2014年4月16日 パオロ スカヴィーノ社 エリザ スカヴィーノ氏来社

 
突撃インタビュー


2014年4月16日 パオロ スカヴィーノ社 エリザ スカヴィーノ氏来社

バローロ改革のメンバーとして知られ、バローロ最高の造り手のひとり「パオロ スカヴィーノ」。現当主エンリコ氏の次女で、醸造にも携わるエリザさんが来社され、創業当時から続くファミリーの一貫した哲学についてじっくりとお話を聞くことができました。

徹底した完璧主義を100年にわたり貫く姿勢を聞くにつれ、頭に浮かんだのは「一流」という言葉でした。

現代バローロの基礎を造ったジュリエット・コルベール夫人

まずはバローロの歴史から説明します。少し長くなってしまいますが、ここを伝えないと全ての話が理解できないと思いますのでお話させてください。

・1200~1400年代 ネッビオーロで造る良質なワイン産地としての記録
・1495年 「バローロ」がワインの名前として初めて登場(ラモッラ村)
・1700年代 イギリスとの商取引で貨幣の代わりにバローロを使って支払うことができるなど、最高のワインとして認知されていた
・1800年代前半 バローロの侯爵ファッレッティ家に嫁いだ、仏貴族Juliette Colbert(ジュリエット・コルベール)夫人が、フランスの醸造技術を広め、ほぼ現在の形が完成した
・1921年 パオロ スカヴィーノ創業
・1951年 現当主エンリコ氏が10歳でワイン造りを開始

バローロは、15世紀から高品質なワインとして認知されていましたが、ものによっては残糖があって再発酵しているものや、不衛生から木の臭みがワインに移りクリーンさに欠けるものが多かったのも事実です。しかし、1800年代前半にジュリエット・コルベール夫人がフランスの知識をバローロに持ち込んだことにより、粗野だったワインがより貴族的になり、”残糖がなくドライ”なワインへと変貌していきました。

 

10歳のときからワイン造りに従事。父パオロ氏からワイン造りの全てを叩き込まれたエンリコ氏

私達スカヴィーノ家は1900年代前半まではグリツァーネというバローロの端のエリアでワイン造りを行っていましたが、最高のブドウを求めて1921年、曾祖父ロレンツォの代にカスティリオーネ ファッレット村に3.5haの畑を購入し、移住しました。その後、祖父パオロと大伯父のアルフォンソ(本家アゼリアの当主ルイジ氏の父)がワイン造りを行っていくことになります。当時は半分を瓶詰、残りをバルク売りしていましたが、1960年代の終わりには100%を瓶詰するようになりました。ちなみに当時から現在まで自社畑以外のブドウは一切使ったことがありません。

父エンリコがワイン造りに従事するようになったのは1951年、10歳のときです。当時は第二次世界大戦後まもなく、貧困や飢饉にあえいだ時代で、ブドウ農家というのは人気がなく、職を求め畑を捨ててトリノへ出ていく人が増えたため過疎化が起こっていました。そしてご存じの通り、ジュリエット・コルベールの精神は失われバローロ全体の品質も低下していきます。そんな時勢でしたが父エンリコは祖父パオロがワインを造るのを見たり手伝ったりするのが大好きで、自分がワイン造りを継ぐということは自然なことと捉えていました。そして、それを喜んだ祖父パオロは父エンリコにワイン造りの全てを叩きこみました。

 

現代と同レベル以上の品質管理を1900年代前半から実践

祖父パオロが父エンリコに教えたことは、「完璧なブドウしかセラーに持ち込まない」、「セラーは常に清潔に保つ」の二つでした。
10歳の父が好きだったのが、樽を綺麗に拭く作業。樽の中を水の色が透明になるまで洗い、祖母が綺麗にアイロンをかけた布で”樽の中でご飯が食べれるぐらい”綺麗にするということを教え込まれました。子供の身体がすっぽり入ってしまう大樽をいくつも拭くのは大変な作業ですが、畑仕事に比べればなんでもないことだと父は言います。

当時は間引き(グリーン・ハーヴェスト)など誰もやっていないことでしたが、祖父パオロは感覚的にそうした方が良いワインが出来ることを知っていた人でした。一粒でも傷んでいるブドウは房ごと落とすなど、”完璧なブドウ以外はセラーに持ち込むな”ということを徹底的に叩き込まれたそうです。熟成と酸素の関係も体験的に分かっていたようで、上澄みだけを移し替えるということも頻繁に行っていました。

畑の距離を縮める魔法の道具、トラクター

様々な体験をした父エンリコが、「生涯でこれを超える感動はない」と語るのが、1950年代に初めてスカヴィーノ家にトラクターが届いたときのことです。
カスティリオーネ ファッレット以外にも畑を買い足し、いまでこそ30分もかからない距離ですが当時はブドウの運搬に馬や牛を使っていた時代で、離れた畑からカンティーナへブドウを運ぶのに2時間以上かかっていました。当然ブドウはその間に傷んでしまいます。トラクターはその頃はとても高価でほとんどの農家は所有していなかったのですが、ブドウを少しでも完璧な状態でワインにするよう購入に踏み切りました。まさに畑が近所にあるのと同じ効果を得ることができたのです。

バローロ地図

「質量保存の法則」の通り、ブドウがワインになるまで、減ることはあっても増えることはありません。醸造はあくまで補助的なもので、大切なのはブドウ樹が正しく育つための地味な作業の連続です。私達がやっているのは現在も昔も、「いかにテロワールを損なわずワインに注ぎ込むか」ということだけなのです。

 
ここから試飲をしました
 


20%のヴィオニエがアクセント。夏に笑顔で飲みたくなる白ワイン「ソリッソ」

ランゲ ビアンコ ソリッソ 2012

この白は、家族で飲むために造ったワインで生産量は多くありません。ソーヴィニヨン、シャルドネが40%ずつ。ヴィオニエ20%をブレンドしています。父エンリコがローヌで飲んだヴィオニエをとても気に入り、ランゲでも植えてみようということになりました。厚みやオイリーな要素が出ていると思います。ちょっとコーヒーを思わせるヒントもあるんですよ。酸味を綺麗に出したかったのでマロラクティック発酵はしていません。夏に笑顔で楽しめるようにと「ソリッソ」(笑顔)という名前をつけました。

試飲コメント
ハーブ、柑橘、桃やアプリコットなど3品種の香りが変わる変わる出てくる印象。説明通り酸味がとても綺麗でミネラリー。ミントを思わせる清涼感も


チロ ビアンコ 2012
 

「ブリッコ マネスコット」のクリュバルベーラ


バルベーラ ダルバ 2012

バルベーラはとても生命力の高いブドウで、肥沃な土地では育ちすぎるため痩せた土地に植えることが必要です。樹齢が若いうちはブドウが自分をコントロールできないので、畑での作業がとても大切になってきます。1992年に植樹したもので、バルベーラとしてはまだまだ若い樹なのでこれからどんどん美味しくなっていくと思います。もし美味しくないものがあればそれは私達が失敗したということです(笑)。バローロ同様長期熟成もできますが、ネッビオーロは熟成により表情を変えるのに対し、バルベーラは一つの線上で熟成していきます。

試飲コメント
グラスから立ち昇る香りがとても鮮やか。バルベーラならではの豊かな酸がありながらふくよかな舌触りで抜群の飲み心地。寝かせて飲んでみたい


クリトーネ ヴァル ディ ネート ビアンコ 2012
 

7つのクリュをブラインドでブレンド。まさに圧巻のバローロ

バローロ 2009

7つのクリュ※を1か月に1回味見し、最終的にはブラインドで比率を決めています。イメージは「丸くとがったものがなく高貴なワイン」です。香りは熟成の過程で変化しますが、味の要素は変化が少ないので味を頼りにブレンドしています。2009は暑い年で収穫も早く、当初はタンニンも強かったのですが、熟成の結果現在は丸くなってきています。ブラックチェリーなど濃縮度が強いと思われる香りが特徴的です。アルコール・糖度も通年より高めですが、日照りとはちがうので、ノーマルなヴィンテージといえると思います。

※7つのクリュ:ヴィニョーロ、ロッケ モリオンディーノ、アルテナッソ(カスティリオーネ ファッレット村)、ヴィニャーエ、テルロ、アルバレッロ(バローロ村)、サン ベルナルド(セッラルンガ ダルバ村)

試飲コメント
イメージの通りまさに丸くとがったものがない。膨大な果実、酸、切れのあるタンニンが存在しながらも全てが調和して包み込まれるような味わい


チロ ロザート 2012
 

樹齢60年以上。バローロで最も高名なクリュのひとつ「カンヌビ」

バローロ カンヌビ 2009

バローロは伝統的に複数のクリュをブレンドしますが、クリュごとに単独で熟成する動きは1960年代ごろからありました。私達が所有するのはカンヌビ山頂部の斜面にあるもっとも条件の良い畑のひとつ(0.5ha)で、植樹は1946年です。ミケットという品種で人の手を介さなくても自然と収量が落ちるんですよ。チェリーの果実感が前面に出ていると思います。

試飲コメント
果実の塊といえるふくよかさ、ミネラルの長い余韻。滑らかでエレガント、女性的な印象


チロ ロッソ クラシコ2011
 

最後に、「ワイナート」の記事について質問

以前エンリコさんが、「娘がマセラシオンしながら15~20日間の発酵を行なってね。最初はひどいワインだったが、7000Lタンクで1年おいたら素晴らしいワインになった。」と言っていた記事を読んだことがあるのですが、いつのヴィンテージですか?

エリザさん:正確には18日だったと思います。2007年に発酵用のタンクを網付きで果帽が浮いてこないようなものに変えたんですが、初めてだったのでマセラシオンの時間を試行錯誤しながら造っていたんです(笑)。苦労したのですが、最後はエレガントに仕上げることができました。最近はだんだん加減がわかってきて、マセラシオンは10-12日ぐらいが丁度良いということになっています。

 

インタビューを終えて

妥協のない畑作業と、進化し続けるカンティーナでの作業。1900年代前半から、現代と変わらないレベルの畑仕事や衛生管理を行っていたというのがとても印象的でした。私達はあくまでも「農家」ですということを強調していたエリザさん、世間的にはバローロ改革のイメージが強いかもしれませんが、現在も昔も一貫した信念でワイン造りを行っているということがよく伝わりました。

味わいの傾向がよりエレガントな方向に変わったことについては、「過去から現代に進むにつれ味わいの傾向が変わるというのは、よりテロワールを表現する理想に近付いているということです」という言葉をいただきました。エンリコさんからワイン造りを受け継いだエリザさんがどんなワインを造るのか、これからのヴィンテージがとても楽しみです。

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