名門「コルデロ ディ モンテツェモロ」が手掛けるクリュバローロとフラッグシップバローロの垂直試飲!

2023/10/30
突撃インタビュー
 
2023年5月19日 アルベルト コルデロ ディ モンテツェモロ氏

ラ モッラの丘を700年間守り継ぐ名門「コルデロ ディ モンテツェモロ」が手掛けるクリュバローロとフラッグシップバローロの垂直試飲!ワインセミナーに行ってきました!

19代目当主アルベルト氏と通訳の宮嶋氏
今回はバローロの名門、コルデロ ディ モンテツェモロの19代目当主アルベルト氏の登壇するワインセミナーに参加してきました!コルデロ ディ モンテツェモロはバローロに唯一残る貴族階級所有のワイナリーとして、680年にも渡り守ってきた土地でワインづくりに取り組んでいます。2種のクリュバローロに、フラッグシップワインである「BAROLO MONFALLETTO」の2019/2011/1999/1982年の垂直試飲を、アルベルト氏、通訳の宮嶋氏の解説でいただいてまいりました。

1340年からバローロの中心地ラ モッラ村の土地を受け継いできた名門ワイナリー

-名門ワイナリーのバックグラウンド
皆様こんにちは。コルデロ ディ モンテツェモロの19代目当主のアルベルトです。モンテツェモロ家はサヴォイア家(イタリアをほとんど支配していた貴族)の宮廷にいた貴族なので、非常に歴史のある家系になります。ピエモンテはイタリア統一前に戦争を沢山していたのですが、モンテツェモロ家は主に軍事、外交の分野で18世紀から19世紀にかけて活躍していました。

ワインと結びついた歴史は比較的新しく、女性の系列から始まっています。かつてバローロ地区を広く支配していたファレッティ家が(私たちがいまいる)モンファレットの丘を1340年からずっと所有していたのですが、そのファレッティ家の最後の女性と私のひいおじいさんが結婚したのです。そしてその女性、私のひいおばあさんが1941年に亡くなった時に、ファレッティ家からモンテツェモロ家に土地が引き継がれて今に至ります。

そして2人の間に生まれた私の祖父、パオロがワインづくりをしていた1920年代、1930年代当時、既にワインは重要なものになっていました。第二次世界大戦後は特に近代化が進み、ワインの品質が非常に上がっていきます。

-時代の常識にとらわれない醸造施設の建設
パオロの後、私の父であるジョバンニがワイナリーで働き始めたのが1980年代の初めです。父は働き始めるとすぐに、ラモッラ村の中心地から4キロ離れたブドウ畑のど真ん中に新しい醸造所をつくりました。

昔はみんなそうだったのですが、醸造所は町や村の中にあったので、父が新しい醸造所をつくるまではラモッラ村の醸造所まで収穫したブドウを持ってこないといけなかったのです。4キロといっても昔は道も舗装されていなかったので、裸の道を4キロ、それも当時のネッビオーロの収穫は11月だったのでもう雨が降り始めていた中のことで、ブドウを4キロ運ぶというのはワインの品質上あまりいいことではありませんでした。

そんな中40年前にブドウ畑のど真ん中に醸造所を立てて、それも当時は珍しかったステンレスタンクを導入したりと、父は革新的で、先見の明があった人物でした。

1980年に建てたセラーを今でも使っていますし、多少の変更やアップデートはありますが、基本的には同じ場所、同じやり方でワインをつくっています。

ランゲ地区には珍しいひとかたまりのブドウ畑・丘を所有

-バローロの景観のランドマーク「丘の上のレバノン杉」に見守られる畑
ランゲ地方は標高のアップダウンが200m~900m程まであり、一般に、一番標高の高いブドウ畑で550m程です。一部、アルタランガの畑は標高600m~900mのところにあります。

ブドウ畑は全部で56ha所有しています。ここからバローロ、バルベーラ、ドルチェット、アルネイスをつくっています。他からブドウを買うことはなく、自社畑による最高の品質を目指しています。10年前から有機栽培に取り組み、認証も得ています。化学合成物質は使っていません。

モンファレットの丘に育つレバノン杉

モンファレットの丘<夏の景色>

モンファレットの丘<冬の景色>

この写真はランゲ地方の象徴なのですが、モンファレットの丘の一番高いところにレバノン杉が見えます。私たちがランゲ地方に帰るとこの風景が必ず出迎えてくれる、そんな象徴的な風景です。

この木が植えられたのが1856年なので、150年以上の樹齢になります。結婚の記念のお祝いに、結婚式の当日に植樹したそうです。二人の夫婦の愛と同時に、大地に対する愛を示すもので、安定した関係を将来の世代にも伝えるために、植える木は太くしっかりと育つ木である必要がありました。

-ひとかたまりの畑だからこそできる、手間暇をかけた手入れとこだわりの有機栽培
そしてこのモンファレットの丘には28haの畑があるのですが、いかに一つの塊になってブドウ畑があるかということもお分かりいただけるかと思います。こうした、ちょうど丘になっていてその一番高いところに家やワイナリー、醸造所があるので、そこから東側、南側、西側、北側と畑が広がっていきます。そして南だったらネッビオーロ、北だったらドルチェット、とそれぞれの傾斜にあった品種が植えられています。

南、又は南東、南西はやはり太陽が一番当たるのでネッビオーロが植えられていて、北側の様に少し涼しいところはドルチェットや白ブドウのアルネイスを植えています。

ひとかたまりのブドウ畑

普通ランゲ地方の生産者っていうのは、いろんなところにちょっとずつ畑を持っている人が多いのですが、こういう風に一塊に丘を持っているというのは私たちと、フォンタナフレッダ、チェレット、カヴァロットくらいです。

この地域の生産者の95%は色々な村にちょっとずつ畑を持っている、という場合が多いです。この様に点在して畑をもっていると、多様性はありますが色々な所へ行ったり来たりしなければならず、当然栽培は難しくなります。ただこのあたりは雹がふるので、一か所が被害にあっても、他のところは平気だったりして、雹害のリスクは少なくなりますね。

それに対して私たちの様にまとまった畑を持っていると、ブドウ畑が一か所にあるのでそれぞれの畑により手間をかけられて、いい栽培をすることができます。トラックを移動させるにも非常に時間がかかるものですが、それも必要ありません。例えば、2014年みたいに非常に雨が多くて病害対策を沢山しないといけないような時でも、一か所であれば直ぐに対応できます。遠いところだとやり切れません。この点は恵まれていますね。

また私たちは有機栽培をしていますが、ご存じのように隣接する畑が有機栽培をしていないとその影響を受けてしまいますので、この点もまとまった畑を所有する利点です。

畑を一か所に持つことで、「モンファレットの特徴」というものがすべてのワインに共通して刻まれています。

雹害が起きてしまうと全滅してしまうリスクはあるのですが、幸いなことにここ100年くらいは全滅する様な雹害は起きていません。

 

バローロボーイズの登場がもたらした「大樽派」「バリック派」論争にも組せず、高品質なワインづくりと自らのこだわりを追求

-「大樽派vsバリック派」、「伝統派vsモダン派」なんて関係ない
次にセラーの写真を見てもらえれば大樽とバリックの両方を使っていることがわかっていただけます。1980年代には「大樽派」「バリック派」といった争いもありましたが、私たちはどちらにも組せず、どちらも使用していました。

大樽とバリックを併用

昔から素材に合わせて使い分けています。ブドウの特質を見てから、大樽に適しているのか、バリックに適しているのか判断していき、畑ごと、年ごとに変わります。最後にはそれぞれで熟成させたワインをブレンドして仕上げます。

ワイナリーの特徴として、あまりに長い樽熟成をすることはありません。1950年代~1960年代というのは、この地方は大樽に6年とか、10年とか、売れなければいつまでも入れていた人が多い時代でした。注文が来てから瓶詰めするというのが多かったのです。そんな中、当時から私の祖父は瓶熟成をして、デリケートなワインをつくる生産者ということで知られていました。それで今でも、バローロは18ヵ月から20ヵ月樽熟成をしたら瓶詰めをします。そして長い間瓶熟成をしてからリリースします。瓶詰めした後、1年半ほど寝かせてからのリリースです。

現行の2019年ヴィンテージは2ヵ月前にリリースされましたが、これは2021年の夏に瓶詰めされました。それでは最初に3種類のバローロ(2019年ヴィンテージ)を試飲したいと思います。

ここからは試飲に移ります!

コルデロ ディ モンテツェモロのバローロ

~2019年ヴィンテージについて~
2019年は非常にいいヴィンテージです。2019、2020、2021年とすべていいヴィンテージで、後になるほどどんどん良くなります。ただ2019年は決して簡単なヴィンテージではありませんでした。

冬の間は暖かく芽吹きは早かったのですが、4~5月は非常に涼しくて、雨が多かったため、生育サイクルが少々遅くなりました。特にこの時期は病害対策を沢山行い、キャノピーマネジメントも非常に難しかったです。

夏は暑かったですが、暑すぎることはなく、適度に雨が降ったのでブドウは干ばつストレスに苦しむこともありませんでした。そうして収穫の準備が整ってきていたのですが、9月5日に雹が降りました。待っていたら悪くなってしまうので、早熟品種であるドルチェットや白ブドウは雹の後すぐに収穫しました。幸いなことに9月5日以降は素晴らしい天候が戻ってきてくれたので、一部雹の被害があったネッビオーロの畑では、5~6人のチームで悪くなってしまったところをピンセットで全部取っていく様に細かく綺麗に掃除をしました。

そして10月9日から15日にかけて収穫したのですが、ブドウは本当に素晴らしい状態でした。

1.BAROLO MONFALLETTO 2019 / ワイナリーのフラッグシップワイン
バローロは3種類作っています。

「MONFALLETTO」は一番生産量の多いバローロで、昔からつくっているラベルでもあり、一番重要なラベルでもあります。私たちのワイナリーの周り、モンファレットの丘の周りにあるすべての畑のブドウのブレンドです。

ここには14haのブドウ畑があって、標高の高低もあります。また東向き、西向き、南向き、と各方位に畑がありますし、樹齢は10年から60年を超すものまであり多様です。それぞれの畑の区画ごとに収穫して、区画ごとに醸造、別々に熟成させています。最後にブレンドして、瓶熟成をさせていきます。「MONFALLETTO」には昔からラモッラ村ならではの特徴が現れています。非常に柔らかくて、若い時から楽しめるバローロです。

では次は白色ラベルのバローロ、単一畑のバローロを試飲していきましょう。

2.BAROLO GATTERA 2019 / MGAガッテーラの厳選したブドウのみを使用
「GATTERA」はモンファレットの丘の一部で、MGA(追加地理言及)になっています。モンファレットの8割程が協会が認めたMGAの単一畑なのですが、その中のガッテーラという畑になります。

「GATTERA」は、MGAに認定されているガッテーラの畑のブドウ全部を使うわけではなくて、畑の中でも古木で、小さな房を付ける木を選んでそれだけを収穫してこのワインをつくっています。一つの50~60ヘクトリットルのタンクだけで発酵させます。

モンファレットの丘から造られるワインの中でも、一番凝縮感があって、表現力に富んだワインになっています。

初めに飲んでいただいた「MONFALLETTO」は、モンファレットから生まれるワインらしい、喜ばしさとか、直ぐに楽しめるとか、非常にデリケートであるというラモッラの特徴を忠実に再現する様にしています。

それに対して「GATTERA」は同じテロワールなんだけれど、より凝縮感があって、非常に力強い表現ができるワインになっています。より肉厚で、絹の様な口当たり、っていうのはいかにもラモッラって感じです。

ラモッラというのはだいたい赤い果実のニュアンスがありますが、「MONFALLETTO」はフレッシュな赤い果実の感じなのに対して、「GATTERA」は赤い果実でもより熟れた果実。またはダークチェリーの様なトーンが出てくると思います。

モンファレットの丘の畑地図

3.BAROLO ENRICO VI 2019 / 夢の畑「ヴィッレーロ」から生まれるクリュ バローロ
これはコルデロ ディ モンテツェモロがつくるバローロの中で唯一ラモッラ村のAnnunziata地区以外の畑から来ているブドウでつくられています。

畑はカステリオーネファレット村にある「ヴィッレーロ」という有名な畑の中に2.2ha所有しています。大昔からとても有名な単一畑なので、ランゲ地区の生産者にとっては、このヴィッレーロに畑を持つというのは夢な訳です。

ヴィッレーロは全部で22haですが、17の生産者が所有しています。その中でも、私たちは一番いい区画を所有しています。標高は300mくらいなので、だいたいモンファレットと同じくらいです。砂が多く、マグネシウムを多く含むラモッラの土壌に対して、ヴィッレーロはより硬い粘土で石灰、鉄分を多く含む土壌です。

非常に男性的なバローロができる畑です。土っぽさとか、ローズマリーやミントのトーンが出やすい土壌です。力強いワインができるのと同時に非常にエレガントなワインができる土壌で、タンニンがより強くなります。「MONFALLETTO」や、「GATTERA」に比べるとより甘みを感じさせるワインという風に考えています。

ガッテーラのタンニンはヴィッレーロより少ないけれど、ミドルパレットでタイトになるので、だからそういう風に考える人もいます。

宮嶋氏)凄い土っぽさ、アーシーって言われるトーンがわかりますよね。あとはなめし皮のトーンも感じられて全く違いますね。セッラ ルンガのニュアンスに近いかもしれません。「GATTERA」と「ENRICO VI」を飲み比べると、「GATTERA」の方が優しいんだけれど、ミドルパレットからタイトになるので、逆にまだ飲み頃ではないという印象。「ENRICO VI」の方が力強いんだけど、口の中で広がるから、ある意味それが飲み頃と考えれば早く飲めるという考え方になるそうです。普通はヴィッレーロの方(「ENRICO VI」)が時間がかかる畑といわれているのだけど、そういう考え方もあるということですね。包み込んでくれるトーンがヴィッレーロの方があるかなと思います。

-ENRICO VI = エンリコ6世の名前の由来
ヴィッレーロの畑は、私の祖父が1959年に購入しました。エンリコ セスト(エンリコ6世)という名前がついたワインですが、この年、祖父に第6子のエンリコが生まれたことに由来しています。その後、「ENRICO VI」は1974年に初リリースされました。

1959年に畑を買ってから1974年まで、単一畑のワインをつくらなかったというのは、ブドウ畑の木が古かったり、やり直さないといけない部分があったためです。これを全部直していき、完成したのが1974年でした。

宮嶋氏)ヴィッレーロほどの畑を持っていて名前に入れないのはもったいなくありませんか?

2010年までは「エンリコ・セスト・フロム・カステル・ファレット・ヴィッレーロ」と名乗っていました。ただ2010年に出来たMGAの法律が「ブドウ畑の名前を名乗るときは始めにMGAの名前を付けないとダメ」というもので、正式にヴィッレーロを名前に使おうとすると「バローロ ヴィッレーロ ヴィーニャ エンリコ セスト」と書かなくてはいけなくなる。そうすると、私たちはただでさえ名前が長いから、「バローロ ヴィッレーロ ヴィーニャ エンリコ セスト コルデロ ディ モンテツェモロ」と名前が長くなり過ぎるので、「BAROLO ENRICO VI」だけにしました。(笑)

~垂直試飲~
4.BAROLO MONFALLETTO 2011
今回は私の個人的なコレクションから、古いヴィンテージを3つ持ってきました。10年、20年、30年と熟成したワインの違いを見るために、今日は「MONFALLETTO」で垂直試飲をしていきます。

デリケートで繊細なワインは熟成しないと勘違いしている方が時々いますが、そういうことは全然ないので、「MONFALLETTO」の様な繊細でデリケートなワインもちゃんと熟成するということをお分かりいただけるかと思います。

「BAROLO MONFALLETTO 2011」は既に13年が経っていますね。バローロを飲むには最高の瞬間だと思います。50年や60年モノを飲むチャンスもあるのですが、これは非常に古いヴィンテージになります。非常においしいのですが、50年、60年と経つと瓶差が激しく、瓶によってだいぶ味わいが違ってきます。もちろんコルクの状態や保存状態によっても全然変わってきますよね。それに対して10年から15年ほどのバローロはまさに飲み頃です。いろんなリスクが少ないですし、ちゃんと保存していればボトルもより均一的な味わいです。まだ若い面もありますが熟成からくる柔らかさも出てきているヴィンテージで、私の考えでは、安心してバローロを楽しむなら10年~15年モノがリスクや、期待と失望のアップダウンが少なく楽しめると思っています。

2011年は非常に暑くて、非常に気候のいいヴィンテージでした。生産量も多く、ちょうど2004年みたいな感じ。そういう意味でも非常にいいヴィンテージです。

ご存じの様に、イタリアだけでなくヨーロッパ全体で生産量が落ちてきています。そうした中、この20年間くらいで、品質も良くて生産量も多かった年というのは珍しい。その内の一つが2004年や2011年になります。

5.BAROLO MONFALLETTO 1999
1999年は非常に凝縮感のある力強いヴィンテージで、非常にゆっくりとブドウが成熟したヴィンテージです。非常に晩熟で、10月半ばから後半にかけて収穫しました。こういうヴィンテージはドライフラワー、アロマティックハーブ、薬草などのトーンが感じられます。

まだタンニンが強いヴィンテージなので、口の中でタンニンが感じられます。1999年は本当にパワフルで正面からドンっと来るいいヴィンテージですね。2001年もすごくいいヴィンテージなんだけれど、こちらはすごく気まぐれで機嫌がいい時と悪い時の差が激しいヴィンテージ。1999年は常に安定してますよね。

最初に飲んだ「BAROLO MONFALLETTO 2019」とはちょうど20年の差がありますが、飲み比べると1999年のタンニンがいかにまだ若いかというのがわかります。それほど、まだ若い、熟成がゆっくりと進んでいるということですね。

6.BAROLO MONFALLETTO 1982
この1982年も偉大なヴィンテージで、私はまだ1歳だったのであまり覚えていませんが、今から話すことは父から聞いたことになります。父を信じて話します。(笑)

1980年代まではランゲ地区にはいいヴィンテージが10年に3回程度しかありませんでした。その内のいいヴィンテージの一つが1982年です。当時、60年代も70年代も80年代も今より雨がはるかに多かったので、特に晩熟なネッビオーロの場合は収穫の時期に雨が降ることが多かったのです。そのため、最後の最後に雨のせいでブドウが成熟しきらないということがよくあったそうです。だから昔の方がタンニンが堅く、最後のあとひとつのタンニンのフェノール類の成熟がないので非常に青いトーンが出やすいのです。

ただ1982年はそういうことが全くなくて、秋は乾燥して雨も少なかったため、問題なく成熟した年でした。

-古酒の楽しみ方とは
こういう古いバローロを飲むときに私は感動するのですが、バローロは熟成香がすごく出ても、酸由来のフレッシュさがキープされますよね。40年経っても酸とタンニンが生き生きしているというのはネッビオーロの特徴ですね。

15年から20年モノのバローロを飲む時と、30年以上のバローロを飲むときは頭の中を展開しないといけません。なぜなら後者はより熟成の面が主に表に出てくるので、同じものを期待しても意味がないからです。

そういう意味で、こういうのは飲んですぐに美味しくない、味がないというよりも、徐々にこの世界に入っていく様な姿勢が大切です。10年~15年くらいのワインだったら日頃と同じような感覚ですぐに飲んでおいしいかどうかって言えるかもしれませんが、こういうのは古酒の世界ですので、私でも一口目二口目三口目まではちょっとなかなか戸惑いがあって、でもそこから段々に熟成感を楽しむ世界に入っていくっていう感じです。

アルベルト氏より最後にひとこと

私たちのバローロはどれも、食事とともに楽しんでもらえるように考えてつくられたワインです。だから仕方がないのですが、今日の様に食事抜きに試飲している時というのは、本来のワインが持っている可能性の全てを味わえてはいません。ぜひ食事と併せて、本来の真価をお楽しみください。

本日はこの試飲会に参加してくださり、本当にありがとうございました。私たちのワインを気に入っていただけたことを願っております。またランゲ地方、それからバローロに関する理解を深める機会となっていたら幸いです。ランゲ地方は非常に複雑な地方なので、この様にそれぞれの生産者が来た機会に、その話を聞いていただいて、ワインの飲み比べていただくとより深い理解が生まれると思います。もっと深くワイナリーを理解したいと思っていただけたなら、ぜひラモッラ村にお越しください。本当にありがとうございました。

モンファレットの特徴を表すフラグシップ バローロ
バローロ モンファレット 2019
バローロ モンファレット 2019


アルべルト氏:
モンファレットの丘の周りにあるすべての畑のブドウのブレンドです。

それぞれの畑の区画ごとに収穫し、区画ごとに醸造、別々に熟成。非常に柔らかくて、若い時から楽しめるバローロです。

試飲コメント:オレンジの色調を帯びたルビーレッド色。モンファレットから生まれるワインらしい、喜ばしさ、直ぐに楽しめる、非常にデリケートであるというラモッラの特徴が忠実に再現されています。フレッシュな赤い果実のトーン。滑らかな細かいタンニンが印象的なフルボディ。

MGAガッテーラの厳選したブドウのみを使用
バローロ ガッテーラ 2019
バローロ ガッテーラ 2019


アルべルト氏:
「GATTERA」はモンファレットの丘の一部で、MGA(追加地理言及)になっています。

MGAに認定されているガッテーラの畑のブドウ全部を使うわけではなくて、畑の中でも古木で、小さな房を付ける木を選んでそれだけを収穫してこのワインをつくっています。一つの50~60ヘクトリットルのタンクだけで発酵させます。モンファレットの丘から造られるワインの中でも、一番凝縮感があって、表現力に富んだワインになっています。

試飲コメント:濃厚なガーネットレッド色。赤い果実でもより熟れた果実。またはダークチェリーの様なトーン。「MONFALLETTO」に比べて、より力強く肉厚、絹の様な口当たり。

夢の畑「ヴィッレーロ」から生まれるクリュ バローロ
バローロ エンリコ VI 2019
バローロ エンリコ VI 2019


アルべルト氏:
畑はカステリオーネファレット村にある「ヴィッレーロ」という有名な畑の中に2.2ha所有しています。非常に男性的なバローロができる畑で、砂が多く、マグネシウムを多く含むラモッラの土壌に対して、ヴィッレーロはより硬い粘土で石灰、鉄分を多く含む土壌です。

この土壌から力強く、同時に非常にエレガントなワインが生まれます。

試飲コメント:深いガーネットレッド色。アーシーな土っぽさ、ローズマリーやミントのトーン。上質で力強いタンニンが特徴的で、「MONFALLETTO」や、「GATTERA」に比べるとより甘みを感じさせる味わい。酸も豊かで長期熟成に耐え得るポテンシャル。
インタビューを終えて
3歳から5歳くらいのころから、ワイン造りしているところに行っては「何でこんなことをしているの?」と一生懸命に、好奇心をもって聞いていたというアルベルト氏。子どもの頃から農業に対する情熱を持っていて、「いまでもワインづくりを堪能しています」と笑って話してくれたのが印象的でした。

今回は現行の「MONFALLETTO」「GATTERA」「ENRICO VI」の他に、「MONFALLETTO」のバックヴィンテージを試飲させていただきました。40年間に及ぶ熟成の違いを体験させていただき、2011年(10年目)のフレッシュさと熟成感の絶妙なバランスも、1982年(40年目)の時代背景を踏まえた古酒の楽しさも、とても貴重な経験となりました。何十年もワインを寝かせておくのは簡単なことではありませんが、興味を持っていただいたお客様はぜひ今のうちにセラーに1本忍ばせておいてはいかがでしょうか。現行の2019年も、これに続く数年もとてもいいヴィンテージとのことでした!今飲むのにも、そうした楽しみを込めるのにも、おすすめできるワインです。

おじいさん、お父さんとそれぞれの代で新しいことにチャレンジし、開拓と革新を続けてきたコルデロ ディ モンテツェモロ。アルベルト氏の話の中にも、2033年に初リリースできる予定という100%自社畑ブドウでつくるアルタランガや、試験的に始めているイタリア土着品種の栽培など、新しい挑戦の種が散りばめられていました。伝統と革新、両方の文化を持ち合わせるコルデロ ディ モンテツェモロからは今後も目が離せません。

19代目当主アルベルト氏とトスカニー
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