フリウリ有数の名門家族経営カンティーナ「リスネリス」

2019/05/30
突撃インタビュー
 
2019年5月17日 リス ネリス社 フェデリカ ペコラーリ女史

プロフェッショナルも注目する優美で滑らかな深み!フリウリ有数の名門家族経営カンティーナ「リスネリス」

リス ネリス社 フェデリカ ペコラーリ女史と
北はスロヴェニアとの国境に接し、南にはイゾンツォ川の川岸が広がるサン ロレンツィオイゾンティーノで1879年に創業以来、家族経営を貫くリス ネリス社。1990年代に入ると4代目アルヴァーロペコラーリ氏が畑、醸造、熟成の全過程において大きな改革を行い、現在のリス ネリス社のワインのスタイルを築き上げ、フリウリでも有数の知名度を誇るワイナリーとなりました。理想的な環境下で完熟したブドウはエレガントで洗練されたワインへと産まれ変わります。強すぎない、優美でバランスの取れた絶妙な味わいは、和食にも相性が良く日本ではジャンルを問わずプロフェッショナルからも高く評価を受けています。リスネリス社5代目オーナー、フェデリカペコラーリ女史にお話を聞きました。

1879年創業。フリウリでも有数の知名度を誇るワイナリー

畑大
1879年創業以来栽培から瓶詰めまで家族経営で行う
リス ネリス社の歴史についてお話しましょう。地理的に北はスロヴェニアとの国境に接し、南にはイゾンツォ川の川岸が広がるサン ロレンツィオ イゾンティーノに居を構え、ワイン造りを始めたのは1879年の事です。今年2019年でちょうど創業140周年を迎えます。140年間の間、栽培から瓶詰めまでずっと家族経営で行っています。私で5代目となります。

父フリウリでも有数の知名度を誇るワイナリー
祖父の時代、1970~1980年代までは穀物栽培もしていましたが、1990年代に入り、4代目で私の父、アルヴァーロ ペコラーリがブドウ栽培に専念し、本格的にワイナリーとして歩み始めました。父は畑、醸造、熟成の全過程において大きな改革を行い、現在のリス ネリス社のワインのスタイルを築き上げ、フリウリでも有数の知名度を誇るワイナリーとなりました。

1980年代までは2ヘクタールだった畑も現在70ヘクタールの畑にまで広がりました。基本的に自社畑であり私達家族で管理しています。一部借りている畑がありますが、管理は全てリス ネリスで行っています。

フリウリの言葉で「リス ネリス」は「黒い女性」という意味

看板フリウリの言葉で「リス ネリス」は「黒い女性」という意味
1993年まで「フランチェスコ ペコラーリ」というワイナリー名でしたが、1994年に「リス ネリス」というワイナリー名に変更しました。リス ネリスとは一般的なイタリア語の特徴とは異なるフリウリ独自の言葉で、創業時、一番最初に購入した区画に付けられていた名前です。1700年代は個々の畑に名前をつけなければならず、当時の人間が呼んでいた畑名「リス ネリス」がそのまま地図中に残っていました。歴史的に約500年間オーストリアの支配下にあったフリウリでは、イタリア語でもない、オーストリア語でもない独自の言語が発達していた歴史があります。フリウリの言葉である「リス ネリス」は「黒い女性」という意味があり、畑で働いていたのは男性よりも女性が多く、その女性たちが黒い服を着ての作業をしていた事から付けられたと記録が残っています。
 

スロヴェニアから吹く非常に強い冬の季節風「ボーラ」

地図スロヴェニアから吹く非常に強い冬の季節風「ボーラ」
ワイナリー北部にあるスロヴェニア国境まで車で5~10分程の場所にありますが、南はアドリア海まで10キロと山と海に挟まれ、スロヴェニアから流れるイゾンツォ川が走る渓谷のエリアにワイナリーは位置しています。氷河の時代に形成された大地が隆起し、イゾンツォ川を通じて岩や石、砂が流れ込み堆積した土壌です。

「土壌や気候、ブドウ栽培に適した気候条件が揃っている」
もう一つの特徴としてはスロヴェニアから吹く「ボーラ」という非常に強い冬の季節風がある事です。夏場はフランスの避暑地ニース地方が引き合いに出されるくらいとても心地よい風が吹くのですが、冬になるとその性格は変わりとてもアグレッシブな風となります。この「ボーラ」がテロワールを形成するにあたり大切な要素となります。土壌や気候、そういったブドウ栽培に適した気候条件が揃っている事からワイン造りにおいて「パラダイス」と呼ばれている場所です。

ビオロジック「健康的な土壌であるからこそ、リッチな味わいのワインとなります」
土壌由来のミネラル分、ストラクチャーの強さ、「ボーラ」の風がもたらすアロマやエレガンスがワインに反映されています。イタリア国内、世界的に見ても唯一無二の気候条件が揃っていると言えます。またリス ネリス社ではサスティナブル農法を採用していて、認証こそとっていませんが除草剤、農薬を使わないオーガニック栽培となっています。畑仕事の殆どは手作業で、唯一機械を使うのが、畑の掘り起こし位でしょうか。健康的な土壌であるからこそ、樽を使わずともリッチな味わいのワインとなるものです。高品質でありながら、ある種の「飲みやすさ」というものも追求しています。

生産量の多かった2015、当たり年2016、熟成が楽しみな2017ヴィンテージ

インタビューQ.2015、2016、2017年はどんなヴィンテージでしたか?

2015年はとても興味深い年でした。夏が非常に暑い年でしたが、2~3週おきに雨が降ってくれてバランスのとれた年となりました。夜に吹いた強い風のおかげもあり夜には気温が下がり、良い寒暖差も産まれました。健康的なブドウが育ち生産量も多かった年となりました。

2016年はここ10年で一番と言って良いほどの当たり年でした。30度を超える時が無く、暑すぎずブドウは健康的に成熟していき、凝縮感を得た年でした。それでいて果実味と酸のバランスのとれた味わいがあります。

2017年は暑い年で、収穫時期は良かったのですが春先に霜が降った影響で、発芽の早いシャルドネはダメージを受けました。仕事量が例年の2倍かかり、手が込んだ年となりました。2017年はリリース後、熟成を経ていくと更に良くなっていくヴィンテージだと思います。

3つの上級キュヴェ「グリス」「ユローサ」「ピコル」

グリスリス ネリスの中で最も国際的に知られているワイン「グリス」
「グリス」のファーストヴィンテージは1989年です。長期熟成に耐えられるワインを目指して造りました。平均樹齢30年のピノグリージョ100%でサン ロレンツォ地区の畑「グリス」から手摘みで厳選したブドウのみを使っています。2~3年使用した500リットルの旧トノー樽で醗酵、熟成を行います。樽の味わいを付ける事がメインではなくブドウ本来の味わいを助ける為に樽を使います。年産約4万本ほどです。リリース当時は「ピノグリージョと樽は合わないのではないか」と周りから反対されましたね。当時はフリウリの多くの生産者が樽熟成をさせない飲みやすいワインをつくっていましたから。今思えば私達は新しい選択をして良かったと思っています。

「グリスは軽く20年耐える熟成能力を持ちます」
この「グリス」はリリースした当初から反響が良く、国際的にも高く評価を受けるようになりましたね。リス ネリスの中で最も国際的に知られているワインがグリスです。グリスは畑名ですが、その由来は「グリッリ」(コオロギ)になります。その昔この畑にはコオロギがとても沢山いて、コオロギが鳴きやまない事から付けられた名前です。グリスは軽く20年耐える熟成能力を持ちます。今ようやく味わいが開きつつあるのが2009、2010年あたりではないでしょうか。

ユローサイゾンツォのテロワールを反映したシャルドネ「ユローサ」
「ユローサ」は畑名ですが、元々フリウリの歴史的聖人の名前から付けられています。平均樹齢30年のシャルドネ100%でサン ロレンツォ地区の畑『ユローサ』より手摘みで厳選したブドウを使っています。2~3年使用した500リットルのトノー樽(新樽比率20~30%)で醗酵、熟成を行います。新樽は使っていますが樽の風味を与えすぎない事がリス ネリスにとって重要でイゾンツォのテロワールを反映したシャルドネの味わいを楽しんで頂きたいですね。豚肉やスパイスやハーブを使ったメイン料理、カレーなどのスパイスを使った料理にも合います。

「切りたてのリンゴやフルーツ農園を想起させる傑出した風味がある」
『アントニオガッローニ』90点(ユローサ:2015ヴィンテージ)
「輝かしい麦わら色だ。まずやってくるのはキャラメルやリンゴ、西洋梨、シロップ漬けのパイナップルのニュアンスで、空気と触れるとエネルギーとイキイキとしたアロマが感じられる。口当たりは生命力に満ちジューシーだ。切りたてのリンゴやフルーツ農園を想起させる傑出した風味がある。フィニッシュは長く、クリーンだ。クリーミーなレモンカスダートのニュアンスが寄り添う。実に素晴らしいワインだ。2018~2021年頃が飲み頃」

ピコル「ピコルとは頂点という意味」
ピコルとは頂点という意味で、小高い丘の頂上にある畑名です。平均樹齢30年のソーヴィニョン100%でサン ロレンツォ地区の畑『ピコル』『ユローサ』『グリス』より手摘みで収穫します。醗酵はステンレスタンクで、熟成はステンレスタンクと旧トノー樽を使っています。セージを思わせるフローラルな香りに、ほのかに桃を感じる果実味豊かな味わいがあります。程良い酸がフレッシュで、余韻も長く続きます

フルボディで層を成す果実味
『ジェームズサックリング』92点(ピコル:2015ヴィンテージ)
「ドライアップル、ライムに砕いた石やチョークの個性が寄り添う。フルボディで層を成す果実味がある」

クリーンでフレッシュ、そして長く続くフィニッシュ
『アントニオガッローニ』90点(ピコル:2015ヴィンテージ)
「明るい麦わらの色調だ。ハーブ、ハチミツにミネラルのニュアンスが溶け合っている。スグリや緑イチジクのアロマと風味が寄り添う。クリーンでフレッシュ、そして長く続くフィニッシュがあり、レモンやコショウのタッチがふんだんに感じられる。2018~2023年頃が飲み頃」

フルーティーな果実感と
心地よい綺麗な酸味
フリウリの実力派「リスネリス」のピノグリージョ
ピノ グリージョ 2016
ピノ グリージョ 2016


フリウリ全域で最も多く栽培されているブドウ品種です。リス ネリス社のスタンダードラインとなります。スタンダードラインの醗酵、熟成に関しては全てステンレスタンクを使っています。サン ロレンツォ地区の畑『ネリス』『グリス』『ユローサ』より手摘みで収穫した比較的樹齢の若いブドウから造られるピノグリージョです。
試飲コメント:ふくよかで豊かな香り、フローラルで少し塩味も感じられます。酸が豊かで綺麗なので、ボディがしっかりとしていても、飲みつかれずに食事とずっと楽しめるワインだと思います。このようにふくよかでみずみずしいピノグリージョを他のエリアで見つける事は難しいと思います。ピノグリージョは国際品種と呼ばれていますが、私達は「フリウリを代表する土着品種」という位の自負の下に造っています。

低い収穫量と完熟ブドウから産まれるみずみずしい果実感!高品質なシャルドネ
シャルドネ 2016
シャルドネ 2016


シャルドネは土地のキャラクターを良く映し出す品種だと思っています。テロワールを反映するという点では、根底にある個性はピノグリージョと似通うものがあります。ピノグリージョほど香りの強さはありませんが、フローラルさは感じられると思います。口いっぱいに広がるジューシーな果実味、スムーズな喉越し、滑らかさがあります。
試飲コメント:リス ネリスのモットーでもあるシンプルで自然なワイン造りを体現しています。シャルドネ100%の果実味に、マロラクティック発酵由来のクリーミーさが合わさりますが、フレッシュな飲み口は一貫していて、多くの人に受け入れられる飲みやすさと安定した味わいがあります。さらに4~6年の熟成のポテンシャルを感じさせます。アンティパスト、パスタ、野菜や魚料理と合わせて楽しむワインです。和食でお醤油を使った魚料理とも相性が良いですね。

ワイナリーの実力が表れた魅力的なブレンド!花や果実の香り豊かな辛口
「フィオーレ ディ カンポ」
フィオーレ ディ カンポ 2016
フィオーレ ディ カンポ 2016


このワインは「花の広場」とう意味があります。スタンダードラインとラベルデザインが異なっています。フリウラーノ種がメインで、ソーヴィニヨン、リースリングがブレンドされています。フリウラーノ種は昔から栽培していましたが、量的には他品種より少なくしばらく自家消費用として栽培していました。2000年代初頭にフリウラーノの畑を購入し、ある程度の生産量が造れるようになったので「フィオーレ ディ カンポ」をリリースする事にしました。
試飲コメント:リリース当初はフリウラーノ100%で造っていましたが、2007年から他の品種もブレンドして造るようにしました。非常にフローラルな香りに包まれます。少量ブレンドされているソーヴィニョン、リースリングですが、2007年以降ずっとこの3品種のブレンドで造っています。アロマティックでイキイキとした印象ですが、決してアロマが前面に出過ぎることはなく、非常にバランスが取れています。リス ネリスがリリースするワインで一番のベストセラーワインとなっています。

爽やかなハーブを思わせる
綺麗なアロマと果実感
フリウリの実力派「リスネリス」のソーヴィニョン
ソーヴィニヨン 2016
ソーヴィニヨン 2016


1800年代にオーストリア帝国の醸造家がウィーンの会合で「フリウリにソーヴィニヨンを植えろ」という記録が残っている程、フリウリはソーヴィニヨン種にとって理想的な栽培環境と言えます。スタンダードラインのワインの中で香り、味わいが一番豊かなワインです。フリウリではピノグリージョについで栽培されているブドウ品種です。
試飲コメント:フランスや他の国のソーヴィニョンとは違い、「フリウリのソーヴィニョン」としての個性を持っています。良い気候条件が揃う場所で産まれるソーヴィニョンだと思っています。ソーヴィニヨンの典型的な香りにイキイキとした酸味があります。強く丸みのある味わいのソーヴィニョンではなく、あくまでもピュアでエレガントさがあります。アンティパスト、パスタ、野菜や魚料理と合わせて楽しむワインです。和食でお醤油を使った魚料理とも相性が良いですね。

上品でエレガンスに満ちた絶妙な樽使い!フレッシュさとボリューム感が見事に融合したピノグリージョ「グリス」
グリス ピノ グリージョ 2016
グリス ピノ グリージョ 2016


ファーストヴィンテージは1989年です。長期熟成に耐えられるブドウを目指して造りました。平均樹齢30年のピノグリージョ100%でサン ロレンツォ地区の畑「グリス」から手摘みで厳選したブドウのみを使っています。2~3年使用した500リットルの旧トノー樽で醗酵、熟成を行います。
試飲コメント:この「グリス」はリリースした当初から反響が良く、国際的にも高く評価を受けるようになりましたね。リス ネリスの中で最も国際的に知られているワインがグリスです。樽の風味が付き過ぎず健全に完熟したピノグリージョの特徴を残したまま味わいの幅の広さとアロマの広がりがあり、豊かなフルーツの香りにフィナーレにメントールのニュアンスも感じられます。個性的かつエレガント、魚料理や白身肉によく合うワインです。

みずみずしく上品でエネルギッシュ!イゾンツォのテロワールを反映したシャルドネ「ユローサ」
ユローサ シャルドネ 2015
ユローサ シャルドネ 2015


平均樹齢30年のシャルドネ100%でサン ロレンツォ地区の畑『ユローサ』より手摘みで厳選したブドウを使っています。2~3年使用した500リットルのトノー樽(新樽比率20~30%)で醗酵、熟成を行います。新樽は使っていますが樽の風味を与えすぎない事がリス ネリスにとって重要でイゾンツォのテロワールを反映したシャルドネの味わいを楽しんで頂きたいですね。
試飲コメント:味は充実した果実感を持ち、シャルドネ種の豊かな味わいが感じられます。北イタリアらしいすっきりとした酸と綺麗に溶け合い、みずみずしく非常にエレガントな白ワインです。豚肉やスパイスやハーブを使ったメイン料理、カレーなどのスパイスを使った料理にも合います。

リスネリス社の上級ソーヴィニョン「ピコル」土壌とテロワールの完璧なコンビネーションから生まれた深い味わい
ピコル ソーヴィニヨン 2015
ピコル ソーヴィニヨン 2015


ピコルとは頂点という意味で、小高い丘の頂上にある畑名です。平均樹齢30年のソーヴィニョン100%でサン ロレンツォ地区の畑『ピコル』『ユローサ』『グリス』より手摘みで収穫します。醗酵はステンレスタンクで熟成はステンレスタンクと旧トノー樽を使っています。
試飲コメント:セージを思わせるフローラルな香りに、ほのかに桃を感じる果実味豊かな味わいがあります。程良い酸がフレッシュで、余韻も長く続きます。熟れた桃や杏、みずみずしいサルビアの香り、しっかりした骨格ながらも調和のとれたアロマと旨味がすばらしいワインです。アスパラガス、魚のカルパッチョ、生の手長エビなどとよく合う1本です。
インタビューを終えて
改めてリス ネリスの質の高さに驚かされたインタビューとなりました。果実のみずみずしさと清らかで心地よい飲み口のレベルは傑出していて、強すぎない滑らかな味わいが楽しめました。スタンダードラインであっても、品種個性がはっきり感じられる素晴らしいパフォーマンスがありました。

上級キュヴェ「グリス」「ユローサ」「ピコル」の3銘柄はとても上品な樽使い。果実の美味しさをしっかりと感じられ、「樽の味わいを付ける事がメインではなくブドウ本来の味わいを助ける為に樽を使います」とフェデリカさんが話すように、果実の素晴らしい深みがとても印象的でした。10年以上の長期熟成も可能な見逃せないワインです。

日本でレストランのプロフェショナルが選ぶフリウリとしても有名な生産者である事も納得出来ました。フェデリカさんの話を聞いていくうちに、フリウリがいかにブドウ栽培において理想的な環境を有しているかを再認識しました。理想的な環境と140年続く家族経営の情熱が産み出す高品質のリス ネリス。ぜひお試し頂きたいと思います。

リス ネリス社 フェデリカ ペコラーリ女史とトスカニースタッフ
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