カステルヌォーヴォ ベラルデンガに魅せられたジャクソンファミリーが手掛ける洗練のキャンティクラシコ「テヌータ ディ アルチェーノ」突撃インタビュー

2019/01/21
突撃インタビュー
 
2018年11月29日 テヌータ ディ アルチェーノ社 ペペ シブ グラチアーニ氏

カステルヌォーヴォ ベラルデンガに魅せられたジャクソンファミリーが手掛ける洗練のキャンティクラシコ「テヌータ ディ アルチェーノ」突撃インタビュー

テヌータ ディ アルチェーノは、カリフォルニアのケンダルジャクソンの創業者がカステルヌォーヴォ ベラルデンガの土地に魅了されて立ち上げたワイナリーです。キャンティクラシコの伝統と、カリフォルニアで培ったワイン生産技術、そして「ヴェリテ」を成功に導いた醸造家ピエール セイヤンのバックアップによって造られる洗練されたキャンティクラシコについてエキスポートマネージャーのペペ シブ グラチアーニ氏にお話をお聞きしました。

カリフォルニアのケンダル ジャクソン創始者が、バカンスに訪れたトスカーナで魅了されたカステルヌォーヴォ ベラルデンガの土地を購入してスタート

ジェスジャクソン氏とピエール セイヤン氏テヌータ ディ アルチェーノは、アメリカを中心に世界各国で50ものエステートを所有するジャクソンファミリーワインズのグループのひとつで、ジャクソンファミリーがカリフォルニア以外で初めて立ち上げたワイナリーです。ケンダルジャクソン社の創始者であるジェス ジャクソンは、トスカーナにバカンスに出かけた際、カステルヌォーヴォ ベラルデンガを訪れ、その素晴らしさに魅了されてこの土地を購入しました。ここは森や野原やオリーブ畑やブドウ畑などが広がる、1000ヘクタールという一大区画です。もともとはシエナのタジャ家が1504年から領地を拡大して発展させ、その後1829年にピッコロミニ家に引き継がれました。そして1994年、ジェスジャクソンへと所有者が変わりました。(右の画像はジェスジャクソン氏とエノロゴのピエールセイヤン氏)

もともとブドウ畑はありましたが、特に意味がなく植えられていたため、1から整備をしました。ミクロクリマを細かく分けて、土壌や土地の向きなどを調べていって、ブドウ栽培に最も適した92ヘクタールを選び、畑にしました。それを63区画に分けて最適な品種をそれぞれ植樹していきました。

ワイナリーを整備していくうえで重要な役割を果たしたのがエノロゴのピエール セイヤンです。彼はジェスジャクソンと意気投合し、「ソノマでペトリュスを造ろう」とプロジェクトを立ち上げて成功させた人物で、アルチェーノでのワイン造りにおいてもスタート時から関わって育てていきました。

テヌータディアルチェーノ全景

ワインのスタイルは「非常に果実味豊かで、とてもフレッシュで、そして非常にクリーン」

アルチェーノのワインのスタイルで重視していることは、非常に果実味が豊かで、とてもフレッシュであることです。そしてクリーン、清潔であること。だから美しい酸を保つことを大切にしています。これはサンジョヴェーゼにもフランス品種にもどちらにも共通しています。

エノロゴ ローレンス氏
63区画のブドウは収穫から醸造まで全て別々に行われます。収穫してからは低温で管理され、低温マセラシオンを行います。そして12ヶ月間のバリック熟成へと進んでいきます。そのあと、ピエールセイヤンと、もうひとりのエノロゴのローレンスクローニン(右の画像)でどの樽をどのワインに使うのかを決めていきます。

ローレンスはイタリア系アメリカ人で、エノロゴとしてのキャリアはカリフォルニアから始まり、その後、シチリアのフィッリアート、ニュージーランドのクラウディーベイ、オーストラリアのケープメンテル、などで働いた後にアルチェーノに入社しました。ピエールセイヤンととともにアルチェーノのワインを造り上げて行っています。もっぱらローレンスがサンジョヴェーゼを担当していて、ピエールセイヤンはフランス人ということもありますが、ボルドー品種を担当しています。

 

1000ヘクタールの所有地の中からサンジョヴェーゼに最適な場所を探す

1994年に土地を購入し、ワイン造りを始めることになったわけですが、最初はスーパートスカンを造ることにしました。実はアルチェーノには2つのブランドが

あります。キャンティクラシコを造る「テヌータ ディ アルチェーノ」、そしてスーパートスカンの「アルカヌム」です。アルカヌムのスーパートスカンが2002年ヴィンテージが初リリースでこれがアルチェーノとしての最初のワインです。その後、2004年ヴィンテージのキャンティクラシコ、2007年ヴィンテージのストラーダ アル サッソがそれぞれの初ヴィンテージとなります。

土地を購入した90年代はスーパートスカンの時代でした。そこで、まずその準備としてカベルネとメルローを植樹しました。サンジョヴェーゼは少し遅れて97年から98年にかけて植樹をし始めたのですが、それはサンジョヴェーゼに最も適した場所はどこなのかを見極めるのに時間がかかったからです。

アルチェーノの土地はカステルヌォーヴォ ベラルデンガにありますが、所有地の中だけでも起伏が様々で、向きもばらばら、土壌のタイプも10種類ぐらいあります。そのためサンジョヴェーゼに最適な場所を見つけるのに時間がかかったのです。

キャンティクラシコとスーパートスカンを同じワイナリーでも両方造っているところもありますが、私達はこの2つを完全に分けています。ラベルデザインも全然違います。ただ、ボトリング場所は2つとも同じです。

テヌータディアルチェーノ畑の区画

伝統的ワインとして認識されている「キャンティクラシコ」をフレッシュさのあるクリーンでモダンなワインとして表現

キャンティクラシコはイタリアの中でもとても歴史のある、伝統的なワインです。そのため、ちょっと古っぽいイメージを持っている人もいます。ですが、私達はフレッシュさとクリーンさを表現することを心がけています。ベーシックラインのキャンティクラシコは、特に若々しいアロマがあり、これは若い人たちにも好ましく感じられていると思います。そしてサンジョヴェーゼの特徴でもある酸を表現することも大切にしています。

キャンティクラシコ、キャンティクラシコリゼルヴァ、そしてストラーダアルサッソは3つとも醸造過程は同じです。収穫後、房を選果台において手作業で選別します。そしてさらに良い果実だけを選ぶためにレーザーを使って選別します。その選別に合格した実だけが選果台を抜けて次の工程へと進むことができる仕組みになっています。これはコーヒー豆を選別するシステムを使っています。

最高のサンジョヴェーゼが造られる単一畑「ラポルタ」に15のサンジョヴェーゼグロッソのクローンを植樹。このブドウから造られるのがトップキュヴェの「ストラーダアルサッソ」

テヌータディアルチェーノ スタラーダアルサッソ
ジャクソンファミリーワインズは土壌調査を徹底的にやる会社です。全てのワイナリーで共通しているポリシーです。テヌータディアルチェーノには「ラ ポルタ」という名前の2ヘクタールの単一畑があり、最高のサンジョヴェーゼができる条件であることが分かり、15のサンジョヴェーゼグロッソのクローンを97年と98年に植樹しました。この畑はブドウからストラーダ アル サッソが造られます。一番良いサンジョヴェーゼで造るワインなのでワイナリーにとって特別なワインです。ブルネッロ同様、長く熟成させてリリースしています。

もともとは「ラ ポルタ」という名前にするつもりでしたが、リリースしようというタイミングでジェスジャクソンが亡くなったんです。そこで、彼に捧げるワインということで彼のミドルネーム「Stonestreet(ストーンストリート)」にちなんでイタリア語で石の道の意味の「ストラーダアルサッソ」という名前にしました。

斜面に沿って自然なカーブを描くように植樹した畑

テヌータディアルチェーノ 畑
カステルヌォーヴォベラルデンガは比較的起伏に富んだ地区になります。トスカーナ地方は一般的には緩やかな斜面なのでブドウ畑の畝はまっすぐなのが一般的ですが、カステルヌォーヴォベラルデンガは傾斜が緩やかなところと急なところと両方あります。この自然な傾斜に逆らわず、カーブを描くように植樹したほうが雨で表土が流されにくいので、弧を描くような仕立てになっています。これをラベルデザインにしています。ワイナリーのテースティングルームからブドウ畑をみるとまるで劇場のように見えますよ。

畑があるのは標高が300~540メートルになります。常に風が吹いているところもあれば、風からプロテクトされているような場所もあり、様々です。

カステルヌォーヴォベラルデンガには約30社ほどのワイナリーがあり、団結してプロモーションをしている

カステルヌォーヴォベラルデンガの場所キャンティクラシコ地区には全部で600ほどのワイナリーがあり、もっとも南に位置しているのがカステルヌォーヴォベラルデンガで、30ほどのワイナリーがあり、みんなで「Classico Berardenga」という協会を造って活動しています。地形的に東と西に分かれているのがわかりますか?土地の形が蝶に似ているので私たちはそのまま「ファルファッラ」と呼んでいます。テヌタータディアルチェーノは東エリアにあります。

2017年に興味深いイベントを行いました。協会に所属するワイナリーそれぞれが自分たちの畑において3つの異なる土壌(sabbia、macigno、galestro)でワインを造り試飲会を行ったのです。

クラシコベラルデンガのイベント土壌によって味わいがどう異なるか、非常に面白かったです。さらにすごいのが、そうやって造った全てのワイナリーのワインを全部ブレンドして1本のワインを造ったことです。これはサンフェリーチェのエノロゴのレオナルドベッラッチーニが中心になって行いました。正直、美味しくないだろうと思っていたのですが(笑)予想に反して非常に素晴らしい味わいでした。残念ながら販売はしていません(笑)。

メルローをブレンドすることで柔らかさのある飲み心地の良いキャンティクラシコ
キャンティ クラシコ 2015
キャンティ クラシコ 2015


ベーシックなキャンティクラシコの2015ヴィンテージです。サンジョヴェーゼにメルローを15%ブレンドしています。メルローを使うことであまやかさとやわらかさがあり、毎日飲んで頂けるような飲み心地の良さになっています。もちろん、サンジョヴェーゼらしい酸もしっかりと感じられます。砂質の多い畑のサンジョヴェーゼをより多く使っています。

2015年はトスカーナにとっても、サンジョヴェーゼにとっても非常にい年になりました。

試飲コメント:若い果実の香りとフローラルなアロマ、まろやかな口当たりでなめらかな果実味を感じる。とても洗練された味わいで非常にスムーズな飲み心地。全体的に柔らかく、優しくあまやかな印象。

やわらかさと特徴的なミネラルのある食事と合わせて味わうリゼルヴァ
キャンティ クラシコ リゼルヴァ 2014
キャンティ クラシコ リゼルヴァ 2014


2014年ヴィンテージのリゼルヴァです。セパージュはサンジョヴェーゼ90%、カベルネソーヴィニョン10%です。2014年はとても難しい年で涼しくて雨の多い年でした。トップキュヴェのストラーダアルサッソは造らず、例年であればストラーダアルサッソに使うブドウもリゼルヴァに使いました。そのため、この年のリゼルヴァはより力強さが感じられる仕上がりになっています。一般的に2014年は弱いといわれていますがこのリゼルヴァはそうではありません。色めもしっかりしています。『ジェームズサックリング』で93点、『ワインアドヴォケイト』で91点を獲得しました。

香りや味わいが開くのに少し時間がかかるので、できれば飲む1時間前に抜栓していただくといいですね。しっかりとしたミネラルがありますので料理に合わせやすいです。単独で楽しむワインではなく、料理と一緒に味わうワインです。

試飲コメント:上品な果実の香りとバラやラベンダーのニュアンス。しっかりとしたストラクチャーのある味わいで熟した果実感とこなれたタンニンがとけあったバランスの良い美味しさ。

亡き創業者ジェスジャクソンに捧げたトップキュヴェ
ストラーダ アル サッソ キャンティ クラシコ グラン セレツィオーネ 2011
ストラーダ アル サッソ キャンティ クラシコ グラン セレツィオーネ 2011


テヌータ ディ アルチェーノのトップキュヴェのストラーダ アル サッソです。2011年はキャンティ クラシコ リゼルヴァのカテゴリーですが、2015ヴィンテージからグランセレツィオーネになります。サンジョヴェーゼ100%で造っています。サンジョヴェーゼグロッソ100%というわけではなく、サンジョヴェーゼのクローンも混ざっています。醸造する時点で混ざっているので両者の比率は分かりません。

2011年は非常に暑い年でした。濃厚な色合いです。凝縮した濃密な香りで豊潤な果実味と力強さがあります。

試飲コメント:全体的にリッチで濃密ながら度が過ぎたところがなく、濃厚ながらも洗練された味わい。調和のとれたスタイルでさすが。
インタビューを終えて
テヌータディアルチェーノは、カステルヌォーヴォベラルデンガというキャンティクラシコの伝統的なテロワールと、ジャクソンファミリーというカリフォルニアのスタイルが見事に融合されたワイナリーだと感じました。とにかく野暮ったいところが1ミリもない、隙のない味わいだと思います。

3つのキャンティクラシコもそれぞれの個性があり、造り手の意図や思いがストレートに伝わってきます。どれも洗練されていて素晴らしいのですが、テヌータディアルチェーノのスタイルとテロワールが良く分かるのがやはりベーシックのキャンティクラシコです。まずはこちらの1本をぜひ飲んで頂ければと思います。

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