遥か遠い昔より造り続けられるカンパーニャ州を代表する2つのDOCG白ワイン「フィアーノ ディ アヴェッリーノ」「グレコ ディ トゥーフォ」その特徴とおすすめ10選

2024/06/07

パエストゥム ネプチューン神殿
フィアーノ ディ アヴェッリーノとグレコ ディトゥーフォは、カンパーニャ州を代表するDOCG白ワインです。どちらも内陸部に位置するアヴェッリーノ県イルピニア地方で造られています。しっかりとした酸と豊富なミネラルを持ち、長期熟成能力にも秀いでたワイン達です。古代ローマ時代の記録にも記されている歴史ある銘酒です。

注目の地!カンパーニャ州

ローマ、ミラノに次ぐイタリア第三の都市ナポリを州都とするカンパーニャ州。大昔から重要な役割を担ってきた州で、古代ギリシャ時代・ローマ時代のカンパーニャ州は、世界でも最も豊かな地方とされていました。ワイン造りにおいても、理想的環境といわれる恵まれた自然条件の中、古代より人々に愛されるワインを造り続ける長い歴史を持つ地です。
ナポリ

ポンペイ遺跡やアマルフィの海岸、青の洞窟で有名なカプリ島などを目当てに多くの人々が訪れるカンパーニャ州では、ワインの消費量が生産量を上回ります。それに加え、恵まれた自然環境に甘えたといわれるワイン造りが行われた結果、カンパーニャ州のワインには低迷期と呼ばれる時期がありました。

その流れを断ち切ったのは、1878年設立のマストロベラルディーノ社です。カンパーニャ州のワインにすべてを捧げ、バルクワイン産地からの脱却に成功しました。品質を重視し、アリアニコだけではなく、フィアーノやグレコといった土着品種がテロワールを最大限に表現できる環境を保護。国際品種への植え替えやバリックを多用したブームに乗ったワイン造りとは縁のない道を歩むカンパーニャ州ワインの歩みを築きました。その功績は、イタリアワイン界の誇りと称えられています。

1986年。長らくマストロベラルディーノ社の独占状態が続いていた中、最大のライバルと呼ばれるフェウディ ディ サングレゴリオ社が登場します。彼らの成功をきっかけに新しい生産者が増えるようになり、カンパーニャ州ワインは、百花繚乱の時代に突入しました。その勢いは未だ止まらず、カンパーニャ州全域で様々な土着品種によるワインの生産が活発に行われています。イタリア20州で、最も勢いのある州ともいえる注目の産地です。

DOCGフィアーノ ディ アヴェッリーノ

DOCGフィアーノ ディ アヴェッリーノ
フィアーノ85%以上、グレコ ビアンコ、コーダ ディ ヴォルペ、トレッビアーノ トスカーノ15%まで使用可能。香りを大切にするため、醸造にはステンレスタンクを用いられることが多い。白や黄色の花、洋ナシ、青リンゴ、ハーブ、ヘーゼルナッツなどの優美な香りが特徴的。酸とミネラルの相性が良く、柔らかな口当たり、フレッシュなタイプから複雑で深みのあるふくよかなタイプ、しなやかなエレガントさを持つタイプと様々な味わいのワインが造られています。リゼルヴァは、最低12ヵ月の熟成期間を設けています。アカシアのはちみつ、杏などの甘やかなニュアンスが現れ、非常になめらかで気品に満ちた装いを纏います。長期熟成によって、このワインの真髄に迫る品格の良さが感じられます。
フィアーノ

品種フィアーノ
フィアーノはイタリアが誇る最高の白ブドウのひとつといわれ、高い酸を保持することができ、長期熟成能力にも長けています。小さな実に厚い皮を持ちますが、フェノール分は少なく、気品に溢れた優美さを持つワインを生みます。古代ギリシャ時代にも栽培されていた可能性のある古い品種で、起源は謎に包まれていますが、ローマ時代には、アピアニス(ラテン語で「ミツバチに愛された」の意)と呼ばれていたといういう記録が残っています。ブドウが甘く蜂が寄ってくる様から名づけられた説が有力です。13世紀前半にフィアーノという呼び名が使われ始められたようです。カンパーニャ州を中心に中南イタリアとシチリア島で栽培されています。

DOCGグレコ ディ トゥーフォ

DOCGグレコ ディ トゥーフォ
グレコ85%以上、コーダ ディ ヴォルペ15%まで使用可能。トゥーフォ(火山性凝灰岩)で良く育つギリシャのブドウの名で親しまれています。トゥーフォ村周辺の限られた地区で生産されます。村の名前も土壌由来の説が有力で、古くよりこの地に根付いているワインです。リンゴ、洋ナシ、桃、アプリコットなどの新鮮な果実の香りとはちみつやアーモンドなどの甘やかで香ばしい香り。シンプルで控え目な味わいのものから、フレッシュな酸の勢いを活かしたアグレッシブなタイプ、凝縮したボディを持った実直タイプなど様々なタイプのワインができます。リゼルヴァの法定熟成期間は、12ヵ月です。
グレコ

品種グレコ
グレコはギリシャの意味を持つブドウ品種で、起源は明らかではありませんが、約2500年前にギリシャより持ち運ばれたともいわれる品種です。グレコ ディ ナポリやグレコ ディ ヴェスヴィオなどいくつか別の名前で呼ばれることもありますが、近年の調査結果によるとカラブリア州を代表するグレコ ビアンコをはじめとする、グレコと名がつく他の品種とは遺伝的関りを持たない別品種であることがわかっています。果皮は薄くデリケート、果実にはフェノール物質が豊富でワインに厚みを与えます。また非常に酸が強い品種でもあり、熟成能力もあります。グレコは醸造の難しい品種ともいわれており、その才能を開花させるのは醸造化の腕の見せ所ともいわれています。カンパーニャ州を中心にプーリアやバジリカータなどの南イタリア、一部トスカーナ州で栽培されています。

カンパーニャ州ワインの中心部「イルピニア」

カンパーニャ州が誇る三大DOCG「タウラージ」「フィアーノ ディ アヴェッリーノ」「グレコ ディ トゥーフォ」は、アヴェリーノ県イルピニア地方で造られています。

南に位置するカンパーニャ州沿岸は穏やかな地中海性気候ですが、イルピニア地方は内陸に位置するため、大陸性気候です。夏は暑く、冬には雪が降ることもあります。アペニン山脈にも近く、標高は300~700m。標高の高さは、夏の間でもしっかりとした昼夜の寒暖差を生みます。火山性土壌で、ヴェスヴィオ山の火山灰や凝灰岩、砂や粘土が混じる複雑な地質です。重なり合う自然条件は、イルピニア地方のワインに、エレガントさ、フレッシュさ、フィネス、そしてミネラルを与えます。
イルピニア地方DOCG地図

3つのDOCG区画が、綺麗に分かれていることも特徴的です。生産地区が重複しているのは、モンテファルチョーネ村とラピオ村のみ、この2村は、タウラージとフィアーノ ディ アヴェッリーノが生産できます。フィアーノ ディ アヴェッリーノとグレコ ディ トゥーフォの生産地区は明確に分かれており、品種のポテンシャルを1番に発揮できるよう区域分けが行われています。フィアーノが生産される区画には霧が発生し停滞することがあります。この霧こそが、フィアーノの持つ独特な甘やかな香りを生むとされています。またこの区画の土壌(火山性石灰粘土質)は、フィアーノに強靭なミネラルを与え、酸と共にブドウの持つ超熟の能力を支えます。一方、グレコ ディ トゥーフォの生産地区は、その名の通りトゥーフォ(火山性凝灰岩土壌)となっており、実直さを感じるストレートな味わいに表現されるミネラルを育む傾向があります。ここには、霧も溜まりません。果皮の薄いグレコにとって、空気の流れは重要な条件です。山からの冷たい風は、グレコの特徴であるしっかりとした酸を育てます。

身近なイタリア料理と楽しむカンパーニャ州の白ワイン

カプレーゼ

カンパーニャ州は、恵まれた環境が育んだ素材を楽しむシンプルでいて美味しい食事が溢れる州です。身近なイタリア料理を代表するカプレーゼやマルゲリータピザをはじめとする、トマト×モッツァレッラチーズ×バジルの組み合わせはあまりにも有名です。乾燥パスタを工場ではじめて生産した州でもあり、ペペロンチーノやヴォンゴレ、プッタネスカなどの聞きなれたメニューもカンパーニャ州発祥といわれています。是非、カンパーニャ州ワインとカンパーニャ州レシピを合わせてみて下さい。どちらのワインも熟成するにつれて、甘やかな蜂蜜のようなニュアンスが感じられます。こちらには、豚肉や燻製・熟成したチーズなどを合わせてお楽しみください。

マストロベラルディーノ渾身のフィアーノ!フレッシュで上品な酸味とともに持続するミネラル感

マストロベラルディーノ

ラディーチ フィアーノ ディ アヴェリーノ

ラディーチ フィアーノ ディ アヴェリーノ

名門「マストロベラルディーノ」が造る偉大な白。レモンや白い花の香りがあり、火打石や鉱物のアクセントもあります。ふくよかな果実味と柔らかい口当たりで、フレッシュで上品な酸味とともにミネラル感が持続します。マストロベラルディーノ社の代名詞ともいえる「ラディーチ」シリーズは、1980年のイタリア南部での震災をきっかけにうまれました。地域復興の願いを込めて、この地に根ざしたワインとしてイタリア語で「根」を意味する「ラディーチ」と名付けられています。

フィアーノ ディ アヴェッリーノの名手「ロッカ デル プリンチペ」が、フィアーノの特性を完璧に表現する1本

ロッカ デル プリンチペ

フィアーノ ディ アヴェッリーノ

フィアーノ ディ アヴェッリーノ

フィアーノの原産地といわれているラピオ村にワイナリーを構える「ロッカ デル プリンチペ」。フィアーノの名手と名高く、ラピオのテロワール、そしてフィアーノの特性を完璧に表現しています。フレッシュな果実や青いハーブとともに、フィアーノらしいアカシアの蜜やほのかなナッツの香りが豊かに広がります。甘く優しい果実を溌剌とした酸が支え、土壌由来のミネラルがくっきりとした輪郭を描く緊張感のある味わいです。

タウラージのカリスマ的存在「モレッティエーリ」が造るフィアーノ!ミネラルと酸味のバランスが綺麗なふくよかな味わいの「アピアヌム」

サルヴァトーレ モレッティエーリ

フィアーノ ディ アヴェッリーノ アピアヌム

フィアーノ ディ アヴェッリーノ アピアヌム

古典的アリアニコの偉大な表現者として知られるタウラージのカリスマ的生産者「サルヴァトーレ モレッティエーリ」が造る、ふくよかな味わいのフィアーノです。アロマティックで青リンゴやアーモンドの香り。抜栓直後は新鮮な果実味で、酸は高くレモンのようなシャープなテイストです。次第にミネラルと酸味がきれいなバランスを保ち、ふくよかな味わいへと美しく変化(調和)していきます。ゆっくりとその変化をお楽しみください。

新星ヴィノジアが造る、フレッシュで涼しげな印象のフィアーノ

ヴィノジア

フィアーノ ディ アヴェッリーノ レ グラーデ

フィアーノ ディ アヴェッリーノ レ グラーデ

フェウディ ディ サングレゴリオの設立者の一人マリオ エルコリーノが独立。繊細な白い花や、レモンやフレッシュな洋ナシ、ほのかなアーモンドの香り。クリアで凝縮感ある果実味に、鮮烈な酸とミネラル感が華を添えています。フィアーノの魅力である香り高さときらめくようなミネラル感に満ちた味わいです。最高海抜800mという畑の高さがうかがえる、フレッシュで涼しげな印象のフィアーノです。

カンパーニャの代表格「アントニオ カッジャーノ」が造る、美しい果実味とミネラル際立つリッチでコクのあるフィアーノ 「ベシャール」

アントニオ カッジャーノ

フィアーノ ディ アヴェッリーノ ベシャール

フィアーノ ディ アヴェッリーノ ベシャール

「アントニオ カッジャーノ」のフィアーノは、ラピオ地区で収量をかなり抑え育てられており、しっかりとした骨格を感じるリッチでコクのある味わいが長く感じられます。花やドライフルーツ、スパイスなどのニュアンスのあるアロマがグラスから広がります。フレッシュながらもふくよかさを感じるアタックから、すっと伸びる心地よいミネラルと酸が豊かな果実味と見事に調和した美味しさが口の中を満たします。

サングレゴリオの最高峰グレコ ディ トゥーフォ「クティッツィ」華やかなアロマと心地よいボリューム感!秀逸な酸とミネラルが生み出す洗練された味わい

フェウディ ディ サングレゴリオ

クティッツィ グレコ ディ トゥーフォ

クティッツィ グレコ ディ トゥーフォ

実力派フェウディ ディ サン グレゴリオが厳選に厳選を重ねたグレコを使用して「最高のグレコ」としてリリースするグレコ ディ トゥーフォ。クティッツィの畑は標高なんと700m。桃や洋ナシ、トロピカルフルーツなど、凝縮された果実のアロマが押し寄せ、クリーンな花のニュアンスも感じられます。柔らかさと酸のバランスの柔軟さが際立って素晴らしく、たっぷりとしたボリュームで、洗練された非常に長い余韻を楽しめます。

新星ファットリア パガーノが造る、程よいボリュームと豊かな味わいの「グレコ ディ トゥーフォ」

ファットリア パガーノ

グレコ ディ トゥーフォ

グレコ ディ トゥーフォ

情熱的にワイン造りに取り込む2001年設立の新しい造り手「ファットリア パガーノ」のグレコ ディ トゥーフォは、豊かなミネラルの香りにフレッシュな青リンゴ、柑橘系の果実、ビターアーモンドのニュアンスが混ざり合っています。凝縮した果実の味わいに、爽やかな酸とミネラルが加わった、厚みのある豊かな味わいです。コストパフォーマンスの良さにも定評があります。

「ファレルノ」を復活させたヴィッラマティルデが造る、フレッシュで力強く、味わいふくよかな「グレコ ディ トゥー フォ」

ヴィッラ マティルデ

グレコ ディ トゥーフォ

グレコ ディ トゥーフォ

プリニウスの勘定書の中や、ウェルギリウス、マルティアリス、ホラティウスらの詩の中に記述されたVinum Falernum という、20世紀初めに消えてしまった、伝説のワインを蘇らせるらせることを決意し、創業されたヴィッラマティルデのグレコ ディ トゥーフォ。白桃やアプリコット、甘いアーモンドの凝縮感のある香りが、長く続きます。 口に含むとミネラルと柑橘類のニュアンスも広がり、フレッシュさと力強さ、ふくよかさも感じる味わいが特徴的なワインです。

複雑な香りに厳格なミネラルが寄り添う美しさ!ヴァディアペルティが造るグレコ ディ トゥーフォ

ヴァディアペルティ

グレコ ディ トゥーフォ

グレコ ディ トゥーフォ

イルピニアで伝統的土着品種とテロワールの個性を表現したワイン造りを行う「ヴァディアペルティ」のグレコ ディ トゥーフォ。洋ナシ、トロピカルフルーツ、ナッツなどの複雑な香りに美しいミネラルが寄り添います。余韻に品種特有の酸味とアーモンド、石灰の風味が重なります。少しずつ温度を上げていくとミネラルの豊かさと果実の深みが溶け合い、素晴らしい味わいが楽しめます。

硬質でまっすぐな味わいが特徴的な「ベニート フェラーラ」のグレコ ディ トゥーフォ ヴィーニャ チコーニャ

ベニート フェラーラ

グレコ ディ トゥーフォ ヴィーニャ チコーニャ

グレコ ディ トゥーフォ ヴィーニャ チコーニャ

品質の高さに注目が集まり一躍有名になった「ベニート フェラーラ」。ワイナリーの位置するサン・パオロ・ディ・トゥーフォは、1970年代まで天然硫黄の採掘で賑わっており、硫黄、マンガンなどのミネラルが強い土壌。標高の高さもグレコDOCGエリアでは最も高く、グレコにとって特別な場所といえます。この土地のグレコは、果実味よりもミネラルを反映し、上質な酸に支えられた上品で長い余韻が特徴的です。他の地域とは一線を画す硬質的なまっすぐな味わいです。