フリウリをイタリア随一の白ワイン産地に押し上げた偉大なカンティーナ「イエルマン」

2018/12/04
突撃インタビュー
 
2018年11月1日 イエルマン社 アロイツ フェリックス イエルマン氏

フリウリをイタリア随一の白ワイン産地に押し上げた偉大なカンティーナ!ワードリームス、ヴィンテージトゥニーナを産み出す「北イタリアの宝石」イエルマン

イエルマン社 アロイツ フェリックス イエルマン氏と
フリウリを「イタリア随一の白ワインの産地」「現代イタリア白ワインの聖地」と世界中から注目を集めるまでに押し上げた偉大な造り手の一人、「イエルマン」。「豊かなアロマを持ち、より近代的な味わいで飲んだ人を魅了させるワインを造りたい。」というシルヴィオ イエルマン氏の哲学によって産み出された「ヴィンテージトゥニーナ」「ワードリームス」はイタリア最高峰白として、「北イタリアの宝石」「エレガント・モダンの名手」として世界中から賞賛され、不動の地位を築いています。シルヴィオ イエルマン氏の息子、アロイツ フェリックス イエルマン氏に偉大なカンティーナ「イエルマン」についてお話を聞きました。

フリウリ・イソンツォ地区で1881年創業「イエルマン」

畑大
1881年創業「イエルマン」
こんにちは、アロイツ フェリックス イエルマンです。今22歳で大学では経済学を専攻し卒業したばかりです。今回日本に来ることが出来てとても嬉しいです。私は4人兄弟で、一番上の兄アンジェロは40歳でワイナリーが経営するレストランを任されてます。次男ミケーレは34歳で輸出担当、そして18歳の妹、シルヴィアはワイン醸造の手伝いをしています。

イエルマンは家族経営のワイナリーで、1881年、アントン イエルマンが設立し、私で5世代目となります。イエルマン一族は元々オーストリアにあるブルゲンラントでワイン造りを始め、スロヴェニアを経てフリウリに移ってきました。オーストリア帝国統治下の時代です。

フリウリのイソンツォ地区のヴィッラ ノーバ ディ ファーラ
私達がワイナリーを構える場所はフリウリのイソンツォ地区のヴィッラ ノーバ ディ ファーラという場所になります。イソンツォは歴史的にも大変重要な場所で、第一次世界大戦時、曾祖父の時代にはこの場所はオーストリアハンガリー帝国に属し、イタリア側と戦いました。第二次世界大戦では祖父はイタリア人として戦った、時代により異なる歴史を持つ場所です。

1970年代、シルヴィオ イエルマンが本格的なワイン造りへとシフトチェンジ

地図
1970年代、父シルヴィオによる本格的なワイン造りへとシフト
私の祖父のアンジェロは現在95歳になりますが、今もとても元気です。アンジェロがワイン造りに精を出していた1930~1940年代、10ヘクタールの土地を所有し、その当時は家族用、友人用のワインを造っていました。祖父は当時から有機農法を採用していて、ブドウ以外にも小麦や大麦、桃、杏、さくらんぼも有機で栽培していました。全ては自分たちの食用の為であって、父シルヴィオがワイナリーを中心に推し進めるまでは、いわゆるごくごく一般的な「農夫」であった訳です。

シルヴィオイエルマン「より近代的な味わいで強い個性を表現し、飲んだ人を魅了させるワインを造りたい」
父シルヴィオがサンミケーレにある醸造学校を卒業し、当時の最新の栽培・醸造技術を学びました。1970年代からブドウ畑を一から新しく仕立てワイン造りに「新たな改革」起こしていきました。当時は「アルコール度数が高く、重たいだけのワイン」が主流でした。そうではなく父は、「豊かなアロマを持ち、より近代的な味わいで強い個性を表現し、飲んだ人を魅了させるワインを造りたい」という目標を掲げます。

当時は珍しかった「ソフトプレス」&「温度管理」を実践
改革には2つの大きなポイントがありました。ひとつはブドウに負担をかけないソフトプレス機を導入した事です。チューブをゆっくりと膨らませて、プレスする。今でいうバルーンプレスの前身になるようなものです。当時としては非常に珍しく、フリウリで初めてソフトプレスを導入したのはマリオ スキオペットで、父はスキオペットから多くを学び、早々からソフトプレスを採用しました。もう一つは醗酵の温度管理をキッチリと行う事です。

インタビューイエルマン1「常に最良の品質を造る」
祖父のアンジェロの時代、自分たちが飲む為だけのワイン造りでは6ヶ月経ったらビネガーになってしまった事もありましたが、父シルヴィオが造ったワインは何年も何年も熟成を重ねれば重ねる程向上していくワインとなりました。父の哲学である「常に最良の品質を造る」それがイエルマンの哲学です。

 

「イソンツォ」と「コッリオ」地区に160ヘクタールの畑を所有

「イソンツォ」と「コッリオ」地区に160ヘクタールの畑を所有
父は「品質が高く、販売出来るワインを造りたい」と思っていたので、畑を少しずつ土地を購入し、畑を増やし品質の高いワインを造り続けて来ました。現在畑は総面積200ヘクタールに広がり、内160ヘクタールがブドウ畑です。ブドウ畑の100ヘクタールがイソンツォ地区にあり、60ヘクタールはコッリオ地区に畑があります。「イソンツォ」と「コッリオ」の特徴の違いについてはまた後で説明します。

ブドウ畑とは別に所有する20ヘクタールの土地では有機の小麦、トウモロコシを造っています。私達のカンティーナにいらっしゃる時はワインの試飲はもちろん、それに合わせてこのエリアの伝統的料理も楽しむ事が出来ますよ。残りの20ヘクタールは森で、いずれは畑にしていく予定です。

年産平均90万本で、2018年は20%多い収量となりました。2017年は20%減といったように、相手が自然なので、天候によって収量は変わっていきます。2015、2016年はファンタスティックなヴィンテージで素晴らしい出来映えでした。2016年は春に雨が多く降り、結果、自然とブドウの房が減っていき、暑い夏を通して凝縮されたブドウが育ったため、香りが豊かで非常に品質の良いブドウが出来ました。

フランコニア
オーストリア品種フランコニア(ブラウフレンキッシュ)を昔から栽培
イエルマンの生産量の90%が白ワインで、10%が赤ワインです。白ワインが代表的なこのエリアでは至極当然の事ですが、赤ワイン品種に関しては初代のアントン イエルマンが植えたもの、徐々に増やしていったものが主体となります。オーストリア、スロヴェニアから運んできたフランコニア種(ブラウフレンキッシュ)、メルローを今も植えています。

フランコニアはより熟成をさせなければならない品種です。カンティーナで確りと熟成させる必要があります。このブドウは元々オーストリア品種で、メルローに似た特徴があります。イエルマンがルーツを持つオーストリアのブドウ品種であるフランコニアは昔からイエルマンで栽培されています。フリウリ内でブラウフレンキッシュを栽培しているワイナリーは他には知りませんね。やはりオーストリアか、スロヴェニアになりますね。

イソンツォ創業以来の「イソンツォ」地区、新しいカンティーナ「ルターシュ」地区
カンティーナの話をしましょう。創業以来カンティーナを構えるのはイソンツォ地区、ルターシュ地区に新たにカンティーナを造りました。どちらのカンティーナもゴリツィア県に位置しています。2つのカンティーナの距離は車で20分位でしょうか。単一品種で造っているワインに関しては(赤ワイン:レッドエンジェルも含めて)イソンツォ地区で造っています。使う品種の畑がカンティーナの近くにある事が理由の一つです。「ヴィンテージ トゥニーナ」の畑は現在12ヘクタールで、イソンツォにあるカンティーナ周辺の古い畑のブドウを使っています。ルターシュ地区にある新しいカンティーナではヴィンテージ トゥニーナ、ワードリームズ、ヴィナエ、リースリングを造っています。ルターシュにはそれぞれのワインを造る専用の蔵があって、それぞれのワインの品質を高める事に注力しています。「高品質なワインを造る小さなカンティーナが幾つか集まっている」、そんなイメージでしょうか。

それぞれのワインを造る専用の蔵「小さなカンティーナ」について教えてください。。

それぞれワインに適した環境があって、湿度や温度も違います。もっと言うとワインそれぞれの「性格」のようなものがあって、カンティーナの建築にも左右されます。それぞれ異なる個性のワインが良い熟成を経るにはそれぞれに適した環境が必要だという事です。収穫されたブドウは醗酵が始まらないように完璧な温度管理の中でソフトプレスされ果汁となりそれぞれ異なる醸造施設に運ばれます。このようなシステムは7年かけて造られ、2007年に完成しました。

コッリオ単一品種とって理想的な地「コッリオ」
砂質土壌「ポンカ」がコッリオの特徴的な構成となっています。コッリオでは単一品種が多く造られています。コッリオの土壌がブドウを早く成長させ、成熟を助けているからです。この特徴は単一品種でボトリングするワインにとっては非常にメリットとなります。単一品種とって理想的な地でフレッシュさ、香りのバランスが取れた味わいいとなります。

例えば、ピノグリージョは水っぽさが無く、バランスのとれたストラクチャーのしっかりとしたワインとなります。コッリオの中でも丘陵地なればより複雑さがワインに加わります。「ポンカ」土壌は何層にもなっていて、下に行けば行くほど密な土壌となります。一方、一番上の痩せた表土は太陽の熱、雨水を吸収して造られた比較的柔らかい層になります。上部が痩せた土壌であるからこそ、地中深くの密な土壌へ水分を求め、固い土壌の隙間隙間に根を伸ばしていく。(ブドウにとって)タフな環境であるからこそ、凝縮感のあるブドウとなっていくのです。コッリオと比べると、イソンツォの方がブドウにとっては優しい環境と言えるので、沢山生ってはくれますが、ブドウの凝縮感という所では、コッリオの方が勝っている。そのような違いがありますね。

ワインの味の最終決定は?

父のシルヴィオが全てやります。父は正確で正しく、全てにおいて細かくチェックします。沢山研究し、出来たワインを試飲してきた父だからこそ出来る事だと思います。

イエルマンでは2000年からスクリューキャップによるワインの品質保持、熟成の研究を始めています。フレッシュな品質、どれだけ熟成に耐えられるか調べています。結果はスクリューキャップに満足していてマーケットに対して啓蒙していく事をやっています。例えば白ワイン「ワー ドリームズ」。日本以外ではスクリューキャップで販売しています。

イエルマンの代表作「ヴィンテージ トゥニーナ」が誕生

ヴィンテージトゥニーナイエルマンの代表作「ヴィンテージ トゥニーナ」が誕生
父シルヴィオが造り上げたイエルマンの代表作と呼べる白が「ヴィンテージ トゥニーナ」です。1973年から造り始め、1975ヴィンテージが初リリースです。元々自家用でワインを造っていた10ヘクタールの畑から始まりました。その畑内に色々な品種のブドウをミックスさせて植えました。現在のように、この畑にはこの品種を植えて、、という事ではありませんでした。

ヴィンテージトゥニーナは5品種のブレンドで造っています。2015ヴィンテージはシャルドネ25%、ソーヴィニョン25%、リボッラジャッラ23%、マルヴァジア22%、ピコリット5%のブレンドです。本格的にワイン造りを始めた時は10ヘクタールの畑しか無かったので、それぞれの品種毎に分けて植えることが出来ず、混植で品種を植えていました。

60年代に畑の所有者だったアントニアさんから祖父が畑を買いました。アントニアさんの名前をフリウリの方言で言うと「トゥニーナ」。それからワイン名にトゥニーナと付けています。今日本で販売されている2015ヴィンテージでちょうど40周年となります。

ミュージシャン「U2」の1曲にインスパイアされた「ワードリームス」

ワードリームス ミュージシャン「U2」のアルバム「ヨシュアトゥリー」の冒頭の1曲にインスパイアされた「ワードリームス」
続いて「ワードリームス」についてお話しましょう。97%がイエルマンの最上のシャルドネを使用しています。残り3%は秘密で、使うブドウは毎年違います。シャルドネ100%ではありません。醸造はステンレスタンク、果実のフレッシュ感を確かめながら、良いタイミングで木樽醗酵に移しかえます。マロラクティック醗酵は行いません。最後にバリック樽に移し替えて11ヶ月間熟成させます。特に暑い年や水不足の年はブドウが酸化しやすい危険性があるので、醗酵時の温度管理が重要となってきます。それは木樽では出来ないので、初期段階のステンレスタンクでの管理が大切です。色々な試した結果、現在イエルマンではオーストリアで伝統的に使っている300リットルのバリック樽で熟成を行っています。(通常のバリックは225リットル)

ラベルに添えられたメッセージも変化
ワー ドリームスの初ヴィンテージは1987年です。市場にリリースが始まったのは1988年からです。ミュージシャンU2の1987年発売のアルバム「ヨシュアトゥリー」の冒頭の1曲「Where the Streets Have No Name」にインスパイアされて、この名前になりました。ラベルに7色の虹、黒と白合わせて9つの色が描かれています。父シルヴィオは1988年のリリース後、9年後には「引退をしよう」と考えていた事になぞらえた配色だったのですが、引退する事なく、今もワイン造りの最終決定を行っています。

インタビューイエルマン2ラベルに添えられたメッセージ「Were Dreams, Now It Is Just Wine! 」(かつて抱いた夢は、今ワインとなった!)は 9年後の1996年から「Were Dreams, now it is just wine !」(現代の夢それはワインである)と変更され、2004年からは「Were Dreams, have no end」(終わりなく続く)と更に変わっています。新たに添えられたコメント「all with you」は夢を成し遂げるときは「大切な人と」という意味があります。息子、娘達に引き継がれるワイン造りを示していて実に父らしいメッセージです。ラベルに描かれた4つの月は月の満ち欠けを表しています。畑でもカンティーナでも月の満ち欠けの動きを注視しています。新月から月が欠けていく時に選定作業を行っています。

アロイツ フェリックス イエルマン氏といよいよ試飲です!
ボトル

心地よい飲みやすさと滑らかな果実味
ヴィナーエ 2016
ヴィナーエ 2016


(試飲は2015ヴィンテージ)90%リボッラジャッラ、5%リースリング、5%フリウラーノのブレンドとなっています。ヴィナーエは新しいカンティーナ、ルターシュ地区で造られます。リボッラジャッラとフリウラーノなフリウリを代表する品種で、リースリングはオーストリア~スロヴェニア~イタリアと私達が歴史的に栽培してきたブドウ品種です。ブドウの1/4が80へクトリットルのオーク樽、3/4がステンレスタンクで5ヶ月熟成となります。収穫翌年の1~2月にはボトリング、2~3ヶ月の瓶内熟成を経てリリースします。
試飲コメント:リボッラジャッラの特徴は飲みやすさにあります。リボッラジャッラだけだと、どうしても軽やかになりがちなので、それを補う為にフローラルなフリウラーノ、アロマ豊かなリースリングを加えています。

ラベルに描かれたタカのマークはオーストリア帝国時代のシンボルで3本の尻尾が描かれています。これはヴィナーエに使う3品種を表しています。ヴィナーエは父のシルヴィオがつけた名前で、ラテン語で「ブドウ」を意味しています。私の兄のミケーレが産まれた事を記念して造られました。

エレガントでスッキリとしていながら豊かな味わい
ピノ グリージョ 2017
ピノ グリージョ 2017


ピノグリージョはイソンツォでも栽培されていますが、主要な畑はコッリオです。フレッシュ感やクリーンな要素はコッリオのテロワール由来のものです、飲んで頂くと「ポンカ」土壌由来の豊かなミネラルを感じます。ピノグリージョは年間15万本程生産しています。2017年は3~4時間の軽めのマセラシオンをしていて、味わいにも感じていただけると思います。(ピノグリージョを)造り始めた時は長期マセラシオンによるラマート(青銅色)タイプのピノグリージョも造っていました。近年ラマートが注目を集めているので、原点回帰でなないですが、異なる2つの畑のピノグリージョを使い新たにラマートタイプを2018ヴィンテージに造りました。
試飲コメント:ピノグリージョの特徴が香りにも表れていますね。洋梨の香りが広がりますね。エレガントでスッキリとしていながら豊かな味わいが楽しめます。ステンレスタンクのみで造っています。

シンプルでありながらエレガント、クリーンな味わい
シャルドネ 2017
シャルドネ 2017


シャルドネはマセラシオンを行いません。シンプルでありながらエレガント、クリーンな味わいとなっています。少しバニラの香りも広がります。これはクラシックなシャルドネの特徴です。2017年は2015、2016に比べて全く異なるキャラクターです。2017年は特にシャルドネとって厳しい年でした。他の品種に比べ芽吹くのが早いシャルドネですが、春に1週間も低温の日が続き、大部分のシャルドネが発芽する前に枯れてしまったからです。ただでさえブドウが少なくなった事に加え、迎えた夏がとても暑かった。ストレスフルで厳しい環境に置かれたブドウは例年にない程の少ない収量となりました。
試飲コメント:私達がワイン造りで一番大切にしている事は「香りと味わいのバランス」「アルコール度数が高くなり過ぎない」事です。アルコール度数を高くしないのは飲み手の事も考えての事であって、飲みにくいワインとなってしまわないように。いかに気軽に飲んで頂けるかが重要だと思います。ラベルに描かれた「S」の文字は父シルヴィオの頭文字を取ったロゴです。昔の書物等で、始まりの文字をあえて大きく書く事になぞらえて、イエルマンの「J」の文字は大きく書かれています。

味わいと香りのバランスに長けたソーヴィニョン
ソーヴィニヨン 2017
ソーヴィニヨン 2017


(試飲は2016ヴィンテージ)ソーヴィニョンは一番最初に収穫を迎えるブドウの一つで、少し早めに摘むことで香りを保つこと出来ます。味わいのボリュームは最初の収穫から2~3週間遅積みしたブドウ由来です。つまり、色々なタイミングで収穫をする事で香りと味わいのバランスを取る事非常に気を遣います。ソーヴィニョンの収穫時に関してはブドウの葉をあまり取りません。その方が(ソーヴィニョンの)香りを良く引き出す事が出来ます。
試飲コメント:味わいと香りのバランスを重要視しています。特に香りが強くなり過ぎないようにしています。特に私達のエリアのソーヴィニョンは香りが強く出てしまいます。その為、色々なタイミングでブドウの収穫を行います。一般的にソーヴィニョンは、ややもするとスマート過ぎるボディになりがちです。自分達が求めるソーヴィニョンはよりコクがありボリュームのある味わいです。飲んで頂くと綺麗なフィニッシュが感じられると思います。

イエルマンを代表するキュヴェ「ヴィンテージトゥニーナ」
ヴィンテージ トゥニーナ 2015
ヴィンテージ トゥニーナ 2015


ヴィンテージトゥニーナは5品種のブレンドで造っています。2015ヴィンテージはシャルドネ25%、ソーヴィニョン25%、リボッラジャッラ23%、マルヴァジア22%、ピコリット5%のブレンドです。60年代に畑の所有者だったアントニアさんから祖父が畑を買いました。アントニアさんの名前をフリウリの方言で言うと「トゥニーナ」。それからワイン名にトゥニーナと付けています。1973年から造り始め、1975年に初めて販売しました。この2015ヴィンテージで丁度40周年となります。

収穫は全品種一度に行います。収穫は朝早くから夜遅くまでかけて、全てを一日で終わらせます。一度に収穫したブドウは全部を混醸させます。11ヶ月間熟成させた後、最低6ヶ月間は瓶熟をさせてから出荷します。

試飲コメント:ヴィンテージトゥニーナはフレッシュでクリーンな香りが重要です。2002年からはスロヴェニア産80へクトリットルの大樽を使うようになりました。樽を使う事で(ワインに)厚みをもたらします。樽を使うことで時間をおいてワインの味わいが発揮されるようになりました。樽熟成が1/4、残りの3/4はステンレスタンク熟成です。

ヴィンテージトゥニーナにソーヴィニョンのアロマ、マルヴァジアのミネラルが感じられます。熟成を重ねる事によって、シャルドネとピコリットの深い味わいが表現されていきます。ヴィンテージトゥニーナに関しては是非10年は熟成させることをおススメします。

ステンレスタンク熟成のクリーンなリースリング
アフィックス リースリング 2016
アフィックス リースリング 2016


元々違う名前で売られていたワインですが、私が産まれた事を契機にワイン名が変わりました。リースリングはイエルマン家がオーストリアにいた時から栽培していた大切なブドウです。私が小さい頃、8年間ペットとして飼っていたイグアナがラベルに描かれています。畑を散歩させていましたね。そのイグアナは大きくなりすぎたので動物園に渡してしまいました。
試飲コメント:ヴィンテージにも寄りますが、ブドウは少しだけ遅摘みにしています。醸造はシンプルで全てステンレスタンクを使用し、翌年1月まで澱と共に寝かせています。白い花のアロマが豊かで、クリーンでフレッシュな果実感があります。

イエルマンが世界に誇る白「ワードリームス」
ワー ドリームス 2016
ワー ドリームス 2016


ワー ドリームスの初ヴィンテージは1987年です。市場にリリースが始まったのは1988年からです。U2の楽曲「ヨシュアトゥリー」にインスパイアされて、この名前になりました。ラベルに7色の虹、黒と白合わせて9つの色が描かれています。父シルヴィオは1988年のリリース後、9年後には「引退をしよう」と考えていた事になぞらえた配色だったのです。
試飲コメント:熟成したトロピカル フルーツや、バニラ、ブリオッシュなどを感じる濃厚かつ甘美なアロマがグラスから立ち上がり、その魅惑的な香りに飲む前から心が躍ります。桃やアプリコットを感じさせる風味が口の中でまろやかに広がり、 厚みのある果実味と柔らかな酸味が絶妙な調和を保ち、エネルギーに満ち溢れた味わいです。クリアで洗練されたモダンなテイストにふっくらと温かな余韻が驚くほど長く続き、ワー ドリームスという名前の通り、まさに夢のようなひとときをもたらしてくれる極上の逸品です。あまり冷やしすぎずにお楽しみ下さい。

ピノネーロ100%「レッドエンジェル」
レッド エンジェル 2015
レッド エンジェル 2015


2015年は赤ワインにとって本当に良い年です。10~15日間のアルコール醗酵はステンレスタンクで行います。モスト(果汁)の綺麗な部分だけを引き抜いたもの、残った果皮の部分を更に絞ったもの。別々のキャラクターを持つピノネーロを選別しブレンドしてワインにしていきます。ピュアな要素とタニックな要素を持つモストは300リットルのバリックで別々に熟成させます。それだけではなく、畑の標高の高さによっても別々に熟成させています。
試飲コメント:レッドエンジェルの名前の由来ですが、ラベルにも描かれていますが、フリウリのエリアで良く見られる景色の一つで、背後にアルプスを臨む太陽が沈み、月が出て色合いのコントストから付けられています。またアンジェロ(angelo)は私の兄の名前でもあり、祖父の名前でもあります。イチゴやラズベリー、熟したサクランボのようなアロマが赤い果実のニュアンスが出てきます。タンニンも固すぎず円やかさが感じられると思います。

イエルマンのルーツとなるオーストリアブドウ品種「フランコニア」
ブラウ アンド ブラウ 2014
ブラウ アンド ブラウ 2014


(試飲は2012ヴィンテージ)このワインは95%ブラウフレンキッシュ(フランコニア)、5%ブラウアーブルグンダー(ピノネーロ)がブレンドされています。フランコニアはより熟成をさせなければならない品種です。カンティーナで確りと熟成させる必要があります。ブラウフレンキッシュは元々オーストリア品種で、メルローに似た特徴があります。

このワインは妹のシルヴィアに捧げたワインで、ラベルに描かれた犬は彼女が幼い頃に飼っていた、トルーマンというボストンテリア犬です。バレリーナのように踊っている姿で妹が「犬が踊ったらいいな」という夢が幼い頃にあってそれがモチーフになっています。

試飲コメント:乾燥させたさくらんぼ、そしてプラムのようなボリュームのある果実のニュアンスがあります。ブラウ&ブラウはワイナリーにとっても重要なワインです。イエルマンがルーツを持つオーストリアのブドウ品種であるブラウフレンキッシュが昔からイエルマンで栽培されています。フリウリ内でブラウフレンキッシュを栽培しているワイナリーは他には知りませんね。やはりオーストリアか、スロヴェニアになりますね。
インタビューを終えて
「ヴィンテージトゥニーナ」、「ワードリームス」とイタリア最高峰白ワインを産み出すイエルマンの緻密で隙のない美しいバランスのとれた味わいがとても印象的でした。

1970年代から、本格的なワイン造りを推し進めてきた偉大なシルヴィオさんのお話を息子であるアロイツさんからお伺いできたことも良かったです。味わいの最終決定は今もシルヴィオさんが行うそうですが、試飲したどのワインからみずみずしさや清潔さ、それでいて味わいの深さがあり、上級キュヴェでなくとも、イエルマンのワイン造りにかける情熱や素晴らしさを改めて知るとても良い機会となりました。

アロイツさんは大学を卒業したばかりの22歳ながら、オーストリアからフリウリへ、イエルマンが歩んできた歴史、「ヴィンテージトゥニーナ」の誕生、所有する畑を品種個性に合わせ使い分けをしている事等、イエルマンのこだわりを細やかに説明してくれました。幼少時代から偉大な父の「モノ造り哲学」を受け継いだアロイツさんの若き情熱に終始圧倒されるインタビューとなりました。「北イタリアの宝石」、「エレガント・モダンの名手」と世界中から常に止む事の無い賛辞が贈られる偉大な造り手イエルマン。イタリア最高峰の淀みのないクリアで洗練されたエレガントな味わいを是非お試しいただければと思います。

イエルマン社 アロイツ フェリックス イエルマン氏とトスカニースタッフ
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