2025/10/15
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ルチア ファットーイ氏 Ms. Lucia Fattoi
巨匠たちも惚れ込んだサンタ レスティトゥータに根付くブルネッロ ディ モンタルチーノの造り手 “モンタルチーノの本物の農民” 「ファットーイ」訪問インタビュー

ブドウ畑12ヘクタールは全てサンジョヴェーゼだけを栽培

現在、ブドウ畑は約12ヘクタールあります。そのうちの7ヘクタールほどがブルネッロ、2.5ヘクタールがロッソ ディ モンタルチーノ、2ヘクタールがトスカーナ ロッソとして造っています。ブドウは全てサンジョヴェーゼです。
2025年は9月15日から収穫を始めて、9月20日に終えました。9月の最終週が雨の予報で、をれをやり過ごすか、それとも雨が降る前に収穫するかの判断が必要でしたが、9月中旬には成熟もしてしっかりと酸も保たれていたので雨が降る前に収穫を終えました。20日の土曜日に終えて、次の月曜日には雨が降ったのでこの判断をして良かったです。
2025年は特徴としては2015年に似ているかと思います。収穫中の天候もよかったですし、バランスのとれたブドウが収穫できました。
年ごとの気候の特徴の変化にきめ細かく対応できるかが重要

この場所の土壌はガレストロ土壌です。ミネラルが豊富で、水をためておくことができる土壌です。数年前ぐらいからは草を刈り取らずに自然に生えてくるままにしています。
仕立てはコルドーネ スペロナートです。モンタルチーノはこの仕立てがほとんどです。コルドーネ スペロナートは作業がしやすいので、モンタルチーノでは国際品種以外はこの仕立てをしています。実は、グイヨやカポヴォルトなど他の仕立てを試してみたこともあったのですが、仕事のしやすさの面で向かなかったこともあって、採用していません。
「例年通り」と呼べる年が減り、その年ごとの気候への対応が重要
―温暖化についてはどのような対応をしていますか?
温暖化というよりも、“例年のような”と表現できるような普通の年が減っていますね。以前だったらこの時期にはこれをやって、という決まった時期にすればよかった仕事が、その通りには行かなくなりました。だから毎日畑の状態をチェックして、必要な手入れをしなければなりません。
特に夏の間はより厳しく畑のモニタリングをします。特に最近は病気の発生が多く、トスカーナでは2023年はベド病の被害が大きかったです。私達はアグロノモと一緒に祖父と叔父達で対応して収穫できましたが、ビオロジックの生産者ではほとんど収穫できなかったところもあります。
2010年、2011年、2012年と良いヴィンテージが続きましたよね。でもここ最近は良い年だったり悪い年だったりと、その年ごとの気候の特徴が違ってきているのでそれに対応することが大切になっています。
―前回訪問した時に、カーゼバッセとピエーヴェ サンタ レスティトゥータ(ガヤ)に隣接している畑を見せてもらいました
その区画は当時はブルネッロを造っていたのですが、現在は他の区画でブルネッロの認定を受けたので、両者と隣接しているその区画は認定が外れたんです(ブルネッロ認定畑の面積を増やすことができないため)。将来的に、またその区画に認定を戻すかどうかはまだわかりません。

※手前がファットーイの土地、右奥がピエーヴェ サンタ レスティトゥータ、左奥がカーゼ バッセ
熟成は大樽。樽の影響が出ないようにすることがサンジョヴェーゼには重要

ここが熟成庫になります。ほとんどが大樽ですが、この部屋のスペースの関係で若干小さめの樽もあります。例えばこの樽はこのスペースに合わせてヴェネトの樽メーカーにオーダーメイドしてもらいました。樽の種類によって味わいが変わるので、新しく大樽を購入する際、いろいろと検証しました。こうして選んだ大樽にしてからワインがクリーンで正確になったと感じます。
大樽にワインを移してから1年に少なくとも3回移し替えを行います。沈殿物は取り除きますが、フィルターはかけません。同時にこのタイミングで熟成の進み具合をチェックします。サンジョヴェーゼは樽のニュアンスが出ないようにすべきだと考えているので、そこにも気を配っています。
サンジョヴェーゼ100%の4つのワイン「ブルネッロ ディ モンタルチーノ リゼルヴァ」「ブルネッロ ディ モンタルチーノ(アンナータ)」「ロッソ ディ モンタルチーノ」「トスカーナ ロッソ」を生産

私達は4つのサンジョヴェーゼ100%のワインを造っています。リゼルヴァ、スタンダードのブルネッロ、ロッソディモンタルチーノ、IGTロッソです。良いキュヴェ1樽分だけをリゼルヴァにして、3000本ほど造っています。
畑はブルネッロで7ha、ロッソで2.5haの認可を受けていますが、両者のブドウの出来はそんなに変わらないです。特に良いヴィンテージだとその差はほとんどありません。サンジョヴェーゼしか植えていないので、ある意味、選び方は自由です。醸造の段階でアルコール度数の低いキュヴェや若い樹齢のものがロッソ ディ モンタルチーノになります。2018年以前は、IGTロッソ専用の畑はなかったので、例えば2014年はブルネッロが例年の3分の1しか造ることができなかったので、IGTロッソの生産量が増えました。
2021年から醸造家ジュゼッペ ゴレッリ氏に依頼、ワインがより正確でやわらかなスタイルに
2021年からジュゼッペ ゴレッリ氏(※)に醸造に入ってもらいました。ゴレッリ氏から醸造の技術的な指導を受けていることでワインのスタイルが変わったと思います。より正確で柔らかくなってます。彼は特に伝統的スタイルに拘っているわけではなく、飲んだ時にワインが口の中でどう広がって発展していくか、そしてタンニンとストラクチャーのバランスを重視した醸造をしています。
ジュゼッペ ゴレッリ氏は、前の奥さんとポタツィーネというカンティーナを経営していましたが、現在はご自身の名前で小さなカンティーナを立ち上げています。その一方で、モンタルチーノやモンテクッコ、スカンサーノ、ヴァルポリチェッラ、ヴァルテッリーナ等の様々なワイナリーの醸造コンサルタントもしています。ちなみに彼の甥のガブリエレ ゴレッリ氏はマスター オブ ワイン(MW)で、現在はモンタルチーノ協会の仕事をされています。
※ジュゼッペ ゴレッリ氏(1964-)
18歳の時に伝説的醸造家ジュリオ ガンベッリ氏の運転手兼助手として働き始め、長年ガンベッリ氏と共に様々なワイナリーに同行、ワイン造りにおけるガンベッリ哲学を学ぶ。現在はモンタルチーノを始め、イタリア各地のワイナリーで醸造指導を行う一方で、自らの名前のワイナリーを立ち上げ、偉大なブルネッロの生産者のひとりとして名を連ねている。
インタビューを終えて
ワインに向き合う姿勢は変わらずとも、ジュゼッペ ゴレッリ氏に指導を仰ぐなど、ファットーイのワインは確実に変化していました。以前はブドウの力強さがそのままワインに表れていて、それはそれで非常に美味しかったのですが、今はやわらかを感じさせるスタイルで、パワフルさと繊細さがいいバランスになっていると感じました。モンタルチーノ屈指の優良区画ながらも良心的な価格で楽しめるファットーイ。ブルネッロはもちろんですが、ロッソもIGTも衝撃的に美味しいのでぜひ味わっていただければと思います。




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