歴史的土着品種「ファランギーナ」を何世代にも渡り守り続ける「クアルトミッリオ」

2018/01/25
突撃インタビュー
2018年1月17日 クアルト ミッリオ社 チロ ヴェルデ氏

古代ギリシャから続く歴史的土着品種「ファランギーナ」のオリジナルクローンを何世代にも渡り守り続ける「クアルトミッリオ」

クアルトミッリオ
2018年1月16日~1月21日までワイナリー視察研修にイタリアに行ってきました。カンパーニャ、ウンブリア、トスカーナ、アブルッツォの4州の生産者を訪ねて、カンティーナや畑を見学、生産者から直にお話を伺い、ワイン造りへのこだわり、思い等を聞きました!1日目に訪問したのはカンパーニャ州のクアルト ミッリオ。リーズナブルな価格帯でありながら、バランスのとれた軽やかな味わいが魅力で、特に日本ではレストランで人気が高いワイン「ミッリオビアンコ」と「ミッリオロッソ」を造り出しています。オーナーのチロ ヴェルデ氏にお話を聞きました。

約3000年前に古代ギリシャが伝えた土着品種「ピエディロッソ」と「ファランギーナ」

クーマ遺跡約3000年前に古代ギリシャが伝えた土着品種「ピエディロッソ」と「ファランギーナ」先ずはカンパーニャ全体の歴史についてお話いたします。紀元前8世紀頃、ギリシャがイタリアではじめて造り上げた都市、でローマ神殿の原型とされるクーマ遺跡(Acropoli di Cuma)に立ち寄りましょう。中には教会のような施設跡、高台の上にはゼウスの息子であるとされるアポロの神殿跡が残っています。海岸部に建てられた神殿跡からは外部からの侵入を防ぐ役割がありました。防衛の為に建てられましたが、生活を思わせる壁にはこの地の石灰土と石を使った造りが確認できます。

つまり、カンパーニャの歴史はローマよりも古く、ワインにおいても約3000年前にカンパーニャの土着品種であるピエディロッソとファランギーナは古代ギリシャから入ってきた非常に歴史の深いブドウなのです。

(イタリアの遺跡と言うと「ローマ」を思い起こしますが、ローマよりも歴史が古いクーマ遺跡は初めて知りました。日本人も私達一行だけ。隠れた遺跡スポットでアポロ神殿から見える海岸線が絶景でした。)

害虫「フィロキセラ」に侵されず希少な自根が残る「カンピフレグレイ」地区

地図クーマ遺跡から車で約10分程でクアルトミッリオのワイナリーに着きました。
早速畑に出てチロ氏の説明を聞きます。チロヴェルディ氏害虫「フィロキセラ」に侵されず希少な自根が残る「カンピフレグレイ」地区
私達がワイナリーを構えている場所はカンパーニャ州でも海岸部から程近いDOCカンピ フレグレイ地区にあります。1800年代末にヨーロッパ中のブドウに壊滅的被害を与えた害虫「フィロキセラ」に侵されなかった非常に数少ないエリアです。この畑には土着品種であるファランギーナを植えています。フィロキセラにも侵されなかったブドウであり、接ぎ木もしていない自根のブドウ(ピエ フランコ)のみを栽培しています。カンパーニャにおいて、ファランギーナとピエディロッソの2つブドウが古く、その後にアリアニコ種をエトルスキ(エトルリア人)が持ち込んだとされています。

古代ギリシャ人が持ち込んだ「ファランギーナ」と「ピエ ディ ロッソ」

ファランギーナとピエ ディ ロッソはローマの皇帝たちに愛されていたワインです。ピエディ ロッソはヴィーノコロンビーノ(Vino Colombino)「鳩のブドウ」という別名で呼ばれていました。このブドウを見てください。ブドウの茎の部分が鳩の足の色に似ているでしょう。そこからピエ ディ ロッソ(赤い脚)と名付けれたと言われています。ギリシャ人がブドウを植えたカンピフレグレイ地区は現在約200ヘクタールにまで広がっています。

ギリシャ時代から続くオリジナルクローンの自根を大切に守り抜く

フィロキセラ畑「フィロキセラ」が生きていく事が出来なかった火山性の黒色土壌なぜカンピフレグレイ地区がフィロキセラに侵されなかったか説明しましょう。この土を見て下さい。火山性の黒色土壌で、地中には硫黄分が強くキメの粗い組成を持っている為フィロキセラが生命力を維持したり、通り道となる穴を掘る事が出来ないのです。

ギリシャ時代から続くオリジナルクローンの自根を大切に守り抜く

クアルトミッリオではこの接ぎ木されていない希少な自根のブドウ樹の枝を地中に埋めて再度根付かせる手間をかけた栽培法(プロパッジーネ)を繰り返し続け、ギリシャ時代から続くオリジナルクローンの自根を大切に守り抜いています。つまり「カンピフレグレイのワインを飲む事」は「偉大な歴史を飲んでいる」と言えるでしょう。シチリアのDOCエトナもフィロキセラに侵されなかったエリアとして有名ですが、カンピフレグレイ地区には接ぎ木をしていないオリジナルクローンのファランギーナは全体で100ヘクタール、クアルトミッリオでは12ヘクタールを所有しています。

畑で写真「私達はテリトリーの表現を第一に考えています」

畑はカンピフレグレイの他に、内陸部ベネヴェント、アヴェリーノにも約10ヘクタール程所有しています。海に近い畑もあれば、内陸部の畑もあるので、得られるブドウからテロワールを反映した多様性のある味わいが得られます。私達はテリトリーの表現を第一に考えています。収穫時は小さなカセット(18~20キロサイズの小箱)を使っています。100%除梗ソフトプレスを行います。場合によっては除梗しない時もあります。ソフトプレスでは苦味の原因である種を潰さないように気を付けています。最大で1日に8万リットルをボトリングしています。

チロ氏のカンピフレグレイにかける熱い思いをじっくりと聞く事が出来ました。古代ギリシャから続くブドウを途方もない手間をかけて代々守り抜くヴェルディ家の姿に感動しました。

クアルトミッリオとカンパーニャ郷土料理とのマリアージュ

食事クアルトミッリオとカンパーニャ郷土料理とのマリアージュここからはクアルトミッリオ社のワインとワイナリーに併設されたレストランでカンパーニャの郷土料理とワインのペアリングを体験しました。

水牛のモッツァレラチーズはとてもミルキーで非常に円やか。クアルトミッリオ家の手作りパンや新鮮なリコッタチーズの入ったラビオリとファランギーナ、やミッリオビアンコとの相性は抜群でした。またナポリではポモドーロ(トマト)の事を「プンマローロ」と呼ぶそうで、ナポリ方言もチロ氏のお父さんに教えてもらいました。

日本未入荷のDOCカンピフレグレイ地区の白ファランギーナ2015は円やかさと火山性土壌のミネラル、アーモンドやナッツの香ばしさが綺麗に重なる完成度の高いワイン。ギリシャ時代から続く自根のオリジナルクローンによる生産量の少なさもありますが、それ以上に歴史的にみても大変希少なものだと思います。その他ファランギーナ100%のスプマンテ等も委託製造する等、カンパーニャの土着品種による様々な表現に取り組んでいます。

食事の合間にはプロのミュージシャンも入り、ご当地カンパーニャ(ナポリ)の伝統的楽曲、「オーソレミオ」「フニクリフニクラ」「サンタルチア」を披露して頂き、「ワイン」と「食事」と「音楽」による実にイタリアらしいおもてなしをしてもらいました。

清々しさにミネラル、心地よい塩味が綺麗に重なるスッキリとした飲み心地
ミッリオ ビアンコ2015
ファランギーナ75%、コーダ ディ ヴォルペ25%のブレンドになります。完全有機栽培でコルドーネスペロナート仕立てで1ヘクタール当たり4500~5500本の植密度で栽培しています。試飲コメント:(試飲は2016ヴィンテージ)柑橘の清々しさにミネラル、心地よい塩味が綺麗に重なります。軽やかなタッチながら味わいの要所は抑えていて、伸びやかな酸味がボディを美しく纏め上げています。魚介料理全般と非常に相性の良いワインで、単体でもスッキリと楽しめる懐の深さもあります。貝類を使ったサラダ、パスタ等と合わせてみたいワインです。 ミッリオ ビアンコ2015
前菜、魚料理、軽めのお肉料理まで、幅広く料理と楽しめる守備範囲の広いデイリー赤
ミッリオ ロッソ2015
ベネヴェントエリアのアリアニコ45%、カンピフレグレイエリアのピエディロッソ55%のブレンドです。完全有機栽培でコルドーネスペロナート仕立てで1ヘクタール当たり4500~5500本の植密度で栽培しています。個性の異なるブドウをブレンドするということは「ボクシング」のようなもの。ボクシングした後はとても疲れている。だからゆっくりと休ませてから飲む事が必要なんだ。酸、タンニン、果実味は纏まっていない。約1カ月間の瓶内熟成で落ち着かせてからリリースしています。試飲コメント:(試飲は2016ヴィンテージ)赤いベリーや黒い果実が入り混じる心地よい果実香にハーブやミネラルが軽やかなタッチで溶け合う香りが感じられます。飲むと、瑞々しい果実感、タンニン質は感じられますがとても細やか。ブドウの豊かな風味、イキイキとしたミネラルと酸がバランス良く調和した実に飲み心地の良い赤ワイン。前菜、魚料理、軽めのお肉料理まで、幅広く料理と楽しめる守備範囲の広いワイン。夏場は軽く冷やして楽しむと、すっきりとした味わいが楽しめます。デイリーワインとしては出色の構成度の高さがあります。 ミッリオ ロッソ2015
インタビューを終えて
カンパーニャに残るクーマ遺跡の素晴らしさ、ワイン畑の長い歴史に驚かされました。宿泊したホテルはナポリ南西の岬にあるホテルで朝起きると地中海の向こうには雄大なイスキア島が綺麗に見えました。歴史ある街を歩きながら、何気ない街並みの風情の豊かさ、海と山に囲まれたカンパーニャの奥深さに感動しました。実際にワイナリーに行ってお話を聞いてみて、古代ギリシャの時代に遡る3000年の歴史あるブドウ「ファランギーナ」、「ピエディロッソ」の偉大さを改めて知りました。「フィロキセラ」に侵されなかったエリアDOC「カンピフレグレイ」のワインは世界に誇れる大変希少なエリアだと思います。ローマよりも古い歴史を持つ重要な遺跡があちらこちらに点在しているカンパーニャはワイン好きのみならず、古代の歴史好きな方にも是非味わって欲しいエリアのワインです!
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