い替える必要があり、これほどの数になると管理も容易ではありません。それでも、ワインの品質を維持するためには欠かせないことだと考えています。

「高品質」&「お手頃価格」
長年愛される象徴的ラインナップ

「ファラスコの塔」を冠したフラッグシップ アマローネ
アマローネ「トッレ デル ファラスコ」は、主にヴァルパンテーナの畑で造られています。名前の由来となっているのは、ヴァルパンテーナに実在する塔です。ファラスコとは1600年代にいた悪党の名前で、当時の王女様を誘拐し、その塔へ立てこもったという伝説があります。

この塔は丘の上にあり、ヴァルパンテーナの優れたブドウ畑のどこからでも見える象徴的な存在なのです。組合員が所有する畑から常にこの塔が望めることから名付けました。
(左)ファラスコの塔

世界的シャルドネを彷彿とさせる歴史的キュヴェ「バロンチーノ」
「シャルドネ バロンチーノ」と「リトッコ ヴァルポリチェッラ」も、私たちを象徴する存在です。バロンチーノは非常に昔からヴァルポリチェッラの畑で造られてきたシャルドネで、上級シャブリのようなコクのある味わいを表現した一本です。

あまりに歴史が長いため、ワイン名の由来がはっきりしないほどです。現代表が組合員として参画した時には、すでにバロンチーノは造られていたといいます。

銘醸地ヴァルパンテーナで追求する伝統製法「リトッコ」
リトッコはいわゆるリパッソ製法(※)で造られるワインで、「リトッコ」という名称はリパッソを指すヴェローナ方言です。リパッソがDOCとして正式に登録される以前からこの名前を使っており、現在もそのまま継続しています。商標登録もしているため、「リトッコ」という名のワインはこの一本だけです。
※アマローネの搾りかすを用いて再発酵させる製法

――もしかしたら、リパッソDOCは「リトッコDOC」になっていた可能性もあるということですね。

その可能性はありますね。ただ、リパッソは方言ではなく標準イタリア語なので、方言が採用されることは難しかったでしょう。個人的には、リトッコのほうが響きはエレガントに感じます(笑)。

また、リトッコはヴァルパンテーナのサブゾーンに限定したワインであり、品質維持のために生産量をあえて最低限に抑えている点も大きな特徴です。

ミネラリーで華やか
フレッシュかつ濃密な果実感が調和するシャルドネ

シャルドネ デル ヴェネト バロンチーノ 2023

シャルドネ デル ヴェネト バロンチーノ 2023

サマンサ氏:
「シャルドネ バロンチーノは昔から造っている非常に特徴的なシャルドネです。コクやクリーミーさを表現した上級シャブリのようなスタイルです。高級レストラン向けの一本です。生産量は少なく、6000~7000本ほどです。低温で発酵させることで、果実のアロマと保持し長期熟成を見据えています。発酵と熟成には2、3年目の木樽を使用。トーストを強くかけていませんし、樽の中に入れる期間を短くして、本来持つ果実味を生かしています。最後にステンレスタンクで6ヶ月落ち着かせてからボトリングします。」
試飲コメント:麦わら色。香りは熟した黄色い果実が華やかに立ち上がり、石のようなミネラルにやや凝縮感があります。味わいは柔らかな口当たりで、黄色い果実の濃密なフルーツ感が広がり、フレッシュさと厚みが調和した余韻が続きます。

ガルダ湖南部特有のミネラルを表現したアパッシメント シャルドネ

シャルドネ ノアター 2024

シャルドネ ノアター 2024

サマンサ氏:
「ガルダ湖エリアのコッリ モレニチで造るシャルドネです。シャルドネ バロンチーノとの飲み比べは非常に興味深いと思うので、ぜひしてみてください。ノワテルはマントヴァ方言で、私たちのという意味です。私たちの祖父の世代が造ってきたワインを象徴しています。約2週間のアパッシメントで凝縮感のある香りを、木樽醸造でフレッシュさとまろやかさを引き出しています。ストラクチャーもあり長期熟成に向いています。果実感が際立ちますが、最後にガルダ湖南部特有のミネラルが感じられます。アペリティーヴォから魚料理、白身肉など幅広い料理に合わせられます。」
試飲コメント:淡い麦わら色。香りは華やかで、黄色と白い果実、白い石のミネラルにわずかなハチミツや南国果実が重なります。濃密な果実感を伴う柔らかな味わいで、厚みとバランスを備えた余韻が続きます。

クストーザの個性と長期熟成を表現した4品種ブレンド白

クストーザ スペリオーレ トッレ デル ファラスコ 2023

クストーザ スペリオーレ トッレ デル ファラスコ 2023

サマンサ氏:
「ガルガネガ、トカイ フリウラーノ、インクローチョ マンゾーニ、トレッビアーノの4品種をブレンドして、この土地の特徴を表すクストーザ スペリオーレです。トカイ フリウラーノがアロマを引き出し、インクローチョ マンゾーニが熟成力を備えています。熟成はスラヴォニアンオークの大樽で、長期熟成を視野に入れた造りです。一般的にフレッシュで早飲みのクストーザが多い中、このワインは長期熟成ポテンシャルを示す存在です。香りにはミネラルや塩味が感じられます。」
試飲コメント:淡い麦わら色。香りは華やかで、フローラルな要素とミネラル、わずかな南国果実が感じられます。味わいはフレッシュな果実感と柑橘が広がり、余韻にはフレッシュさとミネラル感が心地よく続きます。

「フルーティで毎日飲める」
リパッソ製法、12ヶ月大樽熟成のヴァルポリチェッラ

リトッコ ヴァルポリチェッラ ヴァルパンテーナ 2022

リトッコ ヴァルポリチェッラ ヴァルパンテーナ 2022

サマンサ氏:
「リパッソ製法で造るヴァルポリチェッラ リトッコです。リトッコという名前はヴェローナ方言で、もう一度やるという意味で、リパッソ製法のことを指します。リパッソがDOCに正式登録される前から使用していた名前なんです。この名称は今や商標登録されており、私たちだけがリトッコという名のワインは生産しています。伝統製法を用いながらモダンなアプローチをしており、フルーティで毎日飲めるワインをイメージしています。トノーや大樽で12ヶ月熟成。生産開始は1990年代より前で、日本へも90年代半ばに輸出されていた歴史の長いワインです。」
試飲コメント:ルビー色。香りは赤い果実と花のニュアンスが広がります。味わいはフレッシュで軽やかさがありつつ、凝縮した果実味があり、樽由来のバターのニュアンスが後からやってきます。

18ヶ月熟成、濃密&複雑な風味を引き出したリパッソ

ヴァルポリチェッラ リパッソ スペリオーレ トッレ デル ファラスコ 2022

ヴァルポリチェッラ リパッソ スペリオーレ トッレ デル ファラスコ 2022

サマンサ氏:
「リパッソ スペリオーレは、リトッコと同じくコルヴィーナ、コルヴィノーネ、ロンディネッラを使用しますが、アマローネの搾りかすに通す時間を長くし、より強い風味とアロマを加えています。リトッコがフルーティなのに対し、こちらはジャムのようなニュアンスが特徴。18ヶ月の木樽熟成でしっかりとしたボディに仕上げています。」
試飲コメント:ルビー色。香りは赤系果実、コンポート、潰した花、イチゴジャムが重なります。味わいは柔らかくも厚みがあり、複雑な風味が広がり、香りに加えてカカオのニュアンスも感じられます。余韻は非常に長く持続します。

伝統品種と国際品種を掛け合わせたベイビーアマローネ

プレミアム アパジオ ロッソ ヴェロネーゼ 2019

プレミアム アパジオ ロッソ ヴェロネーゼ 2019

サマンサ氏:
「アパジオはベイビーアマローネ的な位置づけのワインです。アマローネと似た造りですが、使用するブドウはアマローネの登録エリア外の畑のものです。コルヴィーナ、コルヴィノーネ、ロンディネッラに加え、メルローとカベルネを使用し、すべてアパッシメントしています。味わいは国際的で、樽はバリックとトノーを使用し、ややトーストの効いたものを採用します。」
試飲コメント:ふちがガーネットを帯びたルビー色。香りは赤系果実、ドライフルーツ、落ち葉のような要素が重なり濃密です。味わいは熟した果実が感じられる厚みがあり、チョコレートやコーヒーのニュアンスが後口に続きます。心地よい繊細なタンニンがあります。

濃密さと気品をまとい、
卓越したバランスのフラッグシップ アマローネ

アマローネ デッラ ヴァルポリチェッラ トッレ デル ファラスコ 2020

アマローネ デッラ ヴァルポリチェッラ トッレ デル ファラスコ 2020

サマンサ氏:
「伝統品種のコルヴィーナ、コルヴィノーネ、ロンディネッラを使用したアマローネです。アパッシメント期間はおよそ3ヶ月。近年の温暖化により期間が短くなる傾向もあります。40~50%の水分が減少し、糖分とアロマが凝縮された後、発酵をして、2~2年半木樽で熟成します。マリアージは肉料理、チーズ、ジビエ、ブラックチョコレートが理想です。食事なしの瞑想ワインとしても楽しめます。年によっては生産しない場合もあり、生産量は多い時で5~6万本。ヴァルパンテーナの土地自体が限られるため、数量は多くなりすぎません。」
試飲コメント:ガーネット色。香りは力強く濃密で、エレガントです。ドライフルーツやカカオ、コーヒーが複雑に重なります。柔らかい口当たりながら力強く濃密な風味が広がり、甘やかなスパイスが綺麗に溶け込みます。バランス感の優れた味わいです。

インタビューを終えて

ヴァルポリチェッラ全体の13%の生産量を誇るカンティーナ ヴァルパンテーナ。実際にいただいた資料や写真を目にすると、さらにそのスケールが実感として伝わってきました。とりわけ、地区最大規模というフルッタイオは圧巻で、航空写真や内部の様子から伝わる存在感はすごかったです。

そして、あらためて驚かされたのはコストパフォーマンスです。最初に試飲した「シャルドネ バロンチーノ」は、ミネラル感、凝縮感、柔らかな質感が美しくまとまり、完成度の高い一本でした。さらに、フラッグシップ アマローネ「トッレ デル ファラスコ」はハイコストパフォーマンス。濃密さと複雑性が幾重にも重なり、バランスに優れたエレガントな味わいです。彼らのワインが長年愛される理由をあらためて実感しました。カンティーナ ヴァルパンテーナのワインをぜひご堪能ください!