イタリアおいしいもの探しの旅─3月31日 チンタセネーゼ

■イタリアおいしいもの探しの旅─3月31日 チンタセネーゼ

1500年代にすでに、シエナの貴重な豚として珍重されていたというチンタセネーゼ。
フレスコ画があると人づてに聞き今回のイタリア出張で是非一度みたいと思っていました。

今回チンタセネーゼを放牧している牧場(養豚所?)を訪れる際にお願いして、アバッティアディサンサルバトーレ町の広場にあるサンティッシモ・サンサルバトーレ教会(1200年代に建築)を訪れました。

大きな教会木の扉を押すと正面に、ステンドグラスの窓。ひんやりと静まり返った教会の右奥の一画の壁面にチンタセネーゼのフレスコ画が描かれていました。当時の教会のフレスコ画には貴重な物を描いて後世に残すという考えもあってか、その後よく管理されて色鮮やかに、チンタセネーゼのチンタ(イタリア語でベルトの意味)を意味する体の模様が描かれているのがわかります。

古代ローマ人がよりおいしい肉質の豚を得るために、北の白豚(マレンマ種)と地中海沿岸に生息していた黒豚(スペインのイベリコなどもこの系統)を交配させこの豚が生まれました。
白豚種の太ってやわらなか味わいという性質と黒豚種の筋肉質でコクのある性質という両者の良い肉質の両方を得ようとしたもの。
古代ローマ人は、交配に成功するとチンタを持っていろいろな土地に散らばっていきました。
その結果、もっとも良く育ったのがシエナというわけで、チンタセネーゼが生まれたと言うわけです。

…そんな説明を農学博士のファビオピンチさんに受けていると、後ろで神父様の咳払いが・・

「教会内で豚の話ばかりしているんじゃない」

うやうやしいお叱りの言葉にお詫びして、私たちは教会を後にしました。(正直この時の神父様のお叱りの言葉後で思い出しては、由緒ある教会の中で、豚の品種の話ばかりしている私たちの姿のおかしさに、思わず、帰国してからも思い出しては、笑わずにはいられないのでした。
『神父様ごめんなさい(__)もう、しません』)


というわけで、この後、一路シエナの森の中に向かいました。

よく、飛行機から眺めるトスカーナの山々の美しさに魅入られながら、まさか、自分がその、山の中奥深くの森の中まで分け入っていくとは思いませんでした。車はその、美しい眺めの真っ只中に進んで行きます。

トスカーナはここのところ、天候異常で、つい先日雪がふったというその残雪が解けたばかり。指定自然公園の中にあるという牧場までの道は、舗装されておらず、ぬかるんだでこぼこ道を右に左に揺られながら養豚所というよりは、柵のある森?に着いた頃は車酔いしておりました。

「この森をいくつもの区画に分けて木の柵で囲い、成長期にあわせて、区画を移動させて育てています。普通豚の飼育は180kgの豚に育てるのに9ヶ月かかるといわれているのに対して、チンタセネーゼは130kgにするのに18ヶ月もかかり、効率が悪くコストのかかる仕事だ」
とこともなげにファビオさん

それにしても、豚一匹見つけることのできないこの森のどこにチンタセネーゼがいるのだろうかと不思議に思っていると、ふがっふっとどこからともなく、豚の声が聞こえてきました。

「こちらからだと豚たちがよく見えますよ」

とファビオさんについて、ぬかるんだ道を奥へ奥へと歩いていく道すがら、思わず、泥に足をとられて転びそうになり、冷や汗。
「ここで転んだら悲惨(^^;」と思い慎重に進みました。

奥の区画に入っていくとファビオさんがいきなり口笛を吹きました。

「くわっくわっ」

とファビオさんの声を聞きつけた10数頭の豚たちが、

こちらをめがけて集まってきました。
もの珍しそうに私たちをじっと見つめるチンタセネーゼたち。

「豚は好奇心がとても旺盛なんだ。今日も、珍しいお客さんが来たと思って集まってきたんだよ」

「放牧させないでチンタセネーゼを育てる業者もあるが、やっぱりチンタセネーゼは放牧させるのが一番。放牧の間の病気や怪我、交尾も管理しないんだ。ホルモン剤を打って交配させる人もいるがそれにも反対。できるだけ自然な形で育てる。それが豚にとってストレスがなくていいんだ。おいしい肉ができる。」 とファビオさんの話は止まりません。

「よく、普通の養豚業者が使う抗生物質もそうだ。主に、予防接種に使われているんだけれど、うちの場合は、予防接種はしない。
病気になってしまって人の助けがいるときだけ、体内にある成分でできた注射をすることにしている。これは、FAO
の規則に乗っ取った、養豚というわけです。」

   
   
FAOとは

国際連合食糧農業機関(FAO)は、世界の人々の栄養水準および生活水準を向上させるとともに、農業の生産性を高め、特に農村に居住する人々の生活事情を改善していくことを使命として、1945年に設立された機関。

FAOは国連最大の専門機関であり、農業、林業、水産業および農村開発のための指導機関です。またFAOは政府間組織であり、現在175の加盟国にEC(加盟機関)を加えて構成されています。

FAOは、設立以来、農業開発と栄養改善を促進し、「すべての人々が活動的かつ健康的な生活に必要な食料をいつでも入手できる」食料安全保障を追求することにより、貧困と飢餓の撲滅に取り組んでいます。

また、動物性食品の安全を守るという取り組み、絶滅品種の保存という取り組みもしており、今回そういう関係で、ファビオ
さんはFAOの方針にのっとった畜産を営んでいます。


次に、母豚と子豚が養豚されている区画に移り

「普通の白豚は、1回に約12~13頭の子豚を産みますが、チンタセネーゼの場合は6~7頭と少ない頭数しか産めません。
これは、古い品種の豚は子供が平均的に少ないためです」

「また、普通の白豚はホルモン注射などをされて、1年に2回子供を産みますが、うちのチンタセネーゼは自然妊娠なので、1年に1回しか子供を産みません。
また、普通の白豚は2年間で4回の子供を産むと大抵とさつされますが、うちの場合は、8年間メス豚を生かしますので、1年X8回子供を産んでいます。」

「普通の豚は大変な負荷を人間に強いられているんですね。
恐ろしい~~」と私

「普通の白豚は20日ほどしか母豚と一緒に過ごさないのに対して、私たちの養豚は60日間子豚と一緒にすごしています。
その後、母親と別にされた仔豚達は同じ年齢の集団で、つまりほぼ兄弟一緒にグループ単位で、だんだん少しずつ小さな区画に移動して育てられていきます。」

「想像してみてください。自然公園に指定されたこの1600ヘクタールの土地でのびのびとほとんど自然の姿で育つ豚と、狭いところに入れられてほとんど動けないようにして太らせ、薬漬けにして育つ豚。ストレスが全然違います。当然そういうことが、肉や脂の質に影響を与えていると考えられます。この自然な森に生えているギアンダの実を食べて、今700頭のチンタセネーゼが生活しています。
春先から次々と子供を産み始めるんですよ。多いと1000頭から1100党に達する季節もあります。」

「では、最後に移される一番小さな区画をお見せしましょう」

そういって、ファビオさんとともに車に乗って移動を始めました。 一番最後のもっとも小さな区画。

と聞いていましたが、そこは、大きな大きな区画。遠くに見えるチンタセネーゼを読んでもファビオさんの呼びかけは聞こえないほどで、豚は顔を上げてこっちを見てみただけ。私たちの方に来ることはありませんでした。  

その後、友人だというワイナリーを応接室を借りて
チンタセネーゼの製品を試食。

ラルドにほのかなピンク色がでるのがチンタセネーゼの特徴。

とろけるような、ラルドは、ハモンイベリコと似ていて、融点が低く、かみ締めるとバランスのよい、マイルドさと、肉自体のコクがバランスよく、大満足。

健康で自然に育った豚からつくられる生ハムやサラミ。
本当に絶品でした。

 
突撃インタビューのバックナンバーはこちら⇒



Both comments and pings are currently closed.