“ぐるぐるワイン”でおなじみの自然派「コスタ ディ ラ」

2026/06/11

2026/05/20

アルノ カッテル氏 Mr. Arno Cattel

プロセッコDOCGの銘醸地にいながら、昔ながらの伝統製法にこだわり自然発酵、ノンフィルター、SO2無添加のワイン造り。標高の違いをボトルに映し出す自然派コルフォンドの先駆者“ぐるぐるワイン”「コスタ ディ ラ」

今やナチュラルワインの世界で確固たる地位を築いた、澱(おり)を残したまま仕上げる濁り微発泡スタイル「コルフォンド」 。プロセッコの銘醸地であるヴェネト州コネリアーノ/ヴァルドッビアーデネの地で、失われつつあったこの伝統製法を現代に蘇らせ、世界中に広めた先駆者「コスタ ディ ラ」 。創業者エルネスト氏の遺志を継ぎ、世界最高峰のレストラン「ノーマ(Noma)」での経験を持つ新世代の当主にお話を伺いました。
    目 次
  • 昔ながらの「コルフォンド」を世に知らしめた功労者
  • 最初に誕生したスタンダードキュヴェ「330 slm」、日本のナチュラルワインシーンを揺るがしたオレンジワイン「モツ」
  • ラベルに描かれた「ラビリンス」── “ぐるぐる” が象徴する、自然と人間の巡り合わせ
  • 標高(slm)が映し出すグレラの多面性:3つのテロワールを紐解く
  • 世界の名店「ノーマ」からワイナリーへ!29歳の新当主アルノ氏が紡ぐ新たな物語

昔ながらの「コルフォンド」を世に知らしめた功労者

プロセッコの銘醸地として知られるヴェネト州コネリアーノの地で、近代的なシャルマ方式ではなく、昔ながらの伝統的な瓶内二次発酵の微発泡ワイン「コルフォンド」を知らしめたのが、2007年に故エルネスト カッテル氏を中心に5人のメンバーで設立された「コスタ ディ ラ」です。日本への輸入が始まった2009年当時、コルフォンドを製品にしていたのは、彼らと「カーザ コステ ピアーネ」など、ほんのわずかでした。急斜面の自社畑で、栽培、収穫したブドウを自然発酵させ、ノンフィルター、SO2無添加で、複雑な旨味をもたらすスタイルで注目を集めています。

コルフォンドとは
人為的な酵母や糖分を一切加えず、ブドウ本来の野生酵母と残糖(またはアパッシメントした果汁のモスト)のみで瓶内二次発酵を行う、いわゆる「メトド・アンチェストラーレ(先祖伝来の製法)」。澱(フォンド)をデゴルジュマンせずにそのまま残すため、ワインは濁り、底に旨みが沈殿します。この澱こそがワインを酸化から守り、独特の複雑味と滋味深い旨みをもたらすのです。

最初に誕生したスタンダードキュヴェ「330 slm」、日本のナチュラルワインシーンを揺るがしたオレンジワイン「モツ」

彼らのアイデンティティを語るのが、スタンダードキュヴェ「330 slm」です。標高250~350mの急斜面に育つグレラ100%を使用。ステンレスタンクで完全に発酵を終えたワインに、陰干しして糖度を高めた果汁をわずか2~3%だけ加え、瓶内二次発酵を促します。最新の2024年ヴィンテージは、目が覚めるような美しい酸と、どこまでもクリーンで爽快な果実味が弾ける圧巻の仕上がり。

そして、日本の自然派ワイン好きの間でコスタ ディ ラの名を決定づけたのが、微発泡オレンジワイン「モツ」。モスカートとグレラをマセラシオンすることで、アロマティック品種特有の華やかなアロマを引き出しつつ、コルフォンドのドライな骨格に着地させています。トップノーズの妖艶な香りと、口に含んだ瞬間の圧倒的にドライでタイトな柑橘系の酸。この心地よい味わいが、今なお多くのファンの心を掴んで離しません。

ラベルに描かれた「ラビリンス」── “ぐるぐる” が象徴する、自然と人間の巡り合わせ

コスタ ディ ラを語る上で外せないのが、愛好家から「ぐるぐるワイン」の愛称で親しまれる印象的なラベルです。実はこのデザイン、日本(37wines)との取引10周年を記念して2018年に生まれた日本限定のスペシャルラベルが始まりでした。モチーフとなっているのは、ケルト人が石を並べて描いたという「ラビリンス(迷宮)」の図柄。当初はワンシーズン限りの記念ボトルの予定でしたが、お客様から「あの“ぐるぐる”のワインを」という声が止まず、そのままワイナリーの象徴として定着しました。自然のサイクル、ブドウの発酵、そして人と人との縁が巡り続ける様子が、まるでこの渦巻きに表現されているかのようです。

標高(slm)が映し出すグレラの多面性:3つのテロワールを紐解く

コスタ ディ ラは、同じグレラという品種を用いながら、畑の「標高(slm = sul livello del mare:海抜)」の違いだけで3つの異なる世界観を表現しています。重機が入れないほどの急斜面で、すべての作業は手仕事で行われます。

450 slm
標高400~450mの最も過酷な高標高。硬質なミネラル感と結晶のような澄んだ酸。鋭さの奥に潜むエネルギーと、どこまでも押し寄せるすっきりとした旨みが特徴。

330 slm
標高250~350m。コスタ ディ ラが最初に造ったキュヴェ。果実のフレッシュネスと、伸びやかな酸のバランスが完璧。最もクリーンで万人を魅了する躍動感。

280 slm
標高250~300m。最も高樹齢のグレラ。心地よい揮発酸がワインに立体感を与え、驚くほど複雑。余韻の深みとエキゾチックなニュアンス。

世界の名店「ノーマ」からワイナリーへ!29歳の新当主アルノ氏が紡ぐ新たな物語

コスタ ディ ラ創業メンバーのひとりでアルノ氏の父エルネスト氏は闘病の末2018年に他界。この悲しみを乗り越え、現在ワイナリーを率いるのがエルネスト氏の息子で29歳の若き新当主アルノ氏です。大学で建築を学んだ後、料理の道へ進んだ彼は、世界一のレストランと称されるコペンハーゲンの「ノーマ(Noma)」や京都の名店で料理人として働いていた経歴を持ちます。

プライベートでも自宅で麹を育てて味噌や塩麹を自作するほど「発酵」への情熱が深く、日本文化をこよなく愛する彼だからこそ表現できる、自由でユニークなワイン造りが始まっています。

料理人としての確かな味覚を持つアルノ氏は、コスタ ディ ラのワインと和食の相性の良さを語ってくれました。

スティルワインの「330 slmフェルモ」(白・微発泡なし)には、 焼き白子を、瓶内で酵母と接触させて再発酵させる方法で造られたコルフォンド「330 slm」(白・微発泡あり) には、 大トロの刺身を、コンフォルドのオレンジワイン「モツ」 には、 焼き鳥(肝)・うなぎの肝を、極上の和食マリアージュとして、提案してくれました。

スティルワインが新登場
毎日に寄り添うグレラ100%のやさしい一本

330 slm フェルモ NV

330 slm フェルモ NV

「新しいキュヴェの、グレラ100%スティルワインです。グレラ100%の単一畑へと切り替えたことをきっかけに、このキュヴェに特化した造りを行っています。1リットル瓶を採用しており、イタリアの祖父の時代を表現したボトルです。ミルクボトルのように日常的に楽しんでほしいです。ステンレスタンクで発酵。除梗はせず全房で仕込み、マセレーションは行いません。樽も使用せず、SO2も添加していません。」
試飲コメント:ややにごりのある淡い黄金色。ゴールデンアップルを思わせる繊細な果実の香り。口当たりは柔らかく、香り同様に繊細な果実感が広がりますが、後口には厚みのある風味が押し寄せてきます。

標高330mの冷涼さを映した、
やわらかな泡に重なる、果実の爽やかさ

330 slm NV

330 slm NV

「標高330mの区画のブドウから造っています。伝統的な手法を採用していて、まずステンレスタンクで一次発酵を完全に終わらせ、その後にモストを2~3%加えて瓶内二次発酵を行います。酵母は添加していません。澱の量はヴィンテージによって変わりますが、このキュヴェは比較的少なめですね。」
試飲コメント:ややにごりのある淡い黄金色。白い果実と黄色い果実の繊細な香りに華やかさが重なります。泡は柔らかでクリーミー。心地よく程よい発泡感がやってきたあと、爽やかな果実感が後口に広がっていきます。

アロマと旨みが幾重にも広がる、
コル フォンドの常識を覆した革新的ワイン

モツ NV

モツ NV

「モツは、アロマティック品種をマセレーションして造るオレンジスタイルで、コル フォンドとしてはかなり革新的な存在でした。誰もやっていなかったと思います。日本に入ってきた最初の600本も結果的にはすぐに完売。その勢いによって、330などの他キュヴェの人気を後押ししてくれました。」
試飲コメント:にごりのある淡い黄金色。黄色い果実、グレープフルーツ、黄桃を思わせる香りが立ちのぼります。口当たりは柔らかく、香りで感じた要素がそのまま口中に広がり、旨みやアロマティックな華やかさがじっくりと余韻に残ります。

インタビューを終えて

コスタ ディラのワインを初めて飲んだとき、そのしっかりとした酸とあふれんばかりの旨みに「うわぁ~美味しい!」と感動したのを覚えています。手作り感のあるラベルからも、これは職人が造るワインだ、と感じました。

プロセッコの最高峰DOCGコネリアーノのエリア内で、あえて主流のシャルマ方式ではなく、伝統的製法コルフォンドでこの土地を表現し続けたコスタ ディ ラ創業者の故エルネスト氏。世界的ナチュラルワインの人気と共にコルフォンドが注目されるようになり、今では様々なプロセッコの造り手がリリースするようになっています。それでも、コルフォンドだけにここまでこだわっている造り手はほとんどいないと思います。

エルネスト氏亡き後、彼の遺志を継いだのが息子のアルノ氏。建築を学び、料理人となり、そしてワイン造りの道へ。彼の話を聞けば聞くほど、実に豊かな感性と視点で物事を考えていると感じました。世界1位に輝いたレストラン「ノーマ」の経験もある彼が「コスタ ディ ラのワインはガストロノミーワイン」と話していたのも印象的でした。一流の料理を知るアルノ氏が提案してくれたマリアージュ。ぜひ試してみたいです。