2007年4月16日 モルガンテ社 カルメロ・モルガンテ氏初来日

2007/04/16
突撃インタビュー
 
2007年4月16日 カルメロ モルガンテ氏 Mr.Calaméo Morgante

シチリアを代表する赤ワイン、ドン アントニオ
垂直試飲会に参加してきました!

カルメロ モルガンテ氏

今回が初来日となるモルガンテ社のカルメロ氏。スマートな雰囲気の紳士でシチリアの男性というイメージがあまりないなあと言うのが第一印象。

まず、モルガンテ社の歴史やワイン造りに対する姿勢などのお話しがありました。

モルガンテ社はシチリア島南部、古代ギリシャ帝国の神殿で有名な町「アグリジェント」の南東に位置する「グロッテ」という町で5世代に渡って農場を営む家族が経営するワイナリーです。現在の社長はカルメロ氏の父親のアントニオ・モルガンテ氏。

カルメロさんとジョヴァンニさん兄弟とアントニオ氏

カルメロさんとジョヴァンニさんの二人兄弟とともに、アントニオ氏が自社でのボトル詰めワインを始めようと決意したのが1994年のこと。もちろん、ブドウはこの土地にずっと昔から植えられていたネロ ダーヴォラです。

ネロ ダーヴォラはシチリアを代表する赤ワイン用のブドウで、国内外で高く評価を受ける、ポテンシャルの高いブドウとして知られていますが、湿気に非常に弱く、暑く乾燥した土地だけがこのブドウの特徴を存分に引き出すことができるとされています。モルガンテ社のあるグロッテはまさにその条件にうってつけの土地。冬場の適度の降雨と暑く乾燥した夏。他のブドウにとっては過酷な条件でもネロ・ダーヴォラにとってはまさに天国のような土地なのです。逆に言うと、ネロ ダーヴォラ以外のブドウを育てるのが非常に難しい土地、と言うことになります。

カルメロ氏:モルガンテ社はネロ ダーヴォラだけを造っているワイナリーです。このブドウに特化したのには2つの理由があります。ひとつは技術的な側面。カベルネなどの他のブドウを栽培し、どのようなブドウが取れるか実験をしたのですが、思うほどによい結果が得られなかった。もう一つはマーケティング的な側面。無理をして他品種でワインを造るよりは、素晴らしいブドウ、素晴らしいワインを生むことができるネロ・ダーヴォラに集中することで他との差別化を図ることができる。現在、我が社ではこのドン・アントニオとベーシックなネロ ダーヴォラのこの2本だけを造っています。

カルメロ氏:自社でのボトル詰めのワインを造ると言うことは大きなプロジェクトでした。ちょうどその考えを実現に移そうとしていた頃、偶然、エノロゴのリッカルド コタレッラにシチリアで出会いました。まだ彼が今ほどには有名でなかった頃です。その時代は、プラネタや、プラネタから独立していった生産者達が造るワインが注目され始めた頃で、シチリアワインにようやく成長の兆しが見えた頃です。そのため、コタレッラのようなエノロゴもシチリアにやってきた。そんなときに、偶然出会ったのです。

カルメロ氏:彼と話をして、すぐに彼のワイン造りに対する考え方がわかりましたし、コタレッラも私たちのワイン造りに対する思いを理解してくれました。じゃあ、すぐに一緒にやろう、となったわけではありませんが(笑)。結果的にコタレッラをエノロゴとして迎えることに決めました。ジョヴァンニと父のアントニオがコタレッラと一緒に栽培から醸造のことをやっています。

カルメロ氏:ドン アントニオとベーシックなネロ ダーヴォラの違いは樹齢です。ドン アントニオの方が古い樹齢のネロ ダーヴォラから造られ、30年から35年。一方ベーシックなネロ ダーヴォラは15年から20年です。ドン アントニオは長熟なワインではありますが、若いうちからもまろやかで飲みやすい。これは私たちが「購入してすぐ飲めるワイン」と言うことを考えているからです。そして、ベーシックなネロ ダーヴォラはもちろん早飲みようなのですが、逆に3,4年経過してもまだまだしっかりとしていて十分に楽しんでもらえます。

カルメロ氏:収穫は9月中旬から10月中旬にかけて行われます。モルガンテ社の畑は点在しているので畑の場所によって熟す時期に差があるのです。そして、それぞれ別々に醸造を行います。ワイナリーに来ていただいたらわかると思いますが、2つのワインしか造らないのに、たくさんのタンクがあることに驚かれると思います。これは、それぞれの畑ごとのブドウで醸造を別々にしているためなのです。

カルメロ氏:ドン アントニオのラベルに描かれているのはアーモンドの花。モルガンテの所有する土地にはたくさんのアーモンドが育っています。アーモンドもネロ ダーヴォラ同様、湿気に弱くて暑く、乾燥した土地を好む樹。シチリアのシンボルでもあると共に、良いネロ ダーヴォラが育つという意味もあります。つまりモルガンテのシンボル。だから、ラベルに選んだのです。

 

ドン アントニオ垂直試飲~1999,2000,2001,2002,2003~

グラスに注がれた試飲アイテム
カルメロ氏:ドン アントニオの初リリースはヴィンテージ1998なのですが、この年は非常に暑くてワインにとげとげしさが残っています。そのため、今回の垂直試飲には持ってきませんでした(注:今回の試飲会のためのワインは3週間ほど前にワイナリーから全て直接航空便で届けられました)。この5つのヴィンテージはどれも冬に適度な雨が降った、気候条件の良かった年が続きます。2001年は特にベストでした。また、現在はワイナリーで熟成中なのですが、2005,2006の出来映えが本当に素晴らしく、楽しみにしておいて下さい。

カルメロ氏:5つのヴィンテージに共通するものに、香りがあります。バルサミコやカカオ、香草、甘草、そしてマニキュア。果実の中にこのような要素があります。

カルメロ氏:私たちが一番意識していることは「記憶に残るワインを造る」ということです。ワインは原料となるブドウによってその善し悪しが決まります。醸造方法をあれこれ触るのではなく、いかに素晴らしいブドウを造り出し、高品質なワインにして適正な価格で市場に出す。インターナショナルな面で受けのよいバリックの印象の強いワインを私たちは好みません。もちろん、木の良さは生かしますが、決して過度になりすぎないようにしています。

カルメロ氏:ドン アントニオは繰り返しになりますが、長く寝かせるポテンシャルのあるワインですが、市場に出たときにすぐに飲んで美味しいと思えるワインです。購入して10年、20年とセラーに置いておくのもいいですが、私たちはすぐに楽しんでもらいたいと思っています。

インタビューを終えて
気候条件に大きな差がないため、特に突出したヴィンテージというのはありませんでしたが、どれもがバランスの良い、非常に飲み心地の良い味わい。ネロ ダーヴォラはシチリアの代名詞とも言えるブドウで、パワフルさを全面に押し出たようなワインも多いのですが、このドン アントニオは力強さは控えめで、エレガントなニュアンス。そして、飲んだあとの余韻が本当に素晴らしい。程よい苦みと甘さがちょうどいい具合に残るんです。食事にも決して邪魔にならず、最初から最後まで美味しく頂けること間違いなしです。
モルガンテのワインはこちら⇒
突撃インタビューバックナンバーはこちら⇒