「イタリアワインの達人」市橋孝浩氏に聞くピエモンテ大注目の若手生産者「デルテット」

2018/02/28
突撃インタビュー
 
2018年2月16日 株式会社モトックス 市橋 孝浩氏

「イタリアワインの達人」市橋孝浩氏に聞くピエモンテの一流レストランがこぞって使う大注目の若手生産者「デルテット」

カルロデルテット氏
『ベーレベーネ』2016でアルネイス「ダイヴェイ」2014年がオスカーを受賞し、若手ながらイタリア国内で大注目されているデルテット。現地ピエモンテで一流とされるレストランで非常に人気があり、アルバの3つ星「ピアッツァ ドゥオーモ」、その姉妹店である「ラ ビオラ」、「ラ チャウ デル トルナヴェント」、「イル チェントロ」、「アル エノテカ」等地元の有名レストランでデルテットのワインがこぞってバイザグラスで採用されています。一番厳しい目を持った地元のプロフェッショナル達に選ばれるデルテットのワインからはブドウの豊かな味わいと要所を抑えたミネラル、酸味がバランス良く感じられる実に優美な味わいがあります。イタリア現地でワイナリーに赴き、試飲を重ね、綺羅星の実力を持つ新世代ワインを発掘している「イタリアワインの達人」市橋孝浩氏と試飲をしながら、飛ぶ鳥を落とす勢いの「デルテット」の魅力についてお話を聞きました。

「イタリアワインの達人」市橋 孝浩氏

市橋氏大画像イタリアワイン好きから絶大な支持を得る「イタリアワインの達人」市橋氏
本場イタリアで伊ソムリエ協会認定ソムリエを取得し、日本ではワインスクール「アカデミー デュ ヴァン」でイタリアワインの講師も務める、「イタリアワインの達人」。

彼の情熱的なトークと関西出身の明るい人柄はファンが非常に多く、イタリアワイン好きから絶大な支持を得ています。

イタリアに情熱を注ぎ、イタリア文化とイタリアワインの魅力について熱く語る市橋氏はイタリアに毎年のように足を運び、生産者からの信頼も絶大です。

常に新しいものを取り入れようとする革新的な考えのカルロ デルテット氏

地図

常に新しいものを取り入れようとする革新的なワイナリー
デルテットについてお話させて頂ければと思います。ロエロ地区の中心地、カナーレで1953年に創業し、親子4世代に渡り、ワイン造りを行っています。現当主であるカルロ デルテットは2000年に醸造学校を修了し、そのままワイナリーの運営に参画しています。現在所有する21ヘクタールの畑は本拠地ロエロを中心に広がり、この地区を代表する白ブドウのアルネイスや黒ブドウネッビオーロを主体にバルベーラやスプマンテ用のピノ ネロ、シャルドネ等、常に新しいものを取り入れようとする革新的な考えを持っています。

 

地元の有名レストランで安定した人気を誇るデルテットのワイン

市橋氏試飲『ガンベロロッソ』でも評される「飲みやすさとリッチな果実味」
デルテット社のワインの特徴は『ガンベロロッソ』でも評されている通り、「飲みやすさとリッチな果実味」です。決して派手さはないものの調和が取れており、忠実にロエロの特徴が出た親しみやすいワインのスタイルを信条としています。2014年のアルネイス「ダイヴェイ」は『ベーレベーネ』2016でオスカー受賞する等、イタリア国内でも非常に注目されている生産者です

大樽地元の有名レストランで安定した人気を誇るデルテットのワイン
現地ピエモンテでは特に一流とされるレストランで非常に人気があり、アルバの3つ星「ピアッツァ ドゥオーモ」、その姉妹店である「ラ ビオラ」、「ラ チャウ デル トルナヴェント」、「イル チェントロ」、「アル エノテカ」等地元の有名レストランでデルテットのワインがバイザグラスで採用されています。一番厳しい目を持った地元のプロフェッショナル達が選ぶグラスワインとして安定した人気を誇っています。

「ブドウ品種に合わせて植える村が違う」という拘り

畑アルネイスの香りの豊かさや味わいのシャープさを最大限引き出す
アルネイスが栽培されているカナーレ村の畑「ダイヴェイ」はワイナリーの目の前ある、カナーレ村のアーチ状に広がる4ヘクタールの畑です。「ダイヴェイ」はピエモンテの言葉で「古くからの」という意味です。ワイナリーで最も歴史のある白ワイン「アルネイス」が植えられています。土壌は砂質がより多く含まれていて、香りの豊かさや味わいのシャープさを最大限引き出しています。また、より凝灰岩が多く含まれる土壌では「サンミケーレ」という名のワンランク上のアルネイスも造っています。「サンミケーレ」よりミネラリーで骨格の確りとしたワインとなっています。

ダイヴェイ一方、北へ10キロ圏内にある僅か1ヘクタールのサント ステファノ ロエロ村は全く性格の違う石灰質の土壌。大地も白っぽくなっています。急斜面に植えられ太陽の受けが非常に良いです。ここでは長期熟成を目指したネッビオーロが植えられています。「ブドウ品種に合わせて植える村が違う」というこだわりに、上質なワインを産み出す秘訣があるようです。

カステリオーネファレットにバローロの畑を所有
元々デルテットはバローロ ブッシアの生産者の一人でした。今はブッシアの畑は無くしてしまって、現在はカステリオーネファレットにあるパルッシの畑を所有しています。アゼリアやパオロ スカヴィーノの「フィアスク」の畑より少し北に位置する畑です。フィアスクの畑の特徴と近しく、パルッシには線の細さ、優美さが印象に残るタイプの味わいで伝統的な大樽熟成を行っており、極太タイプのバローロとは異なるタイプとなっています。

「自分たちらしさ」という個性がしっかりキープされている

市橋氏「自由な環境」がデルテットのワイン造りを後押し
デルテットにはまだそれほどネームバリューが無い分、自分たちらしさという個性がしっかりキープされているのではと。

カルロのお父さんは瓶内二次のスプマンテをだいぶ早い段階から手掛けていた事もあり、息子カルロ氏の新しい事へのチャレンジをむしろ奨励していて、そういった自由な環境もデルテットのワイン造りを後押ししていたのでしょうね。

ロエロ アルネイス ダイヴェイ 2016
ロエロ アルネイス ダイヴェイ 2016


去年の5月に「アカデミー デュ ヴァン」大阪の授業でアルネイス特集をやったんですね。ランゲアルネイス~ロエルアルネイスまで9種類ほど揃えてブラインド試飲で点数付けを行ったんですが、その時は1位ブルーノジャコーザのロエロアルネイスで、2位がデルテットのロエロアルネイス「ダイヴェイ」でした。ブドウの樹齢が少し上がってきていて、ワイン自体の膨らみが出てきていますね。
試飲コメント:輝きのある明るい麦わら色。リンゴや西洋梨の清々しい香りに白い花や綺麗なミネラルのニュアンスが重なります。フレッシュな口当たりでシャープな酸味と滑らかな果実感が上品に溶け合い、実に清らかな印象です。クラシカルで落ち着いた旨味、軽やかながらも要所を外さない味わいの深さも感じられます。キレとエレガントさが共存した模範的なアルネイスのスタイルが十分に感じられます。驚かされたのが開けて2日後の再試飲の時です。酸と果実感のバランスが崩れる事無くクリアーな味わいがキープされていて、ブドウのポテンシャルの高さをヒシヒシと感じさせる優れたワインだと思いました。

バルベーラ ダルバ 2014
バルベーラ ダルバ 2014


ロエロの地域は砂質中心と思われがちですが、彼らのもっているカステッリナルド村のバルベーラの畑に関しては鉄分の多い粘土質の畑になっていて、土壌は赤茶色をしています。このような色をした土壌はこのエリアで他にはあまり見かける事はありません。このような土壌の影響があり、熱の吸収率やブドウの熟し方も変わってきます。ですので、ある程度熟しても良いバルベーラを植えています。グラス1杯で美味しいというワインの造り方ではなく、1本通して飲み続けられる美味しさが感じられます。大樽熟成のエレガントさがあります。
試飲コメント:やや紫がかった濃いルビー色。アメリカンチェリーやラズベリーの果実の香りにふんわりと優しいオークの香りが寄り添います。フレッシュで引き締まった酸と果実味があり、タンニンは滑らかでエレガントです。バルベーラの品種個性がしっかりと感じられ、かつ調和の取れた味わいには優美さが感じられます。現地の有名レストランが使用するのも納得できるハイスタンダードなバルベーラです。

ロエロ ロッソ 2014
ロエロ ロッソ 2014


サントステファノロエロにある急斜面の畑です。デルテット曰く、「バローロやバルバレスコに比べ、若いうちに楽しむのであれば、「ロエロ」のワインは最適だ」と言っています。若いヴィンテージのバローロ、バルバレスコはもったいないから、熟成させてゆったりとした味わいを楽しめば良いのだけれども、若いうちはどうしても収斂性が強い。それであれば、早くから楽しめる「ロエロ」が親しみやすいのではないかと。カッシーナ キッコも同じことを言っていますね。優しいじわじわと来るような味わいが個人的も好きですね。バルバレスコのカ デル バイオに共通するところがありますね。
試飲コメント:深いルビーレッドの色調でダークチェリーに上品なカカオのニュアンスが綺麗に重なります。ふんわりとした優しい果実の深みとソフトでしなやかな酸と滑らかなタンニンが見事に溶け合い、非常にエレガントなスタイルです。ネッビオーロの素性の良さを感じさせる丁寧に造られた印象を受けます。赤みの肉料理と相性がよいですが、和食でカツオやマグロのヅケといった鉄分を感じさせる魚料理とも見事な相性を魅せてくれる非常にスムーズな飲み心地を有しています。大樽24ヶ月熟成により味わい、風味ともに非常に洗練されています。この価格帯のネッビオーロでは一つ飛びぬけた優雅さを感じます。
インタビューを終えて
『イタリアワインの達人』市橋氏が推薦するデルテット。アルネイスは2度目(前回は2014ヴィンテージ)の試飲だったのですが、以前にも増して表現力がより豊かになった印象を持ちました。

市橋氏は「ブドウの樹齢が上がってきている事」を挙げていましたが、それに加えて話していたのが、「若手のワイナリーのワインを飲むと、新しい発見も多いんですよ。ワイン造りの考え方とかも含めてなんですが、「視野広げんとアカンな」とか「先入観ばかりを持ったらアカンな」って気づかされるんです。「こうでなければならない」っているルールは彼らの中では無いですから、きっと珍しいタイプのワインだと思います。今「ピエモンテの若手のワイナリー」って面白いと思います!」と話してくれました。

一番厳しい目を持った地元のレストランがこぞって使用するデルテットのワインはリーズナブルでありながらブドウの豊かな味わいと要所を抑えたミネラル、酸味がバランス良く感じられる実に優美な味わいがあります。多くの方におススメしたいワインです。

デルテット家
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