ピエモンテ南部・北部、ロンバルディア、ヴァッレ ダオスタで異なる呼称
イタリア北西部を中心に栽培されるネッビオーロですが、その限られた産地の中で複数のシノニム（別名）が存在します。ピエモンテ州北部では「スパンナ」、ロンバルディア州北部では「キアヴェンナスカ」、ヴァッレ ダオスタ州では「ピコテンドロ」と呼ばれています。

霧に覆われるランゲ地方の畑風景

各地のテロワールを表現し長期熟成で真価を発揮する高貴な品種
ネッビオーロの多くは、次のような特徴を持ちます。淡いガーネット色で、主に赤系果実や（ドライフラワーを含む）フローラル感が漂う奥深い香り。優れた骨格、豊富な酸とタンニンがありながらエレガンス溢れる味わいです。長期熟成能力も最大の特徴の一つ。熟成が進むとトリュフやなめし革など複雑な香りが現れ、タンニンも滑らかになり洗練された味わいに進化を遂げます。

しばしばブルゴーニュのピノ ノワールと対比されることも多いネッビオーロ。それは味わいの特徴だけでなく、テロワール（地質、気候など土地固有の特徴）を表現できる数少ない高貴な品種であることからも言えます。次の章では、そのテロワールが反映された各産地のネッビオーロをご紹介します。

■ピエモンテ州南部
・DOC ランゲ ネッビオーロ
おすすめ生産者：フォンタナフレッダ、プロデュットーリ デル バルバレスコ
ランゲ地方全体で造られるワイン。バローロやバルバレスコの畑でも造られるため、偉大なネッビオーロの入門編としてピッタリです。力強さと気品を備えながらも若くして楽しめます。

・DOC ネッビオーロ ダルバ
おすすめ生産者：テッレ デル バローロ、ブルーノ ジャコーザ
タナロ川の両岸（大部分のバローロ、バルバレスコ地区以外）で造られるワイン。ランゲ ネッビオーロ同様、エリア的にバローロ等を名乗れないながらも高品質なネッビオーロを気軽に楽しめる逸品です。

・DOCG ロエロ
おすすめ生産者：マッテオ コレッジア、マルヴィラ
バローロ、バルバレスコ（ランゲ）からタナロ川を挟んだ北部に位置するロエロ。北部にかけて砂質比率が高いことで知られ、芳香に優れた繊細で華やかなワインが生まれます。

・DOCG テッレ アルフィエーリ
おすすめ生産者：カッシーナ ヴェンゴレ
2020年にDOCG昇格を果たした原産地呼称。すぐ西に位置するロエロと比べて石灰質土壌が多く、ロエロより力強くランゲよりエレガントな味わいに仕上がります。

■ピエモンテ州北部
・DOC カレーマ
おすすめ生産者：プロデュットリ ネッビオーロ ディ カレーマ
ヴァッレ ダオスタとの州境に位置する非常に冷涼な産地カレーマ。他の地域で造られたどのネッビオーロとも異なる繊細で透明感のある味わいです。

・DOCG ガッティナーラ
おすすめ生産者：トラヴァリーニ
アルプスに由来する火山岩主体の世界的にも珍しい土壌で、粘土質のランゲとは全く違う味わい。繊細で硬質、ミネラルに富んだ厳格な印象を持ちます。

・DOCG ゲンメ
おすすめ生産者：カンタルーポ
ガッティナーラのすぐ東に位置するゲンメ。ガッティナーラより標高が低く粘土堆積土壌のため、柔らかくどっしりとしたワインが生まれます。ゲンメの名産品ゴルゴンゾーラチーズと相性抜群です。

■ロンバルディア州北部
・DOCG ヴァルテッリーナ スペリオーレ
おすすめ生産者：ニーノ ネグリ
ほとんど崖と言っていいほどのスイス国境沿いの渓谷ヴァルテッリーナで造る山のネッビオーロ。他の地域にはない独自のエレガンスに富み、芳醇な香りとミネラルに富んだ透明感ある味わいです。

・DOCG スフルサート ディ ヴァルテッリーナ
おすすめ生産者：ニーノ ネグリ
ヴァルテッリーナで古来から続く伝統製法の陰干しブドウで造る「スフルサート」。まさに「ネッビオーロのアマローネ」と呼ぶにふさわしい透明感、複雑味、骨格すべてを併せ持ったワインです。

■ヴァッレ ダオスタ州
・DOC ヴァッレ ダオスタ
おすすめ生産者：ドナス
冷涼なアルプスの麓に位置するヴァッレ ダオスタ州で造られるネッビオーロ（ピコテンドロ）。赤系果実、穏やかなタンニン、高標高由来のエレガントでフィネスを感じる味わい。毎日でも飲みたくなる味わいです。

ランゲ地方の風景