“キャンティ クラシコの歴史的中心”ラッダ イン キャンティ「コッレ ベレート」訪問インタビュー

2026/01/22

2025/10/21

ベルナルド ビアンキ氏 Mr. Bernardo Bianchi

「ワイン造りとは、答えのない問いに挑み続ける、まさに雲を測るような行為だ」
“キャンティ クラシコの歴史的中心地”ラッダ イン キャンティに1000年続く農園を取得!最高の技術と情熱を注いで造る洗練されたキャンティ クラシコ「コッレ ベレート」訪問インタビュー

2025年10月、キャンティクラシコの造り手コッレ ベレートを訪問してきました。コッレ ベレートがあるラッダ イン キャンティは、1716年にトスカーナ大公コジモ3世がキャンティの生産を認めた区域です(※)。つまり現在のキャンティ クラシコ認定エリアの中でも、最も長い歴史のある場所になります。

ワイナリーのテラスからは、ラッダの丘に広がる美しい畑と、ラッダの街並みが臨めます。まさにラッダの中心にあるのがコッレ ベレートです。2010年に取引を始めてからのお付き合いとなるベルナルド ビアンキ氏にワイナリーを案内して頂きました。

※当時すでに偽物が造られていたキャンティを規制するために造られた法律。特定の地域で造ったワインだけをキャンティとすることを定めた画期的なものでした。ラッダ、ガイオーレ、カステッリーナとグレーヴェの一部(パンツァーノ)が認定されています。

畑があるのは丘の斜面だけ。畑、房、粒、それぞれの段階で厳しく選別


※カンティーナのバルコニーから見えるコッレ ベレートの畑

今日は来ていただいてありがとうございます。残念ながらあいにくのお天気なので畑に近づくことはできないのですが、ここから畑の様子は見て頂けます。ご覧の通り、畑があるのは斜面だけです。コッレ ベレートは、斜面地だけを畑にしてブドウを育てています。土壌はガレストロ土壌になります。全てビオロジックです。

ワインはアルコール度数が14%ほどですよね。つまり、ワインの中味の大部分は水だということになります。その水は地中からブドウの根が吸収したものなので、どこで育ったブドウかがワインには重要になります。私達は灌漑は行っていませんが、灌漑をしているワイナリーもあります。でも、それだとワインの味が単一になってしまいます。

灌漑をしない栽培は、たとえ醸造家が変わったとしてもワインの個性は変わらないはず。もちろん、ヴィンテージごとの違いはありますが、土壌と水がもたらすものは不変なのです。

コッレ ベレートでは畑の段階、収穫後の房の段階、除梗した後の粒の段階で選別を行っています。徹底的に人の手が選別した健康なブドウの粒だけを使ってワインにします。キャンティ クラシコとリゼルヴァは同じ畑のサンジョヴェーゼですが、果皮が厚くタンニンが豊富なブドウをリゼルヴァにしています。

(除梗後、1粒1粒、人の手で丁寧に選別している様子)

10月後半は発酵を終えたワインが熟成の工程に入り、ワイナリーは超多忙

(階段を上って2階へ移動)

この部屋は、醸造用のタンクが置いてある場所になります。実は今日は様々な仕事をやらなければならない重要な日なんです。今はキャンティ クラシコ リゼルヴァの発酵が終わって、残った果皮を抜く作業中です。果皮はグラッパ用に蒸留所へ送りますが、一部は肥料に使って再利用しています。この果皮ですが、苦いだけですが舐めてみますか?(舐めてみたら本当に苦いだけでした(笑))

澱引きをしたばかりのリゼルヴァも飲んでみてください。今はまだタンニンが前面に出ていますが、3年ほど熟成させれば落ち着き、バランスが取れていきます。今の時期は、2025年収穫のワインを少しずつ熟成用の木樽に移し替えていく作業を行っています。そして熟成を終えた2021年や2022年のワインを木樽からステンレスタンクに移し替えて、ボトリングの準備に入っていくことになります。

(隣のバリック庫、大樽の熟成庫へ移動)

こちらはバリック庫になります。この樽は洗浄中で、こちらの新しいバリックは今年収穫したイル トッコ(メルロー主体で造るスーパータスカン)を入れるためのものです。

熟成はワインによって大樽とバリックを使っています。グランセレツィオーネの熟成にはオーストリア産の大樽を使います。樽に使う木はオーガニックのものです。それからこちらはトスカーナのメーカーの大樽です。この樽メーカーは、森林をGPSで管理していて、どの木を使ってコッレ ベレートの樽にするのかを指示しています。

100%自社畑のブドウを自社の醸造所内でボトリングしていることを表示することで品質を保証

(1階に降りてボトリングの部屋へ移動)

こちらがボトリングをする部屋になります。ボトリングしたワインはラベルを貼らずに木製の箱に入れて寝かせます。1つのタンクが1つのロットということになり、キャンティ クラシコの場合はロットは一つです。

イタリア国内のレストランならばワイナリーまで来て試飲をし、そのロットが気に入ったら購入してくれます。コッレベレートは生産量の約60%をトスカーナのレストランに販売していますが、彼らは実際に飲んでから購入するのでどんな味かを理解して購入しているわけです。残念ながら全てのお客様がロットを確認して購入できるわけではありません。でも、私達はロット番号はとても重要だと考えています。

例えば、ラッダ イン キャンティの町のスーパーマーケットなどでたくさんのキャンティ クラシコが売られていますが、大手メーカーのワインだと、同じヴィンテージでもたくさんのロットが存在します。いくら同一メーカーの同一ヴィンテージのキャンティ クラシコだとしても、ロットが違うと味は変わります。

それから最も重要なポイントとして、私達の裏ラベルには「INTEGRALMENTE PRODOTTO E IMPOTTIGLIATO ALL’ORIGINE NELLE CANTINE DELL’AZ. AGRICOLA COLLE BERETO(完全にコッレ ベレート社で生産された製品でありコッレ ベレート社のカンティーナでボトル詰めされています)」と印字しています。つまり、100%自社畑のブドウを自社の醸造所内でボトリングしていることを表記しています。この表記をすることでお客様に品質とトレーサビリティを保証しています。

装飾品の金属加工の職人からヨーロッパを代表する装飾品メーカーとなったピンザウティ家

それでは、地下のワインセラーに行きましょう。ここは、2009年からのボトルを保管しています。ワイナリーの創業は1979年で、1980年から2008年までのボトルは一つ上の階のセラーで保管しています。

この部屋はワイナリーの歴史背景や、ワイナリー哲学を感じ取ってもらえるようなしつらえにもしています。コッレベレート社は、フィレンツェでアクセサリーなどの装飾品メーカー(leo france)を経営しているピンザウティ ロレンツォとフランカ夫妻が、1000年近い歴史のある農園「コッレベレート」を購入して立ち上げたワイナリーです。約1000年の歴史がある農園で、1100年前の建物と1400年前の建物を今でもワイナリーの一部として使っているんですよ。

ロレンツォは農家の息子でしたが、16歳から金属加工職人として働き、その腕前が認められて世界各国のブランドからオーダーが来るようになりました。会社を作り、今ではヨーロッパにおける金属装飾品メーカーのトップ会社のひとつとなっています。

妻のフランカはいわゆるアイデアマンで、ロレンツォはフランカのアイデアを実現化する、という二人三脚で事業を大きくしてきました。現在は息子のレオナルドと娘のフランチェスカが会社を引き継いでいるとともに、会社の20%の株式をシャネルが保有していることで共同経営の形をとっています。

「ワイン造りとは、答えのない問いに挑み続ける、まさに雲を測るような行為だ」
数年前からロレンツォとフランカは芸術家たちを支援する活動を行っています。芸術家たちがトスカーナを支え、文化を発展させてきたという歴史背景があり、その芸術家たちのおかげでトスカーナ文化の中にワイン文化がある、と考えているからです。

ワイナリーのバルコニーの、畑が見張らせる場所に彫刻を設置しているのですが、それは現代アーティストのヤン ファーヴルの作品「L’uomo che misura le nuvole(雲の量を測る人)」で、フィレンツェのシニョリーナ広場で展示されていたのを買い取ったものです。

この作品『雲の量を測る人』は、実体のない「雲」を定規という物理的な道具で測る不可能な行為に挑戦しようとする人間のひたむきな姿や、測れないものを測ろうと努力する謙虚な人間の姿の象徴なんだそうです。また、早くして亡くなったヤン ファーヴル氏の弟へのオマージュでもあるそうで、それは、祈りと生と死を連想させる神聖なものでもあるとのこと。

そんな作品を、カンティーナでは、ブドウ畑を一望できる場所にこの作品を配置しています。

まさに、コッレベレートにとって「雲を測る」という行為は、制御できない神のような自然との対話を繰り返しながら、最高の品質のワインを追い求める彼らの挑戦する事であり、日々、真摯な気持ちでワイン造りに携わる祈りのようなものでもあるわけです。

ワイナリーのテラスに展示されているヤン ファーヴル(Jan Fabre)作
『L’uomo che misura le nuvole(雲の量を測る人)』

インタビューを終えて

改めてコッレベレートを訪ね、オーナー夫妻の美学が細部まで浸透していることに感銘を受けました。ハイブランドの金具製作を本業とする夫妻は、生粋の職人。その手仕事への敬意は、一切の妥協がない選果や醸造、さらにはスタッフの労働環境への様々な配慮に及んでいます。

畑もカンティーナも、比類ない美しさと清潔さに満ちています。象徴的だったのは、入り口に掲げられたヤン ファーブルの彫刻『雲を測る人』です。

実体のない雲を定規で測ろうとする「不可能な問いへの挑戦」や「ひたむきな謙虚さ」を象徴するこの作品は、正解のないワイン造りに挑み続ける夫妻の哲学そのものだと感じました。

見学後、創業者の娘フランチェスカさんの居間でいただいたのは、自社小麦の手打ちパスタ「ピチ」とビステッカ。スタッフの皆さんの誇らしげな笑顔が印象的でした。

また、彼らが敬愛するモンテヴェルティーネの当主マルティーノさんとも醸造責任者のベルナルド氏は家族ぐるみの付き合いがあるとのこと。背景は違いますが、ラッダ イン キャンティの可能性を追求し、ブドウのポテンシャルを生かし、熟成の可能性を追求する「職人気質」という共通の志あって、良い関係を築いているのだと感じられました。

今回、オーナー夫妻のお二人がこの彫刻に込めた深い思い入れに触れたことで、コッレベレートというワイナリーへの尊敬の念が、より確固たるものになりました。