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2018年5月16日 ヴィナイオータ 太田 久人氏
自然派ワインの先駆者「ヴィナイオータ」太田久人氏に聞く!
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ラ ビアンカーラ、マッサヴェッキア、フランクコーネッリッセン、ヴォドピーヴェッツ、カーゼコリーニらを始め綺羅星の自然派ワイン生産者を輸入するインポーター「ヴィナイオータ」さん。「自然派ワイン」というフレーズが無いに等しかった20年前から、情熱をもった造り手達を訪ね、ブドウ本来の豊かな味わいが詰まったナチュラルなワインを日本に紹介する先駆者的存在です。今回ヴィナイオータの太田 久人氏に歴史的農法を守り抜くトスカーナの自然派「パーチナ」を試飲しながら、太田氏とパーチナの出逢い、ワイナリーの歴史、生態系を尊重したパーチナのワイン造り、パーチナのこだわりが詰まった素晴らしいワインのエピソードについてお話を聞きました。
Part1ではパーチナの歴史、ワイン造り、当主ジョヴァンナと夫ステファノ、その家族についてお話を聞きました。 |
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何でもないイタリアの野菜やトマトに「底力」みたいなものを感じますね。
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![]() 4月に3週間程、イタリアに行っていました。30以上の生産者(40まではいかないですが、、)と逢ってきました。出来る限り午前中にワイナリー1軒、午後に1軒と廻る形にして。3週間車を借りっぱなしで計2800キロ移動しました。今回は1人で移動だったので少し気楽な面もありましたが(笑)。基本的にワイナリーしか廻らないので、基本的にはワイナリーで食事をするか、ワインを飲むかになってしまいますね(笑)。4月はいきなり暑くなったみたいで殆どシャツ一枚で過ごしていましたね。ただ今は凄く雨が多いみたいで・・・ ワイナリーで食事をとる事が多いのですが、そうすると逆に日本で食事をする時の「気づき」も多くて。日本のイタリア料理店で出される料理は、レストラン仕様に味が強く作られている事に気づくんです。 ラディコンの家で食べた「ミートソース」に気づかされる だけどフリウリの「ラディコン」の家で玉ねぎ炒めるところからソースが完成するまで、ものの20分位しか、かかってないんですね。「えっ、これでいいの?」って(ラディコンに)聞いたら、「あなたね、煮詰めたらお肉(挽き肉)は小さくなるの。水分が飛ぶから(ソースの量に対して)当然味は濃くなるけど、同じ量を食べようと思うなら、摂取量が増えてしまって(食べる事に)負荷がかかってしまうの。だから出来るだけお肉から水分が飛ばない状態にしているの」と。
比較的手間かけずに健全なブドウが日本に比べ成りやすいイタリアの気候 |
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パーチナとの出会いは「鋭い感覚を持ったアメリカ人女性」がきっかけ |
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![]() パーチナとの出逢いなんですが、イタリアワインに造詣の深いとあるアメリカ人女性の存在があったからです。ヴィナイオータを始めた位の頃ですから、およそ19年位前でしょうか。1999ヴィンテージが初めて取り扱ったヴィンテージです。 今私達が取扱っている「カーゼ コリーニ」にもその女性からの紹介でした。最初に「カーゼコリーニ」を紹介された時も、「ピエモンテのアスティの地で酸化防止剤も使わずにワインを造っている人がいる。でも無名なんですよ」と言われた時、最初は全然信じられなかったんですよ。それだけ凄い事をやっているのに無名であるはずがないと。ただその彼女は味覚というか、ものすごく鋭い感覚を持っていて、そんな彼女から紹介を受けたトスカーナのワインが「パーチナ」と「レ ボンチエ」でした。 実はキャンティ クラシコにも登録する事も出来た「パーチナ」 Q.ワイナリーの歴史について聞かせてください。 「パーチナ」という農園は現当主夫人のジョヴァンナが実質上のオーナーで、ジョヴァンナのお父さんが買った農園です。彼女のお父さんは環境論者で、大量消費型の農業ではなく、畑で自己完結し、極端に何かを持ち込まずに様々な要素が有機的に関わるような農業を推奨していた有名な環境保護団体(Legambiente)という環境保護団体の創始者の1人でもあったんです。かつては普通に行われてきた農業形態の重要性を説き、自分自身の研究の実験場として「パーチナ」農園を買ったんです。 歴史ある修道院から成るカンティーナ |
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古来エトルリア語が影響している「パーチナ」 |
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一番最初にアクセントを置く「パーチナ」はイタリア語的にも珍しい
修道院の人達が12世紀からワインを造っていたかもしれませんが、そこから1000年、ひょっとすると、もう少し前からブドウ栽培とワイン醸造がなされていたのではないかと言われています。彼らのワイナリーは修道院の名残が随所にあって、地下を降りていくと「ウナギの寝床」みたいな小さなほら穴があって、そこで樽熟成をやっています。床も土と石灰を叩いてつくったようないわゆる「たたき」(三和土)で造られています。修道院時代を思わせる昔ながらのもので、数百年前から使われているセラーで今も熟成していますね。 ![]() 今から40~50年くらい前に、パーチナがその建物とその周りの40~50ヘクタール土地を購入しました。その中の10ヘクタールをブドウ畑として利用しています。その他の数ヘクタールの土地は緑肥用や、麦を植えたり、マメ科の植物を植えたりと輪作を行っています。残りの数十ヘクタールは森に囲まれている状況となっています。「一つの農園の中自体で、ひとつのモノカルチャーが強くては何らかの不具合が起きやすい」と自然科学者であるジョヴァンナの父の提唱していた事です。もちろんワイン造りをメインに進めていたとは思うんですが、ブドウ畑だけではなくて、色々なものを植える。バランス良く農業を進めていく事を良しとして、やってきたワイナリーと言えます。 「地力」を回復させる為、ブドウ畑を5~10年休ませる 「贅沢な土地を使ってダイナミックに輪作を行っている」 「ここまで大胆な畑の入れ替えをする造り手は今まで見たことが無い」 「すごく柔らかい考え方の持ち主だなと思った」 |
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夫ステーファノの参加により、クオリティの面で更なる進化を遂げていく |
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![]() ジョヴァンナのお父さんは亡くなってしまいましたが、ジョヴァンナの夫、ステーファノはミラノ出身で醸造学を学んだ後、キャンティの他のワイナリーで働いていたんですね。「レ ボンチエ」を通じてステファノとジョヴァンナが知り合い、結婚する事になります。結婚した当初、ステーファノは他のキャンティのワイナリーで働いていたのですが、とあるタイミングで「パーチナ」のワイン造りに参加するようになりました。 ステーファノの参加により、クオリティの面で更なる進化を遂げていったように思います。変な言い方になってしまうのですが、ステーファノは「お婿さん」じゃないですか。自分自身のワイナリーではない事もあって、最初はきっとプレッシャーもあったと思います。「おっかなびっくり」という言い方が正しいかどうかは分かりませんが、ステーファノは確実な進歩を進めてきたと思います。 いい意味でリスクを冒せるようにもなってきた Q.短期的な効率ではなくて、もっと長期的な視点のモノ造りですね。 本来ワイン造り、ブドウ栽培はそうでなければならないと思うんですね。ブドウ栽培は一代で出来る話ではないのですから。例えば今年ブドウ畑を造ったとしたならば、本当にテンションの高いブドウ畑となる時にはもう引退するかしないかの頃で、きっと次世代に引きつぐ頃になると思うんですね。当然ながら次の世代がきっと素敵なワインを造るものだと。 |
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「ジョヴァンナとステファノは親としても物凄く素敵だなぁと思うんです」 |
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![]() ジョヴァンナとステファノは親としても物凄く素敵だなぁと思うんです。自分達のファミリービジネスをある程度のサイズ感で持っていて、自分たちの子供たちがビジネスに参画してくれたのならばとても嬉しいと思っているはず。だけど、決してそれを強要する事は無くて。「あなたたちは自分たちのしたい事をすれば良いし、学びたいと思う事を学んでくれたらよいと」。 そうは言いつつも、ジョヴァンナ達はほぼ勝算みたいなものも持っていて(笑)。つまり、一度外に行って、外から自分たちの世界を眺めた時に、「自分たちの暮らしてきた世界はまんざらでもないなと。とても素敵な所で意義深い仕事をお父さん、お母さんはしているんだな」と気づくと思っていたんじゃないかと。 実際に、ヴィナイオッティマーナで来日した長女のマリアも元々はオランダの大学で国際法を学んでいたのですが、ワイナリーを継ぐことになります。弟は現在大学生で将来的にワイナリーに参画する事になると思います。
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■インタビューを終えて | ||
自然を尊重し、時に5~10年畑を休ませ地力を高める「パーチナ」。お話を聞いて、とても理にかなった栽培法だと思いましたが、しっかりとやり抜く為には「よほどの強い信念」が無いと出来ない難行だとも感じました。
ステフーァノはとある酒屋の友達からこう言われた事があるそうです。 飲み手の気持ちに十分すぎる程寄り添ってくれるステーファノの想い。世界中でパーチナのファンが増えているのも頷けるエピソードでした。続いてPart2では太田氏とワインを試飲しながら、パーチナのワインについてたっぷりと語って頂きました。是非ご覧ください。 |
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パーチナのワインはこちら⇒ | ||
自然派ワインの先駆者「ヴィナイオータ」太田久人氏に聞く自然派トスカーナ「パーチナ」Part2はこちら⇒ | ||
突撃インタビューバックナンバーはこちら⇒ | ||
自然派ワインの先駆者「ヴィナイオータ」太田久人氏に聞く自然派トスカーナ「パーチナ」Part1
2018/09/06