モンタルチーノ南部カステルヌオーヴォ デッラバテの家族経営ワイナリー「テッレ ネレ」訪問インタビュー

2025/12/24

2025/10/16

Mr. Pasquale Vallone, Ms. Francesca Vallone, Mr. Federico Vallone

モンタルチーノ南部カステルヌオーヴォ デッラバテの家族経営ワイナリー「テッレ ネレ」訪問インタビュー

2025年10月、ブルネッロの造り手テッレ ネレを久しぶりに訪問することができました。テッレ ネレは、モンタルチーノ南東部の銘醸地、カステルヌオーヴォ デッラバテに畑を持つ家族経営ワイナリーです。1997年、当時銀行員だったパスクアーレ ヴァッローネ氏が手つかずのまま残されていた約15ヘクタールの土地を購入したことから始まりました。現在は、長女フランチェスカさんと長男フェデリコさんが中心となってワイナリーを運営しています。今回はパスクアーレ氏、フランチェスカさん、フェデリコさんの3人が迎えてくださいました。

カステルヌオーヴォ デッラバテ地区の南、オルチャ川に向かって下る斜面地

15ヘクタールのうち、ブドウ畑は10ヘクタールで今は全部サンジョヴェーゼだけを栽培しています。標高は220メートルでオルチャ川に向かって下っている斜面地になっていて、いわゆるオルチャ渓谷の中にあります。畑の向きとしては南向きと南東向きです。


この土地は今は活動をしていないモンテ アミアータ火山由来の火山性土壌です。雨が降って濡れると土の色が真っ黒になるから「テッレ ネレ(黒い土地)」という名前にしました。

―こうして見ると、かなりの急斜面ですね

そう。だから畑の上の方とした都では土壌も変わるんです。上の方がミネラルが豊富で有機分が少ない。一方、下の方は粘土の比率が上がって、有機分が増える。上部と下部の特徴の違いがミネラルや塩味となってワインの味わいに複雑さやエレガントさを与えているんです。

雨の影響を受けるのも下部の方で、保水性があるのでたくさんの果実を付けるのと、少し気温が低いのでブルネッロではなくロッソに使うことが多いです。

山からの風、海からの風が絶えず吹くことで病気から守られる
風が良くふいているでしょう?海はここからは見えないけれどもティレニア海からの海風も来るし、見た通り山からの風も来る。これは雨が多い年に特にメリットがあって、例えば雨の多かった2018年はこの風のおかげで健康な状態のままブドウを収穫できました。

仕立てはコルドーネ スペロナートからグヨに移行

当初はコルドーネ スペロナートで仕立てていたのですが、コルドーネ仕立てはアルコール度数の高いブドウに成長する傾向になるのです。つまり、暑い年だとさらにブドウが凝縮したものになっていきます。一方、グヨは果実が多くつくことで、アルコール度数はそこまで高くならない。年々、気候変動の影響で気温が上がっていくことを考慮してグヨに変更していってます。


畑は全てビオロジックです。化学的なものは一切使わずに育てています。そのおかげか、野生のシカやイノシシにブドウを食べられることも多いんです。ビオロジックではない畑のブドウは食べずに私達の畑のを食べていく。よくわかっていますよね、動物も。畑の周囲には柵をしていますが、わずかな隙間を見つけて侵入されていまうことも多いです。

私達の畑の東端にある区画は「ヴィーニャ デル カプリオーロ(ノロジカの畑)」という名前を付けているのですが、ここが特にノロジカに好まれている畑だからなんです。この区画は南東向きで、森に一番近く、気候も土壌も独自性があって、そのためにこの区画で単一畑のブルネッロも造っています。

人の手が入っていない、ブドウ以外は何も育たないやせた土地を家族総出で開墾し植樹

私達がここを購入することにしたのは、父(パスクアーレ氏)がモンテ デイ パスキ ディ シエナのモンタルチーノ支店に赴任して、ブルネッロの生産者たちとの交流を深めていった中で、アルテジーノの社長と狩猟に来ていて、この土地を紹介されたことがきっかけ。彼に「ここはいま売りに出ているから、パスクアーレ、ここを買ったらどうだ」と勧められたからなんです。

痩せた土地なので小麦は全く育たず、わずかに大麦があったぐらい。でもブドウを育てるには最適な土地なんです。週末に家族総出で来て、ブドウの樹を植えていくことから始まったんです。

一番低いところにあるオルチャ川の支流近くにある区画は、もともとカベルネソーヴィニョンを植樹していました。でもここもブルネッロの認定区域内なので、サンジョヴェーゼに植え替えました。川の近くということで砂質土壌で、石も丸みを帯びています。この畑のサンジョヴェーゼは、ロッソ ディ モンタルチーノとトスカーナ ロッソに使っています。


畑の近くでカンティーナ建設を計画中
―前回ここに来た時、畑の近くにカンティーナを建設する計画を聞いていましたが、その後どうですか?

実はまだなんです。イタリアは手続きが色々と面倒で。でも前進しているのは確かです。今のところは醸造はモンタルチーノ北部にあるカンティーナで行っています。

(ということでモンタルチーノ北部のカンティーナへ移動)


発酵は全て自然酵母による発酵です。温度が30度以上にならないようには管理していますが、基本的には自然に任せています。100ヘクトリットルのステンレスタンクで発酵し、糖の値が0になったら発酵が終わって果皮と分離させます。果皮の成分を抽出させ過ぎないようにしているので、ブドウを100とすると60~65ぐらいがワインになっています。その後の樽熟成は大樽を使っています。

インタビューを終えて

テッレ ネレの畑は、カステルヌオーヴォ デッラバテの集落を通り過ぎ、ポッジョ ディ ソットの門の前を抜け、さらにどんどん山道を走っていった先、舗装されていない道をしばらく走った突き当りにあります。周囲は森か川。本当に手つかずの場所だということを実感させてくれます。

「ワインはランチをとりながら飲みましょう」と、昼食は彼らが運営しているアグリツーリズモのあるポチャーノ農場でパスクアーレ氏の奥様のピエラさん手作りのご馳走でもてなしてくださいました。昼食をいただいた部屋は畑を見晴らす気持ちの良い場所に建つサンルームで、大きな窓からは10月後半とは思えないほどの太陽の光が差し込んできて、とても気持ちが良かったです。

テッレ ネレのワインはどれも、ピエラさんが作ってくださった、まさにマンマの優しい味の手料理に寄り添います。「この土地のサンジョヴェーゼの個性を最大限に表現する飲み心地の良いブルネッロ」を目指してきたパスクアーレ氏の想いそのままだと感じました。