グラッパの聖地「バッサーノ デル グラッパ」近郊で1世紀以上の歴史を誇るグラッパメーカー「ポーリ」突撃インタビュー

2022/10/28
突撃インタビュー
 
2022年10月5日 マルチェッロ プオッロ氏 Mr. Marcello Puoro

グラッパの聖地「バッサーノ デル グラッパ」近郊で1世紀以上の歴史を誇るグラッパメーカー!革新的かつ多彩なスタイルで個性豊かなラインナップを生み出す「ポーリ」突撃インタビュー

ヤコポ氏
1898年創業、グラッパの聖地バッサーノ デル グラッパ近郊で100年以上の歴史を持つ家族経営グラッパメーカー「ポーリ」。創業者のジョバッタ ポーリ氏によって設立された当初は、蒸留器を乗せた移動式ワゴンでカンティーナから搾りかすを集めてはグラッパを生産していました。1930年代になると、蒸留所を構え徐々に拡大。初代から現在の4代目に至るまで、ポーリは最新技術や革新的アイディアの導入により躍進を遂げてきました。今や、偉大なスーパートスカン「サッシカイア」の搾りかすを使ったグラッパを独占生産するなど、イタリアはもとより世界中にその名を轟かせています。今回は、ポーリの太平洋地域輸出マネージャーを務めるマルチェッロ プオッロ氏をお招きして、お話を聞きました。

グラッパの聖地「バッサーノ デル グラッパ」近郊で100年以上の歴史
現在のグラッパの基盤を築き上げたグラッパメーカー「ポーリ」


1898年、初代ジョバッタ ポーリ氏によって設立された家族経営グラッパメーカー「ポーリ」。ヴェネト州の心臓部でグラッパの聖地とも呼ばれる「バッサーノ デル グラッパ」近くの街スキアヴォンに拠点を置きます。彼らは、グラッパの国内総生産量の40%を占めるという同州で、1世紀以上に渡りグラッパを生産し続け、ポーリを愛するファンはイタリアにとどまらず世界中に広がっています。

今やヴェネト州を代表するグラッパメーカーとして地位を確立しています。そんなポーリの歴史について、太平洋地域輸出マネージャーのマルチェッロ プオッロ氏に話していただきました。

100年以上も革新を繰り返し、現在のグラッパの基盤を築き上げた「ポーリ」
「ポーリは、ヴェネト州のスキアヴォンに位置しています。グラッパが生まれた土地として知られる聖地バッサーノ デル グラッパの近くです。そのバッサーノ村の裏に見えるのがグラッパ山です。手前に見える木造の橋がポンテ ヴェッキオです。同じ名前でもフィレンツェのものとは違いますからね(笑)。


ポーリ家は、ヴェネト出身のファミリーです。一家の歴史は1400年頃まで遡り、600年以上の歴史を持っています。そして、グラッパメーカーのポーリは、1898年にジョバッタ ポーリによって誕生しました。

当時は、蒸留所を所有しておらず、蒸留器を積んだリヤカーで農家から農家へとまわってブドウの搾りかすを仕入れてはグラッパを生産していました。


1930年代になると、蒸留所と二つの蒸留器を構えるようになります。1985年、現当主のヤコポの時代になってもなお拡大を続け、現在のグラッパの基盤を築き上げました。ヤコポは、1986年にヴィナッチャ(搾りかす)の果軸を取り除くことを始めました。タンニン分が多くグラッパに影響を与えていた果軸を取ることで、マイルドな味わいを引き出しました。それは、多くの方たちにポーリのグラッパを知っていただける大きな転換点となりました。

その後も、サッシカイアのグラッパの生産や、世界初のグラッパミュージアムを建てたこと、新技術バーニョマリア(湯煎式蒸留)や真空蒸留の導入、ボルドーのトップシャトーとのコラボレーションなど、多くの重要な出来事を経て今に至ります」

3時間圏内の生産者から新鮮な搾りかすの調達を徹底
ヴェネト州特有の種類豊富な、厳選を重ねた高品質ヴィナッチャ

高品質グラッパ生産において、とりわけ重要なことがグラッパの原料であるブドウの搾りかすの鮮度です。「ポーリ」は、高い鮮度を保つために、3時間以内に調達できる生産者のみの搾りかすを使用することを徹底しています。また、彼らはバーニョマリア(湯煎式蒸留)を用いることで、高鮮度の搾りかすが本来持つアロマとフレッシュさを更に引き出しています。マルチェッロ氏に、搾りかすの特徴について話していただきました。

鮮度が保たれた高品質ヴィナッチャを厳選し、調達後すぐ生産!

(搾りかすを調達後すぐに徹夜で集中的に造るのですか、という問いに対して)

「そうです。調達後すぐに蒸留しています。鮮度の高いヴィナッチャを使用することは、高品質グラッパを造る上で何よりも大事です。調達するヴィナッチャは、3時間圏内の生産者のものに限っています。例外としてトスカーナのサッシカイアがありますが、それでも5~6時間で運んでいます。距離が重要ということもありますが、テリトリー内のヴェネト州のものにこだわっています。畑がたくさんあり、土着品種だけでなく国際品種も多くバラエティに富んだ品種が栽培されているヴェネトは恵まれています。

(搾りかすを冷凍してはダメなのか、という問いに対して)
ノー。できるとは思いますが、フレッシュさと香りが消えてしまいます。私たちは、フレッシュなヴィナッチャのみ使用しています。数ヶ月間サイロに置いてあるもので造るメーカーもありますが、味わいが全然違います」

 

若いグラッパから、伝統の継ぎ足し熟成グラッパ、ジン、ウイスキーまで!
見事に個性の違いが表現されたバラエティ豊富なラインナップ

ポーリのグラッパは非常にバラエティに富んでいます。若いグラッパ、熟成グラッパ、デリケートなアロマが引き出された短期熟成グラッパ、代々継ぎ足される特別な熟成グラッパなど、彼らが造るグラッパは見事に個性の違いが表現されています。その違いを生み出す蒸留方法やラインナップについてマルチェッロ氏にお聞きしました。

搾りかすが持つ本来のアロマとフレッシュさを最大限に引き出す(真空)湯煎式蒸留

「2001年に導入したバーニョマリアという、湯煎して蒸留する技術があります。通常よりも低温で蒸留できるバーニョマリアは、アロマとフレッシュさを引き出すことができます。その1年後、2002年に導入した真空湯煎式蒸留では、よりデリケートなアロマを引き出せるようになりました。これから飲んでいただきますが、特に真空湯煎式蒸留で造られる“クレオパトラ”の香りの違いを感じていただけると思います」

熟成させない若いクラシックグラッパ「サルパ ディ ポーリ」
「サルパとは、ヴェネトの方言でヴィナッチャ(ブドウの搾りかす)という意味です。イタリア国内にとどまらず国際的に知られて売れているグラッパです。国際品種を使用している理由は、世界的に知られている品種ですし、グラッパにしたら飲みやすさが顕著に表れたということがあります。ヴェネトにはブドウ畑がたくさんありますしね。

コーヒー(エスプレッソ)を飲んだ後に残った砂糖やコーヒーを洗うようにしてスタンダードグラッパを少量入れて飲むという“ラゼンティン”という習慣がヴェネトにはあるんですよ。この言葉もヴェネトの方言です」

4年間バリック熟成して造られるサルパ ディ ポーリの熟成版「サルパ オーロ」
「サルパ ディ ポーリの熟成版です。4年間フレンチオークのバリックで熟成しています。だいたい5~10%が新樽です。メルローとカベルネソーヴィニヨンを使っています。国際品種を使用している理由は、世界的に知られている品種ですし、味わい的に飲みやすく仕上がったことにあります。ヴェネトにはブドウ畑がたくさんありますしね」

真空湯煎式蒸留によりデリケートなアロマが引き出された短期樽熟成グラッパ「クレオパトラ」
「バーニョマリアという湯煎式蒸留器で造られていて、フローラルなニュアンスがより引き出されています。木樽のニュアンスが出ていたサルパ オーロとの香りの違いがよくわかりますよね。クレオパトラも木樽を使用していますが、その特徴が出すぎないように熟成期間を短くしています。

ヴェネトでは、伝統的かつ特殊なグラッパの楽しみ方があります。手のひらに少量グラッパを垂らして、こすって香りを楽しむんです。アルコール度数が40度もあるので、手を消毒することにも使えますよ(笑)」


ポーリが独占生産する偉大なスーパートスカン「サッシカイア」のグラッパ
「これはサッシカイアに使用した樽で熟成させたグラッパです。(ブドウも熟成に使う樽も)サッシカイアです。ブドウは2016年産ですが、樽はどうしてもズレが生じるので少し前のものになります。サッシカイアは2年間樽熟成させるので、2016年産に使われている樽は2013年のものだと思います。サッシカイアの搾りかすを購入するのはポーリだけです。私たちが造らなければ捨てられてしまいますしね」

先代が手掛けた最後の樽「ポーリバリック」が代々継ぎ足される特別な熟成グラッパ「ソレーラ ディ ファミリア」
「これは、ソレーラシステム(異なるヴィンテージを、時間の経過とともにブレンドさせる熟成システム)を用いて造るグラッパです。先代のトーニが手掛けた1樽も使われています。彼は“熟成によってどう変化していくか”、“様々なヴィンテージを混ぜたらどうなるか”というアイディアを持っていて、それらを表現したものです」

世界中からリクエストの絶えない、真空蒸留で造る極小生産ジン
「真空湯煎式で造っているジンです。数年前から造り始めました。マルコーニ46という名前は、蒸留所の住所マルコーニ46番地から来ています。このジンは本当にうまくいっていて、リクエストの多い商品です」


湯煎式蒸留、アマローネの樽で熟成して造られる特別なウイスキー

「ポーリはウイスキーも造っています。2013年に造られました。スキアヴォンの市民からバチカンの国務長官に選出された際に、ポーリの友人であるスキアヴォン市長から“素晴らしい人が地元から輩出されたから、国際的な飲み物を作ってお祝いしたらどうか”という話になり造り始めた特別なウイスキーです。アマローネの樽で熟成しています」
※ウイスキーは2023年入荷予定

伝統的アロマと現代技術の融合!名門ポーリを代表するクラシックグラッパ
グラッパ サルパ ディ ポーリ NV
グラッパ サルパ ディ ポーリ NV


ブドウの搾りかす(皮と種)を昔ながらの銅製の大釜からなる蒸留器を使って単式蒸留。サルパとは、ヴェネトの方言で「ブドウの搾りかす」という意味で。1983年に考案されたサルパは、伝統のアロマと現代の技術のメリットを完全に統合して体現しているという意味で、過去と未来をつないでいます。清らかで本物、サルパはクラシックと呼ぶにふさわしいグラッパです。アルコール度数40%。
試飲コメント:透明。華やかで力強い香り。白い花、奥のほうに感じる黒ブドウ由来の果実。アタックも同様に力強く、華やかな味わいが口中に広がります。深みのある風味が長く続く余韻があります。

4年間バリック熟成して造られる風味豊かでリッチな熟成グラッパ
グラッパ サルパ オーロ NV
グラッパ サルパ オーロ NV


メルローとカベルネソーヴィニヨンの搾りかす(皮と種)を昔ながらの銅製の大釜からなる蒸留器を使って単式蒸留。4年間、225リットルのフランス産オーク材のバリックで熟成しています。アルコール度数40%。
試飲コメント:やや淡い黄金色。力強く芳醇な香り。レモンなどの柑橘類、バニラなどの樽由来のスパイス。口に含むと、力強いアタックと同時にまろやかさも感じます。素焼きアーモンド、チョコの要素を持つ包み込まれるような風味。

真空蒸留システムにより本来持つアロマを抽出!
力強くも華やかでエレガンスが光るグラッパ
グラッパ クレオパトラ モスカート オーロ NV
グラッパ クレオパトラ モスカート オーロ NV


真空湯煎式蒸留器(クリゾペア)を使用して蒸留。樽の印象が出すぎないよう、デリケートなアロマの特徴を出すために、あえて1年間の短期樽熟成。モスカート種で造られています。真空蒸留システムにより沸点を下げての54度の蒸留が可能になり、蒸留過程で失われやすい搾りかすが持つアロマを最大限に抽出しました。アルコール度数40%。
試飲コメント:淡い黄金色。力強く複雑でフレッシュな香り。オレンジやレモンなどの柑橘系のドライフルーツ、南国系果実、レモンの皮、ジャスミン、花畑。味わいは香り同様で、茶葉のようなニュアンスも感じます。柔らかく、エレガントさが際立ちます。

偉大なスーパートスカン「サッシカイア」の搾りかすで造るグラッパ
グラッパ ディ サッシカイア 2016
グラッパ ディ サッシカイア 2016


4年間バリックで、その後サッシカイアの熟成に使用したバリックで6ヶ月間熟成。樽やバニラ、カカオ、コーヒー、リコリスのアロマ。フルボディーで、ストラクチャーがあり、広がりのある深い味わい。適温18~20度。チューリップ型グラスがお勧めです。アルコール度数40%。
試飲コメント:綺麗に輝く麦わら色。非常に複雑で力強さがありながらもクリーンなアロマを感じます。バニラ、チョコ、タバコ、ハーブ、茶葉のニュアンス。口当たりは柔らかく、奥行きのある味わいです。華やかさとスパイス感が溶け合い、美しさをも感じます。

先代が手掛けた最後の樽「ポーリバリック」を用いたソレーラシステムで造る熟成グラッパ
ソレーラ ディ ファミリア NV
ソレーラ ディ ファミリア NV


ヴェネト州の黒ブドウで造られるアロマティックグラッパ。ブドウの搾りかす(皮と種)を昔ながらの銅製の大釜からなる蒸留器で、非連続式蒸留。熟成はフレンチオークバリック(アリエ産)。先代の故トーニ ポーリ氏が手掛けた「ポーリバリック」最後の1樽をソレーラシステムに組み込んだ作品です。2001年から18ヶ月熟成させたグラッパを14年間毎年7樽ずつ確保(98樽)。2015年よりソレーラシステムによる熟成を開始して造られています。アルコール度数55%。
試飲コメント:黄金色。複雑で力強い香り。バニラ、チョコなどを感じる樽由来のリッチで甘やかな印象。味わいは、アプリコットなどのドライフルーツやフレッシュな果実の両方を感じます。飲み込むと、香りと味わいに感じた要素がじわじわと広がっていき、充実感のある余韻に浸ることができます。

世界で唯一「真空蒸留釜」を用いて造られた極少量生産のジン
マルコーニ 46 ジン NV
マルコーニ 46 ジン NV


ベースとなるアルコールをクリゾペアに入れ、香りの原料を投入してマセラシオン。その後、真空蒸留により植物のエッセンスを引き出し、アルコールに香り付けをします。ヘッドとテイルは廃棄し、中間部分の「ハート」と呼ばれる液体のみを使用。アルコール度数が46%になるまで加水。およそ1ヶ月間ステンレスタンクでアロマが完全に馴染むまで休ませてリリースします。4代目ヤコポ氏が3年間の試行錯誤を経てたどり着いた、クリゾペアという世界で唯一「真空蒸留釜」を用いて造られたジンです。
試飲コメント:無色透明。ジュニパーやハーブなどのフレッシュな香りが漂い、口当たりは非常にソフト。クリーンでありながらスパイスも感じる、華やかかつコクのある味わいです。

地元から選出されたバチカン国務長官に敬意を表して造られた特別なウイスキー
セグレタリオ ディ スタート ウイスキー NV
セグレタリオ ディ スタート ウイスキー NV


ヴェネトの中心部にある小さな街スキアヴォンからバチカン(教皇聖座)の国務長官が選出されました。そのことに敬意を表して造られたピュアモルトウイスキー。何度もスコットランドを訪れて研究し、最適の大麦を選び、湯煎蒸留釜を改良、試行を繰り返し、数多くのテイスティングを経て完成されました。職人により湯煎式蒸留釜で単式蒸留。オーク樽にて5年、更にアマローネに使用した樽で1年熟成。アルコール度数43%。
試飲コメント:琥珀色。チョコやフルーツの砂糖漬け、ミントなどのハーブ、スモーキーさのある複雑で力強い香り。味わいも同様に複雑で力強さがあり、ドライフルーツを感じるニュアンス。余韻は非常に長く、パワフルで豊かな風味が心地よく持続します。
インタビューを終えて
100年以上の歴史を持つグラッパメーカー「ポーリ」のグラッパを試飲して、その味わいの引き出しの多さに感動しました。クラシックグラッパ「サルパ ディ ポーリ」は、華やかながらも奥のほうに感じる黒ブドウ由来の果実のニュアンスが絶妙でしたし、真空湯煎式蒸留で造られる「クレオパトラ」は、「ここまでデリケートな香りが引き出せるのか!」と本当に驚きました。柑橘系、南国系の果実だけでなく、ジャスミンや茶葉のような風味もあり複雑かつエレガント。

偉大なスーパートスカン「サッシカイア」のグラッパと、代々継ぎ足しで造られる「ソレーラ ディ ファミリア」の味わいには、とてつもない奥行きがありました。華やかさ、スパイシーさ、乾燥果実、フレッシュな果実など、非常に多くの要素が口の中に充満し、それでいて一つひとつが美しくまとまり溶け合っていました。素晴らしかったです。

太平洋地域輸出マネージャーのマルチェッロさんによると、グラッパ ディ サッシカイアの生産本数はおそよ1万本とのこと。そこで考えるのは「一体何キロの搾りかすをサッシカイアから調達しているのだろう」ということです。100キロの搾りかす(蒸留器1台)で約3本のグラッパができることを考えると、1万本を生産するためには単純計算で333トンの搾りかすが必要になります。その想像もできない量に驚くばかりでした。

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