2025/11/12
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ジョヴァンニ モンティッシ氏 Mr. Giovanni Montisci
最高峰カンノナウの銘醸地マモイアーダの第一人者!300年変わらぬ畑が生む深みと長期熟成力「ジョヴァンニ モンティッシ」

大注目産地マモイアーダの第一人者
独学で築き上げた最高峰カンノナウ
私はサルデーニャ州マモイアーダの出身で、1995年からブドウ栽培を始めました。同じくマモイアーダ出身の妻フランチェスカと結婚し、彼女の実家が所有していた樹齢100年を超える古い畑でブドウ造りを始めたことが、ワイナリーの始まりです。初ヴィンテージは2004年になります。
その畑は1ヘクタールにも満たないものでしたが、少しずつ畑を取得していき、現在は3.5ヘクタールまで拡大しました。収穫期を除けば、畑仕事から醸造まで、ほぼすべてを私一人で行っています。

すべて手作業でおこなうワイン造り
――ブドウ栽培やワイナリーを始める前は、どのようなお仕事をされていたのですか?
10代の頃から学校に通いながら車のエンジニアとして働いていました。もともとワインが好きで情熱もありましたし、エンジニアの仕事に疲れたこともあって(笑)、ワイン造りを始めました。
――ワイン造りはどなたかに教わったのですか?
すべて独学です。最近新しく畑を増やしたので、いずれ人に頼むことがあるかもしれませんが、基本的には全て自宅の作業場で一人で行っています。
すべての工程を「手」作業で行う
『ガンベロロッソ』Vini Rari選出
マモイアーダの象徴的存在へ
中川原 彼はマモイアーダで最も知られた生産者です。『ガンベロロッソ』のVini Rari(※)にも選出されていますし、その影響を受けてワイン造りを始める若手も増えています。中には、彼のラベルを模したデザインの生産者までいます。それほど大きな存在で、マモイアーダをけん引する造り手ですね。
(※)突出した個性と希少性を備えたワインだけに与えられる賞
著しい品質向上に大きく貢献
10倍以上に増加したマモイアーダの生産者
――マモイアーダ全体の畑の広さと生産者の数を教えてください。
畑の広さは全体で約350ヘクタール。現在は35~40社がいますが、私が造り始めた当初は3社しかいませんでした。
中川原 この急増の背景には、彼の存在が大きいんです。マモイアーダは長い間、外から注目されてこなかった未開発な産地です。しかし、ジョヴァンニのワインが評価され始めてから、地域全体の動きが一気に活発になりました。最近はクオリティが著しく向上していて、印象に残るワインが本当に増えています。
エトナの黎明期を思わせる、サルデーニャの潜在力
中川原 このマモイアーダの一連の流れは、かつてのエトナを見ているようです。エトナも当初は18社ほどの小さな産地でしたが、今では世界的産地です。私は、これからのサルデーニャが非常に楽しみですね。ジョヴァンニは多くを語らない性格ですので、ワインそのものから彼の表現を感じ取っていただきたいと思います。
『ガンベロロッソ』Vini Rari選出の「フランヅィスカ」
標高700m超、厳しい山岳地帯が育むテロワール
300年変わらぬ姿で残るカンノナウの畑
マモイアーダはサルデーニャ島の中部、内陸の高地に位置しています。島の中央には山岳地帯が広がり、一帯は標高の高い丘陵が続いています。富士山のような山もあるんです(笑)。
村の標高は600メートルを超え、所有畑はおよそ700メートルです。最近新たに取得した区画は800メートルに達します。かつては、スペインの領土だったこともあり、主に栽培する品種はカンノナウ(グルナッシュ、ガルナッチャ)です。

中川原 マモイアーダは、「カンノナウの銘醸地」として最も有名な村です。島の人々も、品質の高いカンノナウが生まれる場所と認識していて、優れた畑の位置や特徴を細かく話してくれます。それだけ、ブドウ栽培とワイン造りの歴史が長いということです。
標高700メートルでも40度に達する極端な寒暖差
サルデーニャはずっと暑いですが、マモイアーダは標高が高いため、冬には雪が積もるほど冷涼でもあります。さらに風が強く吹く土地柄で、夏は日中40度を超える一方、夜は18度前後まで下がります。土壌の主体は古い花崗岩で、砕けて砂になるため畑は砂質土壌です。

カンノナウに一部モスカートが植えられてきた、伝統的な混植畑
中川原 こうした極端な環境で育つカンノナウは、他ではほとんど出会えない個性を持っています。マモイアーダでもう一つ特徴的なのがモスカートです。モスカートはイタリア全土で最も古い白ブドウとして知られていますが、このエリアでも昔からカンノナウの畑の一画に植えてあります。
外的影響を受けず守られてきたマモイアーダ
中川原 マモイアーダで特筆すべきことは、200~300年前から続くカンノナウの銘醸地であり、その風景がほとんど変わらず残っている点です。外部の影響を受けず、畑の姿がそのまま受け継がれてきました。
カンノナウと一部モスカートが植えられた古い畑は、現在も同じ姿として残っています。誰かが土地を取得しても植え替えることはせず、受け継いだ畑をそのまま生かすのがこの土地の文化です。ジョヴァンニの場合も同様でした。
――サルデーニャは食文化などを含めて、イタリア本土とは別世界ですよね。
中川原 サルデーニャは地理的に孤立していることもあり、イタリア本土の影響をほとんど受けていません。その独自性が、食文化だけでなくワイン造りにも強く残っています。ジョヴァンニの畑も平均樹齢は50年ほどで、どれも古いものばかりです。

優れた骨格と旨み、エレガンスが見事に共存
世界的長寿の島で造られる「長熟カンノナウ」
――ボリュームがありながら、旨みやエレガントさといった深みのある味わいが広がりますね。
中川原 私はラッダ イン キャンティの生産者との共通点を感じます。地形も含めて、ワインのニュアンスにどこか通じるものがあります。今年の『Vinitaly』で、ジョヴァンニがサルデーニャから「1ヶ月前に開けた」と言って持ってきたワインを飲んだのですが、驚くほど元気な状態でした。
――そういえば、昔から「カンノナウは長寿にきくワインだ」という話がありますよね。サルデーニャ島は長寿地域でもあるようですが、ご家族も長寿なのですか?
100歳を超える人はたくさんいます。私の家族もみんな元気です。平均寿命も日本と同じくらいです。もちろん、みんなカンノナウを飲んでいます。ちゃんと適量を守っていますけどね(笑)。あとは、サルデーニャならではの健康的な食事も大きいと思いますね。
旨みと複雑さに満たされる優美なカンノナウ ロゼ |
バローズ ロザート 2022 |
| ブドウは樹齢60年の古樹を含めたカンノナウを使用。開放桶で約25日間マセラシオンと自然発酵。オーク樽で7ヶ月熟成。無濾過、無清澄でボトリングしています。カンノナウらしい複雑性のある果実感。非常にバランスがとれていて、甘やか過ぎないチャーミングな果実味と酸が秀逸。旨味と飲み心地が素晴らしいロゼワインです。 |
| 試飲コメント:濃い玉ねぎの皮色。複雑で凝縮した赤系果実の香りがあり、フレッシュでエレガントです。繊細で軽やかな口当たりながら、厚みのある果実感と旨みが長く続きます。 |
完熟果実が広がる、滋味深い複雑味の辛口モスカート |
モデスト モスカート セッコ 2022 |
| ブドウは樹齢60年の古樹を含めたモスカートを使用。開放桶で約6日間マセラシオンと自然発酵。ステンレスタンクで6ヶ月熟成。無濾過、無清澄でボトリングしています。強くて複雑なフローラルとフルーティーの香り。風味豊かな塩味と心地よい柑橘類を感じます。ブドウの個性を感じながらも、ミネラリーな要素が味わいをまとめています。 |
| 試飲コメント:琥珀がかったにごりのある黄金色。完熟した黄色い果実の力強い香りに奥行きと複雑さがあり、わずかにハーブのニュアンスも感じます。味わいは香り同様に滋味深く、ジューシーさと苦味、完熟果実の広がりが重なり、旨みが長く続く余韻があります。 |
凝縮感と力強さ、クリーンネスが際立つ、
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カンノナウ ディ サルデーニャ バローズ 2022 |
| 評論家から「バローロとアマローネを合わせたような個性」と称された、濃密でストラクチャーのある質感のカンノナウ。ブドウの約10%は全房、残り90%は除梗して開放桶で約25日間自然発酵。スラヴォニア産のオーク樽で12ヶ月熟成。無濾過、無清澄でボトリングしています。カンノナウらしい複雑でスパイシーな果実感、力強さが表現された赤ワインです。 |
| 試飲コメント:ルビー色。力強く複雑で、スパイシーさと凝縮感のなかに芯の通ったクリーンさがあり、魅惑的かつ清々しい香りです。味わいも香りの要素がそのままエレガントに広がり、こなれたタンニンが全体を結び、長い余韻へと続きます。 |
樹齢100年超の単一畑カンノナウ リゼルヴァ
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カンノナウ ディ サルデーニャ リゼルヴァ フランヅィスカ 2021 |
| 樹齢100年を超える畑のカンノナウを使用。約30日自然発酵。1.5hlの大樽で24ヶ月熟成しています。スパイスを感じる熟した果実の香り。複雑で力強く、ストラクチャーのあるカンノナウです。 |
| 試飲コメント:ルビー色。非常に力強さがありながら華やかさも感じられ、完熟果実の複雑な香りが広がります。タンニンは力強いながらも緻密。しっかりとした骨格を備えつつ、複雑な風味が重なる余韻が非常に長く持続します。 |
インタビューを終えて
最初に試飲したロゼは、繊細で軽やかな口当たりと厚みのある果実感。モスカートは滋味深さと複雑味がゆっくりと染み渡り、スタンダードのカンノナウは凝縮感がありながらクリーンで魅惑的な風味が印象的です。そして圧巻だったのがカンノナウ リゼルヴァ。力強さと緻密さ、複雑性が見事に調和し、いくつもの要素が折り重なる余韻に長く長く満たされました。
中川原さんが話されていた「ワインそのものから彼の表現を感じ取っていただきたい」という言葉の意味が、非常によくわかりました。得られる情報量がとにかく多く、グラスの中で表情が変わるため、ずっと味わっていたいワインだと感じました。
今回は前日に抜栓した状態で試飲しました。抜栓直後より華やかさが増していて素晴らしかったです。ぜひ、日をまたぎながら、時間をかけてゆっくり楽しんでいただきたいです。








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