デイリーから上級ラインまで品質にこだわって成長を続けるシチリア・アグリジェントの生産者協同組合「カニカッティ」突撃インタビュー

2018/12/19
突撃インタビュー
 
2018年11月14日 カニカッティ社 アベレ カーザグランデ氏

デイリーから上級ラインまで品質にこだわって成長を続けるシチリア・アグリジェントの生産者協同組合「カニカッティ」突撃インタビュー

カニカッティは、シチリアのアグリジェントに構える生産者協同組合です。従来のバルク売り主体のワイン造りから、品質重視へと方向転換をしたのが約25年前。以来、品質への意識の高い組合員たちとともに、世界的コンクールで評価を得るほどにまで成長・発展を続けています。最近ではアグリジェントの世界遺産の畑で造る「ディオドロス」など、地域の歴史や文化の再評価につながる取り組みも行っています。高品質ワインへの取り組みについてエキスポートマネージャーのアベレ カーザグランデ氏にお話をお聞きしました。

アグリジェント県に1969年設立した生産者協同組合。25年前から品質重視のワイン造りへ舵を切る

カニカッティは、アグリジェント県のカニカッティに1969年に設立した生産者協同組合です。来年で設立50年を迎えます。シチリアの中ではどちらかというと歴史のある生産者協同組合になりますね。設立当時はフランスや北イタリアのワイナリーへ販売をするためのブドウを造っていました。質よりも量が重視されていた時代です。25年ほど前まではそのような状態が続きました。

変化を起こしたのは25年前です。このエリアの価値を生かし、高品質のワインを造らなければと方針を変えました。そのため、組合員の意識を変える必要がありました。私達のアグロノモやエノロゴの考えを組合員たちに教え、従ってもらうよう、指導を始めました。もちろん、組合員全員が私達の方針に従ったわけではありません。だから二者選択をしてもらいました。私達の品質重視のワイン造りについてくるか、これまでの多産のブドウ栽培を続けたいか。後者を選んだ組合員には脱退してもらいました。その結果、意識の高い組合員だけが残ったわけです。

カニカッティ場所

約300の組合員が所有する800ヘクタールの畑を特徴ごとに分類。60のミクロゾーンとして管理

カニカッティ畑現在、300ほどの組合員が所属し、800ヘクタールほどの畑を所有しています。畑は海の近くから内陸の標高600メートルほどのところにまで広がっています。だから畑のある場所によって標高や土壌、気候条件など特徴が違います。そこで私達は60のミクロゾーンに分けて管理しています。この管理を行うことで、デイリータイプのもの、熟成タイプのもの、プレミアムなもの、という商品ラインを造ることができます。

また、800ヘクタールの畑のブドウを全てカニカッティの名前でワインを造り、販売しているわけではありません。私達の名前でボトリングをするのは生産量の25%程度です。それぐらい厳しい選別を行ったブドウだけで高品質なワインを造ることができています。

 

世界遺産の遺跡の中にある忘れられた畑を復活させたプロジェクト「ディオドロス」

アグリジェントの遺跡ディオドロスについてお話ししましょう。アグリジェントはユネスコ世界遺産の「Valle dei templi」があり、古代ギリシャ時代を始め考古学上の価値のある遺跡が数多く残されています。ディオドロスはこの中の「Tempio di Era (Giunone) Lacinia ジュノーネ神殿」の真下にある畑で造られています。この畑は世界遺産「Valle dei templi」の中にあるので、管理をしている「parco dei templi agrigento」の所有となります。

ディオドロスの畑はとても海に近い場所にあり、海抜50~100メートルほどです。この畑には1970年ごろに植樹したネロダーヴォラ、ネレッロマスカレーゼ、ネレッロカップッチョ、そしてインツォリアのブドウ樹がありましたが、荒れ果てていました。2011年、世界遺産の管理側の代表者と、カニカッティの社長とでこの畑について話し合いが行われ、プロジェクトがスタートしました。カニカッティは畑を整備し、栽培から醸造、販売、そしてディオドロスのプロモーションを担っています。

2012年に初めての収穫を行いました。ボトルデザインについてはいくつかの案を発表し、投票で決められました。ワインのお披露目は2014年のヴィーニタリになります。ワイン名の「ディオドロス」というのは紀元前1世紀のシチリアの歴史家からとりました。

インツォリアも植えられているのですが、ワインを造るほどの量は取れません。

シチリアの土着品種と国際品種のブレンドで造る新ライン「アリコ」

カニカッティ アリコ今年、新しい商品をリリースしました。「アリコ」という名前で、白はインツォリア&シャルドネ、赤はネロダーヴォラ&シラー(2017年はネロダーヴォラ100%)という、土着品種と国際品種のブレンドで造っています。「ラフェルラ」と「アクイレ」の間にあたるシリーズになります。

土着品種と国際品種のブレンドにした理由は、ワインを覚えてもらうという狙いがあります。イタリアにはとにかくたくさんの品種があって、理解されにくいという問題があります。たとえば、アメリカのイベントでインツォリアを飲んでもらうと、そのときにインツォリアの説明はしますが、残念ながら記憶としては残っていないのではないかと思います。でも、シャルドネという名前が入ることで覚えてもらいやすくなる。そういうところも考えています。

ネロダーヴォラについてはIGTからDOCへ。より厳しい基準で、そして造っている土地をより明確にしたいという想い

新しいアリコラインのネロダーヴォラとアクイレネロダーヴォラは2016ヴィンテージまでは「IGT テッレシチリアーネ」でしたが、2017ヴィンテージから「シチリアDOC」になります。上級ラインのチェントゥーノとディオドロスは前から「シチリアDOC」として造っています。IGTからDOCにするために収量は減りましたが、より厳しい基準で造っているということを強調したワインにしたかったのです。

ネロダーヴォラを使ってシチリア以外の州でボトリングして販売している会社もあります。その会社が長年そのような形で生産をしている場合、たとえボトリング場所がシチリアの外だったとしても既得権によって「シチリアDOC」と名乗ることができるのです。でも、新規参入の会社には認められていません。そのような会社のワインは、中身がネロダーヴォラでもシチリア産とは言えないわけです。

既得権が認められていることについてとやかく言うつもりはありません。でも、私達のワインは紛れもなくシチリアのアグリジェントの畑で造って、ここでボトリングをしているワインなので、それをより分かってもらいたいと思います。

カニカッティ畑

爽やかな香りとフレッシュな酸が楽しめるカタラット
アクイレ カタラット 2017
アクイレ カタラット 2017


カタラットはグリッロとモスカート(ジビッボ)の交配品種です。素晴らしいフレッシュ感が特徴のワインです。私達の白ワインに共通したコンセプトが、このしっかりとした酸があることです。なぜなら、酸が十分にあることで長熟のポテンシャルを持たせることができるからです。

シチリアはとにかく暑い土地です。ブドウの糖度が上がり、甘みの強い重い味わいのワインになる危険があります。アルコール度数が高くなりすぎないように気を付けています。熟成はステンレスタンクで約3ヶ月間です。

試飲コメント:柑橘系のニュアンスと美しい酸味。清々しい爽やかさと果実の甘みがバランス良く調和したスムーズな飲み心地。

収穫は気温の上がらない夜明け!フレッシュな酸が保たれたフルーティーなシャルドネ
アクイレ シャルドネ 2017
アクイレ シャルドネ 2017


カタラットと同様、酸を保ち、フレッシュな味わいになるようにしています。2017年は特に暑かったので、7月末に収穫が始まりました。さらに、気温が25度よりも上がらない状態で収穫するために、夜明け前の収穫を行いました。
試飲コメント:華やかさと甘みのある南国系フルーツの香り。程よいコクと厚みのある、豊かな味わい。こだわりの酸が味わいを引き締めてる。

厳選したグリッロで造る美しい白
フィレーノ(日本未入荷) 2017
フィレーノ(日本未入荷) 2017


シチリアの重要な土着品種グリッロ100%で造るワインです。フィレーノの畑はグリッロの素晴らしい香りがより際立つブドウができます。畑は標高は200~600メートルです。

しっかりとした味わいですが、きれいな酸のおかげで味わいはとてもすっきりとしています。実は、カニカッティの白の中で私が一番好きなワインで自宅でもよく飲んでいます。シチリアの美味しい魚料理と最高の相性ですね。

試飲コメント:とても香りが豊かで味わいにも幅がある。セレクトされた上質なワイン、という印象。ボリュームの中に上品なミネラルと酸が感じられる。

品種本来のピュアな果実味が表現されたネロダーヴォラ
アクイレ ネロ ダーヴォラ 2016
アクイレ ネロ ダーヴォラ 2016


アクイレシリーズのネロダーヴォラです。小樽で5ヶ月間ほど熟成させています。カニカッティの赤ワイン全般がそうなのですが、木樽熟成でも新樽はほぼ使いません。樽の影響をワインに与えないことと、品種本来の良さを引き出すためです。

このネロダーヴォラも評価は高く、国際的なコンクールでいくつも賞をとっています。

試飲コメント:なめらかな口当たり、まとまりのよい上質な果実味が落ち着いた印象で、とにかくバランスが良い。シチリアという暑い土地を感じさせないエレガントさも持ち合わせている。

少し冷やして飲むのも美味しい!夏も楽しめる赤
カリオ 2015
カリオ 2015


ネロダーヴォラとネレッロカップッチョのブレンドで造っています。ネレッロカップッチョはシチリアの品種ですが、だんだん栽培される量が減ってきているブドウです。しっかりとした色合いと高い酸が特徴です。白ワインほどではないですが、少し冷やして飲むのがお勧めです。“夏向きの赤ワイン”ですね。

料理も魚にもお肉にも合いますね。グリルした魚や、マグロのステーキなどとも美味しいです。

試飲コメント:イチゴっぽいかわいらしい果実のニュアンス。すっきりとしたジューシーさが魅力で、タンニンを感じさせないスムーズな喉ごし。

100(チェント)よりもさらに上(101:チェントゥーノ)を目指した上級ネロダーヴォラ
チェントゥーノ 2015
チェントゥーノ 2015


ネロダーヴォラ100%で造るチェントゥーノです。フィレーノやカリオ同様、よりセレクションしたブドウで造る「クリュライン」になりますので、アクイレシリーズの畑とは違うものになります。1年間フレンチオークの樽で熟成させています。

チェントゥーノは101という意味です。つまり、100よりもさらに上である、より上のものという意味を込めています。

試飲コメント:エレガントに凝縮されたネロダーヴォラ。程よいボリューム感の中にしっかりとした酸とタンニンがあり、深みのある味わいを感じさせる。

アグリジェントの世界遺産の畑を復活!豊かな味わいのブレンド赤
ディオドロス 2014
ディオドロス 2014


ディオドロスの畑はとても海に近い場所にあり、海抜50~100メートルほどです。この畑には1970年ごろに植樹したネロダーヴォラ、ネレッロマスカレーゼ、ネレッロカップッチョ、そしてインツォリアのブドウ樹がありましたが、荒れ果てていました。2011年、世界遺産の管理側の代表者と、カニカッティの社長とでこの畑について話し合いが行われ、プロジェクトがスタートしました。カニカッティは畑を整備し、栽培から醸造、販売、そしてディオドロスのプロモーションを担っています。

ネレッロマスカレーゼは力強さを、ネレッロカップッチョは色合いをワインに加えています。

試飲コメント:チェリーなどの果実やスミレなどを思わせるしっかりとした香り。まろやかな果実味が口の中を広がり、心地よい美味しさがすぐにストレートに感じられる。時間とともに増していく濃密感。
インタビューを終えて
カニカッティのワインの輸入を始めてもう10年になります。品質が良く、味わいのしっかりとしたシチリアワインが非常にお手頃価格で販売ができると言うことが決め手で取引をスタートさせました。ヴィーニタリでシチリア州最優秀ワイナリーに選出されたり、さまざまな国際コンクールで高い評価を受けたりと、ずっと優れた品質を常に保って私達に素晴らしいワインを届けてくれるワイナリーです。ビオシリーズを発表したり、アグリジェントの世界遺産でのコラボレーション「ディオドロス」を手がけたりと着実に成長・発展する姿もいつも嬉しく感じています。

今回の突撃は短い時間でしたが、生産量の25%しかボトリングしていないなど、品質へのこだわりや、ワインのスタイルのこだわりなどの一端に触れることができました。10年前のスタイルからより洗練された、上品な旨味を感じるワインにもなっています。「ディオドロス」のようなプロジェクトを任されるなど、シチリアの中でも重要な造り手になっているカニカッティのワイン。もっと楽しんでいただければと思います。

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