世界No.1スプマンテ生産者フェッラーリを手がける「テヌーテ ルネッリ」

2025/10/29

2025/09/29

アレッサンドロ ルネッリ氏 Mr. Alessandro Lunelli

世界No.1スプマンテ「フェッラーリ」を手がけるルネッリ家
イタリア最高峰シャルドネと肩を並べる「マルゴン」
優美なサグランティーノを築き上げた「カステルブオーノ」

イタリア スプマンテの頂点に君臨し、キング オブ スプマンテと称されるフェッラーリ社。そのフェッラーリを所有するテヌーテ ルネッリは、トレンティーノ、ウンブリア、トスカーナの3つの異なる地域でスティルワインの生産を行っています。創業から120年にわたり培われたフェッラーリ社の精神と醸造ノウハウを受け継ぎ、それぞれの土地の個性を映し出す最高品質のワインを生み出しています。今回焦点を当てたのは、2つのエステート。イタリア最高峰のシャルドネと肩を並べるトレンティーノの「テヌータ マルゴン」。そして、世界屈指の力強さを誇る土着品種サグランティーノをエレガントなスタイルへと昇華させたウンブリアの「テヌータ カステルブオーノ」。テヌーテ ルネッリのCEOアレッサンドロ・ルネッリ氏と試飲しながら、お話を伺いました。

フェッラーリの精神を受け継ぐ「テヌーテ ルネッリ」
3つの美しい産地で描く、スティルワインの新たな挑戦

1902年、フェッラーリ社創業
イタリアでいち早くシャルドネとメトドクラシコに注力

私たちルネッリ家は、123年の歴史を誇るフェッラーリ社、そして40年の歩みを重ねてきたテヌーテ ルネッリを手がけるファミリーです。まず、フェッラーリ社は、1902年にジュリオ・フェッラーリによって創業されたメトドクラシコのワイナリーです。

彼はシャンパーニュ地方で学び、その経験をもとにイタリアで初めてシャルドネを導入した先駆者のひとりとして知られています。さらに、いち早くメトドクラシコに取り組み、その品質を高めることに情熱を注ぎました。

1952年、ルネッリ家がフェッラーリを継承
1952年、そんな彼の志を引き継いだのが、彼の友人であり、最高品質のワイン造りに情熱を注いでいた私の祖父、ブルーノ・ルネッリでした。日常消費用のワインが主流だった時代にあって、ジュリオ・フェッラーリは「品質こそすべて」という哲学を貫いた稀有な存在でした。その精神は創業から120年以上が経ち、今も私たちルネッリ家の根幹に息づいています。
ルネッリ家の現当主たち

1987年、スティルワインに特化した
テヌーテ ルネッリを発足

テヌーテ ルネッリは、私の父マウロ・ルネッリが1987年に立ち上げたワイナリープロジェクトです。父はフェッラーリ社で40年以上にわたり醸造家として活躍してきました。ブルゴーニュワインの愛好家だった彼は、トレンティーノに植えられているシャルドネとピノ ネロのポテンシャルに注目し、「この土地でも上質なスティルワインが造れる」と確信。その発想が、テヌーテ ルネッリ誕生の原点となりました。

3つの哲学が導く、土地の個性と最高品質
テヌーテ ルネッリのワイン造りは、「ティピカリティ」「リスペクト」「エクセレンス」という3つの哲学に基づいています。ティピカリティは、その土地に根づく伝統、品種、土壌など、テロワールの個性を最大限に尊重すること。リスペクトは、地域の文化や動植物すべてへの敬意です。すべての自社畑でオーガニック認証を取得しています。そしてエクセレンスは、どの産地であっても常に最高品質を追求するという信念です。

「美しい土地から美味しいワインが生まれる」
トレンティーノ、ウンブリア、トスカーナで行うワイン造り

テヌーテ ルネッリとして手がけるワイナリーは、3つあります。トレンティーノの「テヌータ マルゴン」、ウンブリアの「テヌータ カステルブオーノ」、そしてトスカーナの「テヌータ ポデルノーヴォ」です。

私たちは「美しい場所で美味しいワインを造る」という理念を大切にしています。マルゴンは、重要文化遺産にも指定される16世紀に建てられた邸宅。カステルブオーノは、彫刻家アルナルド・ポモドーロが設計した建築作品に囲まれた象徴的な場所です。そしてポデルノーヴォは、昔ながらの邸宅を修復し、現代のワイナリーとして蘇らせました。

私たちは、美しい土地から美味しいワインが生まれると信じています。美しい景観の中で、信頼できる仲間と共に造り上げたワインを、同じように美しい場所で大切な人たちと味わう。それは最高の喜びです。

フェッラーリ社と同じ畑から生まれる偉大なシャルドネ
トレンティーノの畑と森に囲まれた「テヌータ マルゴン」

自然と歴史に抱かれた特別な邸宅ワイナリー
テヌータ マルゴンは、、私たちルネッリ家の本拠地であるトレンティーノに位置します。フェッラーリの畑と合わせて約130ヘクタールを管理しており、10箇所に点在しています。そのうちマルゴン周辺の畑は約30ヘクタールです。

邸宅(ヴィッラ マルゴン)は、イタリアでも稀有な存在です。通常、このような歴史的邸宅は街中に建てられていますが、ヴィッラ マルゴンは森と畑に囲まれ、他に建物が一切ない場所にあります。その風景はまさに唯一無二です。

重要な酸とアロマを生む、山々に囲まれた冷涼な環境
トレンティーノは、四方を山々に囲まれた標高の高い冷涼な産地です。日中は地中海的な太陽が降り注ぎ、夜にはアルプスからの冷たい風が吹き下ろします。この昼夜の寒暖差によって、スパークリングワインに欠かせないフレッシュな酸が生まれ、スティルワインには長期熟成のポテンシャルが与えられます。地理的にはシャンパーニュ地方よりも南に位置しますが、トレンティーノにも偉大なワインを生み出すための自然条件が揃っているのです。

その恩恵を最も見事に表現しているのが、邸宅の名を冠した上級キュヴェ「ヴィッラ マルゴン」です。プラネタ社のシャルドネや、チェルヴァロ デッラ サラといったイタリアを代表するシャルドネと肩を並べる1本と言えるでしょう。

畑も醸造も人もフェッラーリと同じ
――テヌーテ ルネッリが造るワインは、「フェッラーリ社が造るスティルワイン」とも表現できますよね。

テヌータ マルゴンに関しては、まさにその通りです。畑も同じ、醸造施設も同じ、造り手も同じですから、フェッラーリが手がけるワインと言って差し支えありません。実際に私たち自身も「これはフェッラーリのワインです」と伝えています。フェッラーリを知る方々には、「1980年代、自社のシャルドネとピノ ネロから始まったスティルワインのプロジェクトです」と説明しています。

サグランティーノの屈強さを、エレガンスへと昇華
力強い土地の個性を反映する「テヌータ カステルブオーノ」

偉大なテロワールを表現できる典型性
テヌータ カステルブオーノは、ウンブリアを代表する土着品種サグランティーノで偉大なワインを生み出すことを目指して設立しました。サグランティーノは非常に強いタンニンと高いポリフェノール含有量を誇り、世界でも屈指の力強さを持つブドウとして知られています。

私たちは、このブドウを通じてテロワールと深く結びつく典型性、すなわち「ティピカリティ」を最も純粋に表現できるワインとして位置づけています。そして、ここカステルブオーノは芸術と自然が融合した唯一無二のエステートでもあります。

この地に進出する際、せっかくなら「他に類を見ない美しいワイナリーをつくろう」と考えました。そこで、家族の友人でもあるイタリアの彫刻界の巨匠アルナルド・ポモドーロ氏に声をかけ、カンティーナのデザインを依頼しました。

「ジッグラット」「ランパンテ」「カラパーチェ」
3種のワインがトレビッキエリ受賞の実績

――ジッグラットは、エントリーラインとは思えないほどの存在感ですね。

飲みごたえがあり、コストパフォーマンスにも優れた1本です。粘土質土壌で、夏は非常に暑く冬は冷え込むこのエリア特有の気候が、力強く凝縮感のある味わいを生み出します。この自然条件こそが、ジッグラットに豊かなボリューム感と深みを与えているのです。

ちなみに、ジックラットをはじめ、今回試飲するカステルブオーノのワインのうち、3本が『ガンベロロッソ』最高賞トレビッキエリを受賞しています。

「こんなエレガントなサグランティーノが造れるのか」
ウンブリアの新たな指針となる「カラパーチェ」

サグランティーノは、非常に扱いが難しく、複雑な個性を持つブドウです。例えるなら、気性の荒い暴れ馬のような存在。乗りこなすことができれば驚くほど速く、美しい走りを見せますが、扱いを間違えると制御不能になってしまいます。

かつてサグランティーノは「開くまでに10年は待たなければならない」と言われていました。しかし現在では、抜栓直後からその魅力を楽しめるワインを造ることができるようになっています。

今もなお力強く荒々しいスタイルが多い中で、私たちの「カラパーチェ」は、その概念を覆すエレガンスを持っています。「こんなエレガントなサグランティーノが造れるのか」と驚かれることもあり、今ではウンブリアにおける新たな指針のひとつとなっています。

2015年からエレガントなスタイルを確立
抜栓直後から美味しい、熟成でさらに美味しい

「リリース直後に美味しく、10年後、20年後にはさらに美味しくなるワイン」を目指しています。最近、カラパーチェの初ヴィンテージである2003年を開けてみたのですが、当時の私たちの未熟さゆえに、まだまだタンニンががっしりとありました。それに比べて、現行ヴィンテージはよりしなやかで、柔らかさがあります。

このスタイルにたどり着くまでには多くの試行錯誤がありました。アンフォラの導入をはじめ、醸造や熟成の手法に改良を重ね、現在の方向性が確立したのは2015年からです。今のワインの姿には満足しており、20年後にどのような進化を遂げるのか楽しみです。

私たちの哲学の一つである「エクセレンス」は、単に最高品質という意味にとどまりません。それは「エレガンス」をも意味しています。長い年月を経ても変わらない気品と、綺麗な酸がもたらすフレッシュさ。その両立こそ、私たちが理想とするワイン造りなのです。

一口目からあふれる美味しさ
トレンティーノらしさを表現するシャルドネ主体白

ピエトラグランデ 2022

ピエトラグランデ 2022

アレッサンドロ氏:
「ピエトラグランデは、トレンティーノらしさを表すワインです。シャルドネを主体にソーヴィニヨンブラン、インクローチョマンツォーニ、ピノビアンコをブレンド。直訳すると大きな岩を意味しますが、トレンティーノにある山を指しています。飲み心地が良く、フローラルでフルーティ、一口で美味しさを感じる親しみやすいワインです。冷やしても美味しく、寿司や生魚にもよく合います。ソーヴィニヨンブランが果実味と酸を、インクローチョマンツォーニが華やかさと爽やかさと酸を加え、シャルドネを引き立てています。年間9万本生産しています。」
試飲コメント:輝く麦わら色。白い果実や黄色い果実の香りが広がり、フレッシュでミネラル感に富み、レモンを思わせる柑橘のニュアンスがクリーンに漂います。口当たりはきれいで、フレッシュでフルーティな酸が心地よく持続します。

フレッシュさと厚みが共存する上級シャルドネ

ヴィッラ マルゴン 2021

ヴィッラ マルゴン 2021

アレッサンドロ氏:
「ヴィッラ マルゴンは、1987年に初めて造られたシャルドネ100%のワインです。ジュリオ フェッラーリがシャルドネを導入して以来、フェッラーリ社の技術をもとにスティルワインにも注力しました。トレンティーノの冷涼な気候を生かしたエレガントなスタイルが特徴です。一部をオーク樽で発酵し、ナッツやアーモンドのニュアンスと滑らかな質感を与えています。フレッシュさとリッチさが共存しており、さまざまな料理に合わせられる汎用性の高いワインです。しっかりした酸があるため、食事を引き立てます。年間生産量は約4万本です。」
試飲コメント:輝きを持つ淡い麦わら色。凝縮した白い果実や柑橘、熟したリンゴなどの厚みある香りが感じられます。口当たりは柔らかく、香りと同様に熟した果実味が広がり、フレッシュでエレガントな酸が持続します。ほのかに木のニュアンスが感じられ、全体的に非常に上品です。

エントリーラインとは思えない複雑で厚みのある味わい

ジッグラット モンテファルコ ロッソ 2022

ジッグラット モンテファルコ ロッソ 2022

アレッサンドロ氏:
「ジッグラットは、エントリーラインです。サンジョヴェーゼ主体にサグランティーノなどの品種を加えて造っています。サンジョヴェーゼ由来のフレッシュさと酸を大切にしながら、リッチで深みのある味わいを表現しています。長期熟成のポテンシャルを備えながら、飲み心地の良さも大きな特徴です。」
試飲コメント:綺麗に輝くルビー色。赤い果実やジャムのような甘い香りに、黒いスパイスの要素が溶け合っています。口当たりは柔らかく、赤と黒の果実が調和し、ふくよかな厚みを感じます。存在感のあるタンニンが全体を支え、ボディのある余韻が長く続きます。

4品種の個性が複雑に溶け込むエレガントな味わい

ランパンテ 2020

ランパンテ 2020

アレッサンドロ氏:
「ランパンテは、サンジョヴェーゼ、メルロー、カベルネソーヴィニヨン、サグランティーノの4品種で造るモンテファルコ ロッソのリゼルヴァです。ジッグラットと同じブレンド構成ですが、より厳選したブドウを使用し、3~5日遅く収穫することで凝縮感を高めています。メルローとカベルネはバリックで、サンジョヴェーゼとサグランティーノは大樽やトノーで熟成し、最後にブレンドします。サグランティーノは、約30種類の樽から選別しバランスを整えています。熟した赤い果実とスパイスが調和し、複雑で奥行きのある味わいを持つワインです。」
試飲コメント:深みのあるルビー色。スミレやドライフラワー、チェリー、ドライトマトの香りが複雑に重なります。口に含むと熟れた果実にシナモンのようなほのかな甘やかさが広がり、タンニンは存在感を保ちながらも綺麗に溶け込んでいます。余韻はふくよかでエレガントに続きます。

華やかでエレガント、奥行きを感じるスタイル
若いうちから楽しめるサグランティーノ

カラパーチェ サグランティーノ ディ モンテファルコ 2019

カラパーチェ サグランティーノ ディ モンテファルコ 2019

アレッサンドロ氏:
「サグランティーノ ディ モンテファルコのカラパーチェです。サグランティーノは非常に扱いが難しく、まるで暴れ馬のような品種です。正しく導けば力強く優雅なワインに、誤れば荒々しくなります。私たちは、約20年前からこの品種を扱い、今では滑らかなタンニンと奥行きのある果実感を備えたサグランティーノに仕上げることができています。若いうちからエレガントなスタイルを楽しめます。清涼感のあるハーブやバルサミックのトーン、綺麗な酸が特徴です。2020年はトレビッキエリを受賞しています。」
試飲コメント:深みのあるルビー色。アルコール漬けのチェリーやフレッシュな赤系果実が華やかに香ります。香り同様の果実感が口いっぱいに広がり、骨格に優れた余韻が長く続きます。タンニンは力強いながらもスムーズで、エレガントな後味を演出しています。

濃密でエレガントな果実味の最上級サグランティーノ

ルンガ アッテーザ モンテファルコ サグランティーノ 2017

ルンガ アッテーザ モンテファルコ サグランティーノ  2017

アレッサンドロ氏:
「ルンガ アッテーザは、数年前に誕生した新しいサグランティーノ ディ モンテファルコです。ワイン名は長い待機を意味しており、10月15日以降に収穫する遅摘みのブドウから造られます。北向きの畑で成熟がゆっくり進むため、果実の凝縮感が高まり長期熟成向きのワインになります。しっかりとした飲み応えとインパクトがあり満足感を得られるワインです。」
試飲コメント:ガーネット色。熟した赤い果実や黒い果実、胡椒のようなスパイスの香りが感じられます。口当たりは柔らかく、濃密でエレガントな果実味が広がります。ボディ感とタンニンが調和し、後口にはやや甘やかなニュアンスが心地よく持続します。

インタビューを終えて

ルネッリ家が大切にしている「美しい場所で美味しいワインを造る」という理念。その言葉を、アレッサンドロさんの解説やエステートの佇まい、そして実際に味わったワインを通して深く実感しました。どのワインにも、フェッラーリのトレントDOCに通じる美しい酸が際立ちながら、トレンティーノやウンブリアといった土地の個性を見事に映し出していました。

なかでも印象的だったのは、ウンブリアで手がける「テヌータ カステルブオーノ」のワインの飲み比べです。ジッグラットとランパンテは、同じ品種構成ながら、数日収穫時期が違うだけで全く異なる表情を見せていました。ジッグラットはエントリーラインとは思えないほどのボリューム感を持ち、ランパンテはエレガントで奥行きのある味わいに仕上がっていました。モンテファルコ サグランティーノは、存在感のあるタンニンを感じつつも口当たりは驚くほどしなやかで、綺麗な酸もあいまってエレガントさが際立っていました。