2015年4月17日 ヴィッラ マティルデ社 輸出部長ジョルジョ インパラート氏、醸造家ファビオ ジェンナレッリ氏来社

2015/04/17
突撃インタビュー
 
2015年4月17日 ヴィッラ マティルデ社 輸出部長ジョルジョ インパラート氏、醸造家ファビオ ジェンナレッリ氏

古代ローマ時代の銘醸地ファレルノを復活させた立役者ヴィッラ マティルデ突撃インタビュー

ジョルジョ インパラート氏ファビオ ジェンナレッリ氏と
古代ローマ時代に銘醸地として知られたカンパーニャのファレルノ地区のワイン造りを現代によみがえらせた立役者ヴィッラ マティルデ。現在はファレルノだけでなく、イルピニア、ベネヴェントにも畑を所有、カンパーニャ各地のテロワールを生かした高品質ワインを造っています。

長年一弁護士だった現オーナーの父が仕事の傍ら古代のワイン史を研究

ヴィッラ マティルデはアヴァッローネ家が1965年に設立した家族経営のワイナリーです。設立者で現オーナーの父、フランチェスコ パオロ アヴァッローネは本職は弁護士でしたが、仕事の傍ら古代のワイン書物を研究していました。古代ローマの政治家プリニウスの書物や、ウェルギリウス、マルツィア―レ、ホラティウスなどの古代ローマの詩人たちが残した詩句の中から何度も「ファレルノ」と言う言葉が出てくるのに気が付き魅了され、興味を持ったのがきっかけです。

そして、ナポリ大学とファレルノのワインを共同で研究し、1960年代に古代のファレルノで造っていた古代品種を探し当てました。そしてファレルノでのワイン造りを復活させたいと1965年にヴィッラ マティルデを設立しました。

古代に造られていた品種は現在の呼び名とは異なります。でも、書物をたんねんに調べ、品種の特徴を調べ上げ、現在のどの品種にあたるのかを導き出したのです。まず、15の品種が候補に挙がり、そして最後に「ファランギーナ」「アリアニコ」「ピエディロッソ」の3つの品種だと結論付けました。

古代ローマ人がワイン造りの土地として選んだ「ファレルノ」とは

ファレルノは「ヴィヌム ファレルヌム(ファレルノワイン)」として古代ローマ時代に広く知られていました。今、「シャンパーニュ」と言えばあのシャンパーニュだけのことを指しますが、それぐらいにブランドとして確立していたワインでした。何故ローマ人がこの土地を選んだのか、それはここがブドウ栽培に最適なテロワールを持っていたことに他なりません。ファレルノは火山が造った土壌で海に近い場所にあります。その二つの要素を持つ土地はいいブドウができる土地なのです。さらに、ローマからも近く、ポンペイやイスキアなど人が集まる土地にも近かったことも理由のひとつです。

カンパーニャを含め、南イタリア一帯は「マーニャグレーチャ」と呼ばれ、ギリシャの植民地でした。その頃ギリシャからブドウがもたらされ、栽培されてきました。その中でファレルノが特にローマ人の目に留まったのはアヴェッリーノなどの山間地よりも暖かく、便利な土地だったからだと思います。

古代に飲まれていたワインが赤なのか、白なのかはわかりません。現在の白ワインのようなワインを造る技術はありませんでしたし、にごったり、ロゼっぽくなっていたのではないでしょうか。

3枚の写真左から畑、ワイナリー、山を背に広がる畑
 

ファレルノからスタートし、現在はベネヴェントとアヴェッリーノにも畑を所有。それぞれのエリアごとの特徴を際立たせたワインを造り、価値を高める取り組みを続けている

3つの地域とブランド名現在のヴィッラマティルデは、フランチェスコの子供たちが受け継いで運営を行っています。2000年にベネヴェント県サンニオに、そして2004年にアヴェッリーノ県イルピニアに土地を取得、それぞれ「ロッカ デイ レオーニ」、「テヌーテ ディ アルタヴィッラ」というブランドでそれぞれの土地の個性を表現するワイン造りを行っています。

ファレルノは火山と海に近い場所、サンニオは火山性土壌の丘陵地、そしてイルピニアは急斜面の続く山間部の火山性土壌。同じカンパーニャ州ですが、その個性は全く違います。今日はそれぞれの土地で造ったワインを飲み比べていただきますが、その違いがとてもよくわかると思います。

ファレルノ地区にあるのが「テヌーテ ディ サン カストレーゼ エ パルコ ヌオーヴォ」という農園で3つの中で一番大きく、110haあります。「ロッカ デイ レオーニ」が現在30ha、「テヌーテ ディ アルタ ヴィッラ」が現在25haですが少しずつ拡張していっています。

ここから試飲をしました。

18歳ぐらいのティーンエイジャーの女の子のイメージのファランギーナ
ロッカ デイ レオーニ ファランギーナ 2013
ロッカ デイ レオーニ ファランギーナ  2013


ベネヴェントで造るファランギーナです。このエリアで造るワインはシンプルでわかりやすく、とても好ましい飲み心地であるのが特徴です。私はワインを何かに例えて説明するのですが、このファランギーナは「18歳ぐらいのティーンエイジャーの女の子」。まだ大人になっていない年頃の、ハツラツとしたイメージです。
試飲コメント:パイナップルなど明るい果実のニュアンスがぱっと広がる、心地よく楽しいワイン。フレッシュな酸と程よいミネラル感もあり、バランスよく、すいすい飲める。

土壌が変わるとこんなに違う!少し成熟した男の子or女の子のイメージのファランギーナ
ファレルノ デル マッシコ ビアンコ 2013
ファレルノ デル マッシコ ビアンコ  2013


これもファランギーナ100%ですが、先ほどのロッカ デイ レオーニとは全く違います。ファレルノは火山灰と礫が幾層にも重なった土壌で、植物が育ちにくい土地。そのため、地中深くに根を張るため年ごとの気候の違いの影響を受けにくく、安定しています。リンやカリウムなどのミネラルが豊富で、それがワインの味に強く出ています。醸造方法はロッカデイレオーニとそんなには変わらないのですが、ファレルノの方がクリオマセラシオン(低温での醸し)の時間が長く、ステンレス熟成も長めです。

ワインのイメージとしては、少し成熟した雰囲気の男の子、または女の子ですね。

試飲コメント:とにかくミネラル!そして塩っぽさ。エレガントな果実味があり、厚みがありふくよか。そして粘性が強く、独特の苦みもある、くせになる味。個性的で実に美味しい。

繊細でエレガントな貴婦人。樹齢の高い単一畑で造るクリュファランギーナ
カラッチ ファレルノ デル マッシコ ビアンコ 2010
カラッチ ファレルノ デル マッシコ ビアンコ  2010


カラッチはファレルノの農園の中でも最良の場所にある単一畑のファランギーナだけで造ります。樹齢は約50年で、いい年だけ造ります。ベーシックのファレルノ デル マッシコ ビアンコに比べ、少し過熟気味で収穫。そしてバリックで発酵します。カラッチを例えると、繊細でエレガントな貴婦人ですね。
試飲コメント:凝縮感のあるたっぷりとしたコクとはちみつのような甘みがミネラルと調和。ボリューミーだがエレガント。

よくよく耳を傾けないと理解できないフィアーノ。例えるならばオードリーヘップバーン
フィアーノ ディ アヴェッリーノ 2013
フィアーノ ディ アヴェッリーノ  2013


フィアーノは長期熟成に向くブドウです。ストレートにわかりやすいアロマはなく、ささやいているようなイメージです。よくよく耳を傾けないと理解が難しいワインです。例えて言うとオードリーヘップバーンのようなワインです。

アヴェッリーノは標高の高い斜面地の畑で、このフィアーノの畑も400mの位置にあります。収穫は10月中旬、クリオマセラシオンを行います。黄色というよりも麦わら色を帯びた色相で、これは長熟できるポテンシャルの表れです。シンプルな魚介料理と相性がいいです。

試飲コメント:とてもエレガントでしっかりとした骨格が感じられる味わい。ナッツのニュアンスのアロマと余韻。

豊満でリッチ。例えるならばソフィアローレンのグレコ。
グレコ ディ トゥーフォ 2013
グレコ ディ トゥーフォ  2013


グレコもアヴェッリーノ地区ですが、フィアーノとは反対側の斜面地で造ります。畑の標高は360mです。豊満でリッチで、激しく、ストレートな印象のワインです。グレコも長熟できるワインで、白身肉などのメイン料理や、軽く熟成したチーズと合います。このワインを例えるならやはりソフィアローレンです。
試飲コメント:ふくよかな味わいの中に心地よい柑橘系のニュアンスとミネラルがあり、豊満さだけではない引き締まった味。

幸せで暮らしやすい牧場にいる巨大な乳牛のイメージのアリアニコ。規定がDOCよりも厳しいのであえてIGTでリリース。
ロッカ デイ レオーニ アリアニコ 2010
ロッカ デイ レオーニ アリアニコ  2010


ベネヴェントで造るアリアニコです。ベネヴェントは日照量が豊富で雨にも恵まれ、肥沃な土地です。ブドウもリラックスして育つのでフルーティーでわかりやすい味わいになります。このワインはそんな幸せな土地にゆったりと暮らす巨大な乳牛のイメージです。しかもその乳牛はサングラスをかけています(笑)

ところで、ベネヴェントで造っているワインはどちらもカンパーニャIGTとしてリリースしています。サンニオベネヴェンターノDOCとしてもリリースできるのですが、DOCよりもIGTのほうが収量の規定が厳しいのです。厳しい基準に沿って造っているので、DOCではなく、あえてIGTとしてリリースしています。

試飲コメント:アリアニコの好ましい果実味をストレートに感じる。タンニンもあり、骨格もしっかりしているので飲み飽きない。

厳しい土地でたくましく育つ筋肉質の乳牛のイメージの赤
ファレルノ デル マッシコ ロッソ 2010
ファレルノ デル マッシコ ロッソ  2010


アリアニコ80%、ピエディロッソ20%で造ります。熟成は50%がバリック、残りは大樽です。ビアンコの時にもお話しましたが、ファレルノは根を深く張らないとブドウは育ちません。そういう過酷な環境で頑張って実をつけていくのです。ベネヴェントの牛と違い、ここではたくましく引き締まった筋肉質の牛のイメージがぴったりです。

アリアニコは熟成に時間がかかります。2010は2015年の春にリリースしたところです。

試飲コメント:しっかりとしたタンニンときれいな果実味。時間が経つとともに厚みが増し、奥深い所の旨味を感じてくる。飲み心地が良く、お肉料理などと合わせてゆっくり楽しみたい赤。

じっくり待って味わうタウラージはどっしりとして動かない雄牛
タウラージ 2008
タウラージ  2008


アリアニコはタンニンが強いブドウです。それだけにじっくり待たなければならないワインです。今2008をリリースしているのも飲み頃になってからお客様に届けたいと思っているからです。このワインを例えると、どっしりとして動かない雄牛です。抜栓して1~2日後に飲んでいただくとさらに美味しくなります。
試飲コメント:やわらかさも感じられ、エレガント。
インタビューを終えて
古代ローマ時代のワインに魅せられ、それを現代によみがえらせたヴィッラ マティルデ。設立者のフランチェスコさんがいなければファレルノのワインを今私たちが飲むことはできなかったかもしれないと思うと、本当に偉大なことをされたと感動しました。

ワインを人や動物に例えて説明して下さった輸出部長のジョルジョさん。その例えのおかげでヴィッラ マティルデのワインのことは忘れそうにありません。でも、そのイメージをまずは横に置いて、まっさらに向き合って飲むとまた違う印象になってきます。

ヴィッラマティルデがたった1社で造り始めた「ファレルノ デル マッシコ」は現在20社以上の生産者がワインを造っているそうです。その中で85%を占めるヴィッラマティルデ。カンパーニャのワインの奥深さを改めて実感したインタビューでした。

集合写真
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