ラディコンやグラヴネルとともにオスラヴィア協会を設立!イタリア初のオレンジワインDOCGを目指す「リボッラ ディ オスラヴィア」に情熱を注ぐ「プリモシッチ」

2019/09/27
突撃インタビュー
 
2019年9月17日 プリモシッチ社 マルコ プリモシッチ氏

ラディコンやグラヴネルとともにオスラヴィア協会を設立!イタリア初のオレンジワイン「リボッラ ディ オスラヴィア」DOCGを目指す「プリモシッチ」

プリモシッチ社 マルコ プリモシッチ氏
プリモシッチは自然派ワインの聖地フリウリの北東部、スロヴェニアとの国境オスラヴィアで代々続く家族経営ワイナリーです。ラディコンやグラヴネル等とともにオスラヴィア協会を設立しリーダー的存在として土着品種リボッラを後世に伝える活動を行うとともに、確固とした信念でオレンジワインを造っています。フリウリの歴史と現在、そして未来について現当主マルコプリモシッチ氏に語って頂きました。

ラディコン、グラヴネルらも所属するオスラヴィア協会のリーダー的存在!イタリア初のオレンジワイン「リボッラ ディ オスラヴィア」DOCGを目指して申請中!

オスラヴィア協会
スロヴェニアの国境近くの小さな丘陵地「オスラヴィア」
私達のワイナリーはイタリア北東部、フリウリヴェネチアジュリア州の東部、オスラヴィアにあります。このエリアはスロヴェニアの国境近くの1300ヘクタール程の小さな丘陵地で泥灰土と砂岩の混ざる石灰質土壌で水はけが良くワイン造りに適した環境となっています。

グラヴネル、ダリオプリンチッチ、ラ カステッラーダ、ラディコンも所属するオスラヴィア生産者協会のリーダー的存在!
1964年、このエリアでワイン造りを行う生産者でオスラヴィア生産者協会は設立しました。メンバーはグラヴネル、ダリオプリンチッチ、ラ カステッラーダ、ラディコン、フェグル、イル カルピノ、そしてプリモシッチの7生産者が現在所属しています。生産者同士は1キロも離れていない場所にあり、昔から皆でオスラヴィアというエリアの素晴らしさを伝えて行こうと活動しています。実際に今、オスラヴィアが世界的にも注目を集めていて、テイスティングやインタビュー等で海外のワインジャーナリストも数多く訪れるようになりました。私の父は設立当初からオスラヴィア生産者協会のリーダー的存在で、自身のワイナリーと共に「オスラヴィア」の発信に努めてきました。

地図イタリア初のオレンジワイン「リボッラ ディ オスラヴィア」DOCGを目指して申請中!
生産者それぞれ、ワイン造りのポリシーは異なりますが、私達は特に土着品種である「リボッラジャッラ」に注力していて、醸し製法で造られた白、つまりオレンジワインの「リボッラ ディ オスラヴィア」としてDOCG昇格を目指して現在、ロビー活動を含め、申請を行っています。DOCG初のオレンジワインとなりますので、特別な存在となるでしょう。世界的にオレンジワインは新しい分類のワインと思われていますが、オスラヴィアでは私達の祖父の時代から行われてきた事です。次世代にオスラヴィアの伝統を引き継ぐ意味でも重要な活動だと思っています。

曽祖父、祖父の時代に原点回帰して生まれた農民ワインが「オレンジワイン」

オレンジワイン大
コッリオのオレンジワインは「農民の知恵から生まれたワイン」
私の曽祖父の時代、コッリオの人たちはリボッラ ジャッラを使ってワイン造りを行っていましたが、ブドウの皮がしっかりしているため、プレスするとジュースがあたりに飛び散ってしまって困っていました。そこで、ジュースが飛び散らないように赤ワインと同じように白ワインを造り、ブドウの皮をそのままマセラシオン(浸漬)してワインを造ってみようと誕生したのが、オレンジワインの起源です。

10年近くの醸造経験で更なる進化を遂げる現在
私達は(曾祖父の知恵から産まれた)オレンジワイン造りを、更に現代的に進化させてます。一番の違いは畑においてブドウの収量を減らした事ですね。量から質を移行した事によりワインそのものの品質が格段に向上しました。2004~2006年頃はかなり長期間マセラシオンを行っていましたが、不安定さもあったので、現在プリモシッチでは過度に長すぎるマセラシオンは行っていません。年によっては、SO2を少し添加しなければならないとも、考えています。

インタビューイタリア国内でも世界的にも「オレンジワイン」が市民権を得てきている
当時は奇妙なワインの出現でイタリア国内市場でさえも返品されるケースも多かったのですが、10年以上の経験により今では品質は安定し、少しずつですがイタリア国内でも世界的にも「オレンジワイン」という言葉が市民権を得てきていると思います。

つまり知って頂きたいのは、オレンジワインはコッリオの農夫の知恵から産まれたオスラヴィアの特徴的なワインである事なんです。

 

イタリア、ドイツ、スラブ。3つの文化が交錯するフリウリ。白ワインの聖地の理由がここにある

プリモシッチ
「三つの文化が混ざり合う場所」
続いてオスラヴィアの歴史についてお話しましょう。このエリアは「三つの文化が混ざり合う」特別な場所です。400年もの間オーストリア帝国の支配下時代の影響を受け、ドイツ文化が入り、白ワインばかりが飲まれていました。

なぜフリウリ一帯のエリアが「白ワインの聖地」と呼ばれるか、テロワールの素晴らしさもありますが、これまでの歴史、文化の影響を大きく受けている事が挙げられます。そして隣国スロヴェニア(スラブ文化)の影響、勿論イタリア本国の影響をも受けています。

第一次世界大戦の際、このエリアはイタリアとオーストリアにより激しい攻防戦が繰り広げられ、イタリアに属した時期やその他の国に属する時期を繰り返し経験してきた歴史がありますから。

オスラヴィアのワイン複雑な歴史があるからこそ、「この豊かな土地を守りたい」
こうした複雑な歴史があるからこそ、「この豊かな土地を守りたい」 という意識が私達には宿っています。戦後、特に1960年代のイタリアと言えば、ワインを飲むと言ったら「赤ワインを飲む」事が一般的だったと思うのですが、フリウリで発展した3つの文化が交錯するという独特の歴史的文化の影響で白ワインの生産、消費が中心となっていました。近隣には同じような歴史を辿ってきたワイナリーが多く、オスラヴィアではサステーナブル(自然を尊重した持続可能な農業)的な考え方がごく一般的に広まっています。

コッリオ第1号1967年コッリオで初めて瓶詰めワインを造った「プリモシッチ」
そうした中、プリモシッチはコッリオで最も早く瓶詰めワインを造った生産者となりました。ワイナリーには1967年に瓶詰めした白ワインが今も残っています。当時、瓶詰めされたワインはトカイ フリウラーノ種から造られていてトカイと呼ばれていました。ワインのボトルには、コッリオの生産者協会の証明書シールが貼られていますがビン詰めロットの番号をよく見ると「1番」になっています。コッリオのワイン造りの原点とも言えるワインです。

各時代に誕生したワインを網羅するプリモシッチの商品ライン

1960~2000年代まで各時代に誕生したフリウリ独自のワインスタイル
プリモシッチにはフレッシュ&フルーティーなスタイル、樽熟成濃厚白、オレンジワインと様々なタイプのワインを造っています。これはフリウリのワイン造りの歴史、時代背景と深い関わりがあります。

生産者フリウリ独自のワイン文化を大切に守り抜く
1960~1980年代はブドウが本来持つフレッシュさを活かしたワイン造りで樽を使わずフレッシュに飲むワインがもてはやされました。現在私達が造るスタンダードラインのリボッラジャッラ、ソーヴィニョンがそれにあたります。
1990年代はバリック熟成したブルゴーニュワイン台頭を受け、樽熟成した長期熟成タイプのワインが造られるようになりました。1992年DOCコッリオでもシャルドネの使用が認められた事もあり、いわゆる「フランスワインに対抗するワイン」長期熟成のポテンシャルを備えたワイン造りが行われるようになりました。私達が造る「クリン」がそれにあたります。
続いて、2000年以降に曽祖父、祖父の時代に原点回帰して生まれた農民ワイン「オレンジワイン」ですが、「リボッラディオスラヴィア」「ピノグリージョ」がそれにあたります。このエリアの歴史と共に歩んできたプリモシッチだからこそ、各時代に誕生したフリウリ独自のワイン文化を大切に守り抜いているのです。

熟成も可能!オスラヴィアを代表する土着品種「リボッラジャッラ」
リボッラ ジャッラ 2016
リボッラ ジャッラ 2016


リボッラジャッラは軽さもありますが、酸とミネラルがしっかりとあり熟成出来る品種です。より繊細なニュアンスが出てきますね。
試飲コメント:しっとりとした熟した果実感にミネラルと酸が綺麗に重なります。果実の厚みがあり軽やかながらも豊かな風味が続きます。非常にバランスの取れた味わいがあり、イタリア料理は勿論、刺身や寿司にも好相性です。

熟れたリンゴの香り、フレッシュでミネラル感に富む2017年
リボッラ ジャッラ 2017
リボッラ ジャッラ 2017


2017ヴィンテージからラベルの材質をプラスチック製から紙製に変更しました。リサイクル出来る資材であることを重視したからです。
試飲コメント:溌剌としたみずみずしい果実感と清らかなミネラル、中盤から広がる果実の厚み、旨みが軽やかキレのあるフィニッシュに続きます。非常にバランスの取れた味わいがあり、イタリア料理は勿論、刺身や寿司にも好相性です。

食事と寄り添う上品なハーブ香!爽やかで、長い余韻「ソーヴィニョンブラン」
コッリオ ソーヴィニヨン ブラン 2017
コッリオ ソーヴィニヨン ブラン 2017


新世界で造られるソーヴィニョンブランとは違い香りが穏やかで、白桃の香りが特徴です。バランスの取れた味わいで食事との合わせやすさがあります。
試飲コメント:みずみずしい果実感と伸びやかな酸と清々しいミネラルが溶け合う、綺麗な飲み心地があり、ブドウ品種の個性がしっかりと感じられます。余韻にはハーブを思わせる華やかさとポンカ土壌由来のミネラルと塩味を伴うキレのあるフィニッシュがあり、非常にバランスの取れた味わいがあります。

純度の高い豊かなミネラルと充実した果実感の2018年
コッリオ ソーヴィニヨン ブラン 2018
コッリオ ソーヴィニヨン ブラン 2018

試飲コメント:非常に清涼感のある、トマトの葉、セージ、白桃やエルダーフラワーなどのような優しいアロマが膨
らみます。エレガンスのある酸味で、食事とのマッチングが可能です。北イタリアから生まれるワインにはロワールやニュージーランドのそれとはまた違う魅力があります。

これぞ白いブルネッロ!驚異の熟成能力と美しいフィネス「クリン」
クリン 2013
クリン 2013


全てのブドウは同じ畑、同じ日に収穫します。これはオーストリアの古い伝統に乗っ取ったゲミシュターサッツ(混植混醸)の理念の下に造られています。イタリアでクリンが「白いブルネッロ」と呼ばれる所以は長期熟成が出来、力強さよりもフィネスがあり、年を追うごとに美味しさが増していくからでしょうね。4品種のバランスがエレガントさを産み、信じられない程の長熟力が産まれます。
試飲コメント:熟れたた黄桃や西洋梨の豊かな果実香に樽由来の芳醇な風味に分厚いミネラルが重なる複雑かつ上質なアロマ。飲むと芯の確りとした厚みのある濃密なボディを感じつつも、美しいミネラルを伴う口当たりは非常に滑らか。時間をかけてゆっくりと楽しみたい1本。

4品種が奏でるオーケストラ!思わず癖になる芳醇な樽の風味と伸びやかな酸
クリン 2015
クリン 2015

試飲コメント:パイナップルやグレープフルーツの豊かな果実香トーストや焼き菓子の香ばしさに清々しいミネラルが重なる優美で複雑な印象があります。飲むと芯の確りとした厚みのある濃密なボディを感じつつも、口当たりは非常に滑らか。素材を活かした魚介料理で、甘エビやカニ、帆立等の料理と非常に相性が良いです。

ガンベロロッソ3年連続最高賞!オレンジワインの聖地「オスラヴィア」を代表する1本
リボッラ ディ オスラヴィア 2015
リボッラ ディ オスラヴィア 2015


リボッラ ディ オスラヴィアは自然酵母発酵による、春のようなフレッシュさと複雑味が表現されたワインです。熟成するにつれ、琥珀色に近づきますが、リボッラジャッラの特徴である酸がこのワインのボディを引き締めています。

※リボッラ ディ オスラヴィアは、2018年よりリボッラ ジャッラ リゼルヴァに名称変更しました。

試飲コメント:醸し醗酵による豊かな色調です。完熟した杏やリンゴを連想させる豊かなフルーツ香に、コッリオのワインらしいミネラルの清々しさが綺麗に重なります。還元的ニュアンスは開けて20~30分ほどで落ち着きます。濃密なボディがありながらも豊かなミネラルと酸があり、スムーズかつ軽快な飲み心地。旨みが舌に確りと感じられます。

ピノグリージョを浸漬して造られるアンバーレッドのオレンジワイン
ピノ グリージョ 2016
ピノ グリージョ 2016


私達のピノグリージョはコッリオで伝統的に行われてきたマセラシオンによる製法です。つまり、白ブドウのピノグリージョから造られた確固たる特徴を備えたオレンジワインであり、ロゼワインではありません。
試飲コメント:ピノグリージョの果皮由来の赤褐色に近い色調です。スミレやラズベリーの軽快なフルーツ香。凝縮した豊かな味わいとボディを支える切れ味のある酸、ポンカ土壌由来の豊かなミネラルが溶け合い、力強さもありながらスムーズで純度の高いブドウの旨みと複雑な風味が溶け合います。抜栓翌日の方がより滑らかさが増していきます。攻撃な要素が無く、非常に調和の取れた優れたバランスを誇るプリモシッチが造るオレンジワインです。
インタビューを終えて
グラヴネル、ラディコンを始め偉大な生産者がひしめき合うオスラヴィアの地で生産者協会のリーダー的存在であるマルコ プリモシッチ氏のお話を聞いて、オレンジワインは決して新しい観念から産まれたワインでは無く、農夫の知恵から産まれた伝統的ワインである事を再認識しました。また生産者のポリシーは違えども、お互いのやり方を認め合い、尊重しオスラヴィアを盛り上げていく生産者間の熱い思いを聞く事が出来ました。

お話を聞いている内にイタリアやドイツ、スラブの3つの文化が溶け合う複雑な歴史背景を持つフリウリで、自分達の土地や伝統を守る醸造に回帰したり、自然を尊重した農業に取り組む生産者が多い事も、合点がいきました。

コッリオで初めて瓶詰をし、フリウリ独自のワイン文化をそのままに表現する「プリモシッチ」の想いに溢れたラインナップはどれも豊かな個性が詰まっています。イタリア初のオレンジワイン「リボッラ ディ オスラヴィア」DOCG申請中との事ですが、その知らせが届くのが非常に楽しみとなりました。

プリモシッチ社 マルコ プリモシッチ氏とトスカニースタッフ
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