ブルネッロ協会設立メンバーとしてDOCG昇格に貢献した歴史的開拓者「シルヴィオ ナルディ」突撃インタビュー

2021/11/22
突撃インタビュー
 
2021年11月2日 エミリア ナルディさん Ms. Emilia Nardi

1950年創業、ブルネッロ協会設立メンバーとしてDOCG昇格に貢献した歴史的開拓者!ブルネッロDOCGエリアに800haの土地を所有、80haのブドウ畑に2つの偉大なクリュを持ち世界的評価を受ける名家「シルヴィオ ナルディ」突撃インタビュー

エミリア ナルディさん
シルヴィオ ナルディは1950年創業、ブルネッロ史上6番目に設立された老舗生産者です。農業用機械の仕事に打ち込むかたわらで、モンタルチーノに広大な土地を購入。国が認めた特別なサンジョヴェーゼ グロッソのクローン20種のうち5種も植えてある畑でブルネッロ造りに情熱を注ぎます。創業時から所有する偉大なクリュ「ポッジォドリア」は、『デカンター』ブルネッロ2012年特集でNo.1に輝くなど、世界的に素晴らしい評価を受けています。そんなワイナリーの歴史や、世界的高評価のブルネッロ ディ モンタルチーノなどについて、オーナーのエミリアさんにオンラインでお話を聞きました。

ブルネッロ史上6番目に創業した歴史的開拓者「シルヴィオ ナルディ」
先駆けて畑を購入し、DOC制定よりも早くブルネッロ生産に着手!

「君みたいなビジネスマンが必要」と言われブルネッロ史上6番目に創業

シルヴィオ ナルディ氏「シルヴィオ ナルディ」は、現オーナーの父、シルヴィオ氏が1950年に創業した老舗ワイナリーです。もともとナルディ家は、1895年からブドウ生産者などに農業機械を販売する会社を営んでいました。ある日、夕食を一緒に取っていた販売先の農夫たちから「君のようなビジネスマンが必要。ブルネッロをもっと広めてほしい」と言われたことをきっかけに、ワイン生産者としての歴史をスタートさせます。

創業した1950年に、国が特別に認めた古いクローンが全体の20%(5種)も植えてある「カザーレ デル ボスコ」の畑を購入。当時はまだブルネッロの生産者は5軒と少なく、シルヴィオ ナルディは史上6番目のブルネッロの造り手として創業されました。

1954年、ブルネッロ生産に着手
1967年に設立されたブルネッロ協会の初期メンバーとしてDOCG昇格に貢献

「カザーレ デル ボスコ」を購入した1950年の4年後にはブルネッロの生産を開始、1962年にはモンタルチーノ東部にある偉大なクリュ「マナキアーラ」を購入、生産するなど、拡大を遂げてきました。DOC認定が1966年、ブルネッロ協会の設立が1967年、DOCG認定が1980年ですので、シルヴィオ ナルディはかなり早い段階からブルネッロ生産に取り組んでいたことがわかります。今や優良生産者がひしめき合うモンタルチーノで銘醸ブルネッロを古くから輩出し、ブルネッロ協会の初期メンバーに名を連ねるなど、シルヴィオ ナルディはブルネッロのDOCG昇格に大きく貢献してきた偉大な名家なのです。

エミリアさん1990年、25歳という若さで2代目当主に就任したエミリアさん
古樹の選別、畑の区画整備を行いワインの品質向上に尽力

2代目オーナーに就任したナルディ家の8人兄弟の末娘、エミリアさん。1990年に25歳という若さで社長に就任すると、1990年から1995年にかけて古いクローンのセレクションを始めます。と同時に、東西の2つの偉大な区画(テロワール)を、さらに8つに区分け、整備をしてワインの品質向上に尽力しました。また、イタリア語、英語、フランス語が堪能なエミリアさんは、世界各国にシルヴィオ ナルディのワインを広める広報としての普及活動も行っています。

優良生産者がひしめき合うブルネッロ ディ モンタルチーノDOCGエリアに800haもの土地を所有!36区画に分けられた畑が生む複雑でエレガントなブルネッロ

モザイク画のような複雑な土壌から生まれるエレガントで複雑な味わい
シルヴィオ ナルディがほぼ独占するモンタルチーノ北西部「カザーレ デル ボスコ」

ポッジョドリアエミリアさんに、所有する広大な畑の特徴について話していただきました。
「私たちはモンタルチーノに800haの土地を所有しています。モンタルチーノはシンガポールと同じでくらいの広さで、大きくはありませんが3つの気候を持った独特な土地です。火山の影響を受けた土地でもあるため、多種多様な石が見つかります。海由来の土壌ということもあり、粘土と砂も存在します。このモザイク画のような複雑な土壌が、エレガントで複雑な味わいを生むのです。

北西部カザーレ デル ボスコは、古くから所有していることもあり、私たち以外の生産者はほとんどいません。ワインだけでなく、小麦なども生産しています」

シルヴィオ ナルディが誇る、優れた精鋭たちが集う最強醸造チーム
ワイン醸造についてもお話しいただきました。
醸造チーム「80ヘクタールの畑を36区画に分けて生産しています。主にスタンダードなブルネッロなどは、それらの区画のブドウをブレンドして造っています。そのブレンドには、フランスで最も優秀なブレンダーの一人であるエリック ボワスノ氏に依頼しています。フランスまでサンプルを送っています。彼は1級シャトーを手掛ける伝説のコンサルタントでもあるんですよ。

他にも、優秀なスペシャリストが醸造チームに名を連ねています。キャンティとモンタルチーノでキャリアを積んだサンジョヴェーゼのスペシャリストで醸造責任者のマリオ。アンティノリで働いていたコンサルタントのアンドレア。世界各国で8年間経験を積んだエノロゴのダヴィデ。醸造は大事なことなので、私たちのホームページにも醸造チームのことを記載しています。カルチョ(サッカー)のように、情熱を持って個人個人が動いて仕事をしています」

 

個性が際立つ2つのクリュ!『デカンター』ブルネッロ2012年特集でNo.1に輝く「ポッジォドリア」
1962年に購入したシンボル的存在「マナキアーラ」

マナキアーラとポッジョ ドリア1990年にエミリアさんが代表者になると、これまでの伝統を大切にしながら畑とワイナリーの改革に取り組んできました。その結果、ワインはさらなる品質向上を見せます。中でも際立つのは東西に離れた2つの偉大なクリュ「ポッジォドリア」と「マナキアーラ」です。

『デカンター』ブルネッロ2012年特集でNo.1に輝く、年産わずか3500本の希少クリュ「ポッジォドリア」
モンタルチーノ西部カザーレ デル ボスコエリア、カンティーナの目の前に位置する単一畑「ポッジォドリア」。「ポッジォドリア」の畑から生まれるブルネッロは優れた複雑さ、フィネスとエレガンスと凝縮感に富んだ素晴らしいサンジョヴェーゼが生まれます。世界的評価誌『デカンター』のブルネッロ2012年特集では、「サルヴィオーニ」や「ポッジォ ディ ソット」のブルネッロを抑えて最高得点を獲得。「ポッジォドリア」は見事2012年No.1のブルネッロに輝きました。

樹齢50年のブドウも植えられたモンタルチーノ東部に独立する特別区画「マナキアーラ」
ワイナリーが誇るシンボル的クリュ「マナキアーラ」。約1000年前から太陽の光が差す区画として知られる「明るい朝」という意味を持つ独立した特別な区画です。最も古いクローンの発祥地とも言われています。ワインは、しっかりとした骨格と非常に複雑な味わいが引き出されます。エミリアさんは「ワイナリーにとっても重要度の高いワイン」と話します。

マナキアーラ

2000円台前半で『ジェームズサックリング』90点!
サンジョヴェーゼとメルローとプティヴェルドをブレンド
シルヴィオ ナルディ
トスカーナ ロッソ 43° 2018
トスカーナ ロッソ 43° 2018


エミリアさん:「43はシンプルなワインで、ソフトな口当たりが特徴です。パスタやリゾット、キノコ料理に合わせられます。夏なら冷やしても良いと思います。毎年品種の比率を変えていますが、ベースはメルローになります。基本は美味しく造ることを目的としているので比率は決めていません。

43に使用するブドウは、カザーレ デル ボスコとマナキアーラの両方で栽培しています。サンジョヴェーゼには向かないエリアにメルローとプティヴェルドを植えています。商品名の43°はモンタルチーノ地区を通る北緯43度を意味しています。」

試飲コメント:美しく輝くルビー色。紫系果実香るクリーンでピュアなアロマに加え、ややスパイシーな香り。ソフトでフレッシュな口当たり。豊かな果実味がバランスよく散りばめられたジューシーな味わい。しっかりとした骨格がありながらも親しみのある風味で、心地よい余韻が持続します。

エレガントブルネッロの魅力的な弟分「ロッソ ディ モンタルチーノ」!
熟度の高い果実の旨みと酸が溶け込むまろやかさ
シルヴィオ ナルディ
ロッソ ディ モンタルチーノ 2016
ロッソ ディ モンタルチーノ 2016


プラムやスミレの花に樽由来のバニラの香ばしさ、ハーブ、ミネラルの清々しさが寄り添う魅力的な香り。まさしくブルネッロを一回り小さくした弟分的存在ですが、ロッソのレベルでもシルヴィオ ナルディらしい落ち着いた品の良さが感じられます。サラミ、赤身肉料理、トマトソースのパスタとゆっくりと楽しみたいワインです。
試飲コメント:ルビー色。赤い果実、スパイス、レザーなど複雑な香り。ソフトかつ軽やかな口当たりで、タンニンも滑らか。赤い果実味が口中に広がり、優しい余韻が持続します。

『ジェームズサックリング』94点!異なる偉大な2地区のブドウをブレンド!
「伸びやかなフィニッシュ。美しいブルネッロ」
シルヴィオ ナルディ
ブルネッロ ディ モンタルチーノ 2013
ブルネッロ ディ モンタルチーノ 2013


エミリアさん:「典型的なブルネッロです。北西部と東部にある二つのブルネッロをブレンドしています。樹齢10年以上のブルネッロから造っています。ロッソと違ってカロリーを感じ、口に入れると酸と柔らかいタンニンが広がる味わいですよね。日本食だと、神戸ビーフなどの脂身や厚みのあるお料理に合わせるのが最適だと思います。

畑は36区画に分かれていて、それぞれのブドウをブレンドしています。このスタンダードなブルネッロだけではありませんが、その最終的なブレンドをフランスで最も優秀なブレンダーの一人であるエリック ボワスノ氏に依頼しています。もちろん最終決定は私たちが行いますが、サンプルをフランスに送ってまで依頼するほど、彼は非常に優秀なのです」

試飲コメント:ガーネット色。最初に赤系果実と黒系果実が現れ、スパイスやレザー、土などのアロマが層のように後から現れます。じわじわと広がる優しいタンニンがあり、繊細かつ存在感のある酸と果実味が口の中を包み込み、その風味の余韻が口元に長く残り続けます。

シルヴィオナルディのフラッグシップ!
完熟果実の凝縮感とシルキーなタンニンが溶け合う鮮やかな余韻
シルヴィオ ナルディ
ブルネッロ ディ モンタルチーノ マナキアーラ 2012
ブルネッロ ディ モンタルチーノ マナキアーラ 2012


エミリアさん:「マナキアーラはモンタルチーノの東に位置するエリアです。リッチで複雑な味わいが特徴で、口中を満たすような柔らかな味わいが広がります。これは、土壌の豊かさがもたらすもので、私もこのワインが大好きなんです。熟成期間が長く、20年経っても美味しいです。良年のみ生産しているので、毎年は造っていません。2012年の次は2015年、その次は2016年です」
試飲コメント:ルビーがかったガーネット色。熟した果実、花、スパイスを感じる非常に複雑でエレガントなアロマ。柔らかい口当たりで、ややミルキーさも感じます。香り同様に複雑で力強さのある味わい。口を優しく覆うタンニンが熟した果実味を引き立て、バランスに優れたエレガントな風味に仕上がっています。

『デカンター』誌のブルネッロ2012年特集で最高得点でNo.1に輝く!
年産わずか3500本の秘蔵クリュブルネッロ
シルヴィオ ナルディ
ブルネッロ ディ モンタルチーノ リゼルヴァ ヴィニェート ポッジォ ドリア 2012
ブルネッロ ディ モンタルチーノ リゼルヴァ ヴィニェート ポッジォ ドリア 2012


エミリアさん:「このワインも毎年は造らず、良年のみ約3000本の生産となります。ポッジォ ドリアの畑は0.7ヘクタールと非常に小さい畑で、モンタルチーノ西部に所有する広大な土地の中にポツンとあるんです。周りに生産者はほとんどおらず、周囲では小麦などが生産されています。1950年にポッジォ ドリアのあるカザーレ デル ボスコを購入しました。当時はまだDOCGの規定がない1954年にブルネッロを生産し始めました。私たちはモンタルチーノで6番目に生産を開始したブルネッロ生産者なのです」
試飲コメント:ガーネット色がかったルビーレッド。繊細な果実やハーブ、やや甘草などのスパイス香があります。味わいは香り同様で、繊細な黒系や赤系の果実、スパイス、ハーブの風味。タンニンの存在がポッジォ ドリアの上質で優美な味わいを持ち上げているようで、美しさのある余韻を長く長く持続させてくれます。
インタビューを終えて
1950年創業、ブルネッロ協会設立メンバーに名を連ねるシルヴィオ ナルディ。老舗であることは知っていましたが、モンタルチーノのブルネッロ生産者として史上6番目の造り手だったとは驚きです!老舗中の老舗ですね。そして、現当主のエミリアさんが、当時25歳という若さでオーナーに就任して、発展を遂げてきた事実を知ってさらに驚愕。

8人兄弟の末娘のエミリアさんが、なぜ社長に就任したのかというと、かつてイタリアでは農業事業は女性が行い、産業事業は男性が行うと考えられていたから。農業機械の企業を所有するシルヴィオ ナルディは、必然とエミリアさんがワイン造りを担当する流れになったそうですが、それにしても25歳という若さで就任してワイナリーをここまで大きくし、自社を世界に轟かせたことに感服いたします…!3か国語を操るだけでなく、広い視野を持ち、マーケティング力や実行力なども同時に備えているからこそできる業だなという印象を受けました。

今回、5本のワインを試飲させていただきましたが、2つのクリュ「マナキアーラ」と「ポッジォドリア」の贅沢な飲み比べは素晴らしかったです。両者ともに複雑でバランスに優れていますが、個性がはっきりと異なります。マナキアーラは力強さ、熟した果実味などが際立ち、どちらかというと親しみのある味わい。ポッジォ ドリアは、上質で優美な風味で、綺麗な余韻が長く長く続いていく美しい逸品でした。

ヴィンテージに注目すると、ロッソは2016年、アンナータブルネッロは2013年、2つのクリュブルネッロは2012年。どれも飲み頃を迎えているんです!これは輸入元の飯田さんならではのラインナップ!すぐに抜栓して楽しめる5本となっておりますので、シルヴィオ ナルディのワインをぜひご堪能ください!

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