モレッリーノ ディ スカンサーノの名門!スーパートスカン「アッヴォルトーレ」でその名を知らしめ、モレッリーノの奥深さを表現するモリスファームズ

2017/06/29
突撃インタビュー
 
2017年6月12日 モリスファームズ社 ジュリオ パレンティーニ氏

モレッリーノ ディ スカンサーノの名門!スーパートスカン「アッヴォルトーレ」でその名を知らしめ、モレッリーノの奥深さを表現するモリスファームズ

モリスファームズオーナーのジュリオパレンティーニ氏と
トスカーナの海岸地区マレンマのDOCG、「モレッリーノディスカンサーノ」の名門モリスファームズ。その歴史はモリス家がスペインからマレンマに移住してきた200年前までさかのぼることができます。ワイン造りに本格的に取り組み始めた1970年代後半からは着実に品質を高め、スーパートスカン「アッヴォルトーレ」のリリースでトップ生産者としての地位を確実にしました。モレッリーノ ディ スカンサーノは同じサンジョヴェーゼで造るブルネッロやキャンティクラシコに比べるとその知名度は高くはないですが、モレッリーノのポテンシャルを信じ、DOCG昇格に貢献したのが現社長ジュリオ パレンティーニ氏の父親。今回はてんぷら料理とモリスファームズのワインをマリアージュしながらジュリオ氏のお話を聞かせていただきました。(神田明神下 みやび様にて)

200年前にスペインから移住してきたモリス家が始めたワイナリー。ジュリオ氏の父アドルフォ氏がマレンマのポテンシャルを確信して高品質ワイン造りへの挑戦を始める

モリスファームズは、私の母方のモリス家が200年前にスペインからマレンマに移住してから始まりました。マレンマで石炭事業を始め、財をなし、最大で6000ヘクタールの土地を所有していたこともあります。大きくはありませんでしたが、農業もおこなっていて、ブドウ栽培もしていました。石炭事業が下火になる一方でワインも造るようになって「モリスワイン」という名前で地元だけで販売するようにもなりました。そして、1971年に「モリスファームズ」と名前を変更しました。

1979年に私の父がモリス家の娘と結婚したのですが、父はマレンマのワインに価値を与えていいワインを造るという固い決意をしていました。ボルゲリや、ブルネッロ ディ モンタルチーノなど、トスカーナの重要なワイン産地の近くにありながらも当時のマレンマはほとんど知名度がありませんでした。でも父は、それほどのワインが近くで出来るのだから、マレンマにもそのポテンシャルは十分にあると確信していたのです。その頃、マレンマで高級ワインを造ろうと考える人はほとんどいなかったので、父はマレンマワインのパイオニア的な存在でした。

モリスファームズ畑

1988年、名醸造家アッティリオ パーリ氏に出会い、飛躍的に品質が向上。スーパートスカン「アッヴォルトーレ」が誕生し、世界的にその名が知られるように!

モリスファームズのエノロゴ、アッティリオパーリ氏父は独学でワインを勉強しました。最初はエノロゴもいなかったので試行錯誤だったようです。1988年にアッティリオ パーリ氏に出会ったことが大きな転機となりました。アッティリオ パーリ氏は今では超有名エノロゴになりましたが、当時はまだ23歳で駆け出しでした。でも彼のワイン造りは非常に新しく、父も彼の技術や手法を取り入れていきました。そして一緒に造ったのが「アッヴォルトーレ」です。

アッヴォルトーレとは、畑のある丘の名前です。そこは粘土質土壌で、スカンサーノが砂質であるのとは対照的な土壌です。1990年にアッティリオパーリからシラーを植樹することを勧められ、1997ヴィンテージからシラーもブレンドするようになりました。

 

「モレッリーノ ディ スカンサーノ」は「ブルネッロ ディ モンタルチーノ」と同じで土地固有のサンジョヴェーゼの名前を付けている

モレッリーノというのは、私たちのエリア「スカンサーノ」地区のサンジョヴェーゼの呼び名です。スカンサーノのモレッリーノ(サンジョヴェーゼ)、ということです。つまり、モンタルチーノのサンジョヴェーゼ(ブルネッロ)のことをブルネッロ ディ モンタルチーノと呼ぶのと同じです。どちらもサンジョヴェーゼの土地固有の名前を付けたワインなんですね。

スカンサーノはモンタルチーノに近いのですが、値段はブルネッロのほうが一般的には3倍ぐらいしますが、ワインとしての価値がブルネッロの3分の1しかないということは決してありません。スカンサーノの土壌は砂質で、そのために優しくてやわらかい味わいになります。どちらかというと女性に好まれる味わいかなと思います。私の前の恋人もモレッリーノが好きでしたね(笑)。

スカンサーノはマレンマのエリアにあるわけですが、マレンマという小さい土地にたくさんのDOCが存在します。外国に行くと「そんなにDOCがあってわかりにくい」と言われることもありますが、マレンマはその場所によってミクロクリマが違うんです。その中の一つがモレッリーノ ディ スカンサーノなので、このワインの奥の深さをもっともっと知ってもらいたいですね。私は1杯飲むのがやっとという重厚なワインよりも、どんどんグラスが進んで空になったボトルを見るのが好きなんです。

モリスファームズマリアージュ

ジュリオさんが一番好きなヴェルメンティーノ
ヴェルメンティーノ トスカーナ 2015
ヴェルメンティーノ トスカーナ 2015


白ワインはフレッシュでブドウ本来の香りを保つことができるように新しい技術も取り入れて造っています。90%ヴェルメンティーノ、残り10%はヴィオニエです。ヴェルメンティーノ中でもこれが一番私は好きですね。
試飲コメント:フレッシュなフルーツや白い花を思わせる心地よい香り。香りそのままのフルーティな味わいが口の中にも広がり、上品な酸とミネラルと抜群のバランスをとっている。軽快ながらもしっかりとしたコクのある、存在感のある美味しさ。魚にもお肉にもよく合う。

ステンレスタンクだけで造るベーシックラインのモレッリーノ ディ スカンサーノ
モレッリーノ ディ スカンサーノ 2014
モレッリーノ ディ スカンサーノ 2014


2014年ヴィンテージのモレッリーノディスカンサーノです。2014年は難しいヴィンテージだったのでリゼルヴァは少ししか造らず、いいブドウはほとんどこのベースワインに使用しています。例年よりも上級ランクのブドウを入れたおかげでリッチで複雑さが出ています。2015年はいいヴィンテージだったので逆にフルーティーさが強く、複雑味という点では2014年のほうがありますね。赤身の魚とも相性がいいかと思います。
試飲コメント:熟成した上品な果実味、スパイスやドライフラワーのニュアンスも。複雑さも感じられるがとてもジューシーでサンジョヴェーゼの心地よい酸味といっしょにスムーズにのどを通る。お刺身に合わせても違和感がない。

いいヴィンテージだけ、厳選したブドウだけで造るリゼルヴァ
モレッリーノ ディ スカンサーノ リゼルヴァ 2010
モレッリーノ ディ スカンサーノ リゼルヴァ 2010


モレッリーノのリゼルヴァはいいヴィンテージだけ、そして厳選したブドウだけで造っています。2~3年樽で1年間熟成させています。
試飲コメント:2010ヴィンテージということもあって瓶熟成が進み、非常に柔らかな印象。タンニンも全く攻撃的ではなく、エレガント。以下と太刀魚のてんぷらとも不思議にマッチ。

モリスファームズの名前を広めたスーパートスカン「アッヴォルトーレ」
アッヴォルトーレ 2011
アッヴォルトーレ 2011


2011年ヴィンテージのアッヴォルトーレです。シラーの力強い色合いがしっかりと出ていますね。1997年からシラーをブレンドしていますが、とてもリッチでスパイシーさが加わったスタイルになっています。

アッヴォルトーレというのはこの地方に飛んでくる鷹のことです。ラベルの文字は鷹の爪をあしらったデザインになっています。このラベルは初リリースのラベルから変えていません。モリスの名前が小さく入っているでしょう?これは祖父に対する小さな
遠慮です。新しいものを受け入れてくれなかった祖父にとって、ここにモリスの名前を大きく出すのは申し訳ないと父が考えたからなんです。

試飲コメント:甘く濃密な香りに、凝縮感のあるなめらかな心地よい舌触り。しっかりとした芯のあるフルボディですが全く重くなく、タンニンもとけこんでいてとても滑らか。肉の煮込み料理とゆっくり。
インタビューを終えて
2011年から社長に就任したジュリオさん。先代が築き上げた偉大なワイナリーを継承し、発展させていくことに一生懸命な姿勢がお話を聞きながら伝わってきました。それだけに苦労も多く、大変な様子も垣間見えて、より親近感を覚えることができました。

モレッリーノディスカンサーノはマレンマの銘醸地の一つですが、同じトスカーナのブルネッロやキャンティクラシコに比べるとどうしても陰に隠れがち。でも、実際はスカンサーノ地区のポテンシャルに目を付けて他の地域や国外からも進出してくる企業もあり、これから変わっていく可能性のあるワイン産地でもあります。

モリスファームズはその中でも老舗であり、モレッリーノディスカンサーノを代表する造り手です。他の地域にはないサンジョヴェーゼの魅力をたっぷりと感じるモリスファームズのワインをぜひ多くの方に楽しんでいただきたいと思います。

モリスファームズオーナーのジュリオパレンティーニ氏と
モリスファームズのワインはこちら⇒
突撃インタビューバックナンバーはこちら⇒