ドメニコ クレリコのチーフ醸造家らが創業して大注目!バローロの新星「ライネリ」突撃インタビュー

2024/01/16

2023/11/30

ファブリッツィオ ジラウド氏

ドメニコ クレリコのチーフ醸造家らが創業して大注目!フィネス&エレガンスが際立つバローロの新星「ライネリ」突撃インタビュー

「ライネリ」は、ドメニコ クレリコのチーフ醸造家ジャンマッテオ ライネリ氏らが2005年に創業したバローロの新星。「私のところで君たちのワインを造ったらどうだ?」というドメニコ クレリコの一言で、彼から譲り受けた古いカンティーナからライネリのバローロ造りは始まりました。その初めて造ったバローロ2006年が、なんといきなり『デカンター』96点を獲得。ライネリのワインはどれも一貫して親しみやすさとエレガンスを兼ね備えたクリーンな味わいです。とりわけモンフォルテ ダルバの単一畑で造られるクリュバローロ2種「ペルノ」「カステッレット」はフィネスが際立つ逸品で、見事に個性の違いが表現されています。今回は、創業者の一人ファブリッツィオ ジラウド氏にオンラインでお話を聞きました。

ドメニコ クレリコの醸造家らが創業したバローロの新星

偉大な造り手ドメニコ クレリコの一声で始まったバローロ造り
――ファブリッツィオさん、はじめまして。まずはワイナリー紹介からお願いします。

ボンジョルノ。ファブリッツィオ ジラウドです。ライネリは、私が大学時代に知り合ったジャンマッテオ ライネリと一緒に2005年に立ち上げたワイナリーです。最初は、ジャンマッテオの父が所有していた畑でドルチェットを造り始めました。

大学を卒業した2006年からジャンマッテオがドメニコ クレリコの醸造家として働き始めると、ドメニコから「私のところで君たちのワインを造ったらどうだ?」という言葉をいただき、譲り受けたドメニコの古いカンティーナを使ってバローロを造り始めました。

モンフォルテ ダルバを中心に計8ヘクタールの畑を所有
――それはすごい。とてもラッキーですね。今現在も使用しているのですか?

8年前に移動しました。現在は、もともとキャンディの工場だった場所を取得して、ノヴェッロ村にカンティーナを構えています。モンフォルテ ダルバを中心に合計8ヘクタールの畑を各地に所有しています。

2005年にドルチェット、2010年にバローロを初リリース
――最初に造ったドルチェットは、いつ頃リリースしたのですか?

2004年に造り始めたドルチェットを2005年にリリースしたのが最初です。バローロは、2006年ヴィンテージを2010年に初めてリリースしました。

――今そのドルチェットを試飲していますが素晴らしいです。初リリースから大成功したのではないですか?

ノー(笑)。全く売れなかったので、全部自分たちで飲み干しました(笑)。ワイン造りは何より経験が大事ですが、1年サイクルで行う仕事なのでどうしても時間を要してしまいます。

初リリースのバローロがいきなり『デカンター』96点を獲得
――ファブリッツィオさんたちはまだ若いですが、何をきっかけに軌道に乗られたのですか?

幸運なことに、2010年に初めてリリースしたバローロが『デカンター』で96点、『ワインスペクテーター』で95点の高評価をいただけたんです。私たちは大学在学中からワインを造り始めましたが、当時はまだまだレベルが低かったと思います。それが、その評価をきっかけに今や5万本を超える生産量にまでなりました。各誌での高評価を含め、ここまで来るとは想像もしていませんでしたね。

アルバで生まれ育った若手創業者が築く独自スタイル
畑は拡大せずさらなる品質向上に専念

地元アルバで生まれ育った創業者の二人
――なぜワイン造りの道へ進まれたのですか?

私の場合はアルバ出身であることが大きいです。日々の生活にワインがあり、自然とワイン造りに対する情熱が芽生えていきました。父親が働くオフィスの外で働いてみたかったんです。一方で、ジャンマッテオはブドウ栽培農家の生まれです。自身で畑を所有し、収穫したブドウをワイナリーに売っていました。

――お二人の役割分担はどのようにしているのですか?

ライネリはまだまだ小規模ワイナリーなので、全て一緒に作業しています。さすがに収穫時は二人では難しいので家族総出で行いますけどね(笑)。

上からファブリツィオ ジラウド氏、ジャンマッテオ ライネリ氏

ドメニコ クレリコで研鑽を積みライネリでは独自のスタイルを構築
――同僚のジャンマッテオさんはドメニコ クレリコで醸造家として活躍(現在はチーフ醸造家を担当)されていますが、ドメニコ クレリコから影響を受けていることはありますか?

ドメニコから学んだことはたくさんあります。しかし、私たちは彼のような歴史的生産者ではありませんし、所有する畑の特徴も異なるのでスタイルは異なります。例えば、醸造において大樽と小樽(バリック)の両方を使うだけでなく、様々な特徴の樽を使用することでライネリ独自のスタイルを表現しています。

また、ランゲ ネッビオーロに使用する樽は全てバローロに使用した旧樽で、特に何年目というこだわりもありません。樽ごとの特徴も違うので、7、8年経ったものも使っています。実験を重ねてたどり着いたスタイルです。

将来を見越した実験を重ねてさらなる品質向上を目指す
――ワイナリーとして将来的に見据えていることはありますか?

とにかくより良いワインを造り続けることです。自分たちが積み重ねてきた経験と情熱をワイン造りに注ぎ込むことで、それが実現できると考えています。ですので、私たちが日々管理できる上限の生産本数6万本以上の生産をする予定はありません。

ところで、いま標高の高い山でのワイン造りを大学と協力して行なっています。カンティーナから60キロ離れたクーネノ近くの標高2000メートルの山で、冷涼な環境に耐性があるソラリス種を実験的に植えています。

――将来を見越した温暖化対策の実験ということですね。味わいはいかがでしたか?

実際にできたワインは200リットル程度でしたが、美味しかったです。しかし、売るというわけにもいかなく…。ぜひカンティーナにいらして飲みに来てくださいね。

ライネリが一貫して表現するフィネス&エレガンス
異なる個性が際立つクリュバローロ「ペルノ」「カステッレット」

――各ワインの生産本数を教えてください。

ドリアーニは5000~6000本、ランゲネッビオーロは1万5000本(将来2万本に到達する見込み)、バローロクラシコは1万3000本です。クリュである2種のバローロ、ペルノは4000本程度、カステッレットは1000本程度しか生産していません。

バローロ好きもバローロ初心者も堪能できる
親しみやすさにフィネスとエレガンスが備わったバローロ クラシコ

――バローロ クラシコの解説をお願いします。

畑は主にモンフォルテ ダルバにあり、一部サンピエトロ(バローロ村)の畑も使用しています。私たちのバローロ クラシコの特徴は、しっかりしすぎず複雑すぎないフレンドリーさにあります。初めてバローロを飲む方にも、バローロを飲み慣れている方にも喜んでいただけると思います。ドリアーニとランゲ ネッビオーロも含めて、ドルチェットやネッビオーロという品種の個性を感じていただけます。

「開けてすぐ美味しいバローロ」を実現するリリース前の瓶内熟成
――フレンドリーでありながら、フィネスやエレガンスも感じます。

そうですね。そういったクリーンな味わいを出せるよう心掛けています。また、「開けてすぐ美味しい」ということも重視しています。そのため、私たちのバローロはリリースする1年前には絶対にボトリングして、味わいを安定させています。ぜひ、ご友人たちと1本のボトルを共有して、その親しみやすさとエレガンスを感じていただきたいです。

モンフォルテ ダルバで造る2種のクリュ バローロ「ペルノ」「カステッレット」
クリュ バローロ「ペルノ」と「カステッレット」は、私たちライネリを支える重要なワインです。バローロ クラシコがフレンドリーなのに対して、テロワールの個性を表現した単一畑バローロです。これらは、バローロをよくご存知で飲み慣れている方向けのワインですね。

骨格とタンニンが生まれる男性的な「ペルノ」
絹のようなタンニンが生まれる女性的な「カステッレット」

ペルノの畑は3.5ヘクタール。モンフォルテ ダルバの中でも特に、この土地の個性が顕著に現れています。バローロ クラシコと比較すると、ストラクチャーやタンニンの違いを感じていただけると思います。

カステッレットは、0.5ヘクタールあるかないかの非常に小さい畑です。モンフォルテ ダルバにありながら砂質土壌が多く、絹のようなタンニンで繊細なワインに仕上がっています。

両者ともに醸造法はほとんど同じですが、熟成だけ若干違います。ペルノは大樽70~80%とバリック(20~30%)で熟成しています。一方でカステッレットは、二つのトノー(500リットル)のみで熟成しています。大樽に入れるほどの生産量がないので(笑)。

明確に好みが分かれるクリュ バローロ「ペルノ」「カステッレット」
クリュ バローロ2種の飲み比べはいかがでしたでしょうか。みなさんは「ペルノ」「カステッレット」のどちらが好きですか?

――男性スタッフがペルノに4票、女性スタッフがカステッレットに3票を入れました。

なるほど。見事に男性と女性で票が分かれましたね。ストラクチャーのしっかりしたペルノ、エレガントなカステッレットという明確に異なる個性があります。抜栓をしてから時間をおけば、また味わいに奥行きやバランス感が生まれていきますので、ぜひゆっくりと2種の飲み比べをお楽しみくださいね。

ライネリが初めて取得した畑で造るシンプルな美味しさが際立つドルチェット

ドリアーニ ゾヴェット 2021
ドリアーニ ゾヴェット 2021

ジラウド氏
「100%ドルチェットで作るDOCGドリアーニです。ピエモンテでは日常的に飲まれる伝統的なワインです。私の祖父は、食卓にドルチェットがないと、すぐに持ってきてとよく言っています(笑)。伝統に則ってステンレスタンクだけで熟成しています。ストラクチャーはありますが、飲みやすいシンプルなスタイルです。標高は400メートル、樹齢45~50年1.5ヘクタールの畑。私たちが最初に買った大切にしている畑です。2021年は、このエリアにとって素晴らしい年になりました。間違いなく今までで最高の出来です」
試飲コメント:ルビー色。凝縮した黒系果実、赤い果実、フローラルな印象のある香り。キャンディのようなニュアンスもあります。香り同様の味わいに加えてリコリスの要素も感じます。柔らかい口当たり、ほどよい骨格があります。若干のブドウ本来の甘みも相まって、親しみやすさのある味わいです。長く持続する余韻が口中を満たします。

モンフォルテ ダルバ由来のボディ感とクリーンネスを兼ね備えたランゲ ネッビオーロ

スナルト ランゲ ネッビオーロ 2021
スナルト ランゲ ネッビオーロ 2021

ジラウド氏
「ランゲ ネッビオーロは、ライネリのエントリーラインです。ほとんどのブドウはモンフォルテ ダルバエリアからできています。ステンレスタンクで発酵を行います。熟成の80%はステンレスタンク、20%はバリックで数ヶ月間行います。それにより、香り味わいともにフレッシュが保たれ、モンフォルテ ダルバ由来のしっかりとしたタンニンをまろやかにさせることができます。非常に飲み心地の良いシンプルな美味しさが表現できています。2021年は、ドルチェット同様に素晴らしいヴィンテージです」
試飲コメント:淡いルビー色。赤系果実の明るくエレガントな香り。口に含むと香り同様の明るい味わいが口中に広がります。非常にフレッシュでエレガントな印象ですが、タンニンの存在感もあり食事と合わせたくなります。徐々に黒い果実のニュアンスも現れます。クリーンな風味の余韻が持続します。

バローロ好きにも、初めてバローロを飲む方にもおすすめのバローロ クラシコ

バローロ 2019
バローロ 2019

ジラウド氏
「バローロ クラシコに使用するネッビオーロは、モンフォルテ ダルバ村のペルノ畑が大部分を占め、一部バローロ村のサンピエトロ畑を使用しています。ストラクチャーもタンニンもあり、まさにモンフォルテ ダルバのバローロを表現しています。大樽で18ヶ月間熟成。若いうちからでも楽しめるシンプルな味わいに仕上げています」
試飲コメント:ガーネット色。バラ、フレッシュな赤系果実、凝縮果実のクリーンで心地よい香り。柔らかいながらも力強く複雑な口当たり。フレッシュな赤系果実や華やかさを感じる味わいとタンニンが綺麗に溶け合うバランスの良さがあります。全体的にクリーンで綺麗な味わいです。

エレガントかつ威厳のスタイルが表現されたクリュ バローロ

バローロ ペルノ 2019
バローロ ペルノ 2019

ジラウド氏
「ラベルにあるように、ペルノというクリュ名がついた単一畑バローロです。バローロ クラシコよりも威厳のあるスタイルで、タンニンも存在感があります。20日間の発酵、1ヶ月間のスキンコンタクトを行います。70~80%大樽、20~30%バリックで熟成しています。3.5ヘクタールの小さい区画で、4000本ほどしか生産していません」
試飲コメント:明るく輝く淡いガーネット色。バラやフレッシュかつ熟した赤系果実、ドライフラワー、土のニュアンスを感じる香り。最初から最後まで持続する、非常にエレガントでクリーンな味わいが特徴的です。存在感のあるタンニンと果実味が綺麗に溶け合うバランスの良さも感じます。

複雑で繊細な味わいがいつまでも持続するクリュ バローロ

バローロ カステッレット
バローロ カステッレット

ジラウド氏
「0.5ヘクタールの畑で造るクリュバローロ カステッレットです。小さい畑なので生産本数は1000本程度と少ないです。500リットルのトノーで熟成を行なっています。畑はモンフォルテ ダルバにありながら、砂質土壌由来のエレガントで繊細なワインに仕上がっています」
試飲コメント:輝く淡いガーネット色。赤系果実、ハーブ、ドライフラワーの香り。滑らかなタンニンと酸、果実味が繊細に調和していて、そのエレガントな味わいがいつまでも持続する長い余韻が特徴的です。

インタビューを終えて

「ペルノとカステッレット、どちらがお好きですか?」というファブリツィオさんの問いに対して、見事に男女で好みが分かれたのが印象的でした。それほど見事に異なる個性が表現されていました。また、両者ともにエレガントな余韻が長く長く持続していて、充実感ある味わいにずっと満たされました。生産本数が4000本と1000本という、貴重なワインを試飲できた機会となりました。

クリュバローロ2種だけでなく今回試飲したドルチェット、ランゲネッビオーロ、クラシックバローロ全てが、エレガントでクリーンな味わいでした。特にクラシックバローロは非常にバランス感に優れた味わいでした。

バローロの新星「ライネリ」のワインを、ぜひご堪能ください。