『ガンベロロッソ』最優秀ワイナリー カステッロ コッレ マッサーリ

2017/03/15
突撃インタビュー
 
2017年3月13日 カステッロ コッレ マッサーリ社 クラウディオ ティーパ氏

『ガンベロロッソ』最優秀ワイナリー カステッロ コッレ マッサーリ

カステッロ コッレ マッサーリ社 クラウディオ ティーパ氏と
2014年に『ガンベロ ロッソ』最優秀ワイナリーに選ばれたカステッロ コッレ マッサーリ社はトスカーナ南部の新興エリアであるモンテクッコに位置します。モンタルチーノ南西部に位置する恵まれたテロワールを有し、2011年にはモンテックッコ サンジョヴェーゼがDOCGに認定されるなど、伝統的なトスカーナにおいて現在目覚ましい躍進を遂げているエリアです。そのコッレマッサーリ社のオーナーで、3大ボルゲリの一つ「グラッタマッコ」、幻のブルネッロ「ポッジョディソット」を所有、モンテックッコ協会の会長職も務める等トスカーナきっての実力者クラウディオ ティーパさんに所有する素晴らしいワイナリーについて色々とお話を聞きました。

スイスで成功を収めたティーパ氏とベルタレッリ家

ティーバ氏とベルタレッリ家スイスで成功を収めたベルタレッリ家
元々はチュニジアの生まれで、祖父母がオリーブオイルやワインを造っていました。14歳の時にイタリアに渡り、学生時代はワインとは違う電子分野の勉強を専攻して過ごしました。私の姉のマリアが嫁いだベルタレッリ家はスイスで医学分野において成功を収めた族で、医療における研究支援、救急車を寄付する医療財団をはじめ、考古学、コンサートホール建設などの文化事業、魚の生態調査等、4つの大きな財団を運営しています。

アメリカズカップヨットレースで2連覇した一家のチームヨットレースの最高峰「アメリカズカップ」で2連覇した一家
またヨットの世界最高峰レース「アメリカズカップ」に出場するスイスチームを支援しています。私の甥であるエルネスト ベルタレッリはスイスチームに属し「アメリカズ カップ」に出場し2003、2007年と2連覇を成し遂げています。

50歳を機にワイン造りを始める事を決意
このように仕事ではいくつかの成功を収めましたが、祖父母の行っていたワイン造りがいつも心の中にあったので、50歳を機にそれまでの仕事をストップし、ワイン造りを始めようと考えていました。バカンス時期に良く訪ねていたプライベートヨットを停泊させているトスカーナ南部の突き出た島「モンテ アルジェンタリオ」の近くで探していました。

一目ぼれで決めたモンテクッコの「コッレ マッサーリ」
そんな時、辿り着いたモンテクッコのコッレ マッサーリとの出会いは「本当に愛すべき人と出会った」ような感じで、まさに一目ぼれでした。最初訪れた時は、整備されていない1ヘクタールの荒れた畑だけでした。1999年9月にブドウ樹を植え、それから周辺の畑を購入していきました。

大好きなヨットに割く時間も無くなる程ワイン造りに注力
元々小麦畑だった場所にもブドウを植え直し、現在120ヘクタールもの広さになりました。いざワイン造りを始めると、ヨットに割く時間が無くなってしまって(笑)。折しも1998年にモンテクッコがDOCに昇格、当時注目を少しずつ集めていた時期でもあったので、ワイン造りに専念する為に住まいをモンテクッコに移し、現在は精力的にワイン造りを行っています。ワイナリーの仕事は1、2月は多少時間が取れますが、その他の月はまるで「戦争」のような目まぐるしい忙しさですよ。

『ガンベロロッソ』最優秀ワイナリーに選出!
『ガンベロロッソ』で年間最優秀ワイナリーに選出された記事カステッロ コッレ マッサーリのファーストヴィンテージの2002年はとても冷涼な年で、続く2003年は非常に暑い年となり、ワイナリーのスタートからワイン造りも困難をしいられましたが、2004年は非常に良い収穫の出来たヴィンテージをなりました。

2014年には『ガンベロロッソ』で年間最優秀ワイナリーに選出され、モンテクッコでの素晴らしい可能性を高く評価してもらいました。

5種の異なる土壌と有機栽培によるワイン造り

5種類の土壌が入り混じるテロワール

コッレマッサーリの土壌は5つの土壌からなります。違う個性を持つ土壌では同じサンジョヴェーゼでも個性が異なります。味わいの強さ、ストラクチャー、凝縮感、複雑性もそれぞれにおいて違う個性を持つようになります。1700メートル級の高さを持つアミアータ山と海に挟まれた地形で畑の標高は300メートルです。40~50年近い古い樹齢の畑も広がっています。フラッグシップである「ポッジョ ロンブローネ」は古樹のみで造られた単一畑です。気候は年間200日も強い海風が吹くエリアで、非常に風通しが良く農薬や除草剤を使わない有機栽培を可能にしています。手作業に拘り収穫されたブドウは醸造からボトリングまで上階から下階に下ろしていくグラヴィティシステムにより、ブドウにストレスを与えずにワイン造りを行っています。

 

モンテクッコ協会会長を務めDOCG昇格へ品質向上を働きかける

モンテクッコのワイン厳格に規定される高品質なモンテクッコのワイン
現在54生産者が加入するモンテクッコ協会の会長職を務めています。協会は2000年に設立され、歴史こそまだ若いですが、北にあるブルネッロや南部のモレッリーノと差別化を図っています。協会が独自でテイスティングを行い、品質を認めたワインに対して1本1本にシリアルナンバーをいれた協会のロゴシールを貼っています。2011年にDOCG認定されたモンテクッコ サンジョヴェーゼについては1ヘクタールあたり7000キロの収量の上限を設定しました。これはバローロやバルバレスコ、ブルネッロの規定である1ha/8000kgよりも更に厳しいものとなっています。

エリア全体のレベル向上こそ、モンテクッコというワインが高品質であるとアピールするのには欠かせない
ここまで規定に拘るのは「一部のワインだけが美味しい」というのではなく、エリア全体のレベルの向上こそ、モンテクッコというワインが高品質であるとアピールするのには欠かせないのです。

ローマ時代の遺跡が発掘される歴史深い土地
モンテクッコはモンタルチーノやキャンティと違い、新興生産地のように捉えられますが、300~400年前の古い地図を見ると既にブドウ畑があったとされています。また私たちが所有する畑の敷地内からローマ時代に使用されていたとされる指輪や当時使用されていたコイン等が発掘され、シエナから専門家チームが来て調査が始まりました。発掘された品は国有財産となりました。モンテクッコはワインもさることながら、魅力的な歴史を持つ土地でもあるのです。

DOCG昇格を目指して働きかけを行う
こうした地域全体への品質向上の働きかけにより、モンテクッコ サンジョヴェーゼはDOCGに認定されましたが、DOCG取得に至るまでは多くの困難がありました。DOCG申請はイタリアで行われていましたが、1年半後に認定機関がベルギーのブリュッセルにあるEUに移管するタイミングと重なり、全ての処理を急いでやり通さなければいけませんでした。EUの申請になると、より煩雑な作業が加わると共に、事務手続きからまた一からやり直さなければならかったからです。一定の品質があるかどうか鑑定するボトルサンプルや土地に根付く土着品種のブドウの樹齢、歴史を証明する必要があり、早急に行いました。幸運にも昔からこの地でサンジョヴェーゼを栽培している農家があり証明する事が出来ました。あるゆる準備を終わらせ認定を待つ間は、とてもドキドキしましたが、2011年ヴィンテージから遂にDOCGモンテクッコ サンジョヴェーゼが誕生しました。

「サッシカイア」「オルネッライア」に並ぶ三大ボルゲリの一角「グラッタマッコ」を購入

ティネッロを使ったピジャージュボルゲリの古き良き伝統的な醸造を守り抜「グラッタマッコ」
「サッシカイア」「オルネッライア」に並ぶ3大ボルゲリの「グラッタマッコ」を話すにあたり、まずお伝えしたいのは「手間ひまをかけた古典的な醸造にこだわる」という事です。「ティネッロ」と呼ばれる手作業オープン型の醗酵樽を3~4週間かけて人の力で、温度調整をせずに天然酵母を使いゆっくりとピジャージュ(櫂入れ)を行い醗酵を促します。以前は「サッシカイア」でも同じようにティネッロを使っていました。良好な関係にあるサッシカイアが最後に使用したティネッロを譲り受けて醸造しています。ボルゲリの古き良き伝統的な醸造をグラッタマッコは今でも守り続けています。2002ヴィンテージから初めてボトリングしました。2013ヴィンテージが『ガンベロロッソ』2017で最高賞トレビッキエリを獲得しています。

『幻のブルネッロ』ポッジョ ディ ソットを購入

幻のブルネッロ7年の歳月をかけて購入した「幻のブルネッロ」
「幻のブルネッロ」ポッジョ ディ ソットは以前から注目していたブルネッロで入手するのに7年の歳月がかかりました。前オーナーが高齢によるものでしたが、入手には非常に骨の折れる作業でした。ポッジョディソットはやはり非常に繊細で美しいワインです。ブルネッロ南部カステルヌオーヴォ デッラ バーテの素晴らしいロケーションもまた素晴らしいです。標高は450メートル、350メートル、低地の河の近くとテロワールの異なる3つの畑のサンジョヴェーゼから産まれます。どれも重要な畑で異なる個性のブレンドにより造られます。収穫したブドウは全てブルネッロを目指して造られます。熟成の途中で判断してロッソディモンタルチーノとしてボトリングされます。限りなくブルネッロに近いロッソで非常に本数が限られています。購入して初めてボトリングした「ブルネッロ ディ モンタルチーノ」2011ヴィンテージが『ガンベロロッソ』で最高賞トレビッキエリを獲得しています。

 ブルネッロを思わせる優れた酒質と熟成能力を持つワイン
カステッロ コッレ マッサーリ
ポッジョ ロンブローネ モンテクッコ サンジョヴェーゼ リゼルヴァ 2012
ポッジョ ロンブローネ モンテクッコ サンジョヴェーゼ リゼルヴァ 2012


モンテクッコ北部にある単一畑「ポッジョ ロンブローネ」です。ルカ氏は「サンジョヴェーゼ100%で有機栽培で育てた平均樹齢50年のサンジョヴェーゼから造られますので、間引きといった人の手を加えずとも自然と収量が落ち味わい深いブドウが得られます。」と教えて下さいました。
試飲コメント:ダークチェリーやプラム、オレンジピールと杉の木、なめし皮の複雑な香りが入り混じる堂々たる存在感で、ブルネッロを思わせる香りがあります。飲むと凝縮感のある豊かな果実感は厚みがあり円やかな口当たりです。タンニンはスムーズでスパイシーで長く深い余韻が続きます。

「サッシカイア」「オルネッライア」と並ぶ3大ボルゲリ!
グラッタマッコ
グラッタマッコ ロッソ ボルゲリ ロッソ スペリオーレ 2013
グラッタマッコ ロッソ ボルゲリ ロッソ スペリオーレ 2013


グラッタマッコは3大ボルゲリの一つで、年産3万7000本程しか造りません。コッレマッサーリが所有してからもう14年経ちましたが、さらに高い品質に拘る事で30年は熟成に耐えうるポテンシャルを持つワインとなっています。どっしりとした味わいの中に芯の強さと美しさがある。これは、ボルゲリにおいてサンジョヴェーゼをブレンドしているグラッタマッコの特徴とも言えます。
試飲コメント:凝縮した果実感とシルキーなタンニンと溶け合い滑らかで深い味わいです。フィニッシュまでの隙の無いきめ細やかな余韻が非常に長く続きます。濃密なスーパートスカンとは一線を画すエレガンスが感じられます。今飲んでも十分に楽しめますが、数年たってからまた飲んでみたいと思わせるポテンシャルを持っています。ジビエや猪、赤身肉のローストと合わせると至福のマリアージュとなります。
インタビューを終えて
コッレ マッサーリに加えて三大ボルゲリの一つグラッタマッコ、さらにはポッジョ ディ ソットを所有するオーナー夫妻がトスカニーに訪問してくださるというので、どんな方がいらっしゃるんだろうとどきどきしながらお迎えさせていただきましたが、オウナーのティーパ氏は、とても気さくでユーモアにあふれる方で、
ものすごくリラックスした雰囲気の中でお話しさせていただくことができました。

モンテクッコの品質の向上のためにも尽力されている話の際に

「自分だけ上に行って『他の人は知らないよ』というのはいけないことだ」

と話された言葉が印象に残りました。

その言葉の通りワイン造り以外にも、建築、介護、芸術、考古学、生態系など様々の財団を所有し研究支援をされているとのことで、ノブレス・オブリージュと言われるような高潔な志を感じさせるオウナー夫妻とお話しできたことは大変貴重な経験となりました。

奥様のマリアさんとの出会いも、ワイン造りを始めたのも50才とのことで、そこからスタートしたワイン造りが、2017年には3つのワイナリーの3本のワインが『ガンベロロッソ』が3本同時に最高賞トレビッキエリを獲得する偉業を成し遂げています。

帰り際に冗談で、「次はどちらのワイナリーを取得の予定ですか?」と聞いたところ
マリアさんには「その気になるから言わないで頂戴」と笑いながら言われ
社長のクラウディオさんには「もちろん買うつもりだよ」とこれまた笑って言われました。

最初から最後まで、軽妙なユーモアで笑いっぱなしのインタビューとなりました。

カステッロ コッレ マッサーリ社 クラウディオ ティーパ氏とトスカニースタッフ
カステッロ コッレ マッサーリのワインはこちら⇒
グラッタマッコのワインはこちら⇒
突撃インタビューバックナンバーはこちら⇒