2025/06/06
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マルテン リールヴェルド氏 Mr. Maarten Leereveld、レオナルド ベルティ氏 Mr. Leonardo Berti
世界中の愛好家を魅了する伝統派ブルネッロの最高峰!複雑で優美、フィネスを極めた唯一無二の造り手「ポッジョ ディ ソット」

伝説の醸造家ジュリオ・ガンベッリ氏と築き上げた、
伝統派ブルネッロの最高峰「ポッジョ ディ ソット」
――まずは、ポッジョ ディ ソットの歴史からお聞かせください。
レオナルド(以下:L) ポッジョ ディ ソットは1989年、ピエロ・パルムッチによって設立されたワイナリーです。彼は運送業を営む実業家でしたが、モンタルチーノ南東部カステルヌオーヴァ デッラバーテの土地に魅せられ、ワイン造りのためにこの地を取得しました。
2011年、コッレ マッサーリがポッジョ ディ ソットを取得
L 設立当初はバンフィの頭角もあり、モンタルチーノではすでにブルネッロのブームが起きていました。とはいえ、まだ優れた土地を選ぶ余地があり、天候や立地条件に恵まれたこの地を選ぶことができました。取得時の所有畑は、1.5ヘクタールだけでしたが、醸造家ジュリオ・ガンベッリの協力のもと徐々に拡張していき、1991年には初めてのブルネッロ ディ モンタルチーノのボトリングを行いました。
2011年にはコッレ マッサーリがポッジョ ディ ソットを取得し、畑を10ヘクタールに拡大。現在は20ヘクタールまで増え、DOCGエリアの南部の範囲内ギリギリまで畑が広がっています。
カンティーナから見た景色(南側)
ポッジョ ディ ソット専属の醸造家レオナルド・ベルティ氏
――レオナルドさんはどのような経緯でポッジョ ディ ソットで働き始めたのですか?
L 私はフィレンツェ大学で醸造学を学び、2004年から2008年までアンティノリに在籍し、ティニャネッロなどトスカーナのワイナリーを担当していました。その後、1年間アンティノリの研究部門に勤務し、2009年からテヌータ サンジョルジョに移りました。2016年にコッレ マッサーリグループがサンジョルジョを取得して以降は、ポッジョ ディ ソットと両方を担当するようになりました。
グループ全体の責任者ルカ・マッローネも醸造家として関わっていますが、常にポッジョ ディ ソットに携わっているのは私だけです。ワインの最終ブレンドを決定する際には、外部コンサルタントとしてフェデリコ・スタデリーニを迎えています。彼はキャリア初期からジュリオ・ガンベッリとともに働いてきた人物で、ジュリオのポストを引き継いでいます。
ブルネッロとして造られる贅沢なロッソ ディ モンタルチーノ
マルテン(以下:M) ポッジョ ディ ソットは収穫したすべてのブドウをブルネッロとして醸造していきます。畑や区画であらかじめロッソとブルネッロを分けることはなく、醸造家の彼らが、熟成中の樽から試飲をしてどちらとしてリリースするかを判断しています。
たとえロッソとしてリリースされる場合でも、最低2年の木樽熟成を経ており、このまま熟成させればブルネッロとして出すことが可能です。良年の2019年に関しては約3年も熟成しています。ワイン名はロッソ ディ モンタルチーノだとしても、明らかに他のロッソとは異なるワインなのです。このような造りはマニアックだと言えますね。

土壌、標高差、収穫哲学、大樽熟成、182のクローン
ポッジョ ディ ソットが導く独自のエレガンス
――ジュリオ・ガンベッリさんの教えについて聞かせてください。
L ジュリオ・ガンベッリは、当時「神」と称されていたほどの醸造家です。創業者のピエロ・パルムッチは、気に入った相手にしかワインを売らない、しかも「12本でしか売らない」気難しい人物でした。そんな彼が全幅の信頼を寄せていたのがジュリオでした。ジュリオは収穫や醸造、試飲データに関する多くの記録や助言を遺してくれたんです。
「土壌の質を追求」
L ジュリオが最も重視していたのは、「土壌の質」です。畑の向きや標高以上に、土壌そのものの特性を見極めることが重要だと考えていました。コッレ マッサーリの所有になった当時から、畑はすでに15区画に分かれており、モザイクやパズルのような構成をしていました。そのため畑は点在していますが、ほとんどがカステルヌオーヴァ デッラバーテのカンティーナ周辺に集中しています。
カンティーナすぐ横の畑
「標高差が生むテロワールの違い」
L 土壌の個性は、標高によって大きく変化します。標高の低いオルチャ川近くの畑は、粘土質の土壌です。標高が上がるにつれて、つまりカンティーナに近づくにつれて粘土の比率が減少し、ワインにフィネスをもたらすガレストロ土壌へと変わっていきます。すべての畑は南または南西向きで、日照に恵まれながら風通しが良いため、ブドウは守られています。
「最高の瞬間を見抜く収穫哲学」
L ジュリオは「収穫のタイミング」についても言及していました。一般的には、酸と糖のバランスが整った瞬間が最適とされますが、私たちは、それよりも1日、2日ほど早く収穫を行います。なぜなら、ブドウは収穫後も生きており、酸と糖の成熟が続いていくからです。ワインは、そうした成熟の延長線上に木樽熟成や瓶内熟成を経て、最高点に達すると考えています。
収穫を始めると、近隣の生産者から「ロゼ用を収穫しているの?」と言われるほどです(笑)。それぞれの区画に合った哲学をもとに判断するからこそ、温暖なエリアにも関わらずフレッシュで生き生きとし、エレガントなワインが生まれるのです。

「繊細なサンジョヴェーゼに寄り添う、大樽熟成」
L サンジョヴェーゼはとても繊細で、ボルドー品種のように多様な木樽に対応することが難しい品種です。必要以上に長く熟成させてはいけない品種でもあります。ジュリオは、大樽での熟成を基本としながら、「いつ大樽から出すか」というタイミングの見極めの重要性も示してくれました。
「182のクローンが植わる個性豊かな畑」
L 2011年にポッジョ ディ ソットを取得してすぐ、私たちはフィレンツェ大学と共同研究を始めました。それは、豊かな個性を持つ畑の特性を科学的に明らかにするためです。その結果、所有畑には182ものクローンが植わっていることがわかりました。
その182すべてのクローンを用いることで、ポッジョ ディ ソット独自のブーケと複雑性が生まれます。ロッソであれブルネッロであれ、「紛れもなく、ポッジョ ディ ソットだ」と他の生産者にはないエレガンスがあります。実際に分析を行っても、ほとんどのブルネッロ生産者と比べて揮発酸の量が違うことが判明しています。
ジュリオが遺した哲学をはじめ、182のクローン、さまざまな醸造方法といったすべての要素が合わさり、ポッジョ ディ ソットならではの味わいを生んでいるのです。
ブルネッロの頂点に立つ、造り手としての揺るぎない信念
――現在の地位を確立するまでに、どのような歩みがあったのでしょうか?
L 何よりもまず、自分たち独自のスタイルを追求してきたことが原点です。というのも、1990年代当時、モンタルチーノで主流だったスタイルは、バリックの効いた、凝縮感のある重厚なワインでした。
それに対してポッジョ ディ ソットは、一貫して透明感とエレガンスを重視したワイン造りをしてきました。例えば、名前を伏せた状態でブルネッロを50~60本テイスティングしても、誰もが「これはポッジョ ディ ソットだ」とわかる。そんな明確なアイデンティティを形成してきました。

愛好家の評判が広がり、世界的な評価へ
コッレ マッサーリの取得以前から輸入していたエノテカ社
M 独自のスタイルに加え、生産量が決して多くないというミステリアスな存在感も、愛好家の間で話題となり、自然と認知が広まっていきました。いわゆる「100点獲得!」のようなガイド誌の評価が先行したわけではありません。
例えば、エノテカ創業者の廣瀬さんは、コッレ マッサーリが取得する以前から、ポッジョ ディ ソットを気に入って輸入してくださっていました。「このワインが好きだ」という愛好家たちの評判によって、少しずつ信頼を得ていき、やがて世界中で評価されるようになりました。
創業者ピエロ氏から、現オーナーのティーパ氏へ
受け継がれる品質重視への強い意志
M そして、もう一つ重要なのは、創業者ピエロ・パルムッチと、現オーナーであるクラウディオ・ティーパの存在です。ピエロは強烈な個性を持ち、品質重視のポッジョ ディ ソットを築き上げた人物。一方のティーパもまた、品質重視の姿勢に強い信念を持つ人物です。
最初、ふたりの間には衝突もありましたが、次第にピエロは「彼なら自分の意志を受け継いでくれる」と確信を深めて、ワイナリーを託す決断をしました。その精神は今も守られ、ポッジョ ディ ソットの品質とアイデンティティは揺るぎないものとして継承されているのです。
パルムッチ氏(左)、ティーパ氏(右)
繊細さと力強さが優美に調和するロッソ ディ モンタルチーノ |
ロッソ ディ モンタルチーノ 2021 |
| レオナルド氏: 「2021年ヴィンテージは、春先の霜により全体の10~15%ほど生産量が減りましたが、品質に関しては問題がありません。むしろ収穫したブドウの中から品質をしっかりと選別することができたと言えます。例年と同じで暑い気候が続いた年でもありました。」 |
| 試飲コメント:輝くルビー色。注いでいる段階からエレガントで澄んだ果実の香りが広がります。やや閉じ気味ながら、果実の輪郭は鮮明で、香りのバランスも秀逸です。味わいは繊細かつ力強く、引き締まりのある果実がぎゅっと詰まっていながらも、美しくまとまっています。 |
美しさと精密さを備えた、研ぎ澄まされたエレガンス |
ブルネッロ ディ モンタルチーノ 2019 |
| レオナルド氏: 「2019年のブルネッロ ディ モンタルチーノは、多くの評価誌が最高のヴィンテージと評するように、非常に良好な気候が続いた年でした。雨も多過ぎず少な過ぎず、降るタイミングも絶妙だったため、アグロノモにとってはシンプルな仕事だったと言えます。発酵段階からそのポテンシャルは明らかで、通常30~35日間のところ、今回は50~55日間かけて発酵させました。その後、4年間の大樽熟成を経ており、長いマセラシオンと熟成により、良い飲み心地に達するまでには時間がかかります。私の感覚では、ポッジョ ディ ソットの持つエレガンスに到達するには、今からさらに1年半ほど必要です。」 |
| 試飲コメント:ガーネット色。グラスに注ぐとすぐに芳しい香りが立ち上り、やや閉じ気味ながらも力強さとエレガンスを兼ね備えた香りが感じられます。フレッシュさと熟した赤い果実が調和しており、豊かながらピュアな味わいです。口に含んだ瞬間から余韻まで美しく、後半にはスパイスや樽のニュアンスが現れ、きめ細かなタンニンが長くエレガントな余韻を導きます。 |
インタビューを終えて
昨年、ポッジョ ディ ソットを訪れる機会に恵まれました。「土壌の質を重視して畑を取得した」というお話があったように、実際にカンティーナから見下ろす形で点在する畑を見ることができました。また、地下の熟成庫に足を踏み入れた瞬間、空気が一変し、偉大な風格に圧倒されたことも鮮明に覚えています。そんな偉大な風格をまとった優美な伝統派ブルネッロの最高峰、ポッジョ ディ ソットをぜひご堪能ください。






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