2026/03/06
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アルベルト タスカ ダルメリータ氏 Mr. Alberto Tasca d’Almerita
『ワインエンスージアスト』欧州最優秀ワイナリー賞、『ガンベロロッソ』最優秀ワイナリー賞受賞の実力派。200年の伝統が紡ぐ、シチリアワイン近代化の先駆者「タスカ ダルメリータ」

- シチリアの歴史的生産者「タスカ ダルメリータ」!
シチリアワインの近代化を成し遂げた3世代 - タスカ ダルメリータの本拠地「レガレアーリ農園」。
大陸性気候が育む美しい酸 - 国際品種と土着品種で造る「ノッツェ ドーロ」
- シチリア全土に広がる5つのテロワール。エトナから離島まで巡る多様性
- 「過程ではなく結果」を重視。
世界が認めるタスカ ダルメリータのサステナビリティ
シチリアの歴史的生産者「タスカ ダルメリータ」!
シチリアワインの近代化を成し遂げた3世代

左からアルベルト氏、ルーチョ氏、ジュゼッペ氏(アルベルト氏の兄)
【礎を築いたジュゼッペ氏(先々代)】
しかし、タスカ家には常に改革に取り組むDNAが息づいていました。イタリアワイン近代化の父と呼ばれる祖父ジュゼッペ伯爵は、戦後に栽培が容易な海沿いの畑を手放し、アクセスは不便ですが品質のポテンシャルが高いレガレアーリ農園に全てを注ぐという「逆張り」の決断を下しました。
ジュゼッペ氏は偉大なファインワインを求め、フランスのシャトーヌフ デュ パプに1ヶ月滞在して研究を重ねました。さらに近代醸造技術を導入するために専門家を雇い入れ、1959年に植えられたアルベレッロ仕立てのサン ルーチョ畑を用いて、1970年に名作「ロッソ デル コンテ」のファーストヴィンテージを生み出しました。
【世界へ扉を開いたルーチョ氏(先代)】
続く現当主の父ルーチョ伯爵も1979年、シチリアで初めてカベルネやシャルドネといった国際品種を導入しました。伝統と革新を融合させることで、シチリアワインが世界基準のファインワインであることを証明しました。
【未来を牽引するアルベルト氏(現当主)】
そして、現当主アルベルト氏は本拠地を飛び出し、エトナ火山や離島など、異なる個性を持つ5つのエステートを展開しています。サステナビリティ認証「SOStain(サステイン)」と「B Corp(Bコープ)」の取得に積極的に取り組んでいます。
タスカ ダルメリータの本拠地「レガレアーリ農園」。
大陸性気候が育む美しい酸
冬には雪も降るこの厳しい環境が、ワインに非常に鮮烈なアロマと美しい酸を残す決定的な要因となっています。アクセスは極めて困難で、Googleマップの指示通りに進むと泥にまみれて脱出できなくなるほどの悪路の先に、その農園は広がっています。

かつて車のない時代には自給自足が必須であったため、現在でもその伝統が色濃く残っており、56ヘクタールを買い戻した広大な農園では、ブドウの単一栽培ではなく、オリーブ、牧草、小麦、果樹などが育てられ、見事な生物多様性が保たれています。かつては500頭、現在でも約150頭の羊が飼育されており、そのミルクから作られる絶品のリコッタチーズや、自家製の硬質小麦パスタは農園の食卓を彩ります。
さらに鹿や牛も生息しており、13の巣箱で飼育されるミツバチは、その蜂蜜を分析することで、半径1.5キロメートル圏内の清浄な環境状態を測る精密なバロメーターとして機能しています。砂岩から粘土質まで12種類にも及ぶ多様な土壌と、5つの区画の向きの違いが、多種多様なブドウ品種のポテンシャルを最大限に引き出しています。
国際品種と土着品種で造る「ノッツェ ドーロ」
元気な祖母に例えられる「インツォリア」と、細身で背が高かった祖父に例えられる「ソーヴィニヨン タスカ」(ソーヴィニヨン ブラン)という、全く異なる二つの個性が用いられています。このソーヴィニヨン タスカは、第一次世界大戦後には既に植えられており、長い年月を経てレガレアーリの土地に適応し変容したとされる特別なクローンです。これら二つの個性が、まさに結婚のように完璧に調和し、長期熟成能力を持つワインとして現在も愛され続けています。
このワインを二人の金婚式に合わせて造り、お披露目した際には大変喜ばれたとお話しされていました。

シチリア全土に広がる5つのテロワール。エトナから離島まで巡る多様性
【タスカンテ(エトナ山北斜面)】
標高700m超の火山性土壌。淡い色調ながら、火山特有の緊張感とエネルギーを秘めたエレガントなネレッロ マスカレーゼ。
【サリエ デ ラ トゥール(パレルモ近郊モンレアーレ)】
粘土質土壌が育む力強いシラー。アルコール15度に達するボリュームを持ちながら、驚くほどクリーンな質感。
【ウィタカー(モツィア島)】
フェニキア遺跡が残る小さな島。砂質土壌で育つグリッロは、海風の塩味を感じる唯一無二の味わい。(未輸入)
【カポファーロ(サリーナ島)】
火山と海風が育む、官能的な甘みを持つマルヴァジア。(未輸入)

その活動は多岐にわたり、映画『イル ポスティーノ』の舞台でもあるサリーナ島の「カポファーロ」をはじめ、古代フェニキア人の遺跡や考古学博物館があり、利益の一部を寄付している40ヘクタールのモツィア島(12~13ヘクタールの畑でグリッロを栽培)でもワイン造りを行っています。また、19世紀にフランス貴族が取得し、叔母コスタンツァの縁で2009年から運営を開始したDOCモンレアーレの「サリエ デ ラ トゥール」(75ヘクタール シラーに最適)や、2007年に開設した活火山「エトナ」のワイナリー「タスカンテ」も擁しています。
特にエトナは、海底火山が隆起して3300メートルの高さに達しており、133ある「コントラーダ(区画)」のうち4つでネレッロ マスカレーゼ100%のワインを造っています。噴火時期が1万年から2万年も異なる土壌が隣接しているため、畑ごとに全く異なるキャラクターが表現されるのが特徴です。

「過程ではなく結果」を重視。
世界が認めるタスカ ダルメリータのサステナビリティ
近年、アルベルト氏を中心に最も情熱を注いでいるのが、極めて厳格なサステナビリティ認証「SOStain(サステイン)」と、アメリカの非営利団体が運営する、「公益性の高い事業を行っている企業」に与えられる認証「B Corp(Bコープ)」の取得および実践です。

【科学的分析による証明】
シチリア独自の厳格な基準「SOStain」の設立にかかわり、現在も中心的役割を果たして牽引。「無農薬である」という過程以上に、「土壌にダイオキシンや銅などの有害な残留物がないか」という分析結果を最重要視しています。
【包括的な責任】
物流時の負荷を減らすためのボトルの軽量化、地元経済への貢献、再生可能エネルギーの活用。ロバート パーカーの「グリーン エンブレム」獲得は、こうした徹底した姿勢が世界から認められた証です。100年後の土地を守るための情熱が、そのピュアな味わいに現れています。
この取り組みは、『ワイン エンスージアスト』の「欧州ワイナリー オブ ザ イヤー」や、「ロバート パーカー グリーン エンブレム」(※)など、国際的にも高く評価されています。彼らのサステナビリティは、単なる化学除草剤の不使用や生物多様性の保護にとどまりません。地元経済や社会への貢献、従業員の平均勤続年数といった雇用環境、安全衛生、再生可能エネルギーの利用、輸送の際のCO2削減を目指した軽量ボトルの採用など、極めて広範な概念を包括しています。
(※)サステナビリティを牽引するワイナリーに贈られる賞
さらには、「有機栽培をしている」という過程だけを誇るのではなく、ダイオキシンや銅が土壌に過剰に蓄積していないかという養蜂を通しての「残留物分析による結果」を最も重視している点にあります。
シチリアの白ワインの概念を覆し、
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タスカ ダルメリータ |
レガレアーリ ビアンコ 2024 |
| 暑いシチリアに、フレッシュな白ワインの概念を持ち込んだ先駆け的な一本です。1959年を初ヴィンテージとするフラッグシップで、80年代には年間120万本を生産し一世を風靡しました。カタラット由来の華やかなアロマと、インツォリア由来のローズマリーや蜂蜜のニュアンスが美しく調和しています。カラスミのパスタやウニを乗せたパンとの相性は抜群で、シチリアの食卓に寄り添う白ワインの定番として今も愛され続けています。 |
| 試飲コメント:輝く麦わら色。黄色い果実や白い果実、柑橘系、ハーブのニュアンス、やや蜜っぽさも感じる複雑な香りです。口に含むとフレッシュながらやや厚みのある酸が駆け上がり、後口には苦味と酸の心地よさが残ります。 |
50年続く歴史的ブレンド
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タスカ ダルメリータ |
レガレアーリ ノッツェ ドーロ 2022 |
| 祖父母の金婚式のために秘密裏に造られた特別なキュヴェが、そのまま世に出たというロマンティックな誕生秘話を持つワインです。ファーストヴィンテージは1984年。使用するのは2つの全く異なる個性を持つ品種。元気な祖母とよく似たインツォリアと、細身で背が高かった祖父のようなソーヴィニヨンです。第一次世界大戦後には既にレガレアーリに植えられていたとされる、このソーヴィニヨンは、長い年月をかけてこの土地に適応し変容した品種です。まるで結婚のように異なる個性が完璧に調和し、長期熟成能力を持つワインとして愛され続けています。野菜料理やマグロのピカタとの相性も見事です。 |
| 試飲コメント:透明感のある黄金色。力強く豊かな香りです。白い果実と白胡椒、ミネラル感、ジャスミンのような爽やかさが感じられます。口に含むと、やや厚みのある果実感とフレッシュな酸が広がり、後口には熟した黄色い果実感がやってきます。 |
シチリアに国際品種の可能性を証明した、シャルドネの先駆け |
タスカ ダルメリータ |
レガレアーリ ヴィーニャ サン フランチェスコ シャルドネ 2022 |
| 祖父の革新性を引き継いだ父ルーチョ伯爵が、1979年にシチリアで初めて国際品種を植えました。もちろんシャルドネもその一つです。レガレアーリ シャルドネの初ヴィンテージは1980年代後半。1990年にはマロラクティック発酵を行わないキュヴェが大成功を収め、1991年には貴腐菌がつくなど数々の逸話を持つワインです。クリーミーさと干し草のような香りが印象的で、ラクレットなど風味の強いチーズにも寄り添える懐の深い一本です。 |
| 試飲コメント:輝く黄金色。南国果実やバニラといった樽由来の要素に華やかな香りが加わります。口中にも同じ要素が広がり、クリーミーな樽感の甘やかさとフレッシュな酸が綺麗に調和しています。 |
表情豊かな単一畑エトナロッソ |
タスカ ダルメリータ |
テヌータ タスカンテ コントラーダ シャーラヌォーヴァ 2020 |
| エトナ火山の土壌が生み出す、淡い色調ながら火山特有の緊張感とエネルギーを持つ一本です。温度によって全く異なる表情を見せるのが最大の魅力で、12度に冷やせば魚料理に、16度まで上げれば肉料理にと、一本で幅広いペアリングに対応できる万能なワインです。 |
| 試飲コメント:淡いガーネット色。エレガントで華やかな香り。赤い果実とやや熟した果実、スパイス感があります。口に含むとフレッシュで上品な酸に満たされ、あとからスモーキーなニュアンスがやってきます。 |
フレッシュさと濃縮感が共存する土着品種ペリコーネ100%赤 |
タスカ ダルメリータ |
レガレアーリ グアルナッチョ 2022 |
| 地元でグアルナッチャと呼ばれるペリコーネを100%使用した、2018年リリースのワインです。収穫のタイミングが極めて難しいこの品種を見事に完熟させながらも、フレッシュさを損なわない濃い色調に仕上げています。品種本来の個性を引き出す丁寧な仕事が光る一本です。 |
| 試飲コメント:濃いルビー色。ブラックベリーなどの黒系果実と赤系果実、花、黒胡椒の香り。香りで感じた豊かな果実感が口中に広がり、タンニンとその果実感が綺麗に調和しています。 |
シチリアの太陽を感じさせる力強い単一畑シラー |
タスカ ダルメリータ |
サリエ デ ラ トゥール ラ モナカ 2021 |
| ラ モナカは単一畑シラーです。アルコール度数は15度だとは、まったく感じさせないほどワインに溶け込んでいます。風通しの良いベリーチェ渓谷の乾燥した気候が、シラーのポテンシャルを最大限に引き出した、シチリアの太陽を感じさせる力強い一本です。 |
| 試飲コメント:ルビー色。赤系果実のフレッシュな香り。わずかに土や緑のニュアンス、スパイス感が調和しています。口に含むとフレッシュな酸とピュアな果実感、豊かな風味が広がります。 |
50周年を迎えた、シチリアが誇る赤ワインの金字塔 |
タスカ ダルメリータ |
レガレアーリ ロッソ デル コンテ 2019 |
| 2020年ヴィンテージで50周年となる、タスカ ダルメリータのフラッグシップです。ネロ ダーヴォラにペリコーネをブレンドし、新樽の強さを感じさせない洗練された仕上がりです。バルサムやマジョラムの香りが複雑に絡み合います。子羊のローストとのペアリングは最高で、シチリアが世界に誇る赤ワインの真骨頂を体感できる一本です。 |
| 試飲コメント:ルビー色。凝縮した果実感や土、レザー、ハーブ、タバコなど複雑で力強い香りです。味わいは、苺やベリーなどの赤系果実から始まり、香りで感じた複雑な風味が現れます。心地よいタンニンとともに調和します。 |
インタビューを終えて
目的地に辿り着くまでに迷子になるほどの広大な敷地。宮嶋さんがカンティーナへ向かう際の「悪路との格闘」についてお話しくださるなど、終始笑顔の絶えない突撃取材となりました。
金婚式の名を冠したワイン「ノッツェ・ドーロ」に使われる「ソーヴィニヨン・タスカ」は、第一次世界大戦後には既に植えられていたそうで、イタリアで国際品種が一般化する遥か前から取り組んでいた先駆性に驚かされました。また、先々代のジュゼッペ・タスカ氏が1960年代、偉大なファインワインを求めてフランスのシャトーヌフ・デュ・パプに1ヶ月滞在したというエピソードからも、彼らの先進性を強く感じます。
常に世界に開かれた国際都市であったシチリアの歴史がありますが、その気風を受け継ぐかのように、タスカ・ダルメリータは妥協のない革新性に溢れていて、そのワインは繊細でバランスが良く、気品に満ちていました。
取材の3日後、自宅で「エトナ・ロッソ シャッラヌオーヴァ」を改めて抜栓したのですが、その透明感あふれる清浄さと気品に思わず絶句。タスカ・ダルメリータのワインは、まさに「シチリアワインの宝石箱」という言葉が相応しいと実感したところです。
一つ一つのワインが究極まで突き詰められているにもかかわらず、それを誇示することなく、さりげなく提供されているということが印象的です。
また、厳格なサステナブル認証「SOStain」を牽引し、社会的な公益性を問う「B Corp」認証を積極的に取得するなど、企業姿勢の隅々にまでその高潔なスタイルが貫かれています。「名門」とはどうことかを深く理解させてくれた、貴重な突撃取材となりました。
一流の味わいを、ぜひ皆様も一本手に取って体験してみてください。











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