キャンティ クラシコに多大な影響を与えた「イゾレ エ オレーナ」

2026/04/14

2026/02/26

エマヌエーレ レオロン氏 Mr. Emanuele Reolon

サンジョヴェーゼ100%のスーパータスカンの先駆け!キャンティ クラシコに多大な影響を与えた偉大なワイナリー「イゾレ エ オレーナ」

エマヌエーレ レオロン
1956年の設立以来、キャンティ クラシコの品質向上の先頭に立ち、エリア全体の近代化を促した立役者「イゾレ エ オレーナ」。サンジョヴェーゼの可能性を追求し、ワイナリーの名声を上げた先代パオロ デ マルキ氏が引退し、更なる発展を目指し2022年にフランスの投資会社EPI(「シャルル エドシック」や「ビオンディ サンティ」を所有)の傘下に入りました。今回はエステート ディレクターのエマヌエーレ レオロン氏が来日し、パオロ氏が築き上げてきた「イゾレ エ オレーナ」のワイン、哲学をお聞きしました。
    目 次
  • 「イゾレ(南部)」と「オレーナ(北部)」
    複雑でエレガントなキャンティ クラシコを生む土壌の多様性
  • パオロ デ マルキ氏によるキャンティ クラシコの品質革命
  • リボンをつけた樹から生まれたスーパータスカン
    「チェッパレッロ」
  • サンジョヴェーゼを追求する過程で生まれたトスカーナ最高峰の白
    「シャルドネ コッレツィオーネ プリヴァータ」
  • リボンからICタグに!
    イゾレ エ オレーナのワイン造りの継承と発展

「イゾレ(南部)」と「オレーナ(北部)」
複雑でエレガントなキャンティ クラシコを生む土壌の多様性

イゾレ エ オレーナはトスカーナ州キャンティ クラシコ地区の西側「サン ドナート イン ポッジョ」に位置しています。ここは近隣に遮る山や丘がないため海風が直接届き、海から約80kmと距離がありながら、涼しさと低湿度という栽培上の恩恵を受けられる立地です。

ワイナリーの名前にもある「イゾレ(南部)」と「オレーナ(北部)」という二つの地域にまたがって56haのブドウ畑を所有し、畑の平均標高は450メートルとキャンティ クラシコ地区の中でも高地に畑が位置しています。
イゾレエオレーナ地図

土壌は「イゾレ」と「オレーナ」でキャラクターが異なります。南部イゾレ地区はアルベレーゼ(石灰岩)主体で岩がちな粘土質の土壌です北部オレーナ地区はガレストロ(石灰質頁岩)主体でミネラルが豊富、砂質も一部混在しています。南北方向への広がりによって同一品種でも熟度差が生じ、とりわけサンジョヴェーゼの成熟度は区画ごとに異なります。こうした土壌、方位、標高、ミクロクリマ、環境要素の組み合わせが、ブドウに驚くほどの複雑性を与え、そのままワインの複雑性として表れるのです。
イゾレエオレーナの土地

パオロ デ マルキ氏によるキャンティ クラシコの品質革命

1970年代のキャンティ クラシコは、フィアスコ瓶に詰められる安価な大量生産品の象徴であり、規定上サンジョヴェーゼを最低50%から最大70%、白品種トレッビアーノを最低15%から最大30%使用することが義務付けられ、残りは任意の品種をブレンド可能という「サンジョヴェーゼが軽んじられた」時代でした。多くの生産者が価格や飲みやすさを優先し、サンジョヴェーゼ50%、トレッビアーノ30%という比率でキャンティ クラシコを造っていました。

「より良いワインを生む唯一の道はサンジョヴェーゼにフォーカスすること」
醸造・栽培における常識を覆したパオロ氏の改革

1976年、イゾレ エ オレーナに転機が訪れます。オーナーの息子でピエモンテ出身のパオロ氏がワイナリーに加わったのです(当時25歳)。トリノ大学で醸造学を学んだパオロ氏は、キャンティ クラシコで主流だったワイン造りの考え方に驚愕します。しかし同時に、ピエモンテにおけるネッビオーロのように「より良いワインを生む唯一の道はサンジョヴェーゼにフォーカスすること」とすぐに理解し、初ヴィンテージから、規定の範囲内でサンジョヴェーゼを最大の70%、トレッビアーノを最小の15%と改革を行いました。(最終的には白ブドウの使用を一切なくします。)

この判断は、その後約50年におよぶ彼のキャリア全体にわたる「優れたサンジョヴェーゼを造る」というミッションに対する最初の一歩でした。

栽培面でも大きな改革を主導します。1ヘクタールあたり5,800本という地区内で最高水準の密植を行い、サンジョヴェーゼのポテンシャルを高めるための畑管理を徹底しました。栽培、醸造の両面でイゾレ エ オレーナは当時の常識をいくつも塗り替えていきました。
イゾレエオレーナのサンジョヴェーゼ

リボンをつけた樹から生まれたスーパータスカン
「チェッパレッロ」

パオロ氏は畑をくまなく歩き、観察し、ブドウを食べて、樹1本1本の特徴を知ろうとしました。そして同じ畑、品種であっても樹ごとに優劣様々であることを発見し、特に優れた樹にはリボンをつけて、収穫から醸造まで完全に別工程で行うことにしました。ワイナリーで仕事を始めた1976年から1979年まで同じことを繰り返すうちに、この優れた樹のブドウのみを使って、サンジョヴェーゼ100%のワインを造りたいという想いが強まります。

そして1980年、スーパータスカン「チェッパレッロ」が誕生します。キャンティ クラシコ地区の歴史において、1977年のレ ペルゴーレ トルテに次いで造られた、DOCGの規定に縛られないサンジョヴェーゼ100%のワインでした。

単一畑から生まれるワインとは異なりリボンによる樹の選定は毎年行われるため、チェッパレッロには「その年の最高のブドウ」が使われます。
チェッパレッロ

サンジョヴェーゼを追求する過程で生まれたトスカーナ最高峰の白
「シャルドネ コッレツィオーネ プリヴァータ」

パオロ氏がはじめにキャンティ クラシコのブレンド比率を見直した際、それまで30%使用していたトレッビアーノを15%まで減らした結果、当然トレッビアーノが余ることになりました。

3年間はトレッビアーノ100%のワインを試作的に造ってみたのですが、満足いく味わいには至らず、その後、接ぎ木を通じてシャルドネの畑に転換が進みます。当初はブレンド用のブドウとして使おうと考えていたのですが、初収穫から期待を上回る出来となり、単一品種のワインとして醸造することを決断します。こうして1987年にシャルドネ100%の「シャルドネ コッレツィオーネ プリヴァータ」が生まれました。

キャンティ クラシコのセパージュを見直したのと同様に、当時のキャンティ クラシコ地区で、白ブドウ用の畑を広げ、シャルドネ100%のワインを造るということは周囲を驚かせる革新的な出来事でした。
オレーナ地区の土壌
(画像:シャルドネが栽培されるオレーナ地区の石灰質土壌)

リボンからICタグに!
イゾレ エ オレーナのワイン造りの継承と発展

パオロ氏によるリボン選定は、ワインそのもの以外にも偉大な遺産を残しました。過去10年間で、毎年リボンを与えられた樹は何本あったと思いますか?

答えは「ゼロ」です。長年にわたるリボン選定の結果、毎年必ずリボンを獲得する完璧な樹は存在しませんでした。これは常に完璧なものなどないという重要な教訓です。

ただし、10年間で7〜9本のリボンを獲得する優秀な樹は多数確認できました。これらの優良樹から苗木業者と共同でマサル セレクションを実施し、その過程で12の新しいサンジョヴェーゼ クローンが発見されました。現在登録される128のサンジョヴェーゼ クローンの約10%がイゾレ エ オレーナの畑由来であるという事実は、パオロ氏の仕事がサンジョヴェーゼの遺伝的多様性と品質向上に果たした歴史的貢献の大きさを物語っています。

「最高のサンジョヴェーゼを造る」
継承される信念と発展に向けた投資

EPIに経営が引き継がれた今でも、パオロ氏の思想と畑仕事は継承され、毎年「最高のサンジョヴェーゼを造る」という目標が共有されています。その中で、樹の選定に使われていたリボンをICタグにし、各樹の特性をデジタルで記録、管理することで精度を高めたり、地質学者とともに、土地への理解を深める研究を進めるなど、品質のさらなる向上に向けた投資を行っています。

本日はどうもありがとうございました。私たちのワインは気に入っていただけたでしょうか。皆様にワインの背景にある情熱と歴史について深く知っていただき、そしてさらに多くの方々にもそれらが伝わっていくことを願っています。
イゾレエオレーナ テイスティング

キャンティ クラシコ改革が生んだトスカーナ最高峰の白

シャルドネ コッレツィオーネ プリヴァータ

シャルドネ コッレツィオーネ プリヴァータ

エマヌエーレ氏:フレンチオーク樽で発酵、上質な澱とともに10ヵ月熟成。初期はバトナージュを行いますが、2ヵ月〜3ヵ月目には樽を回転させて澱を攪拌させるルラージュを行います。2022年ヴィンテージは暑く乾燥した年でしたが、8月末には降雨にも恵まれ、、快活でエネルギッシュ、ミネラル豊富なスタイルに仕上がりました。シャルドネに適したオレーナ地区の石灰質が強い北向き区画で栽培されています。
試飲コメント:華やかなアロマはクリーム、パイナップル、ライムの香り。生き生きとしたフルボディのワインで、ハチミツ、熟したリンゴに加えトーストしたオークが広がり、リッチで凝縮したフレーバーを余韻に感じます。

滑らかでエレガンスに満ちた上質の飲み心地

キャンティ クラシコ

キャンティ クラシコ

エマヌエーレ氏:サンジョヴェーゼ90%、カナイオーロ10%をブレンドして造るキャンティ クラシコです。ステンレスタンク発酵後、大樽で12ヶ月熟成。破砕を行わず、パンチングオーバーのみで非常に穏やかな抽出を徹底しています。2022年ヴィンテージは果実の凝縮、輝き、ミネラル感、バランスに優れた仕上がりで、テロワールの個性(塩気やミネラル)を明瞭に示しています。
試飲コメント:ミディアムボディで花、ミント、レッド ベリー、レッド チェリーのピュアで心地よいフレーバーが特徴です。しっかりとした酸に支えられた滑らかで生き生きとしたテクスチャーを伴います。

サンジョヴェーゼの醍醐味が詰まった優美で奥深いスーパータスカン

チェッパレッロ

チェッパレッロ

エマヌエーレ氏:キャンティ クラシコ地区における100%サンジョヴェーゼの歴史的ワインとして2番目に位置し、名前はイゾレ地区の境界を流れる小川の名前に由来しています。1976年から、畑で一本一本の樹を見極め、優れた樹にリボンを巻いて別収穫、別仕込みする方法を続けています。醸造は開放式の大樽発酵後、フレンチオークで18ヶ月熟成。毎年どの区画のブドウを使用するかは変わるため、「その年の最高のブドウ」によって造られるワインです。
試飲コメント:生き生きとした色、フレッシュなアロマ、繊細な個性を持つワインです。力強いフルーツはミネラルや甘草のニュアンスと混じり合い、長い余韻ときめ細かいタンニンが残ります。2019年ヴィンテージは、果実の力強さと緻密なタンニンのバランスが整い始め、フレッシュさと重厚感のある味わいを楽しめます。

インタビューを終えて

いま私たちが手にするキャンティ クラシコは、サンジョベーゼの力強さときめ細かいタンニンが調和したエレガントなスタイルのものが多くあります。キャンティ クラシコの最上位カテゴリー・グラン セレツィオーネが制定され、サンジョヴェーゼ100%のスーパータスカンも増えています。そうしたキャンティ クラシコ、サンジョヴェーゼの再評価が、パオロ デ マルキ氏による改革から始まった。パオロ氏が半世紀をかけて築き上げた「イゾレ エ オレーナ」の情熱の深さに感銘を受けました。

まずはキャンティ クラシコでイゾレ エ オレーナのスタイルを知っていただくことをお勧めします。緻密な畑仕事、醸造から生まれるクリーンで、赤い果実のエキスが充実したとても素晴らしいワインです。入口のワインが素晴らしい生産者は、さらに上級のワインにも期待をしてしまうものです。イゾレ エ オレーナの凄みをさらに知りたい方は、チェッパレッロ、シャルドネ コッレツィオーネ プリヴァータをぜひお手に取りください。どちらのワインも、その期待を裏切りません。

エマヌエーレ氏はパオロ氏引退前の1年間、付きっきりでワイナリーの仕事をともにしたそうです。EPIはワイナリーの歴史、本質的な価値を尊重し、その上で近代化的な設備投資を行うスタイルで、シャルル エドシックやビオンディ サンティにおいても、その実績が評価されています。

エマヌエーレ氏も「キャンティ クラシコに決して国際品種を混ぜない」など、パオロ氏との約束がいくつかあるとのこと。イゾレ エ オレーナがいまある偉大な基盤からどのような発展を遂げるのか、今後も目が離せません。

エマヌエーレ レオロン トスカニー