“その土地に実るブドウ本来の味わい”を自由に楽しむ「自然派ワイン」 その特徴とおすすめ10選

2024/02/27

近年、注目を浴びている「サステイナブル」や「オーガニック」。ワインの世界においても「自然派ワイン」と呼ばれ人気を博しています。

「自然派」:一般的に畑の作業からワイン造りの過程に至るまで”出来る限り自然のままに”行うワイン造りの事を指す場合が多いです。畑では無農薬栽培、醸造時の添加物もなし(極力減らす)である造りがほとんどです。※明確な定義はありません。

「オーガニック」:オーガニック=有機という言葉は、化学的な肥料や農薬に頼らず、自然の力を生かして生産された製品またはその過程を意味します。一般的には、オーガニック認証機関が定めた基準を満たした農法、醸造を行ったワインがオーガニックワインと呼ばれています。※世界共有の基準ではなく、数ある認証機関によって異なります。認証機関の規定内であれば農薬、醸造時の添加物も使用可能です。

「ビオ」:ビオディナミ、バイオダイナミック農法と呼ばれる自然に寄り添った究極の農法とされていて、太陽暦のカレンダーに従い、月の満ち欠けなど天体の動きも利用します。独特な調合材(プレパラシオンと呼ばれる)を畑へ農薬代わりに使用します。ビオディナミは農法の一種なので、醸造に関しての基準はありません。※ビオロジック、はフランス語でオーガニック農法の事を指し、ビオディナミとは異なります。

「サステイナブル」:持続可能な取り組み。生態系のバランスを維持し、水やエネルギーの再利用や瓶の軽量化でCO² 削減など次世代へ継続していけるワイン造りを目指します。

「リュット レゾネ」:合理的対応という意味で、基本的に自然に対しての敬意を払い、必要な時にだけ必要最低限の農薬や化学肥料を使用する減農薬栽培のことです。農薬の散布が必要となるような条件が厳しい地域で実践されます。

有機認証機関 世界で広がる認証マーク

ボトルの裏に書いてあるマークは、各有機認証機関が発行する認証マークになります。国規模から民間団体のものと大小様々です。国規模で代表的なものは、EU全土をカバーしているEU認証機関「ユーロリーフ」やフランス政府運営の「AB(Agriculture Biologique)」。世界最大規模の国際認証機関「エコサート」などがあります。ビオディナミの認証に関しては、ドイツの「デメテール」が最も厳格で有名です。小規模なものですと、ビオディヴァンという生産者とブドウ栽培者の組合で結成されたものはDRCなど著名のワイナリーが名を連ねています。
認証マーク

2019年に発足された世界初の自然派ワイン認証機関「ヴァンメトードナチュール」も試験的に活動を始めました。厳しい基準を設け、酸化防止剤の無添加または30mgまでとふたつの認証マークを設置。曖昧な自然派ワインを明確に定義するための活動を行っています。

昨今の環境配慮への意識の高まりから、ワインの世界でも有機認証は急激に広がっていますが、中には有機農法でのワイン造りをしていても認証をとらない生産者もいます。認証獲得のために莫大なコストと労力を必要とするためや、コマーシャル的な認証マークに頼りたくないというところなど様々な理由があります。はるか昔から自然のままにやってきてるので、わざわざとる必要もない。という生産者も多くいます。

醸造時のポイント

ステンレスタンク

「自然派」と呼ばれるワインの醸造過程において、大きな鍵を握る要素を簡単に説明します。

酵母と亜硫酸・二酸化硫黄(SO₂)
酵母は、自然界に数千種類も存在するといわれていますが、ワイン醸造時における酵母の選択肢としては、大きく2つの種類に分類することが出来ます。ひとつは「野生酵母」で、ブドウの果皮などに付着している酵母のことです。唯一無二の存在で、テロワールを表現することに長けています。発酵力の安定さに欠けたり、ワインの味わいや香りに好ましくない影響を与える菌がいたりとデメリットもあります。もうひとつは「培養酵母」。生産者や酵母メーカーなどが純粋培養した酵母です。発酵力が安定しています。表現したい香りなど酵母の持つ特性を考え、酵母を選択することにより、ワインに力を与えることが出来ます。

亜硫酸・二酸化硫黄(SO₂)は、酸化を防いだり、不要な酵母の繁殖を抑えて安定した品質のワインにするためにとても重要なものです。古代ローマ時代にはすでに、硫黄を燃やして亜硫酸をつくりだし雑菌の繁殖を防いでいました。使う量によっては、ワインの色素や果実味をとってしまったりすることもあります。※亜硫酸は、アルコール発酵時に発生する副産物でもあるので、添加をしていなくても表示義務含有量を超えた場合ラベルに表記されます。SO₂含有量の上限は、国によって規定されています。
夕日とアンフォラ

無濾過無清澄(ノンフィルター)
無濾過無清澄のワインの味わいは、酵母の旨味を多く含みアミノ酸濃度が高いです。よくお出汁の味と表現されることや、コクのある厚みを感じます。無濾過無清澄とは言っても、ワインの上澄みだけを瓶澄めしたものや澱や酵母による濁りがそのまま瓶詰めされていたりとスタイルは様々です。濾過や清澄をしているものは、透明度に優れ、舌触りも滑らかなものが多く、味わいもスッキリとしている傾向が強いです。

近年、醸造の時に出来る限り手を加えないで生産されたワインのことをハンズオフワイン(Hands off Wine)やローインターヴェンションワイン(Low Intervention Wine)と呼んでいます。醸造方法に明確な基準はありませんが、ブドウの自重のみで果汁を絞り、発酵温度も発酵期間も管理しないなど人的介入を極力減らす取り組みを行っています。このような手法をとる生産者は増加傾向にあります。

ビオ臭と呼ばれる臭いたち

ABVの度数系

SO₂には抗菌作用があるため、悪さをする酵母、菌類を抑制することが出来るのですが、不使用の場合には菌類たちによるフェノレ、ネズミ臭・豆臭、還元臭、揮発臭というものが発生する場合があります。これらの影響をいわゆる「ビオ臭(オフフレーバー)」と呼んでいます。

「フェノレ・ブレット香」はブレタノマイセス酵母菌の影響で、馬小屋のようなにおいが発生します。想像しにくいですが、革製品に水を垂らした時のにおいともいえます。非常に強いと納豆や蒸れたサドルのようなにおいがしますが、軽度であればジビエやムスクの香りとしてワインに複雑味を与えてくれます。

「ネズミ臭・豆臭」は、ネズミの糞のようなにおいがしますが、その特徴はにおいより後味に表れます。飲み込んだ後の風味にタダチャ豆の味がしてしまい、何度ワインを飲んでもそれだけが残ります。乳酸機由来の成分なので、SO₂の使用または、濾過で除去できます。

「還元臭」は酸素を極端に避けた醸造によって起こる現象で、腐った卵や排水溝など、硫黄臭が感じられます。酸素に触れることで取れる場合が多いので、抜栓してしばらく放置したり、デキャンタに移したりすることで正常な香りに戻ることが多いです。非常に強いものは中々とれないこともあります。

「揮発臭」は微量ならばポジティブに捉える場合もあります。ツンとする揮発酸のアルコール臭やヴィネガーのような香り、セメダイン、除光液の香りとよく言われます。酢酸菌が酸素を媒体に酢酸エチルというエステル成分によって起こります。酢酸自体はどのワインでも含まれているものなので、原因の酢酸菌の増殖を抑えるためにSO₂による対応が一般的です。一度酢酸菌に汚染されて増殖が始まるとヴィネガーになるまで菌の活動は止まりません。

保存や取り扱い

SO₂を極力減らしているワインは、繊細そのものです。特に温度による影響が非常に大きいため、保管のみならず、輸送配送の温度もとても重要な部分です。温度が上がると酵母の再活動を引き起こします。大きな振動によるダメージも大きいです。取り扱いと保存方法は非常に大切になってきます。

無濾過や無清澄のものは、澱や酒石などが舞いやすいので振ったりせず、購入したらすぐに飲まないで少し休ませるとワインが落ち着きます。ワインセラー

自然派ワインの嗜み

自然派ワインの楽しみ方はとても様々です。その柔らかい口当たりと比較的アルコール度数も低いものが多いことから、気軽にワイン単体で飲むことはもちろん。その出汁や旨味のある味わいは日本食との調和性もとても高いので、日本人の食卓にとても合わせやすいものが多いです。

元々、ブドウ農家たちが自宅で楽しむように造られたような”ありのまま”なワインなため、肩肘張らずに楽しめます。一度開けたから早く飲まないといけないというよりは、2日目、3日目と味わいの起伏が大きいです。一本買って日々少しづつグラスで楽しむことが出来るのも、酸化に強い自然派ワインならではの飲み方です。

また同じ生産者、同じ銘柄でもその年その気候によって味わいの差が非常に大きいです。まさに農作物の延長のような形でワインを造っているので、その年の出来柄が顕著に感じられます。好きな生産者の銘柄を見つけては毎年追いかけてみて違いをみるのもとても楽しいものです。ぜひ自分だけの一本を探してみてください。

「白ワインの歴史を変えた」アンフォラ醸造の先駆者自然派「グラヴネル」のリボッラジャッラ

グラヴネル

リボッラ 2014

リボッラ 2014

「白ワインの歴史を変えた」と讃えられ世界中の生産者達が尊敬の念を抱くカリスマ「ヨスコ グラヴネル」のリボッラジャッラ。イタリアにおけるオレンジワインの始まりを指すワインと呼ばれています。畑では自然を観察しようと努め、自然界との調和の取れた農業のあり方を模索。ただただブドウ、ワイン、微生物たちにとって居心地の良い環境を創出することだけを心がけ、自然の流れやリズムに身を委ねるような醸造方法を採用しています。

カーサ ベルフィが古代農法と伝統的醸造で造るグレラ100%自然派微発泡「ナチュラルメンテ フリッツァンテ」

カーサ ベルフィ

ナチュラルメンテ フリッツァンテ NV

ナチュラルメンテ フリッツァンテ NV

除草剤、化学薬品を一切使用しない古代農法と伝統的醸造で造られる「カーサ ベルフィ」が造る微発泡ワイン「ナチュラルメンテ フリッツアンテ」。天然酵母で発酵。ビオディナミカレンダーに基づき花の日にボトリング、澱引きはなしです。自然生成による心地よい泡、ピュアな果実味、酵母の香りが効いた人気の自然派発泡ワインです。

有機栽培ワイナリー「カンティーナ マリリーナ」が造る 愛らしいラベルのシチリア自然派無ろ過モスカート

カンティーナ マリリーナ

フェデリエ モスカート アンチェストラーレ NV

フェデリエ モスカート アンチェストラーレ NV

姉妹を中心とした家族経営、有機栽培ワイナリーのカンティーナ マリリーナ。再生紙を使ったラベルや軽量瓶の採用、キャップシールの廃止など環境への影響を最小限にする取り組みも行っています。普段の食事に抜群に寄り添う心地よい旨みとほろ苦さ、一次発酵の途中で温度を下げて発酵を止め、糖分を残したまま瓶詰し、再び瓶内で残りの発酵を行うアンチェストラーレで造られた柔らかな味わいのワインです。

「アヒル」ラベルで大人気!ビオロジックを実践「カルロ タンガネッリ」の自然派白「アナトリーノ」

カルロ タンガネッリ

アナトリーノ トスカーナ ビアンコ 2021

アナトリーノ トスカーナ ビアンコ 2021

ブドウはもちろん、オリーブオイルや蜂蜜造りもビオロジックで行うトスカーナの小さな蔵「カルロ タンガネッリ」のアナトリーノです。まるみのある酸味と果実味、マセラシオン由来の旨みとコクがあり、ほんのりスパイシーな余韻が楽しめます。自然酵母を採用していますが、ネガティブな香りの要素が見当たりません。飲み心地とバランスの良さが印象的です。

イタリア自然派を代表する「ラ ビアンカーラ」の大人気ワイン「サッサイア」のスペシャルエディション

ラ ビアンカーラ

サッサイア エディツィオーネ スペチャーレ 2021

サッサイア エディツィオーネ スペチャーレ 2021

いまやイタリア自然派を代表する一人として知られる「ラ ビアンカーラ」のアンジョリーノ マウレ氏。めまぐるしい挑戦を続けることでも知られています。現在はボルドー液さえも排除した農業を目指し、酸化防止剤の使用も年々減らしている。目標は全ワイン完全無添加。サッサイア エディツィオーネ スペチャーレは、熟成期間を半年延ばした日本限定スペシャルです。野生酵母、開放漕発酵による独特の香り、完熟したブドウの凝縮した“個性”を持つ味わいです。

30年以上前から無農薬栽培を行う協同組合「ルナーリア」のビオディナミ認証付き 醸しピノグリージョ

ルナーリア

ピノグリージョ 2022

ピノグリージョ 2022

30年以上前から無農薬栽培を行う協同組合「ルナーリア」。2005年からはビオディナミ農法を取り入れています。デメテール・ユーロリーフなどの認証をとっています。 醸したピノグリージョによる淡いピンクの色調。フレッシュな味わいで、果実と穏やかな酸のバランスが好印象です。

「コスタドーロ」が酸化防止剤無添加で造る カジュアルオーガニックワイン「 プーロ マルケ ビアンコ」

コスタドーロ

コスタドーロ ロ プーロ マルケ ビアンコ 2022

コスタドーロ ロ プーロ マルケ ビアンコ 2022

マルケ州オーガニックワインの造り手「コスタドーロ」のワインは、カジュアルに楽しめるオーガニックワインとして、欧米各国で人気を集めています。プーロ マルケ ビアンコは、酸化防止剤無添加で造られています。EUのオーガニック認証とヴィーガン認証を取得。トレッビアーノとシャルドネのしっかりとした味わいを酸とミネラルが支えています。

「ブドウの生命力」を感じるワイン造りを行う「パーチナ」のドネスコ

パーチナ

ドネスコ 2019

ドネスコ 2019

循環型の有機農法、野生酵母での発酵、酸化防止剤(SO2)を極力添加しないなど自然派トスカーナの代表的生産者「パーチナ」。醸造過程でワインが酸化状態にさらされることにも負けない「ブドウの生命力」を1番にワイン造りを行っています。ドネスコは、サンジョヴェーゼ主体。パワフルさとフレッシュさが混在する飲み心地抜群の仕上がりです。

長期熟成バルベーラの名手トリンケーロの輸入元限定キュベ「ロッソ・ラシーヌ」

トリンケーロ

ロッソ ラシーヌ 2018

ロッソ ラシーヌ 2018

若木のバルベーラを36ヵ月熟成させ、状態を見極めてリリースされる、輸入元ラシーヌさん限定のキュヴェ「ロッソ・ラシーヌ」。フレッシュな果実味から時間とともに増す旨みが印象的です。熟成にこだわるトリンケーロは、アスティで代々長熟型のバルベーラを造り続けています。有機栽培、酸化防止剤の使用は極力抑え、自然なワイン造りを行います。

自然派で必ず名前があがるカリスマ生産者「ラディコン」の“飲み頃リリース”メルロー

ラディコン

メルロー 2007
メルロー 2007

常に大地と環境に最大限の敬意を払った自然なワインを造る事を哲学に掲げる「ラディコン」。ラディコンの影響を受けた生産者は世界中に数多く、自然派ワインの新たな潮流を造った偉大な造り手です。厳選されたメルローを出来る限り遅摘み、長期のマセレーションと樽熟成を経てリリースされるラディコンのメルロー。飲み頃と判断されてからリリースされています。柔らかなボディー、繊細という言葉がピッタリのワインです。