ランゲで「初」を積み重ねてきた先駆者ロッケ デイ マンゾーニ

2026/04/02

2026/03/03

ロドルフォ ミリオリーニ氏 Mr. Rodolfo Migliorini

ビオディナミの農家であり、ワインに込める思いは、まさに芸術家!品質を追求し、常に改革・前進。ランゲで「初」を積み重ねてきた先駆者ロッケ デイ マンゾーニ

ピエモンテ・バローロの地で、半世紀にわたり「常識」を塗り替え続けてきた孤高の先駆者、ロッケ デイ マンゾーニ。その発展の歴史は創業者ヴァレンティーノ氏の人生をかけた挑戦でした。今回、父ヴァレンティーノ氏の情熱を受け継ぎさらに高みを目指す2代目で現当主のロドルフォ ミリオリーニ氏にお話を聞きました。
    目 次
  • 品質を追求し、常に改革・前進。ピエモンテの「初」を塗り替えてきた先駆者
  • 50頭の牛を飼い自家製堆肥を生産しプラスチック製品を排除するなど循環型農業の実践
  • 品質第一主義 生産能力の3割に厳選。1000本の新樽を「1年寝かせて」から使用。1回使用した樽はすぐ売り払ってしまうという徹底ぶり
  • 全生産量の約半分を占める看板商品の瓶内二次発酵スパークリングワイン!規制を逆手に取った「( )」ラベル表示の反骨のブリュット ゼロ
  • 12年の検証を経て辿り着いた「音楽熟成」
    ヴァレンティーノ ブリュット スペチャーレ DOOR 185th

品質を追求し、常に改革・前進。ピエモンテの「初」を塗り替えてきた先駆者

創業者のヴァレンティーノさんは、ミシュラン一ツ星レストランのオーナーシェフでした。レストランで提供するワイン造りからスタートしましたが、次第に「より偉大なワインを自らの手で生み出したい」という高い目標へと進化していきました。1974年、さらなるポテンシャルを信じてバローロへ移住した決断が、現在のワイナリーの礎となっています。

彼らの歴史はピエモンテの常識を覆す挑戦の連続です。

1. 1976年 ランゲ初のブレンド赤「ブリッコ マンゾーニ」リリース

2. 1976年頃 ランゲ初のバリック熟成を導入

3. 1978年 ランゲ初のメトド クラシコリリース

4. 1999年 ランゲ初の10年熟成のバローロリゼルヴァをリリース

5. 2004年 世界初の音楽熟成ワイン「ヴァレンティーノ ブリュット」をリリース

常に「質の追求」のために、自らの手で新たな道を切り拓いてきました。

50頭の牛を飼い自家製堆肥を生産しプラスチック製品を排除するなど循環型農業の実践

「自分たちは農民である。一番大切なのは土地だ」と語るロドルフォ氏。1998年からビオロジックとビオディナミを実践し、自社肥料のために50頭の牛を飼育して循環型農業を営んでいます。

マイクロプラスチックの影響を懸念して畑にネットすら張らず、剪定や結束は100年前と同じ手作業を貫く。土壌を健やかに守り、土地の味を純粋に引き出すための、静かで深い敬意がそこにあります。

品質第一主義 生産能力の3割に厳選。1000本の新樽を「1年寝かせて」から使用。1回使用した樽はすぐ売り払ってしまうという徹底ぶり

100万本を造れる設備と85ヘクタールという広大な畑を持ちながら、自社ラベルを冠するのは、厳選に厳選を重ねたわずか30万本(3割)以内にと抑えられています。納得のいかないブドウは、自社のワインには一切使用しないというストイックな選別を貫いています。

バリック熟成の先駆者である彼らで、日本円で約20万相当のバリックを年間1000本も購入するそうですが、現在はそれらを「新樽を1年寝かせてから使う」という独自のスタイルへと進化させています。かつて雹害で収穫が減った際、1年置いた樽を試したところ、樽香がより柔らかな仕上がりになったことがきっかけです。また、その新樽は一度使用したら、すぐに売却するという徹底ぶり。品質のためには時間やコストを厭わない驚異的な生産者です。

さらに2008年からは、最新の「卵型セメントタンク」を導入しました。内面のコーティングを省き、微量の酸素を透過させることで、樽香を優しく研ぎ落としています。この丁寧なプロセスが、強固な骨格の中に、驚くほど滑らかでピュアな果実味を宿しています。

『畑の個性を完璧に表現できるワイン』のみを造るための贅沢な決断のもとに行われています。

全生産量の約半分を占める看板商品の瓶内二次発酵スパークリングワイン!規制を逆手に取った「( )」ラベル表示の反骨のブリュット ゼロ

また、注目すべきは、スプマンテの生産比率の高さです。

年間生産量約28万本のうち、スパークリングが約13万本。この「ほぼ半分」という比率は、1978年にランゲ地方で初めて瓶内二次発酵を手掛けた先駆者としての誇りが感じられます。ここでも、畑の個性を完璧に表現できた3割の厳選されたワインを瓶詰めするという、ストイックな選別が、イタリア最優秀スプマンテの栄誉(*)を支えているということが感じられます。
*2025年『Vinoway』でイタリア最優秀スプマンテ賞を受賞

DOCGアルタ ランガは、ラベルへの表記に厳しい規制を加えました。

ルドルフォさんは、自分のワインはDOCGの規定(最低30ヶ月熟成など)を遥かに超える120ヶ月熟成のため、自分より基準の低い組織の画一的なルールに、ラベルのデザインまで縛られることには納得がいきませんでした。

そして、既に、10年熟成のスプマンテを造っていたロッケ デイ マンゾーニにとってこの規定は大問題となりました。

ボトルに取り去る事ができない塗料で『0』の表示がされていたため、販売できない恐れが出てきたのです。

それでも、ロドルフォ氏は「DOCGができるよりも前から造り続けてきたブリュット ゼロへの誇り」があり「どうしたらこの問題を解決できるか」と悩みました。

そこで、ひらめいたのです。

表記ができなくなるピンチを、カッコを使って「()」と表記し、「()」という記号は、ただの図形(ロゴデザイン)で、0と表記していないという作戦です。

0と表示されたボトルの上から「()」とデザインされたラベルを張って出荷を継続しました。

摩擦を恐れぬ不屈の精神と愛が詰まった一本は、逆に「本物の証」として熱狂的に支持され、イタリア最優秀スプマンテの栄誉に輝いています。

左 変更前のブリュット ゼロのラベル
右 現在のブリュット ( )のラベル

12年の検証を経て辿り着いた「音楽熟成」
ヴァレンティーノ ブリュット スペチャーレ DOOR 185th


ギィ リヴォワールが描いたクーポラのある空間
エツィオ ボッソ作曲「アレグロ モルト」が響き渡り
長い熟成を続けるセラーへと繋がっている

世界で初めてセラーでワインに音楽を聴かせた試みも、12年もの歳月をかけて「振動が酵母に与える影響」を科学的に検証した末に辿り着いたものです。

難病ALSを患いながらタクトを振り続けた親友で世界的に知られた天才ピアニスト・指揮者・作曲家のエツィオ・ボッソ氏は、「音楽もワインも目に見えない振動でできている」とロドルフォ氏に話しました。身体の自由を失っても魂の旋律を奏で続けた彼との絆から、「ワインは生きている。だから最高の環境で休ませたい」という慈愛に満ちたプロジェクトが誕生しました。

12年に及ぶ科学的な検証を重ね、エツィオ・ボッソの楽曲『12番目の部屋(The 12th Room)』を夜間3時間60デシベルの音量で聞かせることで、ワインに微細な振動を与え、これにより酵母の代謝が活性化し、「酸が和らぎ、ボディが強まり、クリーミーなテクスチャが生まれる」ということが数値化されています。

左:ヴァレンティーノ ブリュット スペチャーレ DOOR 185th
右:ロドルフォ氏とエツィオ氏

10年超もの瓶内熟成が生み出す、イタリア最高峰スプマンテ

ヴァレンティーノ ブリュット 2011

ヴァレンティーノ ブリュット 2011

最低120か月(10年)以上もの瓶内熟成を行うスプマンテです。2025年には『Vinoway』でイタリア最優秀スプマンテ賞を受賞しました。シャルドネ100%。ドザージュゼロながら残糖はブドウ由来の3g/Lという仕上がりで、添加物に頼らず果実本来のバランスで成立させています。シャンパーニュの醸造家ジョルジュ・アルディのアドバイスをもとに新樽比率を大幅に削減し、旧樽主体へと移行。樽が主張しすぎることなく、長期熟成が生み出す複雑性とテクスチャーを実現しています。
試飲コメント:やや深みのある麦わら色。上品で繊細な黄色い果実に白い花、ブリオッシュを感じる複雑な香りです。口に含むと繊細かつ深みのあるエレガントな味わいが広がり、フレッシュな酸と樽由来の風味が上品に持続します。

「毎日飲んでも飽きない」
常識を逆手に取った醸造哲学で造る白ワイン

タタヤ ランゲ ビアンコ 2023

タタヤ ランゲ ビアンコ 2023

「毎日飲んでも飽きない」をコンセプトに生まれた、白ワインです。シャルドネ70%、ソーヴィニヨンブラン30%のブレンドです。一般的にはシャルドネを樽、ソーヴィニヨンをステンレスで仕立てるところを、あえて逆の手法をとっています。シャルドネは卵型セメントタンクで自然対流を促してテクスチャーと複雑さを引き出し、ソーヴィニヨンは旧樽バリックで骨格と香味の奥行きを補います。樽に支配されない果実感とクリーンさを徹底的に追求した、飲み心地のよい白ワインです。ワイン名は、このワインを造った当時、よく聴いていた楽曲「Ta Ta Ya Baby」から着想を得ています。
試飲コメント:透明感のある麦わら色。洋梨や蜜のニュアンスを帯びた白い果実に、ミネラル感を伴う複雑でフレッシュな香りです。柔らかい口当たりで、香りで感じた白い果実感がそのまま心地よく広がります。

ランゲ、ボルドー、ブルゴーニュが融合する唯一無二のブレンド

クアトゥル ナス ランゲ 2017

クアトゥル ナス ランゲ 2017

ランゲの要素に、ボルドーとブルゴーニュの要素を取り込むというユニークな発想で造った赤ワインです。ネッビオーロ50%に、メルロー、ピノ ネロ、カベルネ ソーヴィニョンを組み合わせています。グラスに注ぐとピノ ネロ由来の華やかな香りが先行し、口に含むとネッビオーロの骨格がしっかりと味わいと余韻を支えます。メルローが全体に丸みと柔らかさをもたらし、飲み疲れせず「もう一杯」と手が伸びる、絶妙なバランスに仕上げています。
試飲コメント:やや深みのあるルビー色。熟した果実やアルコール漬けのベリーを思わせる、厚みがあり魅惑的な香りです。厚みとフレッシュさが共存した口当たりで、ボリューム感のあるタンニンが長くゆったりとした余韻として持続します。

バリック&セメントタンク熟成
力強さとエレガンスが調和したバローロ クラシコ

バローロ 2021

バローロ 2021

私たちのラインナップの中では比較的早く飲み頃を迎えるスタイルのクラシック バローロです。一部クリュのブドウを用い、複数の区画のブドウをブレンドしています。熟成はバリックで30か月、一部トノーを使用し、8か月卵型セメントタンクで熟成させています。通常、セメントタンクの中をコーティングして酸素を通させない造り手もいますが、私たちはしていません。そのため、バリックから移し替えた際にワインに残る樽香を穏やかに削ぎ落とすことができます。これにより、私たちのワイン造りの哲学である、エレガンスを生み出しています。甘いチェリーの香りと滑らかな口当たりが特徴で、力強さとエレガンスのバランスを重視したバローロです。クリーンで柔らかく、長期熟成のポテンシャルも備えています。
試飲コメント:淡く深みのあるガーネット色。チェリーをはじめとする赤系果実に、凝縮したドライフラワーや土のニュアンスを伴う非常に複雑な香りです。華やかさもあります。力強く豊かな味わいが広がりながらも、タンニンはなめらかで支配感がなく、洗練されたエレガントさと豊かさがあります。

マンゾーニが初めて造り上げた歴史的バローロ

バローロ ヴィーニャ ドゥラ ロウル 2019

バローロ ヴィーニャ ドゥラ ロウル 2019

ラ ロウルはマンゾーニが初めて造ったワインで、初ヴィンテージは1974年。畑はほぼ石灰質で、一部に粘土を含むものの畑全体は白いのが特徴です。私たちのバローロの中では、筋肉質で力強いタンニンを備えています。バランスよく仕上げることで長期熟成のポテンシャルが引き出されます。
試飲コメント:輝くガーネット色。甘やかなチェリー系果実、ドライフラワー、土など奥行きのある魅惑的でエレガントな香り。香りの複雑な要素がそのままエレガントに広がり、存在感はありながらもなめらかなタンニンで、熟成ポテンシャルを強く感じます。

テロワールと造り手の姿をを純粋に映し出すクリュ バローロ

バローロ ペルノ カッペッラ ディ サントステファノ 2018

バローロ ペルノ カッペッラ ディ サントステファノ 2018

モンフォルテ ダルバ村の優良区画ペルノから生まれる、クリュ バローロです。ブレンドによるクラシコとは異なり、この一本はペルノというテロワールの個性を純粋に表現することに徹しています。区画の一貫性や純度を何より優先した、ロッケ デイ マンゾーニのアイデンティティを体現する一本です。
試飲コメント:深みのあるガーネット色。甘やかかつフレッシュな赤系果実にドライフラワー、白胡椒のニュアンスも感じる、エレガントで広がりのある複雑な香りです。力強くフレッシュな酸で広がりのある味わいで、バリック由来のわずかな甘やかさが綺麗に溶け込み、余韻は非常に長く持続します。

インタビューを終えて

今回ロッケ デイ マンゾーニの現当主、ロドルフォさんがいらっしゃるということになり、大変楽しみにお待ちしておりましたが、お話しを聞き、期待や創造を遥かに超えるレベルでワイン造りに向かわれているお話をたくさん聞くことができ、「一流というのはこういう事なのか」ということを教えて頂きました。

品質への飽くなき探求心で突き進むには数々の困難を伴ったと思われるのに、それをものともせずに、突き進むゆるぎない信念や哲学。そして、友人の天才音楽家エツィオさんと共有された深い愛や感謝や敬意の念を感じさせる、彼の内面からあふれ出て、ワインに表現されるものなど、
ロッケ デイ マンゾーニのワインはテロワールと人間の営みにより造られるまさに芸術(アート)的なものであるということを感じさせられた取材となりました。

今回飲んだロッケ デイ マンゾーニのバローロは特に澄んだやや褐色がかった美しいワインで、忘れないように、自分の今年の年末に飲むべきワインのリストにヴァレンティーノ ブリュットとともに記録しています。