イタリアを代表する食後酒グラッパ!偉大な生産者の搾り滓を用いた単一品種、さらにはクリュまで生産!樽熟成と職人技で高品質グラッパをリードする「マローロ」突撃インタビュー

2022/02/18
突撃インタビュー
 
2022年2月10日 パオロ マローロ氏 Mr. Paolo Marolo、ロレンツォ マローロ氏 Mr. Lorenzo Marolo

イタリアを代表する食後酒グラッパ!偉大な生産者の搾り滓を用いた単一品種、さらにはクリュまで生産!樽熟成と職人技で高品質グラッパをリードする「マローロ」突撃インタビュー

生産者さん
「マローロ」は、1977年に現当主パオロ マローロ氏がアルバに立ち上げた小さな蒸留所です。単一品種グラッパ、そして樽熟成グラッパの先駆者としても知られ、設立当初から偉大な造り手が生んだ高貴品種のヴィナッチャ(絞り滓)を用いて、高品質グラッパを生産しています。また、パオロ氏の卓越した技術力と味覚により、ヴィナッチャの個性を引き出しながら、アロマと風味のハーモニーを見事に表現しています。今回は、SOLOITALIA代表の林茂氏に通訳と解説をしていただき、オーナーのパオロ氏と、ご子息のロレンツォ氏にオンラインでお話を聞きました。

既成概念を覆す洗練されたグラッパを生産!単一品種グラッパの第一人者「マローロ」

イタリアで日常的に愛される食後酒グラッパ
グラッパ
グラッパは、ワインの生産時に出るブドウの搾り滓を蒸留したもので、1970年代までは北イタリアを中心に親しまれきた蒸留酒です。食後のコミュニケーションツールとしてや、寒さを凌ぐためなど、イタリアでは日常的な酒として扱われ、庶民に愛されてきました。

1970年代以降、高級グラッパが台頭
1970年代以降、単一品種グラッパのブームが来ると、贈答品として使われたり高級レストランでも扱われるようになります。地域性を表現するバローロやブルネッロなどの単一品種グラッパも造られるようになり、高級品としての地位も築き上げました。その代表例として有名なのが「マローロ」です。

「単一品種、新鮮な搾り滓で蒸留」という考えのもと、
単一品種グラッパの第一人者として洗練された美しいグラッパを造る「マローロ」

パオロ氏
「マローロ」は、1977年、アルバの農業学校の講師を務めていた現当主パオロ マローロ氏によって設立された蒸留所です。ピエモンテ州アルバに拠点を置き、周囲に点在する偉大な生産者の高貴品種を用いて高品質グラッパを生産しています。しかし、創業当初は安価なグラッパが多く、品質があまり高くなかったそうです。そんな状況を見かねたパオロ氏は、「単一品種で新鮮な搾り滓で蒸留」という考えのもと、より品質の高いグラッパを追求し始めます。

その当時の挑戦をパオロ氏はこう振り返ります。
「1977年の創業した当初、イタリアではファッションや観光のブームもあり、商業用にフィットするワンランク上のグラッパがあってもいいのではないかと思っていました。そして、もともとしていた農業学校の講師業と並行して、個人的にグラッパの生産を始めたのです。(この挑戦を駆り立てたのは)DNAです。犬がトリュフを探すのと同じですね。

ヴィナッチャ
私が働いていた学校もこの挑戦を認めてくれましたし、何よりも好奇心と野心に溢れていました。また、アルバは素晴らしい地域であると確信していたので、良いものを造るためにここで挑戦したかったんです。そして、その高品質を追求したい思いが“単一品種”、“フレッシュな搾り滓”というアイディアに向かわせたのです。」

その言葉通り、マローロは新鮮な原料にこだわり、産地の個性や収穫年などを尊重しつつ、純粋な味わいを単一品種で表現しています。そうすることで、それまでのイメージを覆すような洗練されたグラッパの生産を可能にしたのです。また、樽熟成グラッパの先駆的存在でもあり、偉大な風格を持つ美しいグラッパも生産しています。

偉大な生産者から“新鮮な”ヴィナッチャの仕入れを可能にする地理的優位性
1時間でボトル12本分のみ生産。24時間フル回転で鮮度の高い原料を最大限に活用!

グラッパの原料の鮮度にこだわり、そうそうたる顔ぶれから仕入れるヴィナッチャ!
クリュバローロ「ブッシア」も使用!

グラッパ ブッシア
マローロは何よりも、使用するブドウの搾り滓の鮮度にこだわる造り手です。拠点を置くアルバ(バローロとバルバレスコの中間地点)という地理を活かし、近くの偉大なワイン生産者から新鮮なヴィナッチャを仕入れて、丁寧に搾られた高貴品種の搾り滓を新鮮なうちに蒸留しています。主に仕入れるのは、その土地に根差したバローロ(ネッビオーロ)やモスカートなどで、中にはバローロのクリュ「ブッシア」のものまであります。

●主な仕入れ先(バローロ)
エリオ アルターレ、ジャコモ コンテルノ、アルド コンテルノ、パオロ スカヴィーノ、アゼリア、ピオ チェザーレ、チェレット、マルケージ ディ バローロ、ジャンニ ヴォエルツィオ、ロッケ デイ マンツォーニ、プルノットなど

ネッビオーロ種以外に、近年品質の向上が目覚ましいバルベーラやネレッロ マスカレーゼを使うことがあるのかお聞きすると、やはり造り手として重要視する鮮度へのこだわりが垣間見えてきました。
「全体的に熟成タイプのバルベーラは増えてきています。しかし、バルベーラは熟成すると果実味が残る一方でアロマがなくなってしまいます。タウラージやエトナなどの遠方からやってくる品種も、地理と鮮度の問題で造ることはないと思います。高品質なものは造りたいですが、やはりヴィナッチャの鮮度が大事です(黒ブドウの場合、鮮度が保たれる日数はおよそ5日)。」

新鮮な原料を9月から11月にかけて24時間フル回転で蒸留
梨やリンゴ用の蒸留器をグラッパ用にカスタイマイズして年間10万本を生産

息子のロレンツォ氏が蒸留所に並ぶ小さな蒸留器について話してくださいました。
「梨やリンゴ用の蒸留器をグラッパ用としてカスタイマイズして使っています。父の改良により生産量も増えて、今では合計10万本生産しています。それでも、1時間で12本分しか造れないことに加え、新鮮な原料を使っているので、9月から11月にかけて24時間体制で一気に蒸留しています」

蒸留器
 

緻密な職人技によりヴィナッチャの個性を見極め、特性を余すことなく表現
「パオロさんの優れた味覚センスが素晴らしいグラッパを生む」

試行錯誤を重ね、研ぎ澄まされた味覚でマローロの味を造り上げる研究熱心なパオロ氏
パオロ氏とヴィナッチャ
マローロの創設者、パオロ マローロ氏はグラッパの編曲家のような存在として知られています。数あるヴィナッチャの個性を見極めてブレンドし、類稀な職人技によってグラッパの繊細なアロマと味わいのハーモニーを表現しています。

1982年に初めてマローロを訪問したという、SOLOITALIA代表の林氏にパオロ マローロ氏について解説していただきました。
「パオロ氏のすごいところは味を見るセンスです。それがとてつもないんです。醸造技術も大事ですが、どの原料をかけ合わせれば優れたグラッパができるかが、味を見ただけですぐにわかることが素晴らしい。例えば、グラッパ ディ バローロ20年は、複数ある樽をブレンドしているのですが、造っている人の舌が優れてないと高品質グラッパは生まれません。つまり、ブレンダーとしてのスキルが非常に優れているんです。

樽パオロ氏は、以前サントリーの100年祭にいらっしゃったことがあります。その時に開けた山崎にヒントを得て、帰国後に友人がいるマルサラの造り手“フローリオ”の樽を購入しに行ったそうです。それ以外にも、シェリーの樽、フランス産のアロマが強い樽を試したり、多くの試行錯誤を重ねています。その様々な樽をブレンドして、マローロの味わいを造り上げるのです。テクニカルシートがあるわけでもなく、パオロ氏だからこそなせる業です。一度見に行くとわかりますが、蒸留所には多種多様な樽があって、きっと本人は“あれが足りない、これが足りない”としているはずです」

ステンレス熟成の華やかなアロマが香るグラッパ
樽熟成が生む偉大な風格を持つグラッパ

グラッパ ディ モスカート優れた味覚を持つ当主パオロ氏にマローロのグラッパについて解説していただきました。

華やかな香りと生き生きとした果実が心地よく広がるグラッパ ディ モスカート
「小さじ1程度を少し口に入れるだけでいいんです。香りと味わいに一貫性があります。柑橘系、梨、バラの要素があり、最後に余韻としてサルビアと甘みがやってきます。飲み込んだ後には、リコリスやバラが口中に広がる典型的な味わいです。ペアリングは絶対にパネットーネですね。このグラッパを使ったチョコレートムース入りパネットーネだったり、お菓子に入れるのにも最適です。」

グラッパ ディ バローロ偉大な風格を持つ洗練された20年熟成のグラッパ ディ バローロ
「若いモスカートの場合は、熟成してないのでハーブや花の香りがありました。しかし、このグラッパ ディ バローロのように熟成が進むと、それらは減少していきドライフルーツやカカオなどが現れます。さらに熟成が進むと木樽由来のバニラやリコリスの香りになります。

5分おきに香りがいろいろと変わっていくと思います。バニラ、タバコ、石油、チョコ、リコリス。最後にまたカカオやバニラが現れてきて何回も楽しめます。この余韻の長さはバローロのグラッパだからではありません。マローロのグラッパだからです(笑)。ぜひ大きいグラスで飲んでみてください」

マローロの職人技が光る華やかなフルーツ香!
滑らかな口当たりのモスカートグラッパ
マローロ
グラッパ ディ モスカート NV
グラッパ ディ モスカート NV


当主のパオロ氏は、グラッパ ディ モスカートについて以下のように解説します。
「柑橘系、梨、バラの要素があり、最後に余韻としてサルビアと甘みがやってきます。飲み込んだ後には、リコリスやバラが口中に広がる典型的な味わいです。ペアリングは絶対にパネットーネですね。このグラッパを使ったチョコレートムース入りパネットーネだったり、お菓子に入れるのにも最適です。」
試飲コメント:色は無色透明。フルーツの繊細な香りが漂う心地よいアロマがあります。口当たりは柔らかく、美しさを感じる果実とハーブのようなニュアンスを感じます。余韻は長く、花やスパイスのような風味が鼻から抜けていきます。

樽熟成が生む偉大な風格の20年熟成グラッパ
非常に強烈で複雑なアロマが広がる洗練された逸品!
マローロ
グラッパ ディ バローロ20年 NV
グラッパ ディ バローロ20年 NV


当主のパオロ氏は、グラッパ ディ バローロ20年について以下のように解説します。
「ドライフルーツやカカオなどが現れ、さらには木樽由来のバニラやリコリスの香りがあります。5分おきに香りがいろいろと変わっていき、バニラ、タバコ、石油、チョコ、リコリスを感じます。最後にまたカカオやバニラが現れてきて何回も楽しめます。」
試飲コメント:美しい濃い琥珀色。香りは非常に力強く、そしてエレガントで複雑。ドライフルーツやスパイス、タバコなど多種多様なアロマがあり、それらが綺麗にまとまっている印象です。席を離れても鼻孔をくすぐる強烈で素敵な香りが漂います。味わいは、鋭さがありながらもまろやかな口当たりで口中を心地よく覆います。余韻は果てしなく、非常に長い間その余韻に浸ることができます。
インタビューを終えて
エリオ アルターレ、ジャコモ コンテルノ、アルド コンテルノ、パオロ スカヴィーノ、ピオ チェザーレ、プルノット、マルケージ ディ バローロなど…。数多くの偉大な造り手から、グラッパの原料であるヴィナッチャを仕入れていることに、まず驚かされました。しかも、バローロだけでなく、ブルネッロやモスカートの生産者からも仕入れており、それらもまた偉大な造り手が名を連ねています(サルヴィオーニ、チャッチ ピッコロミニ ダラゴナ、他)。

偉大なワイナリーの新鮮な搾り滓の使用に、「グラッパの編曲家」であるパオロ氏のブレンドスキルが加わることで、高品質グラッパが生まれるのだと実感しました。そのパオロ氏のブレンダーとしての能力の高さを垣間見た瞬間がありました。グラッパ ディ モスカートから試飲を始めると、パオロ氏はすらすらと表現をし始め、細かいニュアンスまでも私たちに説明してくださいました。あの林さんですら「僕らにはなかなか表現ができないと思います」と話されていたくらいです。

蒸留器についても驚きがありました。3つの蒸留器を使って1時間で1ケース分(12本)しか生産できないとのこと…!しかも、搾り滓がフレッシュなうちに蒸留しなければいけないので、3ヶ月間絶えず24時間フル回転で行っているそうです。それだけ鮮度にこだわりを持っているのだな、と感服しました。

「ぜひ大きいグラスで飲んでみてください」ということで、グラッパ ディ バローロ20年はブルゴーニュグラスで試飲してみました。通常のグラスにも注いで比較してみましたが、凄まじく香りの違いを感じ取ることができ、その場にいたみなさんが「これはすごい!」と唸っていました。

インタビュー後に、ロレンツォ氏から「実はジャパニーズウイスキーにも使われるミズナラの新樽も買ってみたんです。」というお話をいただきました。今後、日本の樽が効いた熟成グラッパがマローロから生まれるかもしれません。単一品種グラッパ、樽熟成グラッパの第一人者「マローロ」のグラッパをぜひご堪能ください。

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