テロワールの個性を映し出すバローロの歴史的名門「ヴィベルティ ジョバンニ」突撃インタビュー

2025/03/05

2025/02/19

クラウディオ ヴィベルティ氏 Mr. Claudio Viberti、アンドレア マスエッリ氏 Andrea Masuelli

テロワールの個性を極めたクリュ&その調和が生む至高のクラシック バローロ!バルベーラの頂点に輝くなど躍進し続ける歴史的名門「ヴィベルティ ジョバンニ」突撃インタビュー

1896年からバローロ村で宿泊施設を兼ねたレストランを経営するヴィベルティ家。1923年にバローロの畑を取得し、現在のフラッグシップワインであるバローロ ブオン パードレを生産し始めました。長い歴史を経てバローロ村を中心に畑を拡大し、現在では9ヶ所のクリュ バローロの畑を所有しています。「テロワールの典型性を表現すること」を重視した造りで、同じネッビオーロでもランゲ ネッビオーロ、クラシック バローロ、クリュ バローロと明確に異なる個性を放っています。そんな素晴らしいワインを試飲しながら、今回は3代目当主クラウディオ ヴィベルティ氏と輸出担当のアンドレア マスエッリ氏にお話を伺いました。

「テロワールの典型性を重視」
ヴィベルティ家が追求するネッビオーロ哲学

――1年ぶりのインタビューですね。改めて、ワイン造りについて教えてください。

1年前、みなさんがバローロ サン ピエトロに感動していたことをよく覚えています(笑)。そのクリュ ワインのように、私たちは、テロワールを純粋に映し出すワイン造りを目指しています。ランゲ ネッビオーロからクラシック バローロ、そしてクリュ バローロまで、それぞれの個性を最大限に表現することを大切にしています。もちろん、バルベーラやティモラッソも同様です。

点在するクリュを統合し、伝統的な大樽で造るクラシック バローロ
ワイナリーを代表するフラッグシップ「ブオン パードレ」は、伝統的なクラシック バローロです。クラシックとは、点在する畑(クリュ)のブドウを統合したスタイルを指す言葉です。1つのクリュだけでは、毎年安定した品質を保ちながら優れたバランスを引き出すことは難しいと考えています。

伝統的とは、ティーノという縦型の大樽の使用を指します。そして、私たちが所有する畑はほとんど南西部(バローロ村)に位置しており、エレガントな味わいが現れます。

明確に異なる個性の際立つクリュ バローロ
クリュ バローロは、毎年造りません。「テロワールを表せる気候」と「ブドウの品質」の2つを基準にして、生産するかどうかを決定しています。造らない年のブドウはすべて、ブオン パードレに使用されます。

「サン ピエトロ」は、フィネスとエレガンスの極みといえるワインです。タンニンは滑らかで収斂性がなく、ほどよい力強さで食事にも合わせやすいです。単体で飲むのにも適しています。

「ラ ヴォルタ」は、オールドスクールのバローロと言えます。鉄分のニュアンスが特徴的で、昔ながらの味わいですね。私たちヴィベルティ家の歴史を感じるワインです。

「ブリッコ デッレ ヴィオレ」は、グラスに注いだ瞬間に「これはヴィオレだ」とわかるワインです。他の生産者よりも狭い区画のみで造るので、ここの個性であるボタニカルな風味が顕著に現れます。
上記クリュ3つは全てバローロ村に位置
ブドウマーク:所有畑の場所

バローロとランゲ ネッビオーロの明確な違い
「ランゲ ネッビオーロは、フルーティな個性を最大限に引き出したい」

ランゲ ネッビオーロとバローロは、まったく個性が異なる別のワインであるべきだと考えています。私たちのバローロとランゲ ネッビオーロの違いは、まず畑の環境にあります。ランゲ ネッビオーロは比較的涼しい西向きの畑で栽培されるのに対し、バローロは日照に恵まれた南・東向きの温暖な畑です。

醸造方法も異なります。ランゲ ネッビオーロは発酵期間が短く、最大20%をマセラシオン・カルボニックで発酵を行い、熟成にほとんど時間をかけません。その結果、第1アロマが際立ち、柔らかなタンニンを持つフルーティな味わいに仕上がります。一方、バローロは発酵期間が長く、成分の抽出をしっかり行い、熟成にも十分な時間を費やします。

私たちのランゲ ネッビオーロは、そのフルーティな個性を最大限に引き出したいと考えています。一部マセラシオン・カルボニックを行うのはそのためです。「ベイビーバローロ」と呼ばれるものではなく、ヴィベルティ家として目指すのは、よりフレッシュで飲み心地の良いものなのです。

ヴィベルティが世界に誇る多彩なラインナップ
新登場ロゼ、躍進し続けるティモラッソ、世界一のバルベーラ

少量限定、ネッビオーロ100%ロゼワインが新登場
――最近のニュースは何かありますか?

ネッビオーロ100%のロゼワイン(2024年ヴィンテージ)を造ったことですかね。このプロジェクトは、10年前に取得したネッビオーロの畑でロゼを造るという構想から始まりました。当初、バローロに使われるランピアというクローンを植えたと思っていたのですが、実際にワインが完成すると、そのネッビオーロはロゼ用のクローンだったことがわかったんです。

というのも、出来上がったワインは淡い色合いでアルコール度数も低かったんです。しかし、それはロゼの特徴を表すとても素晴らしい仕上がりでした。夏にぴったりなロゼワインで、夏に向けて在庫がゼロになるくらいの8,000本程度しか造っていません。

将来性抜群の注目品種ティモラッソ
品種本来の個性が生まれる標高300m以上のモンレアーレに畑を所有

2023年ヴィンテージのティモラッソも素晴らしい仕上がりです。昨年、一緒に試飲した2022年も良かったですが、この2023年は、テロワールがより反映されていてボニッシモ(とても美味しい)です(笑)。コッリ トルトネージの中でも、標高300mを超える高地にあるモンレアーレに畑はあり、ティモラッソ本来の個性が現れやすいエリアと言われています。

私の本業はバローロとバルベーラですが、ティモラッソを造り始めたのは、この品種に大変惹かれたからです。イタリアには偉大な赤ワインは多くありますが、白ワインは4、5種くらいでしょう。ティモラッソは、その仲間入りを果たすブドウだと考えており、大きな未来があるピエモンテの土着品種です。そのことを、ぜひお客様に知っていただきたいですね。

バルベーラの頂点に輝く「ラ ジェメッラ」
バルベーラは、私の造り手としての情熱でもあります。なぜなら、美味しいバローロを造るよりも美味しいバルベーラを造るほうが難しいと感じているからです。バルベーラ ダルバ ラ ジェメッラは、2000年代前半に始まったプロジェクトです。

その頃、多くのバローロ生産者が、それまで植えられていたバルベーラをネッビオーロに植え替えるなか、私たちはそれに反してバルベーラをより植えていきました。畑は標高450mにあり、よりフレッシュな酸を持つバルベーラを造っています。

今日、あらゆる場所で栽培されるバルベーラですが、最高品質のバルベーラを見つけ出すのは至難の業です。そんななか、ラ ジェメッラ(2022年)は、2024年版『ワインスペクテーター』の年間TOP100で42位に選ばれました。バルベーラとして選出されたのはラ ジェメッラだけです。バローロが選出されるのは理解できますが、バルベーラの選出はすごいことだと思います。

夏にぴったりのネッビオーロ100%ロゼが新登場!

ロザータ ラ ジェメッラ 2024
ロザータ ラ ジェメッラ 2024

クラウディオ氏:
「新登場のロゼです。このワインは、10年前に購入したネッビオーロの畑でロゼを造るという構想から始まりました。ロゼ用のネッビオーロクローン100%で造られており、淡い色合いと低アルコール度数が特徴です。ミネラル感のあるロゼらしい仕上がりになっています。夏にぴったりの味わいで、夏に向けて在庫がなくなるくらいの8,000本程度しか造っていません。畑の広さは0.8haですが、将来的にはさらに低アルコールのロゼの生産量を増やしていきたいと考えています」
試飲コメント:淡いピンク色。注いですぐにフルーティな香りが漂います。フレッシュで爽やかな赤い果実と白い果実。フレッシュな酸と小さい実の果実などのフルーツ感に満たされます。

フレッシュな酸と優しさが共存する濃密なバルベーラ

バルベーラ ダルバ ラ ジェメッラ 2022

バルベーラ ダルバ ラ ジェメッラ 2022

クラウディオ氏:
「私の造り手として情熱を持つバルベーラです。ジェメッラとは双子を意味し、双子である母親のために造られたワインです。2000年代前半に始まったプロジェクトによって誕生しました。その頃、多くのバローロ生産者がバルベーラをネッビオーロに植え替えるなか、私たちはそれに反してバルベーラをより植えていきました。高密植の7,000株(/ha)で栽培し、収量制限をしています。除梗を徹底し、苦味やえぐみを抑えた濃密な味わいに仕上げています。標高450mの畑がもたらすフレッシュな酸と、甘やかさや優しさも感じるバルベーラです」
試飲コメント:やや濃いルビー色。黒い果実やジャムが香る濃厚かつエレガントなアロマ。ハーブの要素も感じます。口当たりは滑らか。フレッシュで凝縮感があり、そして目の詰まった果実感に満たされます。丸みがあり、バランスに優れた味わいが持続します。

バローロとは明確に異なる個性!
フレッシュさとテロワールの典型性を表現するランゲ ネッビオーロ

ランゲ ネッビオーロ 2022

ランゲ ネッビオーロ 2022

クラウディオ氏:
「私たちが造るランゲ ネッビオーロは、フレッシュさとテロワールの典型性を表現するものだと考えています。バローロとは明確に個性が異なります。比較的冷涼な畑で造り、20%以下を房ごとマセラシオン・カルボニックし、イチゴのような香りを引き出しています。フルーティでスムースで柔らかなタンニン、そしてドライな味わいを目指しています。マセラシオン・カルボニックは2014年に導入しました。雨の多い年で、フレッシュな香りを引き出すために採用したところ、期待以上の結果が得られました。以降、本格的に導入して、現在も品質と一貫性を保つために続けています」
試飲コメント:縁がオレンジがかった淡いルビー色。赤い果実やドライフラワーを感じる、明るさと深みのある香り。ハーブのニュアンス。香り同様の統一感のある味わい。タンニン、酸、果実味などすべての要素が同程度に現れ、それらが見事に調和しています。

洗練された複雑味と見事なバランス
ヴィベルティを代表するクラシック バローロ

バローロ ブオン パードレ 2020

バローロ ブオン パードレ 2020

クラウディオ氏:
「ワイナリーを代表するクラシック バローロです。クラシックとは複数の畑を統合することで、バランスの取れた最高品質の味わいを引き出しています。また、私たちが所有する畑は西側に位置しており、エレガントな味わいが生まれます。そのエレガンスを引き立てる伝統的なティーノという大樽を使用しています。2020年ヴィンテージは2018年に似た飲み心地で、すでに飲み頃を迎えていますね。主張しない柔らかいタンニンも最大の特徴の1つですね」
試飲コメント:淡いガーネット色。赤い果実やドライフラワー、熟した果実、ハーブ、花など、複雑かつ力強い魅惑的な香り。香り、味わいともに優れたバランスがあります。香りに感じた要素の味わいが、樽のニュアンスと見事に溶け合っており、エレガンス溢れる余韻に満たされます。

フィネスとエレガンスを極めたクリュ バローロ

バローロ サン ピエトロ 2018

バローロ サン ピエトロ 2018

クラウディオ氏:
「クリュ バローロのサン ピエトロです。畑は標高410mで、クリュ全体で17haあるうちの1haを所有しています。マール土壌がもたらすワイルドベリーやブルーベリーのニュアンスが特徴的です。5年間の樽熟成と1年間の瓶内熟成を経て、フィネスとエレガンスを極めたバローロです。タンニンは滑らかで甘みがあり、単体でも食事と合わせても楽しめる味わいです。年間生産量は約3,200本です」
試飲コメント:ガーネット色。熟した黒系果実、レザー、ドライフラワー、ミネラルを感じる力強い香り。わずかに甘やかさも感じます。豊かな果実味と華やかさが際立つ優美な味わい。存在感がありながらも滑らかなタンニンが、長い余韻を演出します。

ヴィベルティ家の歴史が詰まった昔ながらのクリュ バローロ

バローロ ラ ヴォルタ 2018

バローロ ラ ヴォルタ 2018

クラウディオ氏:
「ラ ヴォルタはオールドスクールなバローロです。鉄分が強く、血のようなニュアンスが特徴で、味わいはほろ苦くも心地よいです。ヴィベルティ家の歴史が詰まってる昔ながらの味わいです。他のクリュ バローロ同様、5年間の樽熟成と1年間の瓶内熟成。2018年ヴィンテージは、今からでも楽しめる状態です。畑は3.2haありますが、生産量は約2,000本でクリュとして使用するのはごく少量です。それ以外の大部分はブオン パードレに使用しています」
試飲コメント:輝きと深みのあるガーネット色。熟した赤系果実が際立つ、力強くエレガントな香り。香り同様に、力強さとエレガントさが共存した味わいです。フレッシュな果実に加えて、レザーやミネラル感、スパイス感、そして収斂するタンニンが調和しています。

グラスから溢れ出すボタニカルな香り
畑の特性が最大限に引き出されたクリュ バローロ

バローロ ブリッコ デッレ ヴィオレ 2018

バローロ ブリッコ デッレ ヴィオレ 2018

クラウディオ氏:
「ブリッコ デッレ ヴィオレは、希少なクリュ バローロです。なぜなら、この区画を所有する他の生産者は、複数の区画をブレンドすることが多いなか、私たちはブリッコ デッレ ヴィオレのごく一部の単一区画で造っているからです。そのため、畑の特徴が際立っています。グラスに注いだ瞬間に、ボタニカルな香りが広がって、すぐにヴィオレだとわかっていただけます。タンニンとミネラル感にも優れ、テロワールが表すフレッシュさも表現されています」
試飲コメント:綺麗に輝くガーネット色。注いだ瞬間にグラスから溢れ出すハーブの香り。口当たりは柔らかく滑らか。ドライフルーツや花、ハーブを主体に、ミネラルをも感じるエレガントな味わいが染み渡ります。

標高300m超のモンレアーレで造られ、フレッシュ&ミネラリーなティモラッソ

デルトーナ ティモラッソ 2023

デルトーナ ティモラッソ 2023

クラウディオ氏:
「ティモラッソは、私が魅了された白ワインの1つです。ピエモンテ東部コッリ トルトネージの、モンレアーレ地区で造られています。ここは標高300mと標高が高いエリアで、ティモラッソ独自の味わいが引き出されます。2022年は3ヴィンテージ目ですが、毎年品質が向上していて、素晴らしい仕上がりとなりました。大きな未来を持つピエモンテの土着品種ティモラッソの存在を、みなさんに知っていただきたいですね」
試飲コメント:麦わら色よりの黄金色。熟した黄色い果実と石などのミネラルを感じる力強い香り。南国果実のニュアンスもあります。フレッシュな酸が際立ち、柑橘や海のニュアンスを感じる味わいです。

香り高く濃密な個性が表現されたシャルドネ

フィレバッセ ピエモンテ シャルドネ 2023

フィレバッセ ピエモンテ シャルドネ 2023

クラウディオ氏:
「1988年から栽培を始めたシャルドネです。フィレバッセは列の一番下を意味し、畑の下部に植えられた末っ子的な存在です。父が植えたシャルドネを、10年かけて自分の理想に近づけて完成させました。低温発酵で、果皮、澱とも混ざることなく、ステンレスタンクでほぼ真空状態で熟成をさせています。香り高く濃密で、シャルドネの個性をそのままクリーンにを表現しています」
試飲コメント:麦わら色。リンゴなどの白い果実、洋梨、小石を感じる香り。ややアロマティックなニュアンスも。程よい酸と果実感が見事に調和していて、心地よい余韻を感じます。

SO2不使用で造られる樽熟成の上級シャルドネ

リナート ランゲ シャルドネ 2022

リナート ランゲ シャルドネ 2022

クラウディオ氏:
「リナートは、独自のスタイルを追求したシャルドネです。畑は、フィレバッセの上部に位置しています。SO2不使用、シュールリー製法で醸造しています。低温発酵のフィレバッセに対し、リナートは1000Lの樽を用いて室温で発酵しています。エチケットは、私たちのレストラン、ブオン パードレの外観が描かれています。右上の部屋は私のオフィスです(笑)」
試飲コメント:黄金色。熟した黄色い果実やミネラル感、はちみつのニュアンスの香り。香りに感じた味わいに加え、バターやバニラが混ざり合っています。苦味を伴う余韻がやってきます。

インタビューを終えて

バローロ ブオン パードレ2020年、絶品でした。昨年試飲した2018年ヴィンテージよりも、さらに複雑で魅惑的な香りが広がり、すべての要素が美しく調和したエレガントな印象でした。テイスティングメモを見返すと、メモの量が圧倒的に多かったのはブオン パードレでした。

そして、クリュ バローロ。今回試飲した3種は、いずれもバローロ村の隣接した畑ですが、それぞれが全く異なる表情を見せていました。改めて比較試飲の重要性を強く実感しました。サン ピエトロは、豊かな果実味と華やかさが際立つ優美な味わい。ラ ヴォルタは、力強いタンニンとエレガントさが共存するバランスの取れた仕上がり。そしてブリッコ デッレ ヴィオレは、一度嗅いだら忘れられないハーブの香りが印象的でした。それぞれのクリュが持つ異なる個性を存分に味わうことができました。

また、彼らの公式ホームページには、各畑の位置が独自のイラストで描かれており、視覚的にも非常にわかりやすくまとめられています。ぜひその情報も参考にしながら、ヴィベルティのワインをご堪能ください。