2026/03/02
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サビーノ ロッフレード氏 Mr. Sabino Loffredo
フィアーノの聖地モンテフレーダネのテロワールを最大限に表現!酸が際立つエレガントな味わいを追求するカンパーニャ州イルピニアの異才ピエトラクーパ突撃インタビュー

- スポーツマンから醸造家へ。独学で追求した「理想のスタイル」
- 際立つ酸を生むテロワールと五感で決める収穫
- 「フィアーノは、熟成して初めて自らのことを語りだす」
長期熟成により真価を発揮するフィアーノ - 特別な年にしか造られない最上級キュヴェ「クーポ」
スポーツマンから醸造家へ。独学で追求した「理想のスタイル」
ワインがとても好きでよく飲んでいたサビーノ氏ですが、それまで醸造の勉強をしたことはなく、0から独学でワイン造りを学びます。
「造りたいワインのスタイルは始めから決まっていた」とサビーノ氏は話します。それは、温暖なカンパーニャの気候から多くの人が想像するふくよかなワインとは対照的に、酸がはっきりした直線的な味わいで、きれいでエレガントなワイン。
2006年に外部のエノロゴとの契約を終了すると、それまで行っていたマロラクティック発酵を行わない醸造に転換。これも「きれいな酸を残すため」と、目指す味わいをより追求するためでした。
DOCGを外しあえてIGTとしてリリース
境界線に縛られないモンテフレーダネのテロワールを追求
モンテフレーダネは「DOCGフィアーノ ディ アヴェリーノ」と「DOCGグレコ ディ トゥーフォ」の境界付近に位置し、ピエトラクーパは現在6haの畑を所有しています。フィアーノとグレコを中心に、ファランギーナ、アリアニコを栽培しています。
二つのDOCGにまたがる土地柄、DOCGを名乗るためにはそのエリアのブドウしか使えないという制約がありましたが、サビーノ氏は規定に縛られないモンテフレーダネのテロワールの表現を追求するために、2019年以降、白ワインからはDOCGを外し、あえてIGTとしてリリースすることを決断しました。
際立つ酸を生むテロワールと五感で決める収穫
標高400〜600mの丘には常に涼しい風が吹き下ろし、冷涼な気候を形成します。足元に目を向ければ、下層には粘土と石灰の海洋性土壌、その上を火山灰や礫が覆う複雑な地層が広がっています。この冷涼な気候と、粘土質が蓄える水分、そして豊富なミネラル分。これらすべてが、サビーノ氏が理想とする「際立つ酸を備えた、気品ある長期熟成ワイン」にとって欠かせないものとなっています。

最も重要なのはブドウの酸
近隣の生産者より20日も早く収穫
栽培においても、彼が最も重要視するのはブドウの完熟ではなく、酸の状態です。pHを計測するような科学的な方法ではなく、ブドウの皮の厚さや果汁の酸を自らの感覚で見極め、結果として近隣の生産者より20日ほど早く収穫を行います。
いかなる時も自身の一貫した哲学や目指すワインの方向性に従って、その時できるベストな方法を選択するのがサビーノ氏のワイン造りです。

「フィアーノは、熟成して初めて自らのことを語りだす」
長期熟成により真価を発揮するフィアーノ
フィアーノは豊かなミネラルを持ち、長期熟成に向いている品種です。果皮が厚く、ばらばらと実をつけ、風通しがよく病気に強いため、長期熟成に耐え得る健康なブドウを実らせます。
一方でグレコは、フィアーノよりも酸があり、個性的で、ボリューム感があるのが特徴です。グレコは果皮が薄く、実も密着しているため病気になりやすいより繊細なブドウです。リースリングにも似たぺトロール香が現れ、熟成が進むと赤ワインと間違えるほどの複雑味と骨格を備えます。

(左側:フィアーノ / 右側:グレコ)
「ワインはそれ自体で語るもの」
熟成を経て現れるテロワールとブドウの真の姿
サビーノ氏は「フィアーノは、熟成して初めて自らのことを語りだす」と言います。リリース直後のフレッシュな魅力もありますが、彼が真に求めるのは、十数年と時を重ねた先に現れる、土地特有のミネラルと複雑味です。
「ワインはそれ自体で語るもの」というサビーノ氏の言葉通り、名刺もウェブサイトも持たず、ワイナリーには看板も立っていません。ピエトラクーパでは白ワインでも最低1〜2年寝かせて、サビーノ氏が「良し」と判断したタイミングでリリースされます。
そのためヴィンテージが逆転してリリースされることもありますが、それだけ、ワインが本来の個性を現すまでにかかる「時間」というものが欠かすことのできない要素になっています。

特別な年にしか造られない最上級キュヴェ「クーポ」
過去25年で8ヴィンテージしかリリースされていません。(2003、2005、2007、2010、2013、2018、2020、2023年)
ブドウはモンテフレーダネの中でも「標高の高い畑」「川沿いの畑」「山の畑」という環境の異なる3つの区画から最高のものが使われます。
収穫後、毎年クーポ用の特別な醸造を行いながらも、瓶詰め直前の試飲で基準に達していないと判断した場合はスタンダードなフィアーノにブレンドし、クーポとしてはリリースされません。まさにサビーノ氏の信念が詰まった最上級キュヴェです。
この日は、サビーノ氏の哲学が表れる白ワイン、フィアーノ 2021年、グレコ 2021年&2006年、最上級キュヴェ「クーポ」2020年を試飲させていただきました。
数年後が楽しみになる熟成型フィアーノ |
ピエトラクーパ |
フィアーノ 2021 |
| サビーノ氏:フィアーノは長期熟成により真価を発揮する品種です。このフィアーノ2021年は、まだ若さゆえの硬さを残しながらも、時間をかけて確実に開いてきています。半年前の試飲時と比べても、香りの広がりと柔らかさが増しており、熟成とともにスモーキーなニュアンスが出始めています。今飲んでも十分な魅力がありますが、数年後にどんな表情を見せるか、セラーに寝かせておきたくなる一本です。 |
| 試飲コメント:輝きのある黄金色。上品で複雑な香りです。南国果実や熟した黄色い果実に蜜のニュアンス、ミネラル感と白い花の爽やかさがあります。口に含むと柔らかく上品な酸と果実味が綺麗に駆け上がり、若干の樽のニュアンスが溶け合いながら、フレッシュでエレガントな軽やかささえある余韻が持続します。 |
「熟成の醍醐味を存分に楽しめる」
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ピエトラクーパ |
グレコ 2021 |
| サビーノ氏:グレコは熟成を経るとリースリングに似たペトロール香が現れ、白ワインの熟成の醍醐味を存分に楽しめる品種です。フィアーノに比べて酸が強く、輪郭のくっきりとした味わいが特徴です。ボリューム感があるため、白ワインでありながら肉料理との相性も良く、食卓での活躍の幅が広いのも魅力です。 |
| 試飲コメント:やや麦わら色よりの輝きのある黄金色。柑橘系と白い果実のジューシーさに、華やかさと石のようなミネラル感が加わる香りです。フレッシュさ、苦味を伴う柔らかな口当たりに豊かな果実味が乗り、樽のニュアンスが綺麗に重なって上品な余韻を演出しています。 |
「ブラインドで赤ワインと間違えるほど」
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グレコ 2006 |
| サビーノ氏:今回みなさんに、20年の熟成を経たグレコがどれほどの変容を遂げるかを、味わっていただくために持ってきた2006年ヴィンテージです。リリース当初とは全く異なる表情を持ち、ブラインドテイスティングでは赤ワインと間違えるほどの複雑味と骨格があります。白ワインの長期熟成の可能性を改めて実感させてくれる、圧巻の一本です。 |
| 試飲コメント:深みと輝きのある黄金色。上品な果実感とスパイスを感じる複雑な香り。酸が綺麗でエレガント、深みと上品な複雑さを持った余韻が綺麗に続きます。 |
造り手の信念が詰まった最上級キュヴェ |
ピエトラクーパ |
フィアーノ クーポ 2020 |
| サビーノ氏:納得した年にしか瓶詰めされない特別な最上級キュヴェです。毎年クーポ用の特別な醸造を行いながらも、瓶詰め直前の試飲で基準に達していないと判断した場合はスタンダードなフィアーノにブレンドし、クーポとしてはリリースしません。クーポとは「暗い」「閉鎖的」を意味する言葉で、ワイン造りに対するこだわりの中にこもる自分自身を、自らが自嘲気味に表現したネーミングです。 |
| 試飲コメント:麦わら色。レモンなどの柑橘系にややバターのニュアンスがある香りです。口に含んだ瞬間フレッシュな酸が口中に駆け上がり、最後までその酸が持続しながら豊かな果実感と調和しています。 |
インタビューを終えて
サビーノ氏は怪我を経てワインの道に進んだことを「運命的なものだった」と話しますが、お父様が家を買ったモンテフレーダネの土地が、彼の目指すワインにとって理想的な土地だったということにもまた運命を感じます。
フィアーノとグレコの現行2021年は、若さゆえの硬さもありながらフレッシュな魅力があり、短い時間でも香りが開いていきます。今回特別に持ってきていただいたグレコ2006年は、20年の時が経ってもきれいな酸を残していて、スタンダードレンジのワインでさえこれだけきれいに熟成するのかと驚かされました。
最上級キュヴェ「クーポ」2020年は、いま開けても豊かなミネラルとフレッシュな酸を楽しめるエレガントで贅沢なワインです。同時にピエトラクーパーの熟成力を知ると、更なる熟成後の姿を期待せずにはいられません。過去25年で8回しかリリースされていない貴重なワインですので、ぜひ今のうちにお手に取っていただくことをお勧めします。








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