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2012年6月22日 ルナエ社エノロゴ ディエゴ ボゾーニ氏、営業部長ミケーレ ジャナッツァ氏
ルナエ社エノロゴ ディエゴ ボゾーニ氏、営業部長ミケーレ ジャナッツァ氏来社
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ピエモンテの南、リグーリア海沿いに東西に長いリグーリア州は大部分が山地でワイン生産量も少ないのですが、高品質なものに凝縮されているイメージがあります。今回そのリグーリア州No.1の造り手であるルナエ社のお話が聞けるとあって楽しみにしていました。 |
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リグーリアは冬は冷涼で夏は暑い特有のミクロクリマ。これがワイン造りに最適
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ディエゴ氏:リグーリアには来られたことはありますか?
トスカニー:実はちょうど先月行ってきたところなんです。その時はオリーブオイルの生産地を見てきたのですが、車で走っていてもオリーブ畑はたくさん見ましたがブドウ畑はほとんど見ませんでした。でも、トスカーナに行くときルナエ社さんの看板の前を通りました。
ディエゴ氏:本当ですか?今度は必ず寄ってくださいね。
見てこられたとおり、リグーリアはオリーブオイルが有名ですがブドウ栽培も昔から行われてきました。リグーリアは昼間は海からの暖かい風が吹き、夜は山からの涼しい風が吹くので昼夜の寒暖差が大きいんです。そのミクロクリマのおかげで酸がしっかりとあってフレッシュな味わいのワインが造られるのです。これは他の北イタリアのワインとも共通する特徴です。
リグーリアは州の70%が山と森で、平野はラスぺツィアのマグラ平野とサヴォナのアルベンガ平野の2つしかありません。ルナエ社はラスぺツィアのマグラ平野にあります。リグーリア全体のブドウ畑のうち70%がラスぺツィアにあります。 |
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1900年代から農業をやっていた家族が1966年に設立。生産本数はリグーリア州で第1位。
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ディエゴ氏:ルナエ社は私の父のパオロが1966年に設立したワイナリーですが、そのずっと前、1900年代から農業を続けてきた家族です。現在、65haの畑を所有しています。また、それ以外に決まった150のブドウ栽培農家からブドウを購入しています。この栽培農家に対して、私たちのアグロノモが栽培指導をして品質管理を行っています。栽培農家ひとりひとりは非常に小さい畑で、ワインを造るには経済的にも無理があります。私たちはそんな栽培農家たちのブドウを購入して生活の安定を与える代わりに、点在する畑のおかげで、高品質なワインを造ることができます。お互いの協力関係がうまくいっているのです。
ルナエでは年間55万本のワインを造っていますが、平均的なリグーリアの生産者はだいたい3万本。ルナエ社はリグーリアで最も生産本数が多いワイナリーです。
トスカニー:ところで、会社の名前はルナエですか?先ほどからルーネと発音されているようなのですが。
ディエゴ氏:(笑)どちらも正しいんです。LVNAEと綴りますが、これは昔ラテン語でUをVと書いていたからです。発音はルナエは昔風のラテン読み、ルーネはモダンラテン語の発音です。どちらでもいいですがモンテ物産さんはルナエと言っているので日本ではルナエにしています。
トスカニー:なるほど。
ディエゴ氏:実は古代ローマ時代、このあたりにLUNA(ルーナ:月の意味)と言う名前の町があったんです。残念ながら北方の侵略者によって滅びてしまいましたが、当時から高品質な白ワインが造られていてローマにも届けられていたほどでした。その町の名前に由来してLVNAEと言う名前を付けました。 |
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トスカーナ州と接しているエリアのコッリ ディ ルーニDOC
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ディエゴ氏:ルナエ社はコッリ ディ ルーニDOCのエリアにあります。主要品種はヴェルメンティーノ種。また、トスカーナと接していますのでサンジョヴェーゼ、カナイオーロ、チリエジョーロなどから赤ワインも造ります。
畑は、大きく分けて3つのエリアにあります。平野部で海に近い場所、丘のふもと、そして丘陵地です。それぞれ標高が違うのはもちろんですが、土質も異なります。造るワインのタイプによってどの場所の畑にするか、セレクトしています。
畑は最大で2haで、ほとんどが1ha未満の小さな畑です。
そのため機械も入りませんし、品質へのこだわりからも収穫はすべて手摘みです。
トスカニー:ルナエ社全体では白と赤の比率はどれぐらいですか?
ディエゴ氏:70%が白ワインです。リグーリア全体でみると白がもちろん多いのですが、このコッリディルーニはトスカーナに近いので赤も多いです。余談ですが、ジェノヴァ当たりではリグーリアの赤ではなくピエモンテの赤がよく飲まれていますね。 |
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オペラワインで唯一選ばれたヴェルメンティーノ
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土地(土壌)、品種(クローン)、畑の作業、人によってできるワインは違います。ただ、ヴェルメンティーノと言えばルナエ社、と認識されているところもあります。今年のヴィーニタリで開催された「オペラワイン(*)」ではアンティノリ社のピエロアンティノリ氏が「ヴェルメンティーノのルナエだ」と社長のパオロに会うなり言ってました。
(*注:オペラワイン:ヴィーニタリとワインスペクテイターがイタリア全土から100本の偉大なワインを選んで開催した特別な試飲イベント。ヴェルメンティーノ種ではルナエのエチケッタネーラだけが唯一選ばれています)
それではワインを飲みながら説明していきましょう。 |
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ブレンドしたブドウそれぞれの個性を生かし、ブドウ本来の酸とフレッシュさが引き出されたレウコテア |
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レウコテア ゴルフォ デイ ポエーティ |
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ヴェルメンティーノ、アルバローラ、グレコ、マルヴァジーアの4つのブドウをブレンドしています。畑は平野部分にあるもので、海に近く泥、砂質の土壌で、フレッシュな味わいと広がりのある香りが特徴です。
アルバローラと言うのは、ほぼこのエリアだけで造られる土着品種で、酸やフレッシュ感をもたらします。アッパッシメント(乾燥)にも向いていて、チンクエテッレで造られる有名なパッシートワイン「シャッケットラ」もこのアルバローラで造られています。
トスカニー:フルーティーでやわらかさもあって、でも引き締まった酸とミネラルもあって、本当にバランスが良くって美味しいです。
ディエゴ氏:ありがとうございます。リグーリアはヴェルメンティーノが有名ですが、このレウコテアはやわらかな味わいときれいな香りで女性の方に人気です。
フルーツの酸味とミネラルもあり、魚料理と抜群の相性です。イワシのマリネや魚のフリットによく合います。 |
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ワイナリーの顔、昔から造られている「エチケッタ グリージャ」 |
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エチケッタ グリージャ コッリ ディ ルーニ ヴェルメンティーノ |
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ルナエ社で昔から造っているヴェルメンティーノで、ルナエ社で一番有名なワインだと思います。ワイナリーを代表する、顔と言ってもいい存在です。
丘のふもと部分の畑と、少し標高の高いところの畑のヴェルメンティーノを使っています。白ワインのアロマ、フレッシュ感を保つことに注力した醸造を行います。それはソフトプレスであり、低温発酵であり、化学的なものを一切使わないことであったり、とにかくすべての醸造過程で温度管理に気を付けています。
低温発酵で徐々にアルコールに変えていくことで、ブドウへのストレスを極力かけないようにしています。 |
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3年連続トレビッキエリ。畑の作業も醸造所の仕事も特に厳しく管理して造られるルナエのフラッグシップ
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エチケッタ ネーラ コッリ ディ ルーニ ヴェルメンティーノ |
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ディエゴ氏:ルナエのフラッグシップです。毎年、一番できのいい畑から、一番いいブドウだけを選んで造ります。畑の作業から、醸造所での仕事も特に厳しく管理しています。標高の高い畑のブドウを使いますがここの土壌は、大きな石が多く、豊富なミネラルが含まれています。
エチケッタネーラのブドウを選ぶうえで化学的な分析もしますが、父と一緒に実際に粒を食べ、長年の経験で培った味覚の判断で最も良いブドウを選ぶことにしています。
他の白ワインとの違いはコールドマセラシオンをすること。24~48時間かけて、より複雑さを果肉から引き出しています。熟成期間も長めです。香りも味わいも複雑味があるのがお分かりになると思います。ハーブや松の樹脂、黄色い果実も感じます。しっかりとしたミネラル感があり、厚みとボディがありますが後味はシャープです。このワインの良さを味わうため、10度ぐらいを目安にあまり冷えすぎないようにして下さい。
トスカニー:確かに、これぐらいの温度が美味しいですね。香りにも味わいにも深みがあります。
ディエゴ氏:このワインにはよりボディのある料理があります。トリッパやリグーリア名物ブッリーダ(数種類の魚の切り身をトマトのコンカッセと一緒にワインで煮た料理)、白身肉料理がオススメです。
トスカニー:ヴェルメンティーノはトスカーナやサルデーニャでも造られていますが、何が違うのですか?
ディエゴ氏:一般的には、リグーリアは昼夜の気温差がある温暖な気候なので、しっかりとした酸味とフルーティさやフレッシュさ、ミネラルのバランスがとれたとてもエレガントなブドウになります。トスカーナやサルデーニャはより乾燥した気候で昼夜の気温差はあまりありません。特にサルデーニャは深い色合いで熟したトロピカルフルーツの香りが強く感じられます。 |
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3つの土着品種で造るフルーティーな赤 |
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チルクス リグーリア デイ レヴァンテ |
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ディエゴ氏:ルナエではリグーリアの古代品種の研究も行っています。このワインはマッサレータ、アルバロッサ、アリカンテの3つの土着品種のブレンドで造ります。マッサレータはほとんど忘れられていた品種でしたが、ここ10年ぐらいで再評価されてきました。実はマッサレータは栽培がとても難しい品種なんです。だから忘れられてしまっていたのですが。
醸造はすべてステンレスタンクで行っていますが、これには2つの理由があります。1つ目は3つの品種の特徴をしっかりと引き出すこと、2つ目はフレッシュで飲みやすい、若いタイプのワインにすることです。
きれいなルビー色です。タンニンも強くなく、フルーティです。フレッシュな味わいなのでトマトベースの魚料理との相性が抜群です。サラミにも合いますよ。
トスカニー:このあたりでもサラミは造られているのですか?
ディエゴ氏:すぐ近くの大理石の採石地として有名なカッラーラ地方で「ラルド ディ コロンナータIGP」が造られます。これとの相性はいいですよ |
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ルナエ社の伝統的赤ワイン。トスカーナとはまた違う特徴があります |
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コッリ ディ ルーニ ロッソ |
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ディエゴ氏:コッリディルーニDOCはトスカーナと接しているだけでなく、トスカーナ州の中にも同じDOCがあります。使っている品種もサンジョヴェーゼ、カナイオーロネーロ、チリエジョーロと、トスカーナで一般的に栽培されているブドウです。ですが、トスカーナワインとは違う味わいを感じて頂けるかと思います。
トスカニー:確かに、よりまろやかな感じですね。優しいボディです。
ディエゴ氏:このワインはルナエ社で伝統的に造られていて、祖父の代から同じ方法で造っています。20hlの大樽で熟成させていますが、これはサンジョヴェーゼのタンニンを生かすためです。バニラや樽の風味が出るのを避けるためバリックは使いません。サクランボやベリー系のニュアンスが、フレッシュな酸とタンニンとうまいぐあいにバランスをとっています。赤身肉の料理と合わせて頂くといいと思います。 |
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収量を落とし、厳選したブドウで造るリグーリアの重厚な赤 |
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ニッコロ クイント リゼルヴァ コッリ ディ ルーニ ロッソ |
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ディエゴ氏:サンジョヴェーゼとメルロー、そして土着品種のポッレーラネーラで造っています。いずれも丘の上の樹齢の高いブドウです。この赤はバリックで熟成させていますが、樽のニュアンスが強くならないよう、新樽比率は下げ、2年目、3年目の樽を使っています。
ブラックカラントやチェリーの凝縮した香り、タンニンはしっかり感じますがとてもなめらかです。重厚感とともに酸味もあり、とてもバランスが取れています。後味がとてもきれいで爽やかさも感じます。
トスカニー:こんなに重厚感のある赤がリグーリアにあるなんて、驚きました。
ディエゴ氏:リグーリアと言うと白ワインのイメージが強いですが、収量を落とし、セレクトしたブドウから造ると重厚な赤もできると言うことを証明しているワインです。仔羊肉のフリットや鶏肉の煮込み料理、それからジビエや熟成させたペコリーノチーズなどと相性がいいです。 |
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■インタビューを終えて |
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平地が少なく、山が多いリグーリア州で、ワインを造ることにも困難なリグーリアでどうやってこんなにハイレベルなワインを造っているんだろう、とお話を聞く前は想像していましたが、ブドウ栽培に適した気候と土壌を生かし、長年の経験で培ってきたルナエ社の高度なこだわりのたまものだと言うことがわかりました。とにかく、きれいな酸味とミネラルが一杯に詰まった白ワインの美味しさに感動しました。
ワイナリーを設立されたディエゴさんのお父さんのパオロ氏は技術の向上にいち早く取り組まれ、また、一般の消費者にも広くルナエ社のことを知ってもらうためにワイン博物館も造ったりと、さまざまな取り組みを続けてきたそうです。
リグーリアを代表するルナエ社のワイン、ぜひ多くの人に飲んでいただきたいです。 |
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