「バローロのスペシャリスト」ドメニコ ディ ルッチョ氏に聞くネッビオーロの魅力

2016/11/22
突撃インタビュー
 
2016年11月8日 D&Pセレツィオーニ社 ドメニコ ディ ルッチョ氏

「バローロのスペシャリスト」ドメニコ ディ ルッチョ氏に聞く多様なテロワールを反映するネッビオーロの魅力

D&Pセレッツィオーニ社 ドメニコ ディ ルッチョ氏と
多様なテロワールと数多くの生産者がひしめき合うバローロエリア。世界中から常に注目を浴びるエリアにおいて「バローロのスペシャリスト」と呼ばれる人物がいます。著名なワイン商マルク デ グラツィアの片腕として8年間務め、「エリオ アルターレ」「ドメニコ クレリコ」「アゼリア」「カ デル バイオ」「マッテオ コレッジア」といった高名な生産者を世界に発信する窓口として、イタリア国内外で注目を集めるD&Pセレツィオーニ社のオーナー、ドメニコ ディ ルッチョ氏にバローロやロエロ、エリオアルターレによるバローロのモダン化の歴史、地区によって異なる多様なテロワール、最新の2011年ヴィンテージについてたっぷりとお話を聞きました。

少量生産で自然を尊重したワイナリー「真実の造り手」のみを扱う

家族経営の少量生産のワイナリーのみを扱う
21年間前、ピエモンテのカナーレにあるこの会社を妻と立ち上げました。住まいもカナーレにあり、妻サラはロエロのマッテオコレッジアで働いています。私たちの会社は家族経営の少量生産のワイナリーのみ扱っています。一般的なエージェントの感覚ではなく、私もカンティーナの一人としての意識で話をするので、信頼関係も厚いです。ですので、ワイナリーは何処でもよいという訳ではなく、「真実の造り手」を選んでいます。つきあっているインポーターもキチンとワインをわかっているインポーターとしか付き合いません。カンティーナの情熱を表現する事をモットーにしています。

畑出来る限り自然な栽培醸造をしている生産者を選ぶ
私の仕事はワインの説明だけではありません。ワイナリーの歴史、考えについても説明できなければならないと思っています。イタリア国内25社のカンティーナと付き合っています。その内ピエモンテは8社で「エリオ アルターレ」「アゼリア」「ドメニコ クレリコ」「マッテオ コレッジア」「コリーノ」「カ デル バイオ」「ブルーノ ロッカ」、モスカートで有名な「カウドリーナ」です。彼らは自然を尊重した栽培、醸造を行う生産者たちです。

素晴らしい仕上がりとなった2011年
2011年のバローロがワインに仕上がった時、こんなに素晴らしいヴィンテージになるとは思っていませんでした。なぜなら雨が多いヴィンテージだったからです。また2011年はネッビオーロを愛している人にはおススメで、ガストロノミーな料理ともペアリングも楽しめるし、長い熟成にも耐えます。フルーツ香よりも花の香りが強いのが2011年の特徴です。偉大な2010年や2007年は今飲むには難しいワインが多く、熟成を待って飲む方が良いです。

バローロボーイズを見出したマルクデグラツィア氏の片腕として活躍

マルクデグラツィア氏過去にバローロボーイズを見出いしたマルク ディ グラツィア氏と8年間共に働いていました。現在グラツィア氏はシチリアでテヌータ デッレ テッレ ネーレで自然を尊重したワイン造りを行っています。私は当時まだ開拓されていなかったアジアのマーケット担当の仕事をメインにしていました。1998年シンガポールにワインを売りたいとドメニコ クレリコから申し出がありアジア地区を開拓したのがきっかけです。
 

エリオアルターレらによる革命「バローロのモダン化」

クオリティが重視されない時代が続く
1970年代前まではネッビオーロの強すぎる酸と、青いタンニンが残るバローロが多く見受けられ、飲みにくいバローロが多かったです。つまり生産量のことばかりが重視され、「いかに高品質なワインを造るか」といったクオリティが重視されていない時代が続きました。樽も40年近くも使った栗やサクラの樽で衛生的にも良くなく、それが味わいに反映していました。

エリオアルターレエリオアルターレらが革命を興したバローロのモダン化
今から40年前、エリオアルターレが革命を起こし、モダンバローロにとって特別な存在となりました。ドメニコ クレリコ、パオロ スカヴィーノ、サンドローネ、ロベルト ヴォエルツィオ、エリオ アルターレらが、心地よく飲める新たなスタイルのバローロについて話していました。1976年彼らはブルゴーニュへ向かい、新しい技術を習得しました。

エリオ アルターレは畑で、ブドウの量を減らしていくこと、綺麗な樽、バリックを使う事を始めました。醗酵の段階で低温温度管理を行いました。しかし、グリーンハーベストで未熟なブドウを捨てる作業に強い抵抗を感じたエリオ、ドメニコクレリコの父は新しいやり方に当初強く反対したそうです。その革命的な手法は他の多くの生産者から支持されました。1978年ヴィンテージはクリュバローロの生産が始まった年で、後にクリュの概念が発生しました。

土地の個性をしっかりと反映する品種「ネッビオーロ」

地図ワインはテロワールによって成り立つ
ラ モッラ地区の土壌とセッラルンガ ダルバの土壌がぶつかり合う場所は渓谷となっていて土壌の性質を分けています。

強く言いたいのは、ワインは土地の個性、テロワールによって成り立っているという事です。バローロに関してはバリックや大樽の違いに注目するだけではなく、ブルゴーニュのように村の違いを理解するほうが重要です。

「品種→生産者→地区」という理解ではなく、「地区→生産者→品種」という理解の順が現代のバローロには適切だと思います。

ネッビオーロは土地の個性を確りと反映するブドウ
例えばカスティリオーネ ファレットのカヴァロットは伝統的な大樽を使いますが、パオロスカヴィーノのアゼリアは隣接する畑でバリックを使う。しかしキャラクターはとても似ています。ロータリーファーメンター、大樽、熟成期間等、醸造の違いがあってもテロワールにはかなわないと思います。生産者も人間のなので味わいの志向が出ると思いますが、それ以上にネッビオーロという品種は土地の個性を確りと反映するブドウです。

エリオ自らの味覚に正直に美味しさを追求した理想のバローロ
エリオ アルターレ
バローロ 2011
バローロ 2011


エリオのスタンダードバローロは、標高が高くアロマティックなワインを産みだす「ラ モッラ」、デリケートでエレガントさが信条の「カスティリオーネ ファッレット」、タンニンが強く男性的な味わいの「セッラルンガ ダルバ」の3つの異なる畑から成ります。出来あがるバローロはエレガントでしなやかなバランスの良さを持ち、誰が飲んでも美味しいと言える果実、バランス、深みが感じられます。 エリオ自らの味覚に正直に美味しさを追求したまさに理想のバローロと言えます。
試飲コメント:赤スグリやラズベリーの美しい果実香に甘草やスパイス、野薔薇のニュアンスが綺麗に重なります。飲むと、芯の強さをもつ果実感と凛とした酸とミネラルが美しく溶け合い、しなやかかつエレガントなスタイルを感じます。3つの異なる畑の個性が見事に調和していて、バローロの醍醐味がエレガントかつしなやかに感じられる素晴らしいバローロです。

洗練されたタンニンとゴージャスな味わい自然派カヴァロットが
単独所有する希少ローロ
カヴァロット ブリッコ ボスキス
バローロ ブリッコ ボスキス 2011
バローロ ブリッコ ボスキス 2011


「カヴァロットは小規模の生産者で伝統的な造り方を引き継いでいます。カスティリオーネ ファレットに位置し、近くにはフォンタナフレッダが構えています。特徴的な畑「ブリッコ ボスキス」を単独所有しています。ラ モッラのエリオ アルターレとは違うエレガントさがあります。繊細で酸も綺麗。カヴァロットは少ない生産量ですが、リゼルヴァも所有しています。日当たりの良いクリュ「サンジュゼッペ」がそれにあたります。周囲にはシャルドネ、ドルチェット、フレイザ、バルベーラが植えられています。」
試飲コメント:ダークチェリーやバラにスパイスのニュアンスが入り混じる複雑かつ奥深い香りです。グラスを回すと、美しいミネラルと繊細なスパイスのニュアンスがふわりと立ち上ります。飲むと、パワーとエレガンスを兼ね備えた高貴な味わいのバローロです。

偉大なバローロにも通じる濃密で緻密な味わいロエロ最高峰の単一クリュ
「ロッケ ダンピゼ」
マッテオ コレッジア
ロエロ ロッソ ロッケ ダンピセ リゼルヴァ 2011
ロエロ ロッソ ロッケ ダンピセ リゼルヴァ 2011


マッテオ コレッジアはマルク デ グラツィアが興したバローロボーイズの一員としてスピネッタ、コリーノ、カヴィオラらと行動を起こしました。マッテオ コレッジアだけバローロ地区ではないロエロ地区のワイナリーでしたが、エリオ アルターレに師事し、白ワイン生産が中心だったロエロで高品質の赤ワインを造っていました。ロエロで初めて単一畑でボトリングを行いました。その畑はロエロ最高峰と呼べるクリュ「ロケ ダンピュゼ」です。3ヘクタールで自然公園の森の中に位置しているので、化学的な薬品、農薬の影響を受けずいたパーフェクトな畑です。土壌は砂質が70%と多く、ラ モッラと似通う土壌です。ロエロのネッビオーロはバローロよりエレガントなスタイルで好ましいネッビーロの味わいを有しています。
試飲コメント:ダークチェリーやスミレの花、スパイスとシガーの複雑かつ華やかな香りを樽由来の上品なバニラのニュアンスが全体を美しく纏め上げています。飲むと、充実した果実感、彫りの深いミネラル、伸びやかな酸味が素晴らしい調和を成しています。細部に至るまで隙のない緻密な味わいは偉大なバローロにも相通じる魅力的な素性を感じます。
インタビューを終えて
バローロのスペシャリストによる細やかなテロワールの違いが再認識出来た貴重な機会でした。ルッチョ氏はピエモンテの8社のワイナリーと深い交流を持ちつつも、バローロ全体を俯瞰で捉え、土壌に存在する独自のテロワールの特徴、違いを把握され、細やかに説明してくれました。大樽かバリック、古典派かモダン派かと線引きしがちなバローロですが、現在は土地に根付くテロワールを引き出すことがより重要で、ブルゴーニュのように村やテロワールの特徴を理解する事でまた新たなバローロの魅力が発見出来、とても有意義な時間となりました。
D&Pセレッツィオーニ社 ドメニコ ディ ルッチョ氏とトスカニースタッフ
エリオ アルターレのワインはこちら⇒
カヴァロット ブリッコ ボスキスのワインはこちら⇒
マッテオ コレッジアのワインはこちら⇒
突撃インタビューバックナンバーはこちら⇒