年間生産量700万本を誇るプーリアの革新的ワイナリー「パオロレオ」

2025/04/24

2025/04/18

アレッサンドロ レオ氏 Mr. Alessandro Leo、マルコ マラッツィータ氏 Mr. Marco Marazita

プーリアの3つの銘醸地の個性を多彩なスタイルで表現!年間生産量700万本を誇る革新的な家族経営ワイナリー「パオロレオ」

プーリア州の銘醸地、サリーチェ サレンティーノとプリミティーヴォ ディ マンドゥーリアに醸造所を構える家族経営ワイナリー「カンティーネ パオロレオ」。1900年代にブドウ栽培からスタートした彼らは、1960年にワイン造りへと転換。1989年には、3代目の現当主パオロ・レオ氏が、プーリアでいち早くボトリングを開始。およそ30年で、年間生産量700万本を誇る大規模ワイナリーへと成長を遂げました。現在は3つの異なる畑を拠点に、デイリーワインからオーガニックワイン、『ガンベロロッソ』トレビッキエリを受賞する上級キュヴェまで多彩なラインナップを手掛けています。今回はオンラインで、4代目のアレッサンドロ レオ氏と、輸出部長マルコ マラッツィータ氏にお話を伺いました。

年間700万本の生産量を誇るプーリアの先駆者

いち早くボトリングを開始し、約30年でプーリア屈指の造り手へと成長
パオロ レオは、プーリア州に根付く家族経営ワイナリーです。もともと1900年代からブドウ栽培農家でしたが、1960年にワイン造りへと舵を切り、そこから約30年、北イタリアや海外の大手企業が求める力強いワインを輸出していました。1989年には、私の父パオロ・レオがいち早くプーリアでボトリングを開始し、家族の事業として母のロベルタとともにワイナリーを創業しました。現在は年間700万本のワインを生産する規模にまで成長しました。

サリーチェ サレンティーノ、プリミティーヴォ ディ マンドゥーリア
2つの拠点を持つ大規模な醸造施設

カンティーナは2箇所あります。最初に立ち上げた場所は、サリーチェ サレンティーノのサン ドーナチ。12万hlの容量を誇り、ワイン造りの全工程を行っています。父パオロの積極的な設備投資によって、最新技術が取り入れられています。外には巨大なタンクが設置されていますが、真夏の高温にも耐えられるよう、すべてが温度管理された冷蔵設備になっています。

もう1つは、プリミティーヴォ ディ マンドゥーリアのモンテパラーノにあります。ここは、もともと生産者協同組合の施設であり、私たちが2019年に全面リノベーションを施して再稼働させました。電力消費をカバーするソーラーパネルを設置したり、海水の畑への侵入防止といった持続可能性や環境保護の取り組みも進めています。
サン ドーナチ(左)、モンテパラーノ(右)

デイリーワインから有機ワイン、トレビッキエリ受賞の上級キュヴェまで
品種、製法、スタイルが異なる多彩なラインナップ

栽培するブドウは多種多様です。白ブドウでは、シャルドネ、マルヴァジア ビアンカ、フィアーノ、ピノ グリージョ、ヴェルデカ、ミヌートロ、ソーヴィニヨン ブランなど。黒ブドウでは、主にプリミティーヴォやネグロアマーロ。そのため、造るワインも多様なラインに分かれています。

スーパーマーケット向けのラインから、有機栽培シリーズ、『ガンベロロッソ』トレビッキエリを受賞する上級キュヴェ、リゼルヴァタイプなどを手がけています。また、ネグロアマーロは早飲みタイプから熟成可能なリゼルヴァまで、幅広いスタイルを表現できる品種です。プリミティーヴォにはもちろん陰干ししたタイプもありますし、私たちは多彩なアプローチでワインを造っています。

サリーチェの伝統、プリミティーヴォの銘醸地、丘陵地イトリア
3つの個性が205haに広がるパオロ レオのテロワール

 自社畑は3箇所に分かれています。サリーチェ サレンティーノ、プリミティーヴォ ディ マンドゥーリア、そしてヴァッレ ディトリアです。マンドゥーリアに30ha、サリーチェに70ha、イトリアに5haを有しています。さらに、20年以上契約しているブドウ栽培農家の畑が100haあります。自社畑、契約畑のどちらも、長男で醸造家のニコラが品質管理をして同等の品質を保っています。

シャトーのように広大な畑に囲まれた
パオロ レオを象徴するサン ドーナチの農園「マッセリア カッリテッリ」

サリーチェ サレンティーノの畑は、カンティーナ近くの「マッセリア カッリテッリ」農園にあります。ここは、1500年代に建設された屋敷(マッセリア)を含む歴史ある場所です。その建物を中心に70haもの畑すべてが広がっています。かつて、畑の周囲には、教会や井戸、広場を備えた小さな集落のような構造になっており、曽祖父母の時代には畑作業の合間に過ごす場所として利用されていました。

現在も当時の伝統的なアルベレッロ仕立てが残されています。低木のため、特に夏場の高温は過酷な環境です。しかし、伝統的な方法を守り、凝縮感のあるブドウを生み出すために、畑の手入れや収穫もすべて手作業で行っています。
マッセリア カッリテッリ

プリミティーヴォに特化したモンテパラーノの畑
マンドゥーリアのモンテパラーノにある畑では、プリミティーヴォのみを生産しています。そのプリミティーヴォに用いるアパッシメント(陰干し)は、樹上での自然な乾燥を取り入れています。プーリアならではの豊富な日照量のおかげで、茎を潰して10日間畑に留めるだけで、酸をしっかり保持した凝縮感のあるブドウが収穫できるのです。

「プーリアのヴァルポリチェッラ」と呼ばれる
プーリアでは稀有な丘陵地の畑「ヴァッレ ディトリア」

3つ目の畑は、サン ドーナチから約80km北西のヴァッレ ディトリアにあります。世界遺産のアルベロベッロに近い場所です。プーリアでは珍しく標高の高い畑で、場所によっては500mに達します。私たちの畑は、350~380m。土壌は石灰質の薄い層が重なり、エリア全体も広くなく、私たちはイトリアを「プーリアのヴァルポリチェッラ」と呼んでいます。

海にも近く、昼夜の寒暖差が非常に大きいため、ブドウに豊かなアロマを与えます。ここでは、アロマティックな白ワインの生産に特化しています。畑の広さは5haと小規模ですが、土着品種ビアンコ ダレッサーノの特別プロジェクトとして個性重視のワインを造っています。
なだらかな起伏の地形のヴァッレ ディトリア

フレッシュな酸と凝縮感が引き出されたシャルドネ

エコシステマ シャルドネ ビオロジコ 2023

エコシステマ シャルドネ ビオロジコ 2023

アレッサンドロ氏:
「サンドーナチのビオの畑だけで造っているシャルドネです。8月中旬ごろにしっかり熟したブドウを、完璧な酸を保ったタイミングで収穫しており、華やかで香り高いワインとなっています。畑とカンティーナが近いため、収穫後すぐに搬送し、ソフトプレスで低温処理を行い、シャルドネの香りと酸を保ちます。ステンレスタンクで醸造後、1~2カ月寝かせ、2月ごろにボトリングされます。エコシステマという名は、風や空気、太陽といった自然環境をイメージしています。」
試飲コメント:黄金に近い麦わら色。白い果実と黄色い果実に加えて、若干の柑橘を感じる華やかな香り。味わいは華やかで甘やかさもある果実感がふくよかに広がります。凝縮感があり、柔らかさも感じられます。じわじわと広がるボディがあり、フレッシュで塩味を伴う余韻が持続します。

豊かな果実感に、際立つ塩味がアクセントのピノ グリージョ

トッレ ピノ グリージョ 2023

トッレ ピノ グリージョ 2023

アレッサンドロ氏:
「ピノグリージョは他のワインとは異なり、塩味が特徴で、アドリア海に近い立地からその風味が生まれます。香り豊かで柑橘系のニュアンスがあり、完熟果実の広がりや塩味の印象が際立ちます。ラベルには海沿いに建てられた歴史ある監視塔が描かれています。」
試飲コメント:麦わら色。白い花や黄色い果実、白い果実の豊かな香り。はっきりとした果実感とアロマティックさを感じます。味わいは香り同様の要素を持ち、柔らかくまろやかです。苦味や塩味を伴う余韻が長く持続します。

標高350m、「プーリアのヴァルポリチェッラ」を体現
フレッシュな酸と海のニュアンスが光るビアンコ ダレッサーノ

350 アルトゥーレ ビアンコ ダレッサーノ 2021

350 アルトゥーレ ビアンコ ダレッサーノ 2021

アレッサンドロ氏:
「サンドーナチから北へ90kmに位置するヴァッレディトリアで造るビアンコ ダレッサーノです。畑は標高350m、石灰質の層が重なる土壌。私たちがプーリアのヴァルポリチェッラと呼ぶイトリアという土地を重視して造るワインです。年間生産量は4000本。手摘みでブドウを収穫し、冷蔵トラックで17度に保ちながらカンティーナまで運び醸造をします。この工程により、品種が持つ香り高さを保つことができます。12ヶ月のステンレスタンク熟成ですが、熟成にも耐えうるワインです。」
試飲コメント:輝く麦わら色。海のニュアンスやミネラル、白い果実の香り。味わいは香り同様で海やミネラル感といった要素が存分に感じられます。フレッシュな酸がフィニッシュまで持続します。

濃密な果実味とタンニンが見事に調和したネグロアマーロ

テッレーノ ネグロアマーロ ビオロジコ 2021

テッレーノ ネグロアマーロ ビオロジコ 2021

アレッサンドロ氏:
「サンドーナチの畑で造るネグロアマーロです。木樽を使わずにステンレスタンクで醸造。森の果実やイチゴの香りがあり、しっかりしたタンニンで食事にも合います。ラベルに描かれているのは、10月頃になる赤く染まるネグロアマーロの葉です。」
試飲コメント:やや深みのあるルビー色。赤系果実や潰した花、ややドライフルーツの印象を持つ香り。イチゴの砂糖漬けを感じる味わい。ぎゅっと詰まった果実感と甘やかさのある風味がフィニッシュまで持続します。

完熟果実にハーブやスパイスなどが重なる奥行きのあるプリミティーヴォ

アグリコーロ プリミティーヴォ ビオロジコ 2022

アグリコーロ プリミティーヴォ ビオロジコ 2022

アレッサンドロ氏:
「サンドーナチのプリミティーヴォを木樽を使わずにステンレスタンクで造った赤ワインです。熟した果実やサクランボの香りがあり、フレッシュ感とハーブのような余韻が特徴です。」
試飲コメント:深みのあるルビー色。完熟果実に加え森の果実、爽やかなハーブ、土やスパイスを感じる複雑な香り。品種由来の甘やかで豊かな果実感が溶け合い、奥行きのある味わいです。茶葉のようなニュアンスも感じられます。

濃密な果実味、タンニン、フレッシュな酸味が見事に調和
樹上アパッシメントで造るプリミティーヴォ

パッシティーヴォ プリミティーヴォ ビオロジコ 2022

パッシティーヴォ プリミティーヴォ ビオロジコ 2022

アレッサンドロ氏:
「パッシティーヴォは畑、樹上で陰干ししたプリミティーヴォで造るワインです。パッシティーヴォとは、前へ、を意味する言葉ですが、その言葉通り陰干しをすることで味わいを前進させているというイメージです。畑は、パッシティーヴォ用の区画。収穫後はブドウの40%を6カ月間バリックで熟成し、残りはステンレスタンクで後にブレンドさせます。食事のおともにも、単体でも楽しめますが、個人的にはブラックチョコレートと一緒の飲むのが好きです。」
試飲コメント:ルビー色。赤系果実と黒系果実が凝縮した香り。ドライフルーツやアプリコットのようなニュアンス、わずかに黒胡椒も感じられます。イチゴの砂糖漬けのようで甘やかな味わいがあり、ほどよいタンニンとともにフレッシュな酸と凝縮した果実感が持続します。

アメリカンオーク&フレンチオーク樽熟成
豊かな果実味とスパイス感が溶け合うプリミティーヴォ

パッソ デル カルディナーレ プリミティーヴォ ディ マンドゥーリア 2022

パッソ デル カルディナーレ プリミティーヴォ ディ マンドゥーリア 2022

アレッサンドロ氏:
「これまで4回『ガンベロロッソ』トレビッキエリを受賞するワインです。畑はモンテパラーノ。クラシックなスタイルに仕上げたプリミティーヴォ ディ マンドゥーリアです。フレッシュながらタンニンがあり、ベジタブルなトーンも感じられます。熟成にはアメリカンオークとフレンチオーク樽の両方を使っており、スパイシーなニュアンスもあります。」
試飲コメント:やや深みのあるルビー色。熟した黒系果実や完熟果実、ドライフルーツ、プルーンなどの豊かな香り。甘やかでフレッシュな酸と果実が口中に広がります。心地よいタンニンが長い余韻を演出し、スパイシーなニュアンスとともに持続します。

きめ細やかなタンニンが光るエレガンス
フラッグシップの単一畑ネグロアマーロ

オルフェオ ネグロアマーロ 2020

オルフェオ ネグロアマーロ 2020

アレッサンドロ氏:
「オルフェオは、パオロレオが最初に造った歴史的なワインです。サン ドーナチにある5haの単一畑で造られるネグロアマーロ。年によりますが、生産本数は2万5000本から3万本です。『ガンベロロッソ』をはじめ、デカンターなど国内外問わず高い評価を受けています。フレンチバリックで12カ月間熟成。タンニンがしっかりしており、力強く熟した果実とタバコなどのスパイス感、酸のバランスにより長期熟成も可能なトップレンジのワインです。」
試飲コメント:ガーネット色。熟した果実や熟成感のある香り。ドライフラワーやドライフルーツ、枯れ葉や土のニュアンスもあり複雑です。味わいは香り同様の果実感と甘やかさに、ほどよい力強さがあります。タンニンは存在感がありながらも、細やかで心地よさがあります。

優良年のみ造る、フレッシュかつ濃密な果実味
ネグロアマーロ&マルヴァジア ネーラのリゼルヴァ

ネリマッティ サリチェ サレンティーノ リゼルヴァ 2014

ネリマッティ サリチェ サレンティーノ リゼルヴァ 2014

アレッサンドロ氏:
「サン ドーナチの畑で造られる、ネグロアマーロとマルヴァジア ネーラのブレンドです。この二つは非常に相性の良い組み合わせで、ネグロアマーロの良さが引き立っています。2014年ヴィンテージで、11年経過しても果実感があり、西洋かりんのジャムのようなニュアンスも感じられます。55ヘクトリットルの大樽で20カ月間熟成する、優良年しか造らないリゼルヴァです。」
試飲コメント:深みのある濃いガーネット。砂糖漬けのイチゴやプルーン、干し柿のようなニュアンスを持つ香り。果実を煮詰めたような濃密さとドライフルーツ感、フレッシュさが溶け合う味わいです。タンニンは存在感がありますがきめ細やかで心地よさがあります。

樹齢70年の単一畑プリミティーヴォ リゼルヴァ
力強さとエレガンスが溶け合うトップキュヴェ

ジュノニコ プリミティーヴォ ディ マンドゥーリア リゼルヴァ 2017

ジュノニコ プリミティーヴォ ディ マンドゥーリア リゼルヴァ 2017

アレッサンドロ氏:
「樹齢70年の古い単一畑プリミティーヴォで造るトップキュヴェです。1haの専用区画のブドウを500Lのトノーで熟成するリゼルヴァです。優良年のみ造る限定ワインで、年によりますが年間約4000本しか造られません。」
試飲コメント:深みのあるガーネット色。豊かな果実をはじめドライフルーツやチョコレート、スパイスのニュアンスのある力強さとエレガンスを兼ね備えた香り。赤系果実と黒系果実のピュアな印象と、完熟果実の豊かさが共存し、濃密でありながらもフレッシュな味わいです。プルーンやベリー、チェリーのニュアンス。しっかりとしたタンニンがありながらも心地よく、果実味豊かな余韻を演出しています。

インタビューを終えて

当主パオロ・レオ氏がプーリアでいち早くボトリングに踏み切り、約30年で年産700万本の生産者へと成長させた規模感には圧倒されました。インタビュー中には「まだ可能性を探っている」との言葉もあり、4つ目の産地への進出など、今後どのような展開を見せてくれるのか楽しみになりました。

試飲したワインはすべてコストパフォーマンス抜群です。特に「テッレーノ ネグロアマーロ ビオロジコ」は、熟れた果実の密度と、フレッシュな酸との絶妙なバランスが印象的。バリック熟成による力強さと優美さを兼ね備えた上級キュヴェ「オルフェオ」との比較も興味深く、ネグロアマーロの懐の深さを感じました。アレッサンドロさんの言う「多彩なワインを表現できるネグロアマーロは、すべてのワインの母」という言葉に共感しました。

また、丘陵地イトリアで造られる「350 アルトゥーレ ビアンコ ダレッサーノ」は、まさに海のニュアンスを感じる逸品で、他のラインナップとは一線を画す個性が際立っていました。そして、最後に試飲した「ジュノニコ プリミティーヴォ ディ マンドゥーリア リゼルヴァ」は圧巻の味わい。濃密で力強い側面に加え、フレッシュさと気品が共存し、余韻の長さとともに深く印象に残る1本でした。