絶滅危機にあった希少種!涙といわれる品種「ラクリマ」その特徴とお勧め7選

2024/03/08

ラクリマ種収穫風景
マルケ州原産のラクリマ種は、アンコーナ県を中心に生産されている黒ブドウです。ラクリマは、イタリア語で「涙」を意味しています。成熟期に実から涙を流すように果汁がこぼれることから名づけられたと言われています。ラクリマ ネーラやラクリマ ディ モッロと呼ばれています。

かつては絶滅の危機に瀕していましたが、徐々に栽培面積を増やし復興に成功しました。生産量は今でも少ない希少品種です。ラクリマという名前の付くカンパーニア州のラクリマ クリスティDOCやトスカーナ州のラクリマ デル ヴァルダルという品種とは、全くの別物です。

ラクリマ種の特徴

果皮が非常に薄いという特徴を持つラクリマ種。成熟するにつれ膨張した実は、自らの果皮を破り果汁が滴ります。果皮を破らないように、細心の注意を払い育てなければなりません。また薄い果皮は、病害への耐性も低く栽培自体にも難しさが伴います。

赤いバラを思わせる独特な芳香が最大の特徴。アロマティックで個性的な赤ワインになります。味わいは、チェリーや黒い果実、甘やかな密の中にスパイシーさや清涼感が感じられます。

ラクリマ種の歴史

モッロ ダルバ町

ラクリマ種はかつて中南部イタリアに広がるブドウ品種でした。古い文献では12世紀頃に、北イタリアを支配していたドイツのフリードリッヒ1世も飲まれたという逸話がある程です。栽培が難しいことから、一時は絶滅の危機に陥りました。

ラクリマ種の減少に大きく影響した要因として、フィロキセラ襲来があります。ラクリマ種は、アメリカ産の台木との相性が悪く、アメリカ産の台木を使用して数多くのラクリマの樹が死に絶えました。一時その栽培面積はたった4haにまで落ち込んだ程です。その後、相性の良い台木が見つかり絶滅の危機を脱しました。

諦めずラクリマ種に想いを込めた生産者の力により、徐々に栽培面積が増えるようになりましたが、栽培が非常に困難なため専門家からも「大量生産はまず不可能」と言われている希少品種です。現在は、マルケ州を中心に僅かながらウンブリア州やプーリア州で栽培が続けられています。マルケ州の一部を除き、ワインの風味付けに用いられています。

ラクリマ種を使用したDOC ラクリマ ディ モッロ

モッロ ダルバ町の看板

ラクリマ種を主体とした原産地呼称はひとつです。1985年にDOC認定を獲得しました。マルケ州アンコーナ県のモッロ ダルバという小さな町の周辺の僅か300haほどのエリアで造られています。海からミネラルに富む風が常時吹き、昼夜の気温差がしっかりとある地域です。

ラクリマ ディ モッロ/ ラクリマ ディ モッロ ダルバDOC
ラクリマ種を85%以上使用し、法定熟成期間は1年と定められています。香りの特徴を活かすため、醸造はステンレスタンクで行われ素早く出荷されることがほとんどで、フレッシュな味わいのものが多い。

スーペリオーレは、酸やタンニン、ミネラルがしっかりと感じられるものもあり、果実味もしっかりとした印象を持ちます。熟成も期待できる未知の可能性を秘めています。

パッシートも造られており、陰干しによって滑らかな果実味に濃厚さが増した甘口ワインになります。

ラクリマ種の楽しみ方

現地では、牛や豚、うさぎ等の香草焼きといったお肉料理と一緒に良く飲まれています。また漁業も盛んなアンコーナ周辺ということもあり、トマト風味の魚介のスープやサーモンやウナギ等の魚介料理とも合わせる事も多いそうです。

タンドリーチキン

個性的な香りの好みは分かれるところながら、味わいはフードフレンドリーなものがほとんどです。白コショウや甘草などのスパイシーな味わいもあるので、タンドリーチキンやトムヤムクンとったお料理と合わせてみるのも面白そうです。ラクリマ種は個性的な芳香が主役となりがちですが、その魅力に取りつかれた途端、心地良い飲み口がクセになるワインです。

人気のヴェレノージが造る「ラクリマ ディ モッロ ダルバ」

ヴェレノージ

ラクリマ ディ モッロ ダルバ 2021

ラクリマ ディ モッロ ダルバ 2021

9haの借り畑からワイン造りを始め、今では約150ヘクタールの畑を持つマルケの人気生産者「ヴェレノージ」が造るスタンダードなラクリマです。バラの花束に顔を近づけたような華やかなアロマ。イチゴやチェリーの香り、優しい甘みを伴った果実味がとても心地よく、口当たりはとてもまろやか。かすかにやわらかなタンニンが感じられます。

マルケ州のリーダー的存在「ウマニ ロンキ」が造る「フォンテ デル レ」

ウマニ ロンキ

フォンテ デル レ ラクリマ ディ モッロ ダルバ 2021

フォンテ デル レ ラクリマ ディ モッロ ダルバ 2021

地元の品種ヴェルディッキオとモンテプルチアーノを世界中に知らしめた功労者のひとり「ウマニ ロンキ」。希少品種のラクリマの魅力も発信しています。バラの花束の香り。優しい甘みを感じる果実味がとても心地よく、口当たりはまろやか、それでいて上品な酸味がバランスをとっており、飲み心地抜群です。ワイン名のフォンテ・デル・レ(王の泉)とは、モッロ・ダルバ町近郊にある、古代の泉が湧き出る場所を示した地名から、ラベルも涙をイメージしています。

ラクリマ種を造り続けるスペシャリスト「ヴィカーリ」のダセンプレ デル ポッツォ ブオーノ

ヴィカーリ

ダセンプレ デル ポッツォ ブオーノ 2022

ダセンプレ デル ポッツォ ブオーノ 2022

モッロダルバで由緒あるヴィカーリ家。ヴェルデッキオやモンテプルチャーノの生産していますが、ラクリマ種から泡・パッシート(日本未入荷)を含む5種類のワインを造っているラクリマ種のスペシャリストです。バラやスミレ、ベリーや桃、ヨーグルトのようなアロマ、天然酵母によるテロワールを表現した豊潤で複雑な香り。フレッシュな酸味とあんずのようなジューシーな果実味の軽やかな味わいにほのかにタンニンを感じます。

マルケ州の協同組合「コロンナーラ」が造るラクリマ ディ モッロ ダルバ

コロンナーラ

ラクリマ ディ モッロ ダルバ 2022

ラクリマ ディ モッロ ダルバ 2022

1959年に設立されたマルケ州の協同組合「コロンナーラ」。常に新しいノウハウを模索し、品質の追求と伝統の継承を行い躍進を続けています。コロンナーラのラクリマ ディ モッロ ダルバは、華やかなアロマの中に濃密な果実やアルコール感が感じられます。滑らかな口当たりが、香りと味わいを上手くまとめあげます。

ラクリマ復活の中心人物「ジュスティ ピエルジョヴァンニ」のラクリマ ディ モッロ ダルバ

ジュスティ ピエルジョヴァンニ

ラクリマ ディ モッロ ダルバ 2021

ラクリマ ディ モッロ ダルバ 2021

ラクリマ復活の中心的役割を担ったジュスティ ピエルジョヴァンニ。「早飲みワインで熟成はできない」「他品種とブレンドして本来の力がいかされるブドウ」と考えられていたラクリマ種に対し、この土着品種の持つ本来の力を引き出すことに情熱を燃やしました。彼らのラクリマ種からは、野生味あふれる果実味と独特の甘い香りを持つ素晴らしい魅力が溢れています。

ヴェレノージが造る「ラクリマ スペリオーレ」

ヴェレノージ

ラクリマ ディ モッロ ダルバ スペリオーレ 2020

ラクリマ ディ モッロ ダルバ スペリオーレ 2020

高密植栽培でブドウの凝縮度を高め、通常のラクリマより1年長い熟成期間を設けたヴェレノージのスペリオーレです。野バラやイチゴ、ブラックベリー、スミレの花、ローズヒップのエレガントで華やかな香りです。充実した果実感と豊かで円やかな風味が見事に広がります。飲み心地の良さは健在ですが、熟成も期待できるポテンシャルを感じられます。

マルケの人気生産者「ヴェレノージ」のラクリマ種主体で造るノヴェッロ

ヴェレノージ

[船便]ヴェレノージ ノヴェッロ 2023

[船便]ヴェレノージ ノヴェッロ 2023

「ヴェレノージ 」のノヴェッロは、フレッシュなラクリマの魅力にモンテプルチャーノによる飲み応えとマイルドさをプラスしています。また船便で届いたこちらのノヴェッロは、瓶熟成が進みこなれた味わいへと変化しています。バランスのとれた、ちょうどいいボリューム感です。在庫のみ数量限定です。