ネッビオーロの可能性を秘めた北限の地!山のワインの「ヴァルテッリーナ」その特徴とお勧め10選

2024/03/08

ロンバルディア州のヴァルテッリーナ地方では、アルプス山脈の南斜面に張り付くように並ぶ畑からワインが造られてます。ネッビオーロ種を主体とした赤ワインが有名で、ヴァルテッリーナ地方では、ネッビオーロ種をキアヴェンナスカと呼んでいます。

ヴァルテッリーナの歴史は古く、ローマ時代にまで遡ることが出来ます。イタリア王国成立直前に創設されたワイナリーもあり、その伝統を未来へと繋げています。コアなファンが多いヴァルテッリーナのワインですが、近年の環境変化の影響から注目度が高まり、新たなファンを続々と獲得しています。

ヴァルテッリーナの環境

ロンバルディア州の北端、スイスと国境を接するソンドリオ県のヴァルテッリーナ地方は、アルプス山脈のヴァルテッリーナ渓谷にあります。非常に過酷な条件のもとでブドウ栽培している地域です。高山性気候のため、冬の寒さは厳格で夏は短いです。2003年に設立された協会には、多くの生産者が所属しており、協会で定められた規定や栽培方法など全生産者が守り助け合いながら素晴らしい品質のワインを生産しています。

地図

ヴァルテッリーナ地方の畑は、非常に勾配のきつい段々畑が特徴的です。ほぼ崖のような畑もあり、作業は難を極めます。標高250mあたりから高いところでは、900m近くになります。標高があがれば上がるほど冷涼になるため、標高の高さで味わいが大きく異なる産地でもあります。

■標高300m~400mあたりの畑
気温が低い季節は冷気が谷底に流れ、湿気が多くなります。湿気が多いとブドウの皮は薄くなり、タンニンの少ないフレッシュで飲みやすいタイプのワインになります。

■標高が450m~600mあたりの畑
夏は湿気が少なく、冬も冷気は谷底へ下がるおかげで暖かいため、ブドウが完璧に熟します。秋は昼夜の寒暖差が激しく香り豊かなワインができます。

■標高600m~800mあたりの畑
冷涼な気候。酸が高く糖度の低い、皮の厚いブドウができます。このブドウは、乾燥させてから造るスフォルツァートに向いています。皮が厚いので乾燥中も破れず、菌が付きにくいです。

カゴを背負っての収穫作業

キアヴェンナスカ もう一つのネッビオーロ

ネッビオーロ種はピエモンテ州のバローロ・バルバレスコの使用品種としても名が知られています。長期熟成させる事が出来るポテンシャルを秘めており、テロワールの影響を大きく受ける品種です。ネッビオーロ種は果皮が薄く、種が大きいので酸味とタンニンが高い品種です。果皮の薄さはデリケートさに直結していて病害に弱いので、育つ環境がそぐわないと成熟しない気難しい品種なのです。

ヴァルテッリーナ地方は、ネッビオーロ種に適した土地です。すぐ北にそびえるアルプス山脈の一つ、ベルニナ山から吹き下ろす冷気が畑を病気から守り、しっかりと熟すまで生育期間を長く保つことが出来ます。

ヴァルテッリーナの土壌はイタリアでは珍しい酸性土壌で、PH は 4.5~5.5 と かなり低く、酸度が高い葡萄が収穫されます。砂が混じるヴァルテッリーナは、粘土質土壌に比べ保水性はなく、痩せた乾燥した土壌です。その結果、石灰、粘土の比率の高いバローロ・バルバレスコのネッビオーロと比べ、ヴァルテッリーナのネッビオーロは、エレガントなスタイルのワインになります。
キアヴェンナスカ

DOC・DOCG ヴァルテッリーナ

ヴァルテッリーナには全部で次の3つのDOPワインが存在しています。

DOCヴァルテッリーナ ロッソ / ロッソ ディ ヴァルテッリーナ
ネッビオーロ種90%以上使用で、6カ月間の瓶内熟成が必要です。ソンドリオ全域で生産可能です。

DOCG ヴァルテッリーナ スペリオーレ
ネッビオーロ種90%以上使用で、2年間の熟成期間必要です。リゼルヴァでは3年以上になります。ソンドリオ県内の複数の村から造られます。5つの村を「ソットゾーナ」としており、村名をラベルに記載することが出来ます。以下に5つのソットゾーナを紹介します。
■マロッジャ
親しみやすさがあり上品な果実味を持ちます。
■サッセッラ
ほぼ崖のような畑で、人力のみで全ての作業を行なう必要があります。生産数が少なくロンバルディア最高品質とも称されます。
■グルメッロ
フレッシュで繊細。口当たりは滑らかで柔らかいワインになります。
■インフェルノ
ヴァルテッリーナ中最も暑く非常に急斜面です。力強くふくよかで余韻の長いワインになります。
■ヴァルジェッラ
エレガントで繊細なタンニンと、ミネラル感が強く感じるワインになります。


DOCGスフォルツァート ディ ヴァルテッリーナ/ スフルサット ディ ヴァルテリーナ

ネッビオーロ種90%以上使用して3か月ほど陰干しブドウで造られる辛口ワインです。20ヶ月熟成の内、12ヶ月は木樽熟成とします。濃いルビー色で力強い果実のアロマを感じられる味わいです。もともとは寒冷地で造る「薄い」ネッビオーロを濃くして飲みごたえを持たせる為に造られていたものです。

温暖化による注目

近年の温暖化の影響は大きく、世界中のワイン産地で様々な変化が起きています。気温の上昇により、ブドウの糖度が上がり、果実味や重厚感が前面に出やすくなっています。その為、酸を維持したエレガントさを重視した味わいを求める人々は、冷涼なワイン産地に目を向けるようになりました。ヴァルテッリーナも、そのひとつです。昔は寒冷すぎて充分な熟度が得られにくい地域でしたが、今では充分な日照量と気温のバランスが取れていて、酸味も伴った素晴らしいブドウが収穫できています。

以前のヴァルテッリーナのワインは、陰影に富み果実味よりはスパイスやなめし皮の印象が強く固さのあるワインでした。近年は、酸を保ちながら柔らかい果実感もあり、タンニンも熟しているため柔和で飲み心地の良いワインが増えてきています。また、かつてはビックヴィンテージと呼ばれた気品に満ちたワインが、毎年のように生産されるようになってきています。

ヴァルテッリーナと料理

ヴァルテッリーナがあるロンバルディア州ソンドリオ県は、山のワイン産地です。アルプスの麓でもあるためにかなり寒さもあり過酷な環境であります。痩せた大地のため作物は育ちにくく、狩猟・酪農の食事が多いです。この地方特産の牛肉のハムのブレザオラや羊乳で造られたチーズもあります。小麦の代わりに蕎麦を育てているのも特徴的で、ピッツォッケリというそば粉を使ったパスタにじゃがいもとチーズたっぷりのソースを絡める素朴ながら濃厚な味わいの郷土料理が親しまれています。

北のネッビオーロらしく、酸味を活かして楽しむことをおすすめします。トマト煮込みなど酸が残る料理の仕立てのものが寄り添いやすいです。スフォルツァートなど陰干したものには、ジビエなど食べ応えのある素材や牛肉、肉感をより感じられる塊での煮込みをお試しください。

伝統を守り昔ながらのヴァルテッリーナを造り続けるアールペペのロッソ ディ ヴァルテッリーナ

アールペペ

ロッソ ディ ヴァルテッリーナ 2021

ロッソ ディ ヴァルテッリーナ 2021

失われゆくヴァルテッリーナの伝統と名声の復権を願いワイナリーを設立した「アールペペ」。ロッソ ディ ヴァルテッリーナは、標高350~400メートルのサッセッラとグルメッロのブドウを使用しています。ヴァルテッリーナDOCに比べ短い醸し期間とソフトな抽出を行うため、複雑な香りと優雅な飲み口はそのままに親しみやすさがプラスされています。

ヴァルテッリーナを代表する「ニーノ ネグリ」のベストセラーワイン!マゼール ヴァルテッリーナ スペリオーレ

ニーノ ネグリ

マゼール ヴァルテッリーナ スペリオーレ 2019

マゼール ヴァルテッリーナ スペリオーレ 2019

ヴァルテッリーナのワインの地位を高めた功労者とも呼べる「ニーノ ネグリ」は、ヴァルテッリーナを代表するワイナリーです。「マゼール」は、20%ほど遅めに収穫したブドウで造ったワインをブレンドします。骨格が太く力があり凝縮した果実、口当たりが滑らかで繊細な余韻!まさに山のワインに相応しいストラクチャーを持っています。

ニーノネグリが良年しか造らない香り高い3年熟成リゼルヴァ スペリオーレ

ニーノ ネグリ

ヴァルテッリーナ スペリオーレ リゼルヴァ 2017

ヴァルテッリーナ スペリオーレ リゼルヴァ 2017

ニーノ ネグリの「ヴァルテッリーナ スペリオーレ リゼルヴァ」は、良い年にだけ造られる超限定品。 ネッビオーロらしい透明感のある美しいガーネット色、熟成感のある上品な果実や花の香り。エレガントかつ優雅な果実感と複雑な旨味が大樽で3年間熟成させることでより一層洗練されたタンニンとともに心地よく口の中を広がり、優しい余韻へと続きます。

優良区画畑を代々所有する「サンドロ ファイ」のサッセッラの単一畑「イル グリチネ」

サンドロ ファイ

ヴァルテッリーナ スペリオーレ サッセッラ イル グリチネ 2017

ヴァルテッリーナ スペリオーレ サッセッラ イル グリチネ 2017

優良区画を代々所有する「サンドロ ファイ」は、テロワールの魅力を最大限に引き出すことを目指し、伝統的な地で新旧の栽培法・醸造法の良い部分を融合した躍進的なワイン造りを行っています。「イル グリチネ」は、サッセッラ内で最も東に位置する単一畑です。赤系果実、スミレ、バルサミコ、ハーブなどの香り。バランスに優れ、エレガントで複雑な味わいです。フィニッシュには濃密で生き生きとしたタンニンが感じられます。

超長期熟成で造るアールペペこだわりの最上ヴァルテッリーナ「サッセッラ ロッチェ ロッセ」

アールペペ

ヴァルテッリーナ スペリオーレ サッセッラ ロッチェ ロッセ 2013

ヴァルテッリーナ スペリオーレ サッセッラ ロッチェ ロッセ 2013

「サッセッラ ロッチェ ロッセ」は、大樽で39ヶ月間熟成させたあと長期の瓶熟成を経てリリースされます。飲み頃を待ち長期熟成の後にリリースされるアールペペのワインは、「ヴァルテッリーナの良心」と言っても過言ではありません。構造、深み、優雅さ、個性を兼ね備えた極めて優美な味わいの極上ヴァルテッリーナです。

アールペペが新たに購入した「グルメッロ」の畑から造るヴァルテッリーナ スペリオーレ グルメッロ サン アントニオ

アールペペ

ヴァルテッリーナ スペリオーレ グルメッロ サン アントニオ 2013

ヴァルテッリーナ スペリオーレ グルメッロ サン アントニオ 2013

「アール ペペ」が、新たにグルメッロに購入した聖アントニオ教会近く標高450mの区画のネッビオーロを使用して造ります。聖アントニオ教会は当主のご両親が結婚した教会。結婚から40年後の2009年がファーストヴィンテージになりました。栗の大樽で熟成させています。女性的でふくよかな印象です。

ニーノネグリが「インフェルノ」で造るヴァルテッリーナ スペリオーレ「グイッチャルディ」

ニーノ ネグリ

ヴィーニャ カ グイッチャルディ インフェルノ ヴァルテッリーナ スペリオーレ 2019

ヴィーニャ カ グイッチャルディ インフェルノ ヴァルテッリーナ スペリオーレ 2019

ニーノ ネグリが「インフェルノ」で造るヴァルテッリーナ スペリオーレ インフェルノ カ グイッチャルディです。インフェルノは岩の量が特に多く昼間は日光を反射、夜間は熱を放出してフレッシュで完熟したブドウが出来ます。まろやかで豊かなタンニンと繊細なテクスチャーが楽しめるエレガントな味わいです。

標高が低い区画の畑から造るヴァルテッリーナ スペリオーレ ヴァルジェラ コスタバッサ

サンドロ ファイ

ヴァルテッリーナ スペリオーレ ヴァルジェラ コスタ バッサ 2019

ヴァルテッリーナ スペリオーレ ヴァルジェラ コスタ バッサ 2019

ヴァルジェッラ区画の標高450m以下の畑のブドウを使用して造るヴァルテッリーナです。サンドロ ファイが、シンプルにヴァルテッリーナのネッビオーロの味わいを表現しています。柔らかな酸とタンニンにより、飲み心地の良さとエレガントさを兼ね備えたヴァルテッリーナのネッビオーロらしい味。

陰干し感ではなくキアヴェンナスカの個性が前に出たサンドロ ファイの「スフォルツァート ディ ヴァルテッリーナ ロンコ デル ピッキオ」

サンドロ ファイ

スフォルツァート ディ ヴァルテッリーナ ロンコ デル ピッキオ 2018

スフォルツァート ディ ヴァルテッリーナ ロンコ デル ピッキオ 2018

標高750~900mと標高が高いので収量は僅か、収穫後、自然風で乾燥させています。以前は、通常より早く収穫し酸度を得ながら追熟を行っていましたが、今は温暖化の影響も受け、遅く摘んで熟度を高め、陰干し期間を半減し、陰干し感のないワインに仕上げます。陰干しの風味を味わうのではなく、キアヴェンナスカの個性が凝縮して楽しめるスフォルツァートです。

「ニーノ ネグリ」が手間を惜しまず造るフラッグシップ「チンクエ ステッレ スフルサート ディ ヴァルテッリーナ」

ニーノ ネグリ

チンクエ ステッレ スフルサート ディ ヴァルテッリーナ 2020

チンクエ ステッレ スフルサート ディ ヴァルテッリーナ 2020

「ニーノ ネグリ」のフラッグシップ「チンクエ ステッレ ヴァルテッリーナ スフルサート」。陰干しし糖度を高めて造られたワインのアルコール度は16%に達します。太い骨格と深い果実味、熟したタンニンが見事なまでに溶け込んでいます。新樽を用い、伝統的ながらモダンなスタイル。非常に洗練された仕上がりです。