サルデーニャのポテンシャルを初めて世界に示した先駆者「アルジオラス」

2025/06/26

2025/05/30

アントニオ アルジオラス氏 Mr. Antonio Argiolas

サルデーニャのポテンシャルを初めて世界に示した先駆者!477種のクローンと多彩なテロワールから、表現力豊かなラインナップを生む名門「アルジオラス」

1918年に植樹を開始し、1938年に創業したサルデーニャの名門ワイナリー「アルジオラス」。サッシカイアの生みの親として知られる偉大な醸造家ジャコモ・タキス氏とともに、サルデーニャで初めて「高品質ワイン」の概念を体現したフラッグシップ「トゥリガー」を生み出した先駆者です。彼らが拠点を置くのはサルデーニャ南部。多彩なテロワールと豊富な土着品種に恵まれたこの地の特徴を活かし、個性と多様性に富んだワインを数多く生み出しています。今回は16種ものワインを試飲しながら、3代目当主アントニオ・アルジオラス氏にお話を伺いました。

偉大な醸造家ジャコモ・タキス氏とともに歩み、
サルデーニャで初めて高品質ワインの概念を築いた先駆者

――2019年ぶりのインタビューとなります。改めて簡単にワイナリーの説明からお願いします。

アルジオラスは、1938年に祖父アントニオ・アルジオラスが創業したワイナリーです。当時は家庭用や海外向けのブレンド用として、大量生産型のワイン造りが主流でした。転機が訪れたのは1970年代。2代目が加わり、時代の変化とともに、量を追うか品質を追うかという選択を迫られました。私たちは後者を選び、品質を最優先する現在のスタイルへと舵を切りました。本格的にボトリングを開始したのも、この頃からです。
3世代にわたる家族経営ワイナリー

ジャコモ・タキス氏が初の醸造家に就任
アルジオラスの原点となるスタイルを確立

そして1980年、私たちは初のコンサルタントとしてジャコモ・タキスを迎え入れました。当時、ジャコモは頻繁にサルデーニャを訪れており、その際には必ず最初にアルジオラスを訪ねていたのです。そんなジャコモと祖父は親交を深めていき、本格的に醸造に関わるようになり、アルジオラスにおける最初の醸造家を務めることになりました。

彼の参画により畑づくりから見直しが始まり、土着品種を徹底するなど、さらなる変革がなされました。およそ9年にわたる取り組みの末、1989年には「トラディショナル・シリーズ」の5つのワインをリリースしました。ブレンドの名手でもあったジャコモの技術を取り入れて仕上げたこのシリーズは、現在のアルジオラス・スタイルの原点とも言える存在です。
ジャコモ・タキス氏(中央)と2代目

初ヴィンテージから日本市場に登場
サルデーニャの潜在力を知らしめた、初のバリック熟成赤「トゥリガー」

そして1992年、フラッグシップ「トゥリガー」をリリースしました。ジャコモによって、サルデーニャで初めてバリックを導入した革新的なワインです。実は私たちが最初にジャコモと手がけたのは「トゥリガー」で、初ヴィンテージは1988年です。トラディショナル・シリーズよりも1年早く完成していましたが、長期熟成を経て1992年に世に出すこととなりました。

当時のサルデーニャには、イタリア本土で生まれ始めていた「高品質ワイン」を造る文化がありませんでした。そんな中で「トゥリガー」は、ジャコモと私たちが「イタリアのどの赤ワインにも負けない、サルデーニャを代表する1本を造りたい」という強い意志のもとに生まれたワインです。

長期熟成を要するため、当時はリリース時期の目処も立たず、成功する確証もない状態でした。しかし、1991年と1992年ヴィンテージが『Vinitaly』で金賞を受賞。金賞が1本のみに与えられていた当時、その評価の重みは格別でした。さらに1995年ヴィンテージでは、『ビベンダ』で「イタリア最優秀赤ワイン」にも輝きました。

この成功を機に、サルデーニャへの関心が高まり、このエリアの可能性を大きく広げることにつながりました。もしジャコモとの挑戦がなければ、今日のアルジオラスは存在していなかったかもしれませんし、この地における高品質ワインの歴史も、まったく違ったものになっていたことでしょう。ちなみに「トゥリガー」は、日本にはファーストヴィンテージから輸出しているんですよ。

多様な土着品種が根づき、
大きな可能性を秘める南サルデーニャの個性

 私たちの畑が位置するのは南サルデーニャです。なかでもトレジェンタ地方とパルテオッラ地方は、日照に恵まれ、風通しも良好で、古代ローマ時代から豊かな農作物の産地として知られるエリアです。祖父アントニオは、この土地のポテンシャルにいち早く気づき、1930年代にトレジェンタのセレガス村でブドウ栽培を始めました。

この地域のもうひとつの大きな特徴は、豊富な土着品種が根づくテロワールの多様性です。海に近いパルテオッラ地方は温暖で標高およそ100メートル。一方、内陸のトレジェンタ地方は標高200メートルほどの冷涼な土地で、それぞれに適したブドウが育ちます。丘陵の向きや起伏に富んだ地形により、古くから多種多様な品種が栽培されてきました。

私たちは、一つの大きな区画に単一品種を植えるのではなく、地形や土壌、気候の違いを活かして、細かく区画を分けながらブドウを栽培しています。こうした条件が揃う地域は、サルデーニャ島内でも非常に珍しく、このエリアならではの強みと言えるでしょう。たとえば、北部のガッルーラ地方ではヴェルメンティーノ、南西部のスルチスではカリニャーノ、中央部ではカンノナウが中心です。

477種のクローンに及ぶ「研究畑」で導く、土地×品種の最適解
アルジオラスでは、土壌と品種の最適な組み合わせを見極めるため、2009年より「研究畑」プロジェクトを展開しています。サルデーニャ各地から収集した品種サンプルを2~3メートル間隔で植え分け、その配置すべてをマッピングしてデータ化。土地ごとに最も適したクローンと台木の組み合わせを探っています。

現在保有するクローンは、ヴェルメンティーノ110種類、カンノナウ102種類、カリニャーノ80種類など計477種類にのぼります。そして、これらを数種類の台木と組み合わせることで、栽培条件に応じた無数の選択肢が生まれます。

このプロジェクトの成果は、新たな畑やワイン造りの際に活用されています。土壌特性、日照量、斜面の向き、年間降水量といった条件をもとに、最適なクローンを科学的根拠に基づいて選定できるのです。この研究こそが、土地と品種の可能性を最大限に引き出す鍵となっています。

南部のテロワールが育んだ多彩な個性
3世代で築き上げた、サルデーニャ屈指のラインナップ

――アルジオラスのワインはラインナップが非常に豊富です。わりと早い段階で、今あるほとんどのワインを展開されていたのでしょうか?

現在のラインナップに至るまでに30年以上かかりました。サルデーニャは、他州に比べて本格的なワイン造りのスタートが遅れた地域です。イタリア各地にはすでに長い歴史と実績を持つワイナリーが存在しており、私たちはその流れに追いつくような形で活動してきました。とはいえ、他のワイナリーが100年以上の歴史を刻むなかで、私たちは30年をかけてようやく同じステージに立てた、というのが正直な感覚です。

初ヴィンテージから日本で親しまれてきた、
アルジオラスの原点「トラディショナル・シリーズ」

そして、最初のトラディショナル・シリーズで、5つものワインを同時にリリースできたのは、やはりこの地域に古くから多様なブドウ品種が栽培されていた土壌があったからです。先述の通り、これらのワインは今もアルジオラスのスタイルを支える基盤となっています。

実は、トラディショナル・シリーズを初めて輸出した国は、日本、アメリカ、ドイツの3カ国でした。つまり、日本ではファーストヴィンテージから楽しまれていたのです。さらに、アルジオラスのラインナップをここまで網羅的に輸入しているのは、世界でも日本だけです。他国では一部のキュヴェのみの取り扱いにとどまっています。
トラディショナル・シリーズ「コスタマリーノ」

研究畑の集大成として生まれたモダンスタイル
「イノベーション・シリーズ」&「スプマンテ・シリーズ」

私たちの代(3代目)になり、新たな挑戦として「イノベーション・シリーズ」と「スプマンテ・シリーズ」をリリースしました。クローン選定や栽培方法について綿密な研究を重ね、研究畑で得られた知見が反映されたモダンなスタイルのワインです。カルダネーラ、メリ、アリオーラといった各キュヴェは、それぞれに最適なクローンの単一畑で造られており、アルジオラスがいかにクローン研究に力を注いできたかを体現する存在でもあります。

高品質なワインづくりには、基本的には手摘みが理想だと考えています。私自身、醸造家として機械収穫には慎重な立場ですが、正しく用いれば良質なブドウを届けることも可能です。そのため、「メリ」ではあえて機械収穫を採用しています。若樹で機械に任せたほうが効率が良く、よりフレッシュな状態でワインを造ることができるのです。
イノベーション・シリーズ「メリ」

アルジオラス最上級の二大シリーズ
「テロワール・シリーズ」&「イセリス・シリーズ」

では、なぜトゥリガーは手摘みにしているのか。それは高樹齢の畑だからです。選果には人の目が必要であり、低収量でなければなりません。そのトゥリガーといった上級ラインに、「テロワール・シリーズ」と「イセリス・シリーズ」があります。「テロワール・シリーズ」は、ステンレスや旧樽バリックを用いて品種の個性を打ち出すシリーズです。

一方の「イセリス・シリーズ」は、トゥリガーを筆頭にバリック熟成で造るスタイルです。ただし、その中の「セルデーニャ」に関しては、スチーム加熱したバリックに切り替えました。最上級の白ワインであるこのキュヴェでは、樽の影響を抑え、ヴェルメンティーノ本来の魅力をより前面に出すべきだという考えに、世代交代とともにシフトしていきました。
テロワール・シリーズ「イス アルジオラス」

南部のテロワールの恩恵を受けた、圧巻のラインナップ数
――土着品種だけで、これほど豊富なラインナップを展開する生産者は、他にサルデーニャにいるのでしょうか?

自社畑のみで実現している生産者は、私たち以外にはいないと思います。確かに、協同組合には私たち以上の品数を展開しているところもありますが、それらの多くはプライベートブランド(PB)向けなど流通重視の商品であり、実際には中身が同じワインであることも少なくありません。

私たちのように、自社畑で育てた土着品種から、1本1本に明確なストーリー性を持たせたワインをこれほど多く展開している例は稀です。それが可能なのは、この地域の多様な土壌と気候条件があってこそです。繰り返しになりますが、もしアルジオラスが北部のガッルーラ地区にあったなら、これほどの品種展開は実現できなかったでしょう。ここ南部の土地だからこそ成し得たことなのです。

1989年リリースの歴史的ライン「トラディショナル・シリーズ」
親しみやすい心地よい酸が光るヴェルメンティーノ

コスタモリーノ 2023

コスタモリーノ 2023

アントニオ氏:
「コスタモリーノは、1989年にジャコモ・タキスと造り初めてリリースしたヴェルメンティーノです。アルジオラスを代表する、最多の生産量を誇るワインです。昔からテレビやラジオにも登場していたほど知名度が高く、ヴェルメンティーノといえばコスタモリーノと思われていたほどです。」
試飲コメント:淡い麦わら色。桃のような白い果実を思わせる香りで、親しみやすくほどよく豊かなアロマ。味わいは、白い果実の風味が広がり、心地よい酸とほどよくふくよかな骨格が調和しています。

1989年リリースの歴史的ライン「トラディショナル・シリーズ」
フレッシュ&フルーティを堪能できるヌラグス

セレガス 2023

セレガス 2023

アントニオ氏:
「セレガスはカリアリの土着品種ヌラグスで造る白ワインです。南サルデーニャの限定エリアに根づくサルデーニャ最古のブドウとも言われています。ヴェルメンティーノと比べてアロマは控えめですが、成熟すると香りの高さなどの特性が現れます。そのため、収穫時期は遅く、10月初旬に始まります。」
試飲コメント:淡く輝く麦わら色。繊細な白い果実のフルーティな香り。味わいはフレッシュで、後から苦味を伴う余韻が持続します。

新たな挑戦で生まれた「スプマンテ・シリーズ」
繊細な果実味と酸が調和するヌラグスのスプマンテ

タリアマーレ ブリュット NV

タリアマーレ ブリュット NV

アントニオ氏:
「タリアマーレは、ヌラグス100%のスプマンテです。研究を経て最も個性が表現できる品種として、ヌラグスを選びました。2014年に初めて造りましたが、当時シャルマ方式で造っていたのは私たちだけでした。」
試飲コメント:淡い麦わら色。パイナップルやハーブのようなニュアンスを持つ香り。ほどよくクリーミーで心地よい口当たりです。繊細な果実味と酸が調和した風味が持続します。

1989年リリースの歴史的ライン「トラディショナル・シリーズ」
軽やかでフレッシュな風味に満ちたロゼワイン

セッラ ローリ 2023

セッラ ローリ 2023

アントニオ氏:
「セッラ ローリは、1989年にジャコモ・タキスと造り初めてリリースしたロゼです。カンノナウ主体にモニカとカリニャーノをブレンドしています。リリース当初とは違い、今はロザート用の区画として厳選した高品質ロゼワインとして造っています。」
試飲コメント:輝く淡いサーモンピンク色。ブルーベリーやブラックベリーの軽やかでフレッシュな香り。香りで感じた果実が心地よく広がる味わいです。ややミネラル感が伴うエレガントな余韻が持続します。

1989年リリースの歴史的ライン「トラディショナル・シリーズ」
冷やして楽しむ伝統的土着品種モニカ

ペルデーラ 2022

ペルデーラ 2022

アントニオ氏:
「ペルデーラは、かつて自家用ワインとして嗜まれていたモニカで造る赤ワインです。柔らかなタンニンとスパイス感があり、魚介にも合うデイリーワインです。特に夏場、海辺のサルデーニャのレストランでは、魚と一緒にペルデーラを頼むと冷やした状態でサービスされるんです。家でも冷蔵庫に入っているような、南サルデーニャの伝統に根ざした存在ですね。」
試飲コメント:ルビー色。目の詰まった黒系と赤系果実、花、スパイシーさを感じさせるフレッシュな香り。口当たり柔らかく、凝縮感のある黒系果実やスパイシーな風味に満たされます。

新たな挑戦で生まれた「スプマンテ・シリーズ」
フレッシュで軽やかなモニカ100%ロゼ スプマンテ

タリアマーレ ロゼ NV

タリアマーレ ロゼ NV

アントニオ氏:
「モニカ100%で造るロゼのスプマンテです。モニカで造る他のキュヴェにも同じことが言えますが、品種特有の綺麗な酸を表現したスタイルに仕上げています。」
試飲コメント:淡いローズピンク。イチゴのような赤い果実の香り。香りに感じた要素と、フレッシュで軽やかな味わいが感じられます。

1989年リリースの歴史的ライン「トラディショナル・シリーズ」
柔らかさと豊かさを兼ね備えた味わい

コステーラ 2022

コステーラ 2022

アントニオ氏:
「コステーラは、1989年にジャコモ・タキスと造り初めてリリースしたワインのひとつです。カンノナウは、最も多く栽培される黒ブドウ品種です。昔のカンノナウは重厚でタンニンの強いスタイルが主流でしたが、コステーラはジャコモの影響もあり、エレガンスを重視したスタイルで造られています。酸が引き出される区画や日照の強い区画などをブレンドしてバランスの取れた味わいに仕上げています。」
試飲コメント:ルビー色。花や黒系果実、スパイスの香りがあります。凝縮された果実味を感じる、柔らかいながらも厚みのある味わいです。バランス感のある風味が持続します。

研究の集大成のモダンスタイル「イノベーション・シリーズ」
フレッシュで濃密、爽やかな風味のヴェルメンティーノ

メリ 2023

メリ 2023

アントニオ氏:
「メリはヴェルメンティーノ100%の白ワイン。温度管理したステンレスタンクで醸造することでアロマが際立ち、シュールリー期間が短いことが特徴です。そのため、フレッシュな仕上がりになっています。このイノベーション・シリーズは、私たち3代目が手がけた現代的なワインです。多様なクローン研究の成果に基づいて誕生した単一畑シリーズです。」
試飲コメント:黄色に近い麦わら色。フレッシュな黄色い果実に、やや濃密でアロマティックな香りと爽やかさを伴うアロマ。滑らかな口当たりにフレッシュな酸が広がり、リンゴやパイナップルのようなジューシーな南国果実の風味と共に、すっきりした余韻が持続します。

研究の集大成のモダンスタイル「イノベーション・シリーズ」
エレガントかつ凝縮した赤系果実が広がるカンノナウ ロゼ

アリオーラ カンノナウ ディ サルデーニャ ロゼ 2023

アリオーラ カンノナウ ディ サルデーニャ ロゼ 2023

アントニオ氏:
「アリオーラは、単一畑で造るカンノナウ100%のロゼです。セッラ ローリがIGTで複数畑をブレンドしているのに対し、これはカンノナウ ディ サルデーニャDOCで力強さを感じさせる仕上がりになっています。このイノベーション・シリーズは、私たち3代目が手がけた現代的なワインです。多様なクローン研究の成果に基づいて誕生した単一畑シリーズです。」
試飲コメント:輝きのある淡いピンク色。やや凝縮した赤系果実がエレガントに香るアロマ。香り同様に赤系果実の繊細な風味が感じられ、軽やかな味わいです。

研究の集大成のモダンスタイル「イノベーション・シリーズ」
「毎日飲める」軽快で軽やかなカリニャーノ

カルダネーラ 2022

カルダネーラ 2022

アントニオ氏:
「カルダネーラはカリニャーノをステンレスタンクで造る赤ワインです。スルチス地方のブドウを使用しています。毎日飲める軽快で親しみやすさが特徴で、ワインに馴染みのない人にも喜ばれます。BBQやカジュアルなシーンにも最適です。このイノベーション・シリーズは、私たち3代目が手がけた現代的なワインです。多様なクローン研究の成果に基づいて誕生した単一畑シリーズです。」
試飲コメント:深みのあるルビー色。凝縮感のある黒系果実のフレッシュな香り。ほどよく豊かな果実味と繊細なタンニンが調和する心地よい味わいです。軽やかな余韻が持続します。

最上級キュヴェ「イセリス・シリーズ」
熟成ポテンシャルを秘めた希少な土着品種ナスコ

イセリス ナスコ 2022

イセリス ナスコ 2022

アントニオ氏:
「イセリス ナスコは、ワイナリーに近いセルディアーナ村の畑で造られる土着品種ナスコを使用して造っています。もとは甘口用に使われていたナスコを、辛口に仕上げた挑戦的なワインです。2013年ヴィンテージから造っていて、当初はヴェルメンティーノとのブレンドでしたが、今ではナスコ100%でナスコ ディ カリアリDOCを取得しました。熟成のポテンシャルを秘めた個性的な存在です。」
試飲コメント:明るい麦わら色。白い果実や華やかな香りに、白胡椒のようなスパイスとミネラルが感じられます。アロマティックな果実味がほどよく広がり、苦味が余韻として持続します。

土地と品種の個性を映し出す「テロワール・シリーズ」
フレッシュで豊かさを感じさせるヴェルメンティーノ

イス アルジオラス 2023

イス アルジオラス 2023

アントニオ氏:
「イス アルジオラスは、シュールリーを4ヶ月から半年間行うステンレスタンク醸造のヴェルメンティーノです。厚みのある味わいが特徴です。初期は単一畑から造られていましたが、現在は複数の畑から厳選して造っています。」
試飲コメント:輝く麦わら色。バナナや黄色い果実のフレッシュな香り。香りと同様にフレッシュながら厚みのある味わいで、豊かで洗練された余韻に満たされます。

最上級キュヴェ「イセリス・シリーズ」
樽のニュアンスが綺麗に溶け込むヴェルメンティーノ ディ サルデーニャ

セルデーニャ 2021

セルデーニャ 2021

アントニオ氏:
「セルデーニャは、非常に少量かつ細かいセレクションで造られる単一畑のワインです。発酵と熟成に使用するバリックは、スチーム加熱したものに切り替えました。熟成期間は約1年間です。35~45年の古樹から得られるリッチさとともに、ヴェルメンティーノらしさとフレッシュさのバランスが取れた味わいに仕上がっています。」
試飲コメント:緑色を帯びた輝く麦わら色。リンゴや桃、黄色い果実の香りがあります。口に含むと香り同様の風味と樽のニュアンスを感じさせる、滑らかでエレガントな味わいが広がります。わずかにバターのような風味が余韻に現れます。

土地と品種の個性を映し出す「テロワール・シリーズ」
ブドウの典型性が表現されたカンノナウ ディ サルデーニャ

セネス 2020

セネス 2020

アントニオ氏:
「セネスは、典型的なサルデーニャのカンノナウを表現するために誕生したカンノナウ ディ サルデーニャです。コステーラのエレガントなスタイルと、トゥリガーの中間に位置するワインです。単一畑、アルベレッロ仕立てで、バリックとセメントタンクを併用して熟成しています。鮮やかな色合いとチェリー系の果実が特徴です。料理との相性が良く、何か食べたくなるような味わいですね。」
試飲コメント:ルビー色。凝縮した赤系果実や胡椒の洗練された香り。香りと一貫性のある、赤系果実とスパイスが調和したフレッシュな味わいです。

最上級キュヴェ「イセリス・シリーズ」
トゥリガーに使用したバリックで造る希少品種ボヴァーレ

コーレム 2020

コーレム 2020

アントニオ氏:
「コーレムは1997年に、絶滅寸前だったボヴァーレ・サルドを救うために生まれたワインです。もとは補助として使われていた品種でした。生産当初は55%でしたが、現在は85%まで高めました。カリニャーノとカンノナウをブレンドしています。発酵はステンレスタンク、マロラクティック発酵はセメントタンク、熟成はトゥリガーで使用した2回目のバリックを用いています。優しく、開けてすぐ楽しめる女性的なワインです。」
試飲コメント:深みのあるルビー色。黒い果実や花、凝縮した豊かな香りに、胡椒やレザーのようなスパイスのニュアンスがあります。口に含むと複雑で豊かな味わいがエレガントに広がり、スパイスも感じられます。

最上級キュヴェ「イセリス・シリーズ」
サルデーニャを世界に知らしめたフラッグシップ

トゥリガー 2020

トゥリガー 2020

アントニオ氏:
「私たちのフラッグシップです。トゥリガーの初ヴィンテージは1988年、リリースは1992年でした。当時、サルデーニャには新樽もボトリング文化もなく、ハイエンドワインは存在していませんでした。その中でトゥリガーは、サルデーニャを牽引する存在として登場し、1991年、1992年のVinitalyで金賞を獲得しました。1995年にはビベンダでイタリア最優秀赤ワインも受賞し、当時としては非常に重みのある評価でした。」
試飲コメント:深みのあるルビー色。黒系果実やスパイス、土などの複雑な香りがあります。力強く複雑な味わいで、存在感のあるタンニンが同時に広がります。あとからバターのような樽のニュアンスが訪れ、長く心地よい余韻が続きます。

インタビューを終えて

今回試飲したワインは全16種。どれも明確な個性と多様性に富んだ味わいで、多彩なテロワールと「研究畑」など長年の取り組みによって生み出されたものだと実感しました。まさに、アルジオラスの歴史そのものを物語るラインナップだと思いました。アントニオ氏が「(サルデーニャで)1本1本に明確なストーリー性を持たせたワインを、これほど多く展開している例は稀」と語るように、サルデーニャ屈指のラインナップを最も網羅的に楽しめる国が日本である、というお話も印象に残りました。

そして、彼らがジャコモ・タキス氏と初めて造り、サルデーニャを世界に知らしめたフラッグシップ「トゥリガー」は圧巻の味わいでした。果実の凝縮感と緻密なタンニン、複雑で力強いながらも洗練されて非常にエレガント。まさに「スーパーサルデーニャ」というべき1本でした。「トラディショナル・シリーズ」、「イノベーション・シリーズ」、「テロワール・シリーズ」、そして最上級キュヴェのトゥリガーまで、アルジオラスの奥行きと哲学を余すことなく堪能することができました。