1962年にキャンティクラシコで初めて単一畑「イルポッジョ」でワインをリリース。長期熟成のポテンシャルにも着目し、創業当時からリゼルヴァクラスを主力商品とする高級キャンティクラシコの代表選手「カステッロ ディ モンサント」

2019/10/16
  突撃インタビュー
 
2019年9月26日 カステッロ ディ モンサント社輸出部長ガブリエレ コロンボ氏

1962年にキャンティクラシコで初めて単一畑「イルポッジョ」でワインをリリース。長期熟成のポテンシャルにも着目し、創業当時からリゼルヴァクラスを主力商品とする高級キャンティクラシコの代表選手「カステッロ ディ モンサント」

輸出部長ガブリエレ コロンボ氏
1962年にキャンティクラシコで初めての単一畑(クリュ)キャンティクラシコをリリースしたカステッロ ディ モンサント。質より量が当たり前の時代に、いち早く長期熟成のポテンシャルに着目して創業当時からリゼルヴァクラスを主力商品とし、生産量の半数をストックしてきたという先見の明にあふれた創業者ファブリッチオ ビアンキ氏が50年以上に貫いたワイナリー哲学について輸出部長ガブリエレ コロンボ氏にお話しを聞きました。

キャンティクラシコはもちろん、トスカーナにおいても最初の単一畑(クリュ)のワインを商品化した生産者

カステッロディモンサント全体

カステッロ ディ モンサントはキャンティ クラシコエリアの最西端バルベリーノ ヴァルデルサに構えるワイナリーです。オーナーのファブリッチオ ビアンキ氏が両親から譲り受けた農園で1962年に創業しました。父アルドはサンジミニャーノ出身ながら北イタリアで事業家として成功、母方の祖母はピエモンテのトルトーナでワイン造りをしていたという両親の影響を受け、ビアンキ氏にはワイン造りとワイナリー経営に対する並々ならぬ情熱をもっていました。

そして初収穫となった1962年、ビアンキ氏は農園にあった5ヘクタールの単一畑から収穫したブドウで、畑名「イル ポッジョ」をワイン名に付けてリリース。まさにこれがキャンティクラシコはもちろん、トスカーナにおいても最初の単一畑「クリュ」を付けたワインとなりました。1962年という時代背景を考えるとこれは非常に革新的な出来事です。当時は、「ワインは食品でありエネルギー源」という考えからようやく脱皮し始めた時期。質よりも量が重視され、ましてどの土地で造ったものかなど意識する人はほとんどいません。キャンティクラシコのエリアでもそれは同じで、ワイナリーは自社畑や買いブドウを混ぜてひとつのワインを造っていた時代です。

今から50年以上も前のそんな時代の中、限られたひとつの畑のブドウだけで、しかも農民たちが呼び名として使っていた畑の名前をワイン名にすることなど、誰も考えていなかったことをファブリッチオ氏は初めてやってのけたのです。

カステッロ ディ モンサントの象徴!単一畑「イル ポッジョ」

イルポッジョの畑

カステッロディモンサントは創業以来、単一畑にこだわり続けてきました。その頂点であり、象徴ともいえるのが「イルポッジョ」です。イルポッジョは、周囲を360度見渡せる丘の頂上にあります。標高は320メートル。モンサントに訪れた誰もが「イル ポッジョ」の特徴ある畑に驚くほど、他には例を見ないような畑です。

ガレストロ土壌土壌はガレストロ(石を含んだ石灰質)とシルト土壌(砂と粘土の間ぐらいの粒子の大きさ)で、それが何層にも重なった理想的な土壌で、ブドウの深くまで根をおろします。このことにより、質の良い酸とタンニンが十分に含まれる、熟成可能なワインが生まれます。また、深く根を下ろすので、この地域にありがちな雨が降らない乾季でも耐えられます。ガレストロ土壌は、モンサントのあるバルベリーノ ヴァル デルサなど、キャンティクラシコの西側のコムーネに多く見られます。

「イル ポッジョ」は他のモンサントの自社畑の母親でもあります。「イル ポッジョ」のブドウからできるワインがとても優れているので、新しく自社畑に植えるブドウの樹は「イル ポッジョ」から採取した樹を、台木に接ぎ木して増やします。(マッサルセレクション)

現在、キャンティ クラシコ協会ではサブゾーン(コムーネ)の設定をしようという動きがあります。大手メーカーは複数のコムーネのブドウをブレンドしているものが、ほとんどですが、モンサントはバルベリーノ ヴァル デルサの中という限定されたエリアだけで造っているので、サブゾーン認定はモンサントにとって歓迎できる話です。

 

長期熟成のポテンシャルにいち早く着目。リゼルヴァを主力に

ファブリッチオ ビアンキ氏はモンサントの土地から生まれるワインが長期熟成に向いていることを見抜いていました。そのため、創業以来、1989年までキャンティ クラシコは単一畑の「イル ポッジョ」と「リゼルヴァ」だけを造っていました。ノーマルのキャンティクラシコ(キャンティクラシコのカテゴリ上は「アンナータ」と呼びます)を造り始めたのは1990年からです。一般的なワイナリーだとノーマルの方が圧倒的に多いのですが、モンサントでは現在もリゼルヴァの占める割合は約80%と圧倒的にリゼルヴァを多く造っています。

モンサントの畑は長期熟成のポテンシャルが高いブドウが造られることを最初から確信していたことで、ファブリッチオ氏は生産量の半分をストックとして熟成させてきました。これもその時代を考えると信じられないような話です。この熟成ワインのストックは今では14万本になっています。

リゼルヴァのラベルモンサントの主力ワインである「リゼルヴァ」の黄色地に昔のトスカーナのお城などの風景を描いてあるラベルは、初リリースの1962年以来変わっていません。このラベルはモンサントのワインのイメージとして、広く世界中に知れ渡っており、このラベルは、ワイナリーにあるお城の地下セラー架けられて絵画を元に作られました。

1962年の創業当時から先見の明があったファブリッチオビアンキ氏

ビアンキ親子ファブリッチオ ビアンキ氏は、サンジミニャーノ出身で北イタリアで事業家として成功した父アルドと、ピエモンテのトルトーナでワイン造りをしていた一族出身の母という家族です。父アルドはカステッロ ディ モンサントの土地を見て雷に打たれたように感動し、すぐさま購入したのですが、それを息子のファブリッチオの結婚を機に譲り、ワイナリーを設立したのがカステッロ ディ モンサントの始まりです。ファブリッチオ氏が25歳の時です。

ファブリッチオ氏にはワイン造りの経験はありませんでしたが、父同様、モンサントの土地にすっかりのめり込み、ワイン造りに情熱を注ぎます。そして最初の収穫年から単一畑のクリュ名を付けたワインとしてリリースさせたのです。イルポッジョの畑のポテンシャルをいち早く見抜いていたのはもちろんですが、単一畑というこだわりをもったのは、恐らくピエモンテでワイン造りを行っていた母方の祖母の影響があったのだと思います。

キャンティクラシコとして初めて単一畑名を付けたワインを造って以降、ファブリッチオ氏は次々とその当時としてはだれも考えなかったことを実行していきます。当時、キャンティクラシコは白ブドウを使用しなければならないという法律がありましたが、ファブリッチオ氏はトスカーナの伝統的な黒ブドウ品種であるサンジョヴェーゼとカナイオーロ、そしてコロリーノの3品種がモンサントのスタイルを造ると確信。1968年には植えていたマルヴァジアとトレッビアーノを抜き、その代わりにカナイオーロとコロリーノを植樹しました。厳密には禁止されていましたが、白ブドウを使わずにキャンティクラシコでワインを造り始めました。

さらに、当時のキャンティクラシコの規定ではサンジョヴェーゼ100%というワインは存在することができなかったのですが、1974年には単一畑「スカンニ」からキャンティクラシコエリアで初めてサンジョヴェーゼ100%の赤ワインをリリースしました。

ルイジ ヴェロネッリからの一言で誕生!キャンティクラシコエリアとしては初めての国際品種カベルネソーヴィニョン100%のワイン「ネモ」

ルイジヴェロネッリファブリッチオ氏はずっと土着品種、特にサンジョヴェーゼに強いこだわりを持っています。1990年代に流行となった国際品種でのワイン造りにも左右されずに、サンジョヴェーゼをはじめとする土着品種を大切にしています。

しかし、友人でもある著名なジャーナリスト、ルイジ ヴェロネッリからあるとき、「お前ほどの人間がなぜカベルネを造らないのか?」と言われたのがきっかけになって、1976年にカベルネソーヴィニョンにとって理想的な西向きの単一畑「イル ムリーノ」でカベルネ ソーヴィニョンの栽培を始めました。そして1984年に、キャンティクラシコエリアとしては初めてとなるカベルネソーヴィニョン100%のワイン「ネモ」をリリースしました。

オルネッライアで経験を積んだエノロゴを招聘。長期熟成ワインのストックをさらに広げるために地下セラーも増設するなど将来を見越した投資

2001年に、オルネッライアのエノロゴを務めていたアンドレア ジョヴァニーニを招聘しました。彼はコンサルタントとしてではなく、モンサントの社員として常駐しています。毎日、畑の状態や熟成の過程を確認することができる素晴らしいエノロゴがいることはワイナリーにとって非常に大切です。常にワインの状態を把握できるということをファブリッチオ氏が重視していることの表れです。アンドレアは20年近くファブリッチオ氏とともに仕事をし、毎日のように樽の状態を確認しては、これはリゼルヴァにするか、それともノーマルにするかなど現在82歳のファブリッチオ氏と討論しています。

モンサント地下セラー創業時から半分の量をストックし続けているワインの数も増え続けています。今後さらに増えていくストックの量を見据え、1986年に新しい地下セラーの建設に着手して6年かけて完成しました。1740年に建設されたセラーと繋げて、全長は350メートルにもなります。この新しい地下のセラーは70代の3人の技師がエトルリアの技術を応用して6年かけて掘りました。現在この地下セラーには14万本が保管されています。イタリア中探しても、これほど立派なセラーは他にありません。

かわいらしいフレッシュなアロマが魅力の親しみやすい末っ子キャンティ クラシコ
キャンティ クラシコ2016
キャンティ クラシコは若木のブドウを中心に造られます。フランス産の3800リットルの大樽で熟成させます。樽の香りに邪魔されないサンジョヴェーゼの香りを意識し、新樽は使いません。

試飲コメント:小さなレッドカラント、ザクロ、フランボワーズのかわいらしいフレッシュなアロマ。
タンニンはキメが細かく全体的に柔らかい印象で、飲み疲れないキャンティ クラシコです。

キャンティ クラシコ2016
こだわりの熟成ポテンシャルを持つ、モンサントのアイコンワイン
キャンティ クラシコ リゼルヴァ2015
2015年と2016年はキャンティにとって非常に恵まれた年でした。エルサ渓谷に面した畑は常に風が吹き、昼夜の温度差が大きく、酸やタンニンの充実したブドウが収穫されました。1本のブドウ樹から収穫されるブドウは1.0~1.8kgです。
実は、モンサントのキャンティ クラシコ リゼルヴァは「グランセレツィオーネ」にする条件を満たしています。

試飲コメント:コーヒーやチョコレートの焙煎したようなトップノート。少し時間を置くと、すみれ、カシスの豊かで力強い花や赤い果実の香りが湧き出てくる。のびやかな酸、きめが細かく程よいタンニンが絶妙な調和を生み出しています。

キャンティ クラシコ リゼルヴァ2015
史上初のクリュ キャンティ クラシコ!単一畑の「イル ポッジョ」
キャンティ クラシコ リゼルヴァ イル ポッジョ2013
360度周りが見渡せる特徴的な畑で、畑の面積は5.5ヘクタールです。
2013年は教育的な年です。昼夜の寒暖差が、熟成向きの強いタンニンを生みました。2年間トノーで熟成させました。サンジョヴェーゼの魅力を味わってほしい一本です。
2013年グランセレツィオーネの規定が出来ました。「イル ポッジョ」はもちろんその規定をクリアしています。最初、ファブリッチオ氏は、「グランセレツィオーネ」の規定の中に、単一畑という項目が無いことに反抗して、「グランセレツィオーネ」にすることを拒んでいました。
「イル ポッジョ」は2014年から「グランセレツィオーネ」としてリリースされます。

試飲コメント:落ち着いた印象のトリュフ、アスファルト、なめし皮の香り。男性的で鍛え抜かれた酒質は何年もの熟成に耐えられることを物語っています。今飲んでも楽しめますが、熟成に耐えられるポテンシャルを持ったワインです。

キャンティ クラシコ リゼルヴァ イル ポッジョ2013
キャンティ クラシコ エリアで初めてのカベルネ ソーヴィニョンの単一ワイン
ネモ2012
著名なジャーナリスト、ルイジ ヴェロネッリから「お前ほどの人間がなぜカベルネを造らないのか?」と言われたのがきっかけになって、造り始めたワインです。
1976年理想的な西向きの単一畑「イル ムリーノ」でカベルネ ソーヴィニョンの栽培を始めました。そして、1984年キャンティ クラシコ エリアで初めて、カベルネ ソーヴィニョンの単一ワインを発表しました。
ワイン名「NEMO」はNemo Propheta in Partia(=預言者故郷に容れられず)、という意味のラテン語から由来しています。「地元では誰も理解してくれる人はいない」、「誰も自分の愛国心は奪えない」という、意味を込めています。

試飲コメント:ボルゲリとは一味違った、キャンティ クラシコならではグリーンペッパーなどヴェジタリーなニュアンスと鉄や血などのミネラルのニュアンスが混じり、複雑なアロマを形成しています。完熟したブドウならではボリュームを感じます。

ネモ2012
インタビューを終えて

今から50年以上も前に単一畑でクリュ名を付けてワインを造ることを決断したファブリッチオ ビアンキ氏。設立当初はワイン造りに関しては全くの素人ながらも、物事の本質を追求する天性の才能と、先見の明に満ちあふれた素晴らしい人物だと言うことが今回のお話しを聞いて改めて理解できました。82歳になった今もなお、あくなき探究心でワイン造りに向き合っている姿勢に本当に刺激を受けました。

長期熟成のポテンシャルを確信して最初からリゼルヴァを主力とすること、そして生産本数の半数をストックしていくという、なかなかできないことを継続してやり続ける力にも、ファブリッチオ氏の凄さを感じます。

お話しを聞きながらモンサントのワインを飲ませて頂きましたが、キャンティクラシコの素直でエレガントな美味しさ、リゼルヴァの力強くもきめ細やかな魅力、そして複雑味あふれる男性的で鍛え抜かれた骨格のイルポッジョ。3つそれぞれのキャラクターがはっきりと感じられ、造り手の哲学が伝わってきました。50年以上ぶれないモンサントの凄さをぜひ実感して頂ければと思います。

集合
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